<第162回国会 2005年4月19日 参議院農林水産委員会 第12号>


平成十七年四月十九日(火曜日)
   午後一時開会

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 本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○水産資源保護法及び持続的養殖生産確保法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 コイヘルペス病の発生を踏まえまして、伝染性疾病を我が国に持ち込ませない対策ということで、遅きに失したとはいえ、輸入防疫強化は当然のことで賛成です。その上に立ってお聞きしますが、まず検疫体制です。
 今回の改正によって輸入許可の審査が大幅に増えることが予測されます。それで、今後はコイの成魚やそれから金魚が全部許可対象になっていくと。今までは年間で十件程度だったのが、現状の輸入水準で考えると二百から三百件くらい輸入許可を審査しなければならなくなるということですね。さらに、隔離管理を行った場合にその立入検査などの業務も発生すると。
 今まで輸入防疫担当というのはわずか一人だというふうに聞いているんですけれども、大臣、これではとても対応できないと思うんですけれども、今後の対策など、どのようにお考えでしょうか。

○政府参考人(中川坦君) 人員についてのお尋ねでございますので、私の方からまずお答えをさせていただきますけれども、今年の十月からでありますけれども、水産防疫を担当いたします職員一名増員をいたすことになっております。こういった点、十分業務が円滑に行われるように努力をしていきたいと思っております。

○国務大臣(島村宜伸君) 御審議いただいております法改正案は、コイヘルペス病の発生などを契機に我が国の水産防疫体制を総点検した結果を踏まえまして、輸入防疫及び国内防疫の強化を図るものであります。
 特に、輸入防疫については、輸入防疫の対象を現行の増養殖用の種苗から、用途、成長段階を問わず広く指定できるよう拡充すること、また、輸出国政府の検査証明書を補完する措置として、輸入許可に当たって輸入後の適切な管理を義務付けることを内容としております。
 こうした対策を適切に実施することにより、海外からの疾病の侵入防止の徹底に努めてまいりたいと考えております。

○紙智子君 最初に局長の方から、今、一人増員が決まっているということなんですけれども、やはり十分な体制がなければ、書面での検査、審査ということで、本当に十分な情報を収集したり、隔離管理とか、効率が上がっていく、実効が上がるというふうになっていかないと思いますから、これは抜本的に強化すべきだということを申し上げておきたいと思います。
 それから次に、岩手の三陸の漁業者の皆さんと実は懇談をしてきた中で出された問題なんですけれども、幾つかお聞きしたいと思います。
 それでまず、安全、安心の問題として、ノロウイルス対策についてなんです。
 まだ十分対策が確立していない分野で、総合的に対策強化が求められている問題なわけですけれども、岩手県ではカキのブランド化推進のために大変努力をされています。県漁連と県で策定した生食用カキのノロウイルス対策指針ということで、それに基づいて出荷期間中、毎週自主検査をやっているというんですね。
 そこで、水産庁のこの養殖水産物ブランド化推進・強化事業、その一環として、その中でノロウイルス対策というところがあって、ノロウイルス対策のモニタリング調査というのも挙げています。としますと、この岩手でやっている自主検査も事業の対象になるんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(田原文夫君) お答えいたします。
 ノロウイルスの問題は、もちろん食中毒の観点からは厚生労働省あるいは衛生当局の問題でございますが、私どもといたしましても、養殖水産物に対します消費者の安全、安心を確保し、ひいては養殖業の振興につながるという観点から、十六年度まではこの養殖水産物ブランド化推進・強化事業ということで、岩手県の場合も、実績といたしましては事業費が七百八十万円ということでモニタリング検査をしておられますが、その半分の助成ということで国費助成をさせてもらっているところでございます。
 十七年度以降は例の強い水産業づくり交付金というふうになりますけれども、その中におきまして引き続き、こうしたブランド化に取り組んでおられる各県の取組は引き続き支援することによりまして、こうした漁協等の取組が円滑に行えるということで我々も支援をしてまいりたいと、かように考えている次第でございます。

○紙智子君 ブランド化促進ということで対象となり得るということだったというふうに思います。
 それで、検査というふうにいいましても難しくて、死んだウイルスも検出されていくと。だから、陽性で出るんだけれども、実際にはそうなのかどうか分からないということですとか、それから、まだ方法が完全じゃない中で、ノロウイルスが発見されたとしても除去の方法がないと。結構検査料も高いということもお聞きしました。それぞれのところの組合員というか、漁業者の人数にもよるんですけれども、一人二万円から五、六万円、人数が少ないところでは五、六万円ぐらいになるということなんですね。
 やっぱり消費者に安全、安心を与えていこうと。三陸のブランドを高めるために、言わば毎週自主的に検査をしているということなんです。漁業者の皆さんのお話では、これだけじゃなくて、このほかに例えば腸炎ビブリオだとか、それからO157だとか大腸菌だとか、貝毒の検査もあると。だから、そういう中でせめて検査費の支援してほしいというのが皆さんの声だったわけです。
 今後、これらの補助金が、お話にもありましたけれども、強い水産業づくりの交付金というふうになって、言わば事業主体の裁量でいろいろやっていくということで拡大されていくということでもあると思うので、県からそのような具体的な要望があれば検討していただけるということでよろしいでしょうか。大臣にお聞きしたいと思うんですけれども。

○国務大臣(島村宜伸君) 養殖水産物に対する消費者の安全、安心を確保するためには、このノロウイルス対策を適切に講じていく必要があります。
 このため、都道府県や漁協が行うノロウイルスの検査に対しましては助成を行っているところでありますが、今後とも、厚生労働省と連携してノロウイルス対策に努めてまいる考えであります。
   〔委員長退席、理事岩永浩美君着席〕
 実は、私は生ガキが大好きで、もう朝昼晩で結構な男なんで、是非この対策を進めたいと。別に私的なことを盛り込む気はありませんが、考えております。

○紙智子君 ありがとうございます。
 それじゃ、それに関連して、北海道のカキの貝毒の問題についてお聞きしたいと思うんです。
 貝毒問題が今出ているんですけれども、食の安全・安心確保交付金という中に貝毒安全対策の推進というのがあります。それで、全道的には検査体制の強化を行う方針なんですけれども、この交付金はこれらの支援の対象にはなりますでしょうか。これについて、消費・安全局長。

○政府参考人(中川坦君) この食の安全・安心確保交付金、都道府県が行います各種の安全対策につきまして国が支援を行うという目的で設けられております。貝毒の安全対策につきましても、道の方で実施計画を作られて検査を実施をするという場合につきましては、その支援の対象にはなるということでございます。

○紙智子君 それじゃ次に、もう一度三陸の方に戻るんですけれども、漁場の環境を良くするために様々な努力がされているんですね。漁業者の皆さんが参加をして植樹などの環境保全活動が行われています。
 先日、私が行ったところなんですけれども、三陸の山田町ですね。ここは町有林に植林をしています。ところが、町の八割は国有林なんですね。広葉樹の植林を森林監督署の施業としてやってほしいんだと。荒れているところも結構多いという話で要望が出されているんですね。漁業者が参加をして行う植林などの活動などは、県庁の資料で見ますと、十六年度で十一か所あります。一年間でこれだけやっているわけですね。
   〔理事岩永浩美君退席、委員長着席〕
 国有林はこの五年間で実際何か所広葉樹の植林を直接やっておられるのか。ただし、分収造林という形で住民の負担でやる事業ということではなくて、国有林自身の施業ということでやっている分についてお聞きしたいと思います。

○政府参考人(前田直登君) 御案内のように、国有林の管理経営に当たりましては、公益機能の維持増進、こういったものを旨といたします経営方針の下で公益機能の発揮を図っていく、向上を図っていくという観点で、適地適木、こういった考え方に立ちまして、立地条件に応じて長伐期施業ですとか、あるいは複層林の整備あるいは針葉樹と広葉樹との混交林、こういった施業を進めているところでございます。
 今お話がございました三陸地方におきましても、このような観点から多様な森林整備の推進に努めているところでございますけれども、広葉樹につきましては、実は天然力を活用した天然林施業、こういったことを中心にその育成に努めているところでございまして、また一方では、人工造林におきましては、今お話ありましたけれども、分収造林、これを主体に広葉樹の植栽を行っているところでございます。
 これらの広葉樹の育成につきまして、平成十一年度から十五年度までの実績を見ますと、天然林施業によるものが三百七十五ヘクタール、植栽によるものが四十一件の七十六ヘクタール、このうち国有林自らが植栽といったものにつきましては一件で、約三ヘクタールでございます。

○紙智子君 一件というふうにおっしゃって、ちょっとこれは、じゃやっていないと同じじゃないかなというふうにも思うわけですけれども、これを、じゃ抜本的に拡大するつもりはありますか。

○政府参考人(前田直登君) 今申し上げましたように、広葉樹の場合、どちらかといいますと、技術的な面からいきますと、天然更新あるいは天然林施業、そういった形をやっていくのが非常に技術的には適当であるというようなこともございましてこの天然林施業を中心にやっているというような状況でございます。
 今後の予定でございますけれども、平成十七年四月一日現在におきます五年間の国有林施業実施計画、こういったものを作りながらやっているわけでありますけれども、その中では、これらの天然林施業によるものが百七十四ヘクタール、人工造林におきましては分収造林を主体に考えているわけではございますけれども、まあトータルといたしまして国自らがやるもの、そういったものも含めまして約九ヘクタール、これは、分収造林の場合にはなかなかその見通しが不確定であるというようなこともございまして、九ヘクタール、これを予定しているところでございます。
 今後とも、こういった広葉樹につきましては、地域の要望等も踏まえながら、実施段階におきましてもまたその育成に積極的に取り組んでいきたいというように考えている次第でございます。

○紙智子君 広葉樹については、ほうっておいても自然に出てくるというふうな考えではやっぱり駄目だと思うんですよね。本当に公益的な機能を重視するというのであれば、漁民の皆さんはずっと植えてきているわけですから、植栽を含めて、保育や管理を含めて、広葉樹を積極的に増やしていっていただきたいというふうに思います。
 最後にもう一問だけお聞きしたいと思います。
 輸入防疫疾病の指定拡大の問題なんですが、第五回水産防疫体制に関する専門家会議の資料で具体的な疾病名を挙げています。そして、二枚貝の問題では、我が国への貝類への影響については知見が少ないとして、研究体制の整備、知見の集積を図る必要があるというふうに書いています。北海道からも二枚貝類種苗の輸入管理体制及び国内防疫制度の早期確立が要望されているんですけれども、このコイヘルペスウイルスは、二〇〇〇年に発見されていたんだけれども、なかなか、この対象疾病に加えるのが遅れたと、二〇〇三年七月ですか。ということの理由の一つに、その検出方法の確立などの研究の遅れもあったということも聞いているわけです。
 やっぱり、今からカキやホタテなどの二枚貝の疾病の侵入を許さないというための指定を目指して、国として行政が必要とする重要なプロジェクト研究として位置付けて進めるべきではないかというふうに思いますけれども、最後、これお願いいたします。

○政府参考人(中川坦君) 二枚貝などの貝類につきましては、我が国ではこれまでに食用貝類の重大な疾病というものの例が非常に少なかったということもございまして、疾病に関します知見の蓄積が少ないというのが実情でございます。
 今、先生引用されましたこの専門家会議におきましても、確かに欧米ではカキの養殖におきまして重大な被害を及ぼす疾病というのは多数指定をされているわけですが、我が国においてはそういった事例もこれまで少なかったということで確かに知見の蓄積が少ないというのが事実でございまして、海外におきます発生状況、あるいは我が国の水産防疫に関するリスク等に関しましてこれから知見の収集に努めていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 終わります。