<第164回国会 2006年3月24日 予算委員会 第16号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 介護保険が改悪をされて、昨年の十月からこの介護施設における居住費、食費、いわゆるホテルコスト、この施設利用者本人の負担が掛かるようになりました。介護の現場では当初から心配をされていて、高額の負担に堪えられない高齢者の方が退所するような事態になるんじゃないかということで、我が党としても実施を前に申入れを行った際に、当時尾辻厚生労働大臣が必要な介護が受けられないようなことにならないようにしなきゃいけないと、あってはならないというふうにはっきりとおっしゃいました。これは総理も同じお立場だと思いますけれども、まずそのことについて、総理。
 総理です、総理です。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 必要な介護が受けられるような対応をしなきゃいけないと思っております。
○紙智子君 今そういうふうに総理もおっしゃられたわけです。ところが、実際には心配する事態、必要な介護が受けられない事態が現実に生まれている。
 これは、私、札幌で聞いてきたんですけれども、認知症の九十六歳のお母さん、そして七十二歳の妻と暮らしていますけれども、六十五歳のAさん。夜中に二時間ごとに起き出して徘回をする母親、昨年の八月にようやっと老健施設に入所させることができたわけです。年金は全部で二十万と。この老健施設に六万出してこのお母さんを入れながらぎりぎりの生活をしてきたわけですけれども、去年の十月から二万円増えると、負担が増えるということを言われてこのお母さんを引き取ったわけです。で、実は、この妻も要支援ということで認定されていて、できればまた入所させたいというのはあるわけですけれども、しかしできない。いつ共倒れになるか分からないという状況の中で今介護を必死になってされているわけなんです。こういう例はAさんだけじゃないんですね。各地からこうした例が報告をされているわけです。
 ところが、政府は今度の医療制度改悪で、改革でこの介護保険の二の舞を言わばやろうとしている。長期入院療養病床の患者にも居住費、食費ということで導入しようとしているわけです。お金のない高齢者、もう病院にも入れられないし、必要な医療が受けられないということになりかねないというふうに思うわけです。
 それで、このパネルを見ていただきたいと思うんですけれども、(資料提示)高齢者のための病床そのものを今縮小しようとしている。政府は、療養病床三十八万床今ありますけれども、これを二〇一二年には十五万床に削減をしようということですよね。突然こういうのが出されてきたものですから、医療現場もそれから家族、患者の皆さんも非常に不安が広がっているということなわけです。
 療養病床がやはり、療養病床が受け入れている患者さんというのは、多くが回復はしていても病状の変化に対応した医療や看護が必要だと。療養病床は、特養でも老健施設でも自宅でも結局受け入れることができない、そういう人たちがここに入って、そういう意味では患者さんの生命や生活を支えてきたわけです。この療養病床二十三万床を削減しますと、病院を出ても行き先のない、そういう患者さんや高齢者が多く出ることになるんじゃないのかと、こういう不安が今本当に広がっているんですけれども、この点いかがでしょうか。
○国務大臣(川崎二郎君) 最初に、介護保険の御指摘がございました。
 昨年の見直しにおいては、公平の負担性という観点から、介護保険施設における居住費、食費については在宅の方と同様、保険給付の対象外とし、施設給付においても介護に関する部分に給付を重点化いたしました。ただし、見直しに当たっては、所得の低い方であっても必要な介護が受けられるよう、所得に応じた低い額の負担上限額を設けております。
 具体的に申し上げますと、生活保護の方々ですと、利用者負担今二万五千円でございますけれども、同じ負担になります。先ほどの例の八十万円以下の年金の方々は四万円の負担が三万七千円になるということで、かえって減額されるようになっておりますので、個々のケースはもう少し調べてみますけれども、全体的に申し上げればそのようなケースは考えられないと思っております。しかしながら、昨年の十月から実施して、私どもウオッチしております。また、個々の事例が出ましたら、しっかり対応してまいりたいと思います。
 それから、療養病床三十八万、これの転換を図る二十三万、こういう御指摘がございました。
 今回の療養病床の再編では、療養病床は医療の必要度が高い患者に限定し医療保険で対応するとともに、介護療養型医療施設については六年掛けて介護保険施設に転換していくこととしております。この場合、医療の必要度の低い方々への対応としては、療養病床が老人保健施設等の介護施設に転換することにより、大きな改修することなく受皿となることが可能と考えております。
 療養病床の再編に当たっては、入院している方々の追い出しにつながらないようにすることは大前提でございます。今後六年間、医療、介護双方の病床に円滑な転換ができるよう、経過的な類型を設けることといたしております。そうした状況でございますので、しっかりやらしていただきます。
○紙智子君 今のお答えで、まず実際に現実に、こういう人たちはむしろ減っているというふうにおっしゃるわけだけど、現実に二万円プラスということで、できないという状況があるわけですよ。それなのに、そういうことは余り聞いていないとか個別の問題だと言うんですけど、だったら個別に対応するんですか。そういうことをやらないで今まで来ているじゃないですか。まずそれが非常に問題だということが一つと。
 それから、後半の方のお答えでしたけれども、結局六年掛けてやるとおっしゃった。そして、いろいろこの転換をしていくんだという話ですよね。
 で、現在の療養病床を、今のお話でいいますと、有料老人ホーム、それからケアハウスですか、それから老健施設に転換していくという方向だと思いますけれども、これ、有料老人ホームについて言いますと、高額の入居金と合わせて月額料は九割の施設が十万円以上掛かるんですよ。それだけじゃないですよ。そのほかに介護費用と光熱水費が必要になるわけです。
 じゃ、ケアハウスはどうなんだといえば、これ月額平均で約九万円ですよ。で、プラス介護費用が掛かるわけです。低所得者にとってはこれ負担できないんですよ。
 それじゃ、老健施設はどうかといえば、数か月から一年で退所を迫られて施設を転々としなきゃならない。今現場で何て言われているかというと、老健ジプシーというふうに言われているんですよ。こういう現実があるわけですよ。
 じゃ、特養はどうかと。特養について言えば、待機者が三十四万人いるんですよ。今申し込んだって、二年三年待ってくださいというのが現実なんですよ。
 こういう現実を目の当たりにして、本当に介護、そして看護が必要な高齢者というのは、結局お金のある人は、高い利用料を払える人以外は行き場がないということになってしまうんですね。
 で、しかも、施設転換するというんだけれども、じゃ、どれだけ財源の確保できるのかと、そういう必要なことは何ら明らかにしていないじゃないですか。で、六年で解消する保証なんて何もないですよ。
 で、やはり社会的入院の解消っていう問題がずっとこれまで言われてきた。確かにそれ解決しなきゃいけない問題だと思いますけれども、本気で解決するというのであれば、まず先に高齢者が施設でもそれから在宅でも安心して暮らせるような介護のサービスの基盤整備をするべきじゃありませんか。いかがですか。これ、総理に是非お答え願いたい。
○国務大臣(川崎二郎君) 介護の問題は、先ほど数字でお示ししたとおりでございます。ただ、個々に違うというケースがあるなら私どもその話を聞かしていただきますと、こういうふうに申し上げました。
 それから、療養病床からの転換は、大前提は、今入っていられる方がきちっとケアされるということでありますから、六年間の経過期間の中できちっと処理をしてまいりますと、こう申し上げました。
○紙智子君 追い出されることないんですか。実際に今入っている人が絶対出されることないって言えるんですか。
○国務大臣(川崎二郎君) 六年間ありますのでね、しっかりやってまいります。
○紙智子君 もう時間になりましたけれども、やはり、私は本当に所得の格差がこういう生命の格差につながるということは絶対に許されないということを最後に申し上げて、質問を終わります。
○委員長(小野清子君) 以上で紙智子君の質疑は終了いたしました。(拍手)