<第164回国会 2006年5月18日 行政改革に関する特別委員会 第9号(5月16日地方公聴会)>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は四人の公述人の皆さん、本当にありがとうございます。非常に率直な御意見を出していただいているなというふうに思っていて、お話を聞きながら共感するところも多々あります。
 最初に、片山知事からお聞きしたいんですけれども、この間、行政の改革というか、自分自身がこの鳥取でそういう改革をやられてきて、事前にいただいていた資料なんかも読ませていただいているんですけれども、やっぱりその中で現場主義といいますか、例えば現場に行って声をよく聞いて、解決できることは何かと、やってみてなかなかできないことについて、国の要請というか、求めるところはそうしていくというようなことですとか、これまでの取組の中でも私も記憶に残っている中には、例えば地震のときに建物に対する問題でも、今までの前例主義というのがあるわけですけれども、それに乗っていたんじゃとてもできなかっただろうと思われることがやっぱりそこで取り組まれたりとか、それからDVですね、ドメスティック・バイオレンスということで、これも全国の中でも先駆けて、現場の話を聞いて必要ということで対策をし、三位一体の中で削られたとしても独自にやるとかいうことなどは、そういう関係者の皆さんからも高く評価をされてきていると。
 やっぱり、読ませていただいて思ったのは、行政改革というのは原点に立ち返ることが大切だという話の中で、原点というのはじゃ何なのかなということでいうと、やっぱりその自治の主人公は住民なんだと、その目線でとらえて、その視点が欠けちゃいけないということが言われて、この辺も私は実は共感をするわけなんですね。
 そう考えたときに、今国が出してきている今度の行政改革の法案というのは、簡素で効率的という、それだけ聞けばちょっとよく抽象的で分からないわけですけれども、中身でもって押し出しながら、実際に国民の暮らしとか国民の安全とか守っていくということでいえば、必要なところが一体どこで、これはもう何としてもちゃんと守っていかなきゃいけないとかいうことの中身のきちっとした点検なりがなしに、先にこの数字でもって削っていくだとかということが出されているということは、非常にこの原点ということから見ればちょっとそぐわないんじゃないのかなという気もしますし、そういう点で、実際現場で努力されてきたところから見て、賛成だっておっしゃったんですけれども、役に立つのかなというか、というような率直なところを聞きたいということ。
 それから、市場化テストの問題で、官民競争入札というのと民間競争入札導入ということで、民にできるものは民でと、そういうのはあるんだと思うんですけれども、そぐわないものもあると。実施対象の中に私自身も非常に大丈夫かなというふうに思うのも幾つもあるんですけれども、例えば自治体業務で、戸籍抄本、外国人の登録原票の写しとか、住民票の写しとか、印鑑登録とか等々ありますけれども、この受付と引渡しと、こういうところというのは、扱いというのは非常に慎重にやらなきゃいけないし、個人情報がやっぱり漏れないようにというのは、DVのときなんかも非常に気を配らなきゃいけないということがあったと思うんですけれども、そういうことが実際にその民間にもし入札された場合に漏れていかないのかなという、そういう不安というのは非常に持つわけです。本来は厳格に扱うべきものであって、それに対してどういうふうに思っているかという知事の御意見を伺いたいと思います。

○公述人(片山善博君) 私は法案に基本的には賛成をしたということに対して、今本当にそうでしょうかという懸念を寄せていただいたんですが、私はこれは使い方次第だと思っておるんです。何とかとはさみは使いようと言いますけれども、上手に使えば、本当に自治の原点を失わないで、先ほど申しました良質で低コストのサービス供給は可能になると私は思っています。
 ただ、これを例えば使い方を誤って、護送船団的に中央政府の方もこれでもって、これをよりどころにして護送船団的に地方団体に迫る、自治体はそれにざあっと流されるということになりましたら、いいことがないようになるんだろうと思います。ですから、要は我々地方自治団体の方の主体性と見識、力量いかんだと思っております。
 それから、競争入札制度はそぐわないものがあるというのは私もそのとおりだと思うんです。先ほど、柴田公述人の方のお話でありましたけれども、鳥取県では指定管理者制度といのを全国同様実施しているんですけれども、その際に、入札に掛ける指定管理とそれから個別指定と、こう振り分けたんですけれども、やはり文化を担う主体というものは競争原理に必ずしもなじまないだろうということで、競争原理に入れませんでした。
 それから、例えば知的なもの、例えば博物館的なものとか図書館のようなものとか、継続して知的なものの蓄積を養っていかなきゃいけないようなものについては、これなじまないだろうということで基本的にはこれ直営にしておりますし、従来委託に出していたものもこの際直営に取り込んで、経営形態を変えるというようなこともやっております。
 これも、それ以外に、例えばプライバシーの問題がどうかとかいろいろありますから、それこそ自治体の方の見識と主体的な選択でもってそぐうものとそぐわないものを分けるということで私はいいと思っております。

○紙智子君 それじゃ、ちょっと時間が迫ってきたんですけれども、次に、西尾公述人にお聞きしたいんですけれども、同じく市場化テストの問題で、このことによって民間事業者に落札した場合に、その事業に従事してきた公務労働者には異動や派遣や解雇という問題が出てきますし、臨時とか非常勤ということで働いている関連する労働者にも影響が出てくるでしょうし、それから、実際落札して請け負った側というか、そっちの方にも雇用問題って出てくると思うんですけれども、その働く現場といいますか、労働者の立場から見たときに具体的にこういう分野、こういう分野ということでは非常に懸念されるというところで少し言っていただきたいんですけれども。

○公述人(西尾幸喜君) それじゃ、現場の一例を少し申し上げて回答とさせていただきたいと思いますけれども、実は、行政機関の方の公務員につきましては標準定数法というものがありまして雇用は守られておるんですけれども、実は法律で縛られない学校の用務員とか給食の職員さんの方がおられますけれども、これが現業で今働いておる方なんですが、この辺が指定管理といいますか、競争入札で民間に出ておるような状態があります。
 現場で、給食職場の関係なんですけれども、民間に委託しているところがあるんですけれども、やはり交付金といいますか、負担金がありますんで、その中でどうしても利益を出していかなくちゃいけないということで、稼働人員が極限まで抑えられておるようなことを聞いております。特に栄養士の関係なんですけれども、民間に出した場合に二、三か所、複数の施設を兼任しておるようなこともありまして、大変子供や高齢者の方が、食の安全などもありますんで、不安がられているような状態もありました。給食を作られる給食員の方も、数はぎりぎりなものですから、やはり少し過労とか職場の安全ですね、こういうものも確保ができてないような状況は一部聞いております。
 これでよろしいでしょうか。

○紙智子君 はい。

○団長(尾辻秀久君) 紙智子君、おまとめください。

○紙智子君 はい。じゃ、ちょっと、時間で申し訳ないんですけれども、あと柴田参考人に最後お聞きしたい。
 今のお話の中で、やっぱり文化とか芸術とか、ここの分野というのは本当に大切な分野というふうに思いますし、お話聞いて非常に共感もしてきたわけですけれども、やはりこの分野で実際にはそぐわないじゃないかということで、実は衆議院の中でも我が党で質問をして、それに対して答弁として、行政担当大臣、文科大臣に質問をしたわけですけど、学術、文化はコスト競争になじまないと、丸ごと市場テストの対象にしようということではないというような答弁も出されたんですけれども、やっぱり実際の不安といいますか、こういう分野というのは本当にしっかりと受け止めていただきたいんだということを、さっきもお話があったんですけれども、特に強調したい点というのは、一言お願いします。

○公述人(柴田英杞君) 先ほども申し上げたんですが、やはり文化といいますのは、その地域に暮らす方々の人間の回復力を育成していく心の栄養となっていくものだと思います、文化というのは。そうしますと、長期的な視点に立った上での振興策、政策というものがどうしても必要になってくると思います。
 指定管理者制度も市場化テストもそうですが、五年とか三年とかといったスパンで区切られて、NPO法人でも企業でも財団でも、文化育成というのがそこでストップしてしまっては何のための文化振興政策なのかというのが分からなくなってしまいますので、あくまでもやっぱり国民の立場に立って、その文化を受ける側の人に立った目線でやはり政策を、法律を考えていただきたいなというふうに切に思います。

○紙智子君 ありがとうございました。