<第164回国会 2006年4月24日 行政監視委員会 第4号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 道路建設などの公共事業の進める際の自然環境保護や地域住民への説明の在り方についてお聞きします。質問時間が短いものですから、答弁は簡潔にお願いをいたします。
 お配りしておりますちょっと資料をごらんいただきたいと思うんですが、これ、北海道北見市市内の南部の丘陵地帯に長さ十キロの北見バイパス建設が計画をされて、橋梁工事が一部開始をされております。総事業費で四百四十億円、一メートル当たり四百四十万という巨額の道路工事で、トンネルで五本、橋梁で八か所というものです。ちょっと見にくくて申し訳ないんですけれども。
 道路予定地は自然の姿を強く残した自然林と清流が流れている区域で、北見市内部にありながら非常に貴重な自然が残されている場所です。バイパスはこの丘陵地帯を貫くように計画されているんですが、予定地からは国の天然記念物のオジロワシの営巣が見付かりました。
 環境省に最初お聞きしますが、事業用地から希少猛禽類の営巣が見付かった場合、大規模な工事からこれを保護するために、環境省は「猛禽類保護の進め方」を定めていると思いますが、どのような措置を求めているでしょうか。

○政府参考人(南川秀樹君) お答えいたします。
 私ども、「猛禽類保護の進め方」という指針をまとめまして公表しております。
 ポイント四つございます。まず第一に、その猛禽類の繁殖活動の保護を中心に考えるということでございます。二つ目は、その保護でございますけれども、現地調査、調査内容の解析、保護対策の検討実施、そしてモニタリングでフォローアップするという順番で行うこと。また、三つ目といたしまして、具体的な対策検討に当たりましては、現地調査で得られました猛禽類の行動圏全体を把握した上で、対策のプライオリティーを付ける観点から、営巣中心域、そして採餌場所などの高利用域などの利用区域ごとに保護、配慮の指針を適用していくこと。三つ目に、様々な個々の事情ございます。個々の事案ごとに専門家の指導、助言を求めるといったことでございます。
 私ども、事業者の方にこの活用をお願いしておりますし、環境省としても適宜助言を行っているところでございます。

○紙智子君 ちょっと確認なんですけれども、環境省のマニュアルですと、この営巣中心域から半径一・二キロの環境の改変を避けるように努めるべきというふうにされていますよね。一言、確認だけ。

○政府参考人(南川秀樹君) 具体的な目安でございます。実は、このオジロワシにつきましては、私ども、具体的な目安をいまだ持っておりません。御指摘のとおり、例えばイヌワシですと営巣中心域の目安としては巣から半径一・二キロメートル程度とか、あるいはクマタカですと巣から半径五百メートル程度持っておりますけれども、オジロワシにつきましては、サハリンとの間を行き来しているということもございまして、特に具体的な数字は示しておりません。

○紙智子君 オジロワシも非常にデリケートな動物ということになっているわけですね。それで、北見バイパスのルートは、トンネルの入口から巣まで七百メートルくらいと、それから生活上の重要な場である止まり木、えさを捕るところは工事箇所のトンネル坑口から最も近いところで四百メートルと、こういう至近距離にあるわけです。
 北海道局に聞きたいんですけれども、なぜこのルートを選んだんでしょうか。

○政府参考人(吉田義一君) 北見道路についての御質問でございますけれども、北見道路は国道三十九号の北見市内の交通混雑の緩和でありますとか市街地で多発している交通事故の低減等の効果が見込まれているところでございます。さらに、北海道の中で……

○紙智子君 なぜこのルートを選んだのかということです。

○政府参考人(吉田義一君) はい。で、そういう中で、経済性でありますとか、それから自然環境への影響、これをできるだけ少なくするということで、総合的に今のルートを選定したところでございます。

○紙智子君 今、環境の問題というふうに言うんですけれども、今言いましたように、貴重な猛禽類がいるということの中で、その今言った理由がそうなんですか。選んだ理由なんですか。理由になっていないですよ。

○政府参考人(吉田義一君) 先ほどからオジロワシについてのお話ございましたけれども、オジロワシにつきましては、平成十六年の三月にその営巣を私ども確認しておりまして、その後、学識経験者等の御指導もいただきながら調査をしておりまして、委員御指摘のように工事箇所から七百メートル離れた箇所で営巣が確認しているところでございます。
 工事との関係につきましては、学識経験者などから、繁殖箇所が、営巣地付近で利用している生活上重要な場所である止まり木とか採餌場は工事箇所から最も近いところで四百メーター離れていると、で、四百メーター離れていれば必要な影響軽減策を取ることによりまして工事で繁殖活動を阻害することはないという御指摘をいただいているところでございます。
 私どもとしましては、今後とも、学識経験者等の御指導をいただきながら、工事の騒音でありますとか振動軽減対策としまして、基本的にトンネル掘削工法を機械掘削としまして騒音、振動等の発生を抑制すると、さらに工事の騒音の軽減としまして、工事箇所の坑口部への防音囲いを設置する、あるいは消音装置付きの換気送風機の導入などを検討しているところでございまして、更にこういうトンネルの掘削時期につきましてはモニタリング調査を継続しながら検討していきたいと考えております。

○紙智子君 学識経験者と言うんですけれど、猛禽類とか鳥類の専門家、いないじゃないですか。で、非常に影響を過小評価していると思うんですよ。
 この区域の重要性というのは、実は北見の環境白書というのが出ているんですけども、この中でも、十一万都市で、北見市の中心から約三・五キロのところに国指定の天然記念物で絶滅危惧TB類であるオジロワシの営巣があることは世界でも類を見ない極めてまれなことだと高く評価をしているんですね。ほかにもオオワシやクマゲラなどの天然記念物が発見されていると。食物連鎖の頂点にある希少猛禽類が生息するということは、それだけ豊かな自然が残されているということなんですね。北海道自然保護協会の意見書でも、植物相が極めて多様で貴重だと、北見市で最も良好に残された自然だというふうに指摘しているんです。それなのにどうしてこのルートなのかと。で、区域を少し外せばカラマツの人工林の区域があるわけだし、住民の人たちは仮にバイパスを造るにしてももっと別のルートにしてほしいということで二〇〇三年の時点に求めているわけですけれども、開発建設部は一ミリたりとも変更しないと言ってかたくなに説明を拒否したわけです。
 昨年、私が現地に行きまして住民への説明を求めてようやく、当初は二十ルートあったと、その後、十ルートに絞って検討したというふうには言っているんだけども、しかしなぜこのルートが一番適切なのかということで、選んだ理由については今に至るまで住民に説明がないわけですね。で、資料も出てないと。きちんと情報を示して十分納得得られるように説明をすべきじゃありませんか。

○政府参考人(吉田義一君) 先ほどもお話しさしていただきましたように、この北見道路につきましては、この北見の市街地の交通の円滑化を図るというそういうバイパスの機能、さらに北海道の横断自動車道と一体となりまして北見・網走圏の高速交通ネットワークを形成する自動車専用道路でございます。したがいまして、この北見道路の始点、終点は決まっているわけでございまして、そういう中でこれをどう結ぶかと。できるだけ経済的に、しかも自然環境に対する影響が少ないというルートを選んだところでございまして、さらに、先ほど委員御指摘のようにトンネル、五か所のトンネル、それから橋梁等、そういう工法を取ることによってできるだけ自然の改変面積、土地の改変面積を少なくしていると、そういうふうにしてこの道路のルートを計画しているところでございます。

○紙智子君 なぜ造らなきゃならないかという理由が希薄なんですね。
 で、皆さんが出しているパンフレットがあるんだけど、このパンフレットを見ても、交通渋滞が起きているからなんだというところがあって、その使っている写真というのは現地の人から見るとこれは全然違うよと。実はこの先にはスーパーがあって、そこに曲がるために道路を、車待ちしているやつを、その写真を撮って使って渋滞しているなんという話をやっていると。全然日ごろ渋滞なんかしていないという話出ているわけですよ。それから、十のルートを最終的に検討しながらなぜ自然の豊かな区域をあえて選んだのかと。こういう疑問を残したまま事業を進めるべきではないと思うんですよ。
 それに、北見は本当に夏は暑くなって冬は冷え込むんです。マイナス二十度、三十度ってなるんですけども、そういう冬場は橋の上とかトンネルの入口とか山間部の日陰というのは凍り付いて特に注意が必要だというふうに開発局も言っているわけですよ。それなのに、どうしてトンネル五本も造って橋が八か所だと、造らなきゃならないルートを取ったのかと。公有地が取得しやすかったというふうな理由を言う人もいるんだけれども、それだけではもう納得できないと。ほかのルートも含めてやっぱり検討結果を示すべきだと思いますし、データを示さないで結論だけ大丈夫というのは、これはやっぱりやめてほしいという声があるわけです。この点どうですか。

○政府参考人(吉田義一君) この北見道路の事業の実施に際しましては、環境影響評価法に基づきまして、平成十一年から平成十三年に手続を行いまして、住民意見それから知事の意見、環境大臣の意見を踏まえまして、平成十三年の四月から五月に環境影響評価書を公告縦覧しているところでございます。
 さらに、この道路の事業の実施に際しましては、野生の動植物への影響に配慮した整備を行うために、平成十五年の十月三十日から、北見道路の整備における環境保全対策を考える懇談会、これは動植物等の学識経験者、さらに地元の市長さん、それから町内会の連合会長さん、こういう方にも参加していただいて懇談会を設置しまして、有識者等から御意見をいただき、環境保全対策を検討の上、取り組んでいるところでございます。
 今後とも、有識者などの御意見をいただきながら、環境に配慮しながら、事業を進めてまいりたいと思っております。

○紙智子君 当初は、住民への説明といっても町内会長しか呼ばないとか、本当に知らせる範囲も狭かったということがあるわけですよ。何でちゃんと質問したことに答えないのかという住民の皆さんからの声もあるわけです。やっぱりきちっと説明もするし、住民の納得のないまま事業を続行するのは本当に問題だというふうに思います。
 もう一つ、副大臣にお聞きしたいと思っているんですけれども、建設省の道路審議会が道路政策変革への提言という、こういうのを、これインターネットで取ったんですけれども、出して、二十一世紀に求められる新しい政策像を出しました。これは、国民との対話を行う国民参加型の新たな方法を使って検討を進めたというのが特徴だと思うんですね。
 そこでは、道路政策に情報公開を一層進めるとともに評価システムを導入して、この評価手法は、幅広く意見を取り入れる、可能な限り客観的な方法として構築が必要だというふうに明確に指摘をしているわけです。これが求められている方向性だというふうに思うんですね。
 この北見バイパスは、今年ちょうど事業評価の年で事実上初の事業評価になるわけです。国土交通省の実施要領によりますと、必要に応じてその見直しを行うほか、事業の継続が適当と認められない場合は事業を中止するというふうになっているわけです。だから、事業の進捗状況やコスト縮減、代替案の立案とか、こういう観点から評価するものだと思うんですけれども、そもそも四百四十億円掛けてこんなのを造る必要があるのかという疑問視もされているものなわけです。
 是非、環境へのマイナス影響なども評価に入れてほしいと思いますし、早急にバイパスに関心を持っている住民団体などの意見を聴いて再評価の作業に着手してほしいというふうに思うんですけれども、副大臣、いかがでしょうか。

○副大臣(松村龍二君) お答えいたします。
 先生おっしゃいますように、事業をしっかり評価して道路建設を進めるということで、北見道路につきましては、平成九年度に事業化いたしましたので、事業着手後十年を迎える場合に、国土交通省所管公共事業の再評価実施要領に基づきまして、今年度、事業再評価を行う予定でございます。現在、事業再評価の実施に向けまして、データの収集など鋭意準備を進めており、準備が整い次第速やかに手続を進める予定であります。
 また、事業再評価に際しましては、地方公共団体の意見を聴くとともに、学識経験者等から成る第三者委員会で幅広い審議をお願いしております。議事の公開はもちろん、また、その議事の状況も公開するというようなことで、十分に住民の意見も聴くというふうな形で公明正大に事業の再評価を行ってまいる所存でございます。

○紙智子君 最後に一言。
 本来、この事業評価も受けていない工事がどんどん進められるというのはおかしいことだと思うんですね。評価結果が出るまで工事は差し止めていただきたいということを強く要望して、私の質問を終わります。