<第163回国会 2005年10月11日 厚生労働委員会 第2号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、自立支援法による一割負担の導入について質問いたします。
   〔資料配付〕

○紙智子君 大臣は無理のない負担だということを繰り返しお話しになっていますけれども、障害者や家族には深刻な負担増になることは避けられません。四日の予算委員会で我が党の小池議員が通所施設そして入所施設の負担がどれだけ過酷なものかということをお話ししたわけですけれども、それだけではありません。グループホームから通所施設に通う場合の負担増についてお聞きします。
 入所施設利用者の場合、最低でも二万五千円が残る仕組みがつくられたと。で、大臣は、これはきめ細かな配慮だというふうにおっしゃっているわけです。同じく生活の場であるこのグループホームに入所をし、授産施設、作業所などに通う場合の減免措置というのは一体どうなるのか。食費や居住費以外の生活費を賄うこの手元金というのを残す仕組みはあるんですか。

○国務大臣(尾辻秀久君) 先日、予算委員会で小池先生に御質問いただきましたときに、個別減免というお話でございましたので、そして私は施設に入所しておられる方というふうに理解しましたので、それについてお答え申し上げたつもりでございます。この個別減免は、施設に入所しておる方の場合と、それから今お話しいただきましたようにグループホームを利用しておられる方の場合、これはまた減免の仕方を分けております。
 まず、施設に入所しておられる方については新たに食費などの御負担をいただくということにいたしましたところですが、施設においては食事というのは自分だけでできるわけじゃありませんで、もうみんなでするわけでございますので、個人が柔軟に変えるというわけにはいかない。そういうこともございますので、再三御説明申し上げておりますように、一定の日常生活費等が手元に残るようにしますということを申し上げております。そして、その額を二万五千円というふうに申し上げているところでございます。これが施設に入所しておられる方の場合でございます。
 一方、グループホームに入っておられる方でございますけれども、グループホームにおられる方というのは従来食費というのは自分で払ってきておられますから、そういう意味では今回新しく制度が変わる、やり方が変わるわけじゃございませんので、そこの部分で手元に残す。そこの部分でといいますのは、食費、居住費を除いた日常生活に掛かる費用として手元に残す額の基準というのは決めていないところでございます。
 ただ、そうは言いましても、変わる方といいますか負担をいただく部分が出てくるわけでございますから、特に生活ができなくなるというようなことがこれはあってはなりませんので、資産が少ないなど負担能力が少ない方については、月額六万六千円までの収入の方は定率負担はゼロとする、それから六万六千円を超える収入がある場合でも超える収入の半額を負担上限額とする、それから特に工賃は気になりますので、その収入が工賃等である場合には負担上限額を更に低い額、すなわち一五%と言っておりますけれども、一五%とするなど、きめ細かな負担軽減措置を講じることにいたしておるところでございます。

○紙智子君 手元に残す仕組みはグループホームの場合はないと、しかし六万六千円と作業工賃の一部が手元に残るというお話されているというふうに思うんですよね。しかし、平均工賃は大体一万に満たないということもなっていますし、グループホームの利用料、特に知的障害者の場合でいいますと平均で五万二千円ですからね。その分と通所施設の食事代、半分だということで五千円と。これを引く、支払を引きますと一体手元に幾ら残ると思いますか。
 ちょっとこの資料をお配りさせていただいているんですけれども、この上の方ですね、上の表を見ていただきたいんです。これは北海道の旭川のグループホームから作業所に通う四十一歳のBさんの場合出していますけれども、六万六千円の年金と工賃五千円の収入があると。作業所が就労継続支援等に移行した場合に個別減免を受けたとしても、このホームの入居費四万五千円と定率負担分、これは計算すると三百円なんですけれども、あと通所施設での食費負担が五千円を支払いますと、手元には二万円余りですよ。ここに二万六百円と書いてありますけれどもね。一日七百円ですよ。こういう形になっていると。
 しかも、このBさんの場合は介護保険料二千円を徴収されるわけですね。さらに、車いすの生活をしていますから交通費もかさむわけです。このほかに医療費それから洋服代、その他の日用品ということで、大体一日六百円程度で賄わなきゃいけないと。すると、今でさえぎりぎりでやっている方からも、言わばむしり取るという形になるわけです。これが大臣が言う無理のない負担の実態なんですよ。
 大臣は無理のない負担だと言うわけだけれども、入所施設の利用者の場合は二万五千円、これを残すと。これしか残らないということなんですけれどもね。で、利用料が徴収されるというのは、小池議員が指摘したとおり生活保護世帯の水準をはるかに下回ると。本当にひどい話だと思うわけですけれども。しかし、それもひどいと思いますけれども、グループホームの入居者の場合はそれすらも保障されないと。これで一体自立した人間らしい生活というふうに言えるのか、生活保護以下の生活を押し付けるようなこんな仕組みがきめ細やかな減免なんていうふうに言えるんですか。いかがですか。

○国務大臣(尾辻秀久君) 今お示しになった数字は実際の数字であろうと思いますから、そのとおりなんだろうと思います。
 二万五千円の根拠について私申し上げましたけれども、生活の実態調査の中で二万一千円というところで頑張っておられる皆さんも、そういう層もあるということを申し上げましたけれども、そうした皆さんの額も見ながら御理解いただける数字でというふうに私ども申し上げておるわけでございまして、改めてそういう数字を申し上げるところでございます。
 ただ、グループホーム利用をしておられる皆さんについては、手元に残る額をこれだけということについて決めておるものではございません。そのことはそのとおりでございます。

○紙智子君 ちょっと私聞いた趣旨と違うお答えで、別に根拠ということはもう既にお話しになっていますけど、これしか残らないような状況で本当にきめ細やかな減免なんというふうに言えるのかというふうにお聞きしたわけですよ。
 この表の中で、次のところは平均的な例ということで出ていますけれども六万六千円、知的障害者グループホームの平均で五万二千円と。作業工賃平均七千三百円と。これで計算しても残金が一万五千五百五十円と。一日五百円程度ですよね。もし親が子供の将来のために、自分の方が先に逝ってしまうんじゃないかと先行きを心配して子供のために貯金を残した場合に、それが例えば三百五十万円以上であれば、これ減免は受けられないわけですよね。そうなると、完全に赤字になるわけですよ。で、生活保護水準以下の生活にまで負担能力を求めるのが自立支援法だと。大臣はこれが無理のない負担だというふうに思われますか。

○国務大臣(尾辻秀久君) 先ほどグループホームについて、グループホームに入居しておられる方々のお話ございましたけれども、これはグループホームに入っておられる方の家賃というのは様々でございますし、また地域差も大きいところでございます。また、家賃補助の状況もいろいろあるといったようなことを考えますと、一律に私どもがその他生活費に関する基準を設けることは困難でありまして、基準を設けていないということは先ほど申し上げたところでございます。
 それから、今、平均的な例ということでお話がございました。これのグループホーム入居費用というのは五万二千円ということでお示しをいただいております。これは、この資料にもありますように、知的障害者福祉協会の調査だというふうに理解をいたします。そうなりますと、確かにこの調査のグループホームへの食費、居住費の平均は五万二千円でございますけれども、同時に、この調査の中で、対象としました調査の中では、今度はこの皆さんの工賃等年金以外の収入が幾らあるかというと六・三万円ということになっておりますから、そういう意味で平均というふうにお出しになるんであれば、やはり障害年金六万六千円とそれからこの調査に出ておりますグループホームの食費、居住費の平均が五万二千円になっておるという、この調査に出ております工賃などの年金以外の収入が六・三万円という、この六・三万円を足して出すというふうに考えるのがいいのじゃないかと思いますけれども、そうなりますと十二万九千円ということにもなります。
 まあデータの出し方、いろいろあろうかと思いますので、今申し上げたところでございます。平均といってもいろんな平均の出し方があるというふうに申し上げたところであります。

○紙智子君 全然答えてないわけですよ。私は、これで無理のない負担だとおっしゃるんですかと言ったら、平均はこうだけどそうじゃない場合もあるとかなんとかということを言いますけれども、そういうことを聞いたんじゃないんですよ。しかも、減免措置は期限付きですよね。個別減免は三年間が限度ですよね。三年もし過ぎてこれがなくなった場合に、例えばさっき言ったBさんの場合はどうなるかというと、定率負担で二万一千五百円に跳ね上がるわけですよ。さらに、通所施設の食費の負担というのは、今五千円ですけども九千二百四十円、これが加わると。完全に赤字なわけですよ。そうなると、グループホームにもいられないし、作業所にも通えないということになってしまうわけですよね。減免の期間を三年間というふうに限定した根拠は何なのかなと思うんですけれども、三年後にもしこの負担が跳び跳ねていったとしても、障害者に対して十分人間らしい生活を保障できるような障害年金の増額ですとか、それからその雇用の保障がされるということなんですか。そこはどうですか。

○国務大臣(尾辻秀久君) まず、先ほどのお答えの中で私が言わんといたしましたことは、平均的な例としてお出しになりましたので、このグループホームの入居費用五万二千円というデータで出すのであれば、これは同じ調査で収入は六・三万円になっておるわけでございますから、年金以外の収入が六・三万円になっておりますので、年金の六・六万円を加えますと十二万九千円になる。そうしますと、手元に残る金額がまた全然違う数字になりますのでということを申し上げたつもりでございます。そういうふうにお答えを申し上げたところでございます。
 そこで、今、今度は三年後のお話でございます。障害者の所得保障は障害者の地域における自立した生活を考える上でこれはもう当然重要な問題と認識をいたしております。さきの衆議院での修正も踏まえて、就労の支援を含めた障害者等の所得の確保に係る施策の在り方については、前回の衆議院の修正もいただいておりますので、そのとおりに検討規定を盛り込んだところでございます。
 その検討するに当たって、例えば障害者の就労や所得の実態、それから障害年金や諸手当などの所得保障制度の体系の在り方、サービスを賄う負担の在り方、就労支援施策や、家族、地域社会との連携など、施策の対象者や仕組み等に係る様々な問題を整理する必要があると考えております。
 そこで、自立支援法の規定の三年後の見直しということで、これは今、前回の衆議院の修正も踏まえて変えましたということでございますので、この規定の三年後の見直しの際に結論を得なければならない、障害者の所得保障ということについては結論を得るというふうにさせていただきたいと存じます。

○紙智子君 結局、検討という話の範囲なわけですよね。所得保障にしたって、一体何年前から言っていることなんですか。これ、政府は一九八一年の国際障害者年のときからずっと所得保障の確立ということを掲げてきているわけじゃないですか。もう二十五年たって実現してないものが三年後で実現できるんですか。結局は、検討すると言うだけで具体的なものは何も示してないじゃないですか。空手形を示して、結局この過酷な負担だけを確実に負わせていくものだというふうに言わざるを得ないですよ。いかなる減免をしようとも、応益負担の仕組みを残したままではいずれは更なる負担増につながるわけです。きめ細かな減免措置講じるというふうに幾ら繰り返しても、無理な負担を強いる本質は変わらないんですよ。
 だから、先日、七日の日の公聴会のときにも批判が相次いだんじゃないですか。恐らく、この公聴会、皆さん行かれて聞かれたと思いますけども、その中で大阪の吹田の知的障害者育成会の事務局長さんの播本さん、公述人の方が、重度の知的障害と自閉症を併せ持つ二十三歳の息子さんの成長、自立の過程をお話しになっていますよね。
 高校生くらいからお母ちゃんから離れたいと伝えるようになったと。で、十九歳のときにやっとこの入所施設に入れることができたと。で、二十三になって予想しなかった成長を見たと言っていますね。それまではすべて母親に頼っていたけれども、今、トイレも自分で始末できるようになった。ぜんそくの発作が起きそうになったら、自分で起きて事務所のドアをたたいて知らせるようになった。いろいろな作業をすることで、僕は大人なんだというようにプライドを持つようになった。彼にとっての自立というのは親から離れて暮らすことだったというふうに言いながら、しかしこの法案が通った場合に利用料の一割負担で本当に大きな負担になると。これ負担できなければ、せっかく自立した生活からまた元の親の依存する生活に戻らなきゃいけないと。だから、この法案というのは自立法じゃなくて自立できない法案と言わざるを得ないということを強調されていたわけですよね。
 この不安というのは、実はいまだに障害者や家族の共通した声なわけですよ。大臣、この声の重さを一体どう受け止めているのか。障害者の社会参加あるいは自立支援に逆行しないというふうに言えるんですか。

○国務大臣(尾辻秀久君) まず、その三年後の障害者の所得保障という際に、これ、こうしたまたすべての検討をいたしますと言っておるわけでございますが、当然そのときに今の減免措置をやめると言っておるわけじゃございませんので、そこのところは御理解いただきたいというふうに思います。やめると言っているわけじゃありませんで、とにかくすべて含めて検討をしますと、結論を得るということを言っておるわけでございます。
 そうした中で、障害者の自立を目指してとにかく前に進んでいかなきゃならない。先ほども御指摘いただきましたけれども、諸外国と、例と比べて、日本の障害者の保健福祉施策がどうなんだろうという御意見もございまして、私どもも、とにかく外国との比較はどうであれ、障害者施策が後れを取ってきたということは認めておるところでありまして、これを何とかこの際にまた少しでも前に進めなきゃいかぬということを考えております。
 そして、そうした中で、いろんなことを申し上げておりますけれども、前に進めるに当たって、本当に障害者の皆さんに無理なといいますか、負担できないような御負担をお願いするということは、これは言ってはならないことだと私どもも思っておりますから、そうした中での減免措置、今話題にもなりましたけれども、いろんなことを考えておるということでございます。

○紙智子君 今、国際的に見ても日本が後れてきたということを認めて、もっと前進しなきゃいけないと、それはそうだと思いますよ。
 で、私はやっぱりこの審議を通じて、今までも出されてきたけれども、だれかが負担しなきゃいけないというお話をされるわけですけれども、それはそうだと思いますよ。だから、今まで応能負担でやってきたんだと思うんですよ。で、すべての人を何も負担ゼロにしろというふうに言っているわけじゃないんですよ。まともな所得保障がないままに、負担能力のない人にまで一律の無理な負担を押し付けないようにしなきゃいけないと、押し付けてはいけないと、やっぱり所得に応じてできる範囲でみんなが負担すると。だったら何で応能負担じゃ駄目なのかということなんですよ。どうですか。

○政府参考人(中村秀一君) 再三お答え申し上げておりますように、一割負担が原則になっておりますけれども、所得に応じまして上限が付いておりますし、施設に入所されている方の場合には更に資産、収入に応じて個別の減免をするということになっております。
 それで、今、先ほど例に出ましたその知的障害の方の場合も年金、無理のない負担の例でございますが、公聴会に出られた方の今の例で申し上げますと、見直し前がもし障害年金二級であれば三万九千八百円であるところが四万一千円ということでありますので、一割負担、定率でありますと八万一千円でありますけれども、四万一千円の上限が付いているということで、上限が付いているということをお答えしているわけでございます。資産や所得に応じて上限が付いており、従来の負担が三万九千八百円の方が四万一千円であったということであり、そういった意味で、私ども無理のない負担だというのは、そういう意味だということを申し上げているわけです。

○紙智子君 もう時間がもったいないので、聞いていないのに立ち上がって答えないでいただきたいと思います。
 大臣の言う無理のない負担の実態というのは結局障害者に最低生活を押し付けるものだと、日常生活や社会生活を営む最低限の支援を受けることは障害者の皆さんにとってはようやっと普通の生活に近づける手段なわけですよね。マイナスからゼロにやっぱり回復していくと、平等を回復する手段なわけですよ。それを利益だといってサービスを多く必要とする重度の人ほど重い負担が強いられるということでは到底これは福祉とは言えないと。ですから、私は応益負担は撤回すべきだということを申し上げたいと思います。
 ちょっと時間がもう過ぎましたので次のところに移りますけれども、共同作業所の問題についてお聞きします。
 この負担増の問題に加えて批判の的になっているのは、制度の根幹にかかわる事項を政省令事項としていることなんですね。肝心な問題が当事者に明らかにされないまま強行されようとしていると。その一つが、新体系に移行する際の具体的要件の問題です。
 現在、障害者の働く場、社会参加の場になっている共同作業所は、この新たな事業体系に移行することになるわけですけれども、その最低定員や工賃など具体的な基準がいまだに明らかにされていないと。だから、作業関係者は、どういう条件を整えれば国が責任を持つ義務的経費の対象事業に移行できるのか分からないと言っているんですよ。小規模通所授産施設、それから小規模作業所の移行が想定される就労継続支援事業の要件はどうなるのか。社会保障審議会の障害者部会で二十人が基本となるという発言があったことから不安の声が上がっているんですね。もし最低定員が二十人ということになったら、無認可の小規模作業所はもちろん、定員が十人から十九人のこの小規模通所授産施設すらも最初から締め出されちゃうと。そうならないようにすべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(中村秀一君) お答え申し上げます。
 就労移行支援、就労継続支援というような事業を設けようとしておりまして、新体系のサービスと申し上げておりますが、この基盤整備を図っていく必要があると思います。
 で、どういうその基盤整備を考えているかということですが、今委員から御指摘がございましたように小規模作業所、これは法定外の施設でございますが、この施設が移行されて新しい事業としてこの障害者自立支援法の事業となる可能性がございます。
 二つ目は、既存の法定施設がそのまま乗り移るということも考えられると思いますし、それから新規の事業者が、全く今まで事業をやっておられない方が参入されると、こういう選択肢が考えられるというふうに思っております。
 今、日中サービス利用されている施設が、約二十七万人が日中サービスで法定施設を利用されております。小規模作業所が、八万四千人の方が小規模作業所におられるというふうに考えております。
 今後、地域で障害福祉計画を作っていただきますが、その地域の障害福祉計画の中でこの就労移行支援、就労継続支援にニーズが満たされるように計画的な整備を進めていくということで、この三つのパターンが、それぞれ地域によって違うとは思いますが、移行していただく、あるいは参入していただく、あるいは法定外施設から法定内施設に移っていただくと、この三つのパターンを考えております。
 具体的な基準については、新しい機能を実現するために職業指導や……

○紙智子君 短めにお願いします。

○政府参考人(中村秀一君) はい、分かりました。
 職員の配置基準、それからサービス管理者、責任者を置くというような基準設定を考えておりまして、このたび十六年十月で全国的なサービスの実施状況も出てまいりましたので、それらの統計も踏まえ、今委員から御指摘のありました、どのような事業基準を作るかという作業に移ってまいりたいと思っております。

○紙智子君 義務的経費の対象となる新事業の基準がどうなるかというのは、作業所のこれからの運営に大変大きな影響があるんですよね。だから、白紙委任できないというふうに言っているわけですよ。法的審議には不可欠の要素だし、これ明示されなければ議論のしようがないことなんです、本来。当事者に具体的な説明しないで、とにかく法案だけは通してもらって後から決めようなんというのはやっぱり駄目なんですよ。
 で、地域活動支援センターの問題でもあるんですけれども、たとえ小規模作業所が基準を満たしても、希望すればすべてが就労継続支援事業のこの義務的経費の対象になる事業に移行できるわけじゃないわけですよね。問題は、この小規模作業所の多くが移行することになる地域活動支援センターというのは、裁量的経費による事業運営になるということですね。で、厚生労働省は市町村が地域に応じて柔軟に運営できるというふうに言うんですけれども、個々の地域活動支援センターにどれだけの助成がされるかというのは結局自治体の裁量に任されると。
 で、作業所の活動が維持できる助成を国の責任で確保できる保障があるのかどうかというのは、これ非常に不安を持っているわけです、当然だと思うんですけれども。予算不足ということになれば、自治体がその裁量で補助金を削るということもこれ可能になるということなんじゃないですか。

○政府参考人(中村秀一君) 地域活動支援センターでございますけれども、これはそこの提供するサービスが、その一定水準の確保が求められますその就労継続支援等個別給付事業とはまた別の事業として、地域の中で多様な活動をしていただくために造る事業でございます。
 今委員から御指摘がございましたように、地域生活支援事業の中で位置付けられ、しかもこの事業につきましては七十七条の一項の四号で必ず市町村が実施しなければならない事業というふうにされておりますので、私どもとしてはコミュニケーション支援や移動支援と並んで非常に大事なもう必須事業と位置付けておりますので、それの活動に支障がないよう予算の確保に最大限努力してまいりたいと思っております。

○紙智子君 予算の確保に最大限の努力というのは、それはいいと思うんですけれども、ただやっぱりそれぞれのところでちゃんとやってもらいたいということなんですけれども。実際上、財政難の自治体は柔軟に助成を増やすというよりも、削るということの不安というのはぬぐえないわけですよ、今厳しいから。現に、私のいる札幌市というのは、三年後には九人以下の作業所の補助金を廃止することを決めているんですね。だから、作業所の関係者の人は北海道も札幌市も単独の補助金はなくしたいんじゃないかと、助成が維持される保証はないんだというふうに訴えているわけです。財政難の自治体に対する不安はやっぱり強いわけですよ。
 同じ障害者の日中の活動を支える不可欠な社会的な資源なのに、何で区別してこれは裁量的経費ってなるのか。私は、地域活動支援センターも義務的経費の対象とすべきだと思いますけれども、いかがですか。

○政府参考人(中村秀一君) お答えを申し上げます。
 今九人以下の小規模施設が単独事業が廃止されるというような動きがあるということでございますが、正に今回の生活支援事業の中の必須事業としたということは、その市の単独事業という位置付けではなく、国の自立支援法の中の法定事業の中の市町村の必須事業とさせていただきましたので、そういった意味では、今、市の単独事業の、その市町村の財政状況により廃止とか縮小のお話がありましたけれども、そういったものの中の防波堤になるものというふうに私どもは考えておりまして、是非ここのところは財源を確保してやってまいりたいと思います。
 なお、今の小規模授産施設につきましては、先ほど来申し上げておりますように、要件満たしましたら就労移行支援事業、就労継続支援事業の移行も可能というふうに考えておりますので、選択肢いろいろあるということでございますので、私どももできるだけ早くそういう選択肢で選んでいただけるように事業内容も明確にしてまいりたいと思っております。

○紙智子君 答えになってないんですけれども、ちょっとその後があるので、これはちょっとまた引き続きやりたいと思いますけれども、もう一つのちょっと重大な問題があるのでお聞きします。作業所が地域活動支援センターに移行した場合の利用者負担の問題です。
 地域活動支援センターの利用者負担は地方自治体の裁量となるわけですよね。負担を求めないことも可能だけれども、一割負担を求めることも、またそれ以上の利用料を徴収することも可能になるわけです。その際、介護的な給付、訓練給付による利用料は上限が設定されるんですけれども、地域活動支援センターの利用料についてはその上限額の算定の対象となるんでしょうか。

○政府参考人(中村秀一君) お答えを申し上げます。
 地域活動支援センターの基準というのは、地域の実情に応じた柔軟な事業展開を可能とする方向で検討しており、利用料の設定をも含め自治体が柔軟な対応をできるようにしたいと考えております。
 先ほど来申し上げておりますように、個別給付でありませんので、要するに上限の設定とか、そういうことは個別の給付の中で定率の負担に対して様々な上限を設定するというようなお話ですが、正にここのところは市町村事業の中で、健診とかそういったところもそうですが、実費を勘案しながら市町村が利用料を設定しているというようなことでございますので、そういった意味での市町村事業の中で市町村が設定する利用料になりますので、言わば個別給付に対します、市町村がそれのアナロジーで設定していただくことも自由だとは思いますが、我々は余りそういうことを想定しているわけではないということでございます。

○紙智子君 結局は、だから市町村がやることで、国からは別にどうもしないという話なわけですよね。
 地域活動支援センターの利用者は負担上限額の別枠で利用料を払わなきゃならないわけですよ。個別減免もないと。ですから、ヘルパーなど個別給付の利用料を払った上で作業所の利用料を払わなきゃいけなくなると。地方自治体が国と同様にこの一割負担と食費負担を決めた場合、これ支払わなきゃいけないと。その額は厚生労働省の資料でも通所施設の利用料で一万四千九百円、食費六百五十円掛ける二十日で一万四千三百円で、二万九千二百円にもなるんですね。だから、移動支援とか日常生活用具を利用すると、その利用料も全部別途掛かるということになるんですよ。だからといって、障害者の皆さんが施設を選べる状況にはないわけです。作業所への通所をあきらめなきゃならないことになりかねないと。きめ細かい負担軽減というんですけれども、こういう事態を本当に回避できるのかということも問われているんですね。
 障害者の皆さんは、やっぱり自分の通っている作業所が地域活動支援センターに移行してしまったらそれだけで負担が更に跳ね上がるということになるわけで、こんな不公平な話ないんですよ。福祉サービスの自己抑制や受給抑制を行わない限り、現行の基礎年金などの所得保障では生活そのものが成り立たないと、自立した生活を困難にしちゃうと、こういう事態でもありますから、是非これは義務的経費とすることを求めておきたいと思います。
 ちょっと時間が迫ったので、もう一つどうしてもやりたいのがありますので、自立支援医療の問題についてお聞きします。
 障害者の公費医療負担制度を改悪をして応益負担、食費の利用料負担を求めることについては様々な患者や家族の団体、医師から受診抑制、医療中断をもたらしかねないと、命にかかわる問題だということで強い批判が出されています。更生医療について、特に全国約二十五万人おられる透析患者の負担増の問題についてお聞きします。
 資料を、もう一つ下の方の表、一覧表を見てほしいんですけれども、現在この透析患者の場合に非課税世帯ならば医療費は無料なわけですね。しかし、法案が通りますと、非課税世帯でも二千五百円ないしは五千円の負担をしなきゃいけないと。所得税の課税世帯、一番税額が低い段階D1ですね、ここでは現在千七百二十円の負担が今度一万円になると。五・八倍になるわけですよ。しかも、入院の場合はもっと大変なんですけれども、入院時の食費負担は非常に重いわけです。
 透析の患者さんというのは急激に症状が変化すると。風邪から肺炎になりやすいとか、状態が不安定なわけですよね。そして、調子が悪いときは早期に入院して治療することが大事なわけですけれども、しかし資料のように大幅に負担がかぶってくるということになると入院をためらう状況になるんじゃないかと。これでは病状を悪化させることにつながるんじゃないでしょうか。この点どうですか。

○政府参考人(中谷比呂樹君) 更生医療を含む公費負担医療制度につきましては、毎年の利用者が増加しておりまして、その費用が増加する、急増する中で、制度の安定性、継続性を確保するために費用を皆で支え合うということをお願いしたいと思っているところでございます。その中でも、所得の低い方や継続的に相当額の医療負担が発生する方など医療費が家計に与える影響が大きい方につきましては、所得に応じた負担の上限額を設定いたしまして、きめ細かく配慮することとしておるところでございます。
 すなわち、原則は医療保険の負担上限額まで一割の負担でございますけれども、その所得の低い方には低い上限額を設定をし、それから所得の低い方以外につきましても継続的に相当額の医療費負担が発生する方、これを重度、継続といたしまして、月当たりの負担額に別途上限を設定をしておるところでございまして、今お示しいただきましたようなことになっておるわけでございます。
 当面は更生、育成医療につきましては、腎機能障害、小腸機能障害、免疫機能障害、それから精神通院医療につきましては統合失調症、躁うつ病、狭義でございますけれども難治性てんかんなどを考え、今専門家が検討中でございます。
 さらに、これに加えまして、疾病などにかかわらず、高額な医療費負担が継続することから対象となる方もおられますので、こういう方も重度かつ継続の中に含めております。
 こういうことで、食事につきましては皆様御負担をいただくということで、このコラムで言いますと右側の「入院」のところになっておりますけれども、御指摘のとおり月当たりの負担の上限も設けておりますので、おおむね無理のない負担の範囲ではなかろうかと思っている次第でございます。

○紙智子君 おおむね無理のない負担だと思っていると言うんですけれども、それは余りにも患者さんの実態を知らないと思いますよ。
 私は、北海道の腎臓病の患者さんの連絡協議会からお話を伺ったんですけれども、負担増の影響というのは本当に深刻なんです。腎臓病の場合、負担の上限は一万円で抑えられるけれども、患者の負担はこれだけじゃ済まないんですね。なぜならば、長期の透析で合併症を発症している患者さんも多いわけです。
 道腎協の調査では、月一万円以上の医療費を払っている人が二二%以上ですよ。その上、地方なんかは通院の交通費が多額になります。二割以上が月一万円以上なんですね。高齢化に伴って合併症、視力障害とか、それから歩行障害とか、公共交通機関を使えない、歩いていって自分でバスに乗ったりできない人も多いわけですよ。そうすると、どうしてもタクシー使うと。だから、交通費が二万円以上になる人も六・一%いるというふうに言っているんですね。これから雪降ってきますけれども、雪の降る季節はもっとかさむわけです。
 透析の患者さんは、週三回、四時間透析のために就労を、やっぱりまとまった時間で働けないというのもありますから就労できずに、低所得者も多いわけです。半数が非課税世帯なんですね。障害のために不可欠な数万円の出費というのは、既にもう患者や家族の生活を圧迫しているわけですよ。新たな負担増でこの上掛かるということになりますと、必要な医療もためらう患者が出ることは避けられないんです。
 透析の患者さんの方からは、かつてそうであったように、金の切れ目が命の切れ目に逆戻りするんじゃないかということで、本当に強い抗議の声が上がっているんですよ。大臣、それなのに大丈夫だというふうにおっしゃるんですか。

○国務大臣(尾辻秀久君) 今、非課税ということでおっしゃいますと、まあ非課税の皆さんに対するまた医療費の減免措置も講じておるわけでございますから、決して非課税の皆さんが一万円になるというわけではございません。私どもとしては、とにかく無理のない御負担をいただこうということでお願いをしておるところでございます。
 先ほどの御質問に対して私がお答え申し上げようと思っておりましたことは、建前としてどうなんだというふうに聞かれますと、私どもはやはり定率負担でお願いしますというふうに申し上げるわけでございますけれども、午前中もお答えいたしましたように、私どもは限りなく応能負担に近づけたというふうに考えております。そうしたやり方の中で、私どもが今回の仕組み考えておりますことだけは申し上げておきたいと存じます。

○紙智子君 限りなく応能負担に近づけたというんだったら、別に変えなくてもいいんじゃないかなと思うわけですけれども。
 この腎臓の方たちは、生きている限り透析の治療は続けなきゃいけないわけです。この過酷な負担が続くことになるわけですね。これ以上の負担に耐えられないと、家族にはやっぱりこれ以上迷惑掛けられないというふうに患者さんの方が言っているわけです。こういう声をきちんと受け止めていただきたいと思うんですね。
 しかも、今、自立支援法の審議のさなかにも別途新たなこの負担増の計画が明らかになって、患者さんの不安が更に増しているんですよ。先日の新聞で、医療保険制度を見直して、この透析患者の長期高額療養費を一万から二万に引き上げるということが報道されました。そうなったら、この透析の患者さんの負担の上限が一気に倍に引き上がってしまうことになるんですね。
 しかも、大変だからこそ、今まで自治体が独自に更生医療に上乗せをして、この障害者の皆さんの負担を軽減をしてきたわけです。そういう自治体が独自の医療費の助成制度を今各地で廃止したり見直したりしているわけです。北海道は昨年十月までこの障害者の医療費は初診料だけであとは掛からなかったんですけれども、しかし、他府県に先駆けて一割負担を導入しちゃったんですね。そのために更生医療がもう最後のとりでだということで悲鳴を上げているわけです。
 厚生労働省は、必要な医療は確保しつつ、費用をみんなで支え合うと言うんですけれども、障害のやっぱり重度化、命の危険をもたらしかねないような、こういう負担増は撤回すべきだと思います。これについて一言を。

○国務大臣(尾辻秀久君) まず、今お話しの冒頭でおっしゃったことについて一言だけ言わせてください。
 それは、限りなく応能負担に近づけたのなら何も変えることないじゃないかというお話でございましたが、私どもは義務的経費にしなきゃいけない、国がきっちり義務的な金として出すべきだというこの仕組みにする、そのために私どもとしてはやはり定率負担ということを、先ほど来申し上げておりますように建前としては言わざるを得なくて言っておりますけれども、ただ実質は限りなく応能負担にしたということを申し上げておるわけでございまして、義務的経費にするためにこのことが必要であるということを改めて申し上げたいと思います。
 それから、今一万円から二万円ということでございますが、これ今、私どもがそういうふうに考えておるわけではないということだけは申し上げたいと思いますし、そのことを検討、行っておるということではないということを明確に申し上げたいと思いますし、とにかく、いずれにしたって、すべてこれは医療費の改革の中での話でありますけれども、能力に応じてというところはここでも当然言われるわけでございますから、無理な御負担をお願いするということは医療費の改革の中でもまた申し上げるつもりはないことも明確にさせておいていただきたいと存じます。

○紙智子君 じゃ、時間になったということなので、最後に一言だけ言わせてもらいますけれども。
 いろいろ議論してきていますけれども、やっぱり応益負担の撤回というのは、障害者や家族、関係者の皆さんの共通した声なんですね。やっぱり、本当にそれに対してきちっとお答えになっていらっしゃらないというふうに思いますよ。本当に障害者自立支援法に対して多くの皆さんは白紙委任しているつもりもないし、しかもこの前の選挙のときにアンケートをやったら、与党の皆さんの中にもこのまま通すということでは駄目で、抜本修正が必要だということが、そう答えた人が三割いたんですよ。それなのにもかかわらず、選挙が終わってから全く修正なしにまた同じものを出してくると。これ自体も本当にひどい話だというふうに思います。撤回を求めて私の質問を終わります。