<第164回国会 2006年3月9日 農林水産委員会 第2号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日はBSEの問題はまた次回にということで、今日は、加工原料乳の問題などについて質問をさしていただきたいと思います。
 それで、農水省は加工原料乳の限度数量二百三万トンへ二万トンの削減ということと、それから補給金据置きということで諮問をいたしました。これまで補給金単価の引下げがずっと連続してきたという中で、ぎりぎりのところに立たされていた生産者にとっては、二万トンといえどもやっぱり限度数量の削減というのは打撃なんですね。
 チーズや生クリーム等の支援ということも言われているんですけれども、チーズ向けの乳価というのは一キロ四十円程度にしかならないんですね。ですから、加工原料乳で得る価格の半分程度といいますか、それかもうちょっとかというぐらいになるわけです。ですから、農家の手取りというのは減少するというのは避けられないことだと、そういう御認識はまずありますか。
○政府参考人(町田勝弘君) 限度数量につきましては、委員御指摘のとおり、二百三万トンということでございます。チーズの価格につきましても大体四十円から五十円程度ということでございますが、今回は特に生クリームを中心に拡大を図っていきたいというふうに考えております。
 生クリームにつきましては、現在、七十円程度の乳価、また発酵乳につきましては更に七十五円程度というふうになっておりますので、直ちに、試算をしたわけではございませんが、すぐに何か所得低下につながるといったようなことではないというふうに考えております。
○紙智子君 農家の、生産者の立場から見ますと、過剰だというふうに言われる。で、過剰在庫の筋道をつくるということで言われるわけですけれども、過剰と言いながらですね、この乳製品のウルグアイ・ラウンドの際に決められたカレントアクセス数量については、毎年、全量を輸入しているわけですね。
 二月一日付けの日本農業新聞、北海道版なんですけれども、ここに農水省の調整官がカレントアクセスの枠としてバターを〇五年度に八千六百トンにしなければならないと。で、まだ八百トンしか輸入していないんだと。だから、残りは〇六年度に持ち越すけれども、それを含めると限度数量は百七十万トンを切る可能性があるんだという、聞く人が聞くと、ちょっと脅されているんじゃないかというような、そういう発言もしているわけです。
 それで、JA北海道は、この生乳生産量を三月の単月で一万トン削減する緊急対策を決めました。それで、〇六年度は事実上、初の減産体制に入ろうと。これは、これまで設備投資を重ねてきた大規模農家にとっても、規模を追わずに放牧主体で環境に配慮をした、そういうマイペース酪農のような経営にも、両方にとっても痛手になるわけです。
 生産者には減産をしてくれといって減産を強いながら、なぜ過剰となっているのにこの指定乳製品のカレントアクセス枠を全量を輸入するのでしょうか。
○国務大臣(中川昭一君) いわゆるカレントアクセスというのは、ウルグアイ・ラウンドのときに関税化したときの約束数量であります。各国いろいろとあるわけでありまして、まあミニマムアクセスとカレントアクセスとも違うわけでございますけれども、ミニマムアクセスは、御承知のように、最低輸入義務量でございますし、カレントアクセスは、今申し上げたように、関税化のときに輸入機会を提供するというものでございます。
 ただし、EUとかアメリカにもカレントアクセスがございますけれども、EU、アメリカ等は輸入国家貿易というものがございません。まあ、あくまでも約束はしておりますけれども、民間が輸入する約束数量であって、したがって年によってばらつきがある。したがって、約束量を達成しないこともあるわけでありますが、日本は国家あるいは国家的企業による約束でございますので、ある意味では国際公約ということになっておりますが、必ずしも義務ではございませんけれども、現実、例えば脱粉が足りなくなると脱粉を余計に輸入するとか、今のように脱粉が余っているときには輸入を抑えるとかいうものでございます。
 あくまでも、これは約束、関税化のときに約束をいたしましたけれども、国家が輸入機会を提供するということで、必ずしもミニマムアクセスのような義務を負っているものではないというふうな御理解をいただきたいというふうに思います。
○紙智子君 せっかく今日、資料を配らせていただいたんで、今、中川大臣がずっと先の方まで話してくださったんですけれども、この表を見ていただくと、米国、EUですね。で、日本のところは、これは換算が生乳換算になっていないんですけれども、この毎年カレントアクセス数量で、日本でいえば十三万トン全量を輸入しているわけです。毎年毎年全量を輸入しているということなんですね。
 今、中川大臣は、EUもアメリカも、この表を見ていただくと分かるんですけど、カレントアクセス数量に照らすと、必ずしもそのとおりやってないんです。で、EUのチーズなんかも相当少ないわけですけれども。こういうふうにやっていて、これは言ってみれば民間貿易だからという話なんですね。
 日本は国家貿易なんだということなんだけれども、しかし中川大臣自身が言われたように、WTOの協定上は、これについてはやはり明文上、その義務とかなんとかという規定はないわけですよね。それは確認してよろしいですか。
○国務大臣(中川昭一君) アクセス機会を提供するということを約束しているということであります。
○紙智子君 そうだとすれば、やっぱり国内で非常に減産という形で大変だと言われて減らされている中で、一方では入ってきているということでありますから、そこはもう少しこの日本の国内の事情に応じてといいますか、他の国がやっぱり国内の事情に応じて必要であれば輸入するけれども、必要でなければ止めておくというようなことで自由にやるわけですから、日本の場合も国家貿易ということでの約束なんだということはあるんだけども、やっぱり国内の実情に照らして、そこは判断することを必要なんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょう。
○国務大臣(中川昭一君) いただいた資料でもありますとおり、先ほど申し上げましたが、脱粉が足りないときには緊急輸入をする、あるいはまたバターでも輸入しないときもあれば、平成十六年のように、十五年ですか、九千三百トン輸入する場合もあるということで、「その時々の需給状況に応じて決定。」といただいた資料にも書いてあるとおりでございます。したがって、あくまでも輸入機会を提供すると、日本の場合には輸入国家貿易であるということでございます。
 私も北海道ですが、申し訳ないんですけれども、その農業新聞読んでおりませんので、その生乳換算百七十万トンのバターを輸入する、百七十万トンになってしまうぐらいにバターを輸入するという記事、読んでおりませんので、畜産部長の方からこの記事については答弁させます。
○政府参考人(町田勝弘君) 申し訳ございません、私もちょっと読んでおりませんので。済みません。
○紙智子君 今非常に大臣は重要な発言をされたと思うんですよ。やっぱり現地の皆さんの感覚からいうと、減産減産で来て、更にまたこの後も減らされるのかということでは、非常に危機感を覚えているわけですよね。
 そういう中で、こういうやっぱり発言をしているというわけですから、そこは是非、実際の明文規定上そういう形でやらなきゃならないということではないわけですから、そこはやっぱり変えるとかですね、それからその脱粉とかでいろいろやるからできると言うんですけれども、しかし国内生産との関係でいえば、十三万トンについてはずっとこれまで言ってみれば満額回答でやってきているんで、ここをもうちょっと、それそのものを減らすということをやらないと、解決しない中身なんですよ。そこはちょっと御検討いただきたいと思います。
○政府参考人(町田勝弘君) 先生から配っていただいた資料にもありますように、「その時々の需給状況に応じて決定。」ということでございます。
 十七年度、残った部分につきましては、もちろん国内需給への影響も最小限にとどめるという観点から、バターだけに限定することはなくて、需要に応じて複数の品目を組み合わせるといったことで弾力的に対応するということでございますので、ちょっと私その記事を読んでいなくて恐縮でございますが、何も全部バターでやるといったことを私どもとして決めたということはございません。
○紙智子君 ちょっと、じゃ、少し読まさせていただくんですけれども。「カレントアクセスも反映させると、状況はさらに厳しくなる。」と。それで、バターで換算した場合、限度数量は二百万トンを切ると、脱粉、粉乳なら百九十万トンを下る計算なんだということをはっきり、まあこれ新聞に書かれているんですけれども、そういう発言していて、それを間違いだということであれば撤回さしていただくとか、そういうふうにしていただきたいと思うんですけれども。
○政府参考人(町田勝弘君) 先ほど申し上げましたように、どういうふうにやるかというのは需給状況、需給に最小限の影響ということで、それがバターでやるとか、脱脂粉乳でやるということを予断を持って言ったような記事であれば、それは間違いであるということでございます。
 ケースとして言ったのかどうか、その辺ちょっとあれなんですけれど、その時点で決めてた、言ったということはございません。
○紙智子君 じゃ、ちょっともう一度確認しますけれども、毎年ですね、毎年十三万トン、まあ十三万七千トンですね、生乳換算ベースで毎年やっているんですけれども、これについて調整するということなんですか。
○政府参考人(町田勝弘君) そこは、毎年十三万七千トンというのは、国家貿易の下で国のみが輸入量、総輸入量を決定してやっているわけでございますので、アクセス機会を提供するということであるとすれば、その当該輸入を行うべきものというふうに考えています。
 ただ、日本でも、例えば飼料用ホエー等がございまして、これは民間企業が輸入しております。これにつきましては、EU、アメリカと同様、必ずしもアクセス数量を満たす輸入は行われておりません。アクセス機会の提供にとどまる場合もあるということで、消化率は半分ぐらいになっているところでございます。
○紙智子君 やっぱり結論のところというのは、十三万七千トンは変えないというふうな方向の結論というか回答だというふうに思うんですね、中で調整するけれども。だけど、それだったら、国内生産に影響しないと言いますけれども、やっぱりするんですよ。そこは、私は検討いただきたいというふうに思います。
 それともう一つ、経営安定対策の問題も一つ質問しておきたいんですけれども、酪肉基本計画で、担い手は認定農業者を基本として、それに準じた一定の要件を満たす経営形態としていると。あわせて、農水省は〇七年度から畜産経営安定対策についても対象経営を明確化するとしていると。現在の加工原料乳生産補給金や肉用子牛の生産補給金などの対象についてどのような要件を課すのでしょうか。
○政府参考人(町田勝弘君) まず、御指摘ございました加工原料乳生産者補給金制度でございますが、これは委員御案内のとおりでございまして、指定団体の下で計画生産に参加する生産者をこの制度の対象とするということで、計画生産の確実な実施と生乳全体の需給の安定を図る、こういう法律を、目的を持っております。正に今計画生産に懸命に取り組んでいただいておりますので、引き続き対象者は現行どおりというふうにしたいというふうに考えております。
 また、肉用子牛生産者補給金制度につきましても、我が国の肉用牛生産の構造、零細な繁殖経営、零細ばかりじゃございませんが、比較的規模の小さい繁殖経営から供給されます素牛を肥育経営が肥育して出荷するという構造でございます。広く肉用子牛の生産者をこの制度の対象とすることで、肉用牛生産の安定が図られております。これにつきましても、引き続き現行どおりの対象者というふうにしたいというふうに考えております。
 法律に基づく二つの制度は以上でございます。
○紙智子君 確認します。現行どおりということで確認してよろしいですね。
○政府参考人(町田勝弘君) ただいま申し上げた二つの制度につきましては現行どおりという方向で考えております。
○紙智子君 じゃ、これで質問を終わります。
 ありがとうございました。