<第162回国会 2005年3月29日 参議院農林水産委員会 第6号>


平成十七年三月二十九日(火曜日)
   午前十時開会

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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○国の補助金等の整理及び合理化等に伴う農業近代化資金助成法等の一部を改正する等の法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 昨年の農協法の改正で全中が農協への指導方針を定めることが決まって、三月四日に発表をされました。その基本方針について一、二伺いたいと思います。
 まず、合併の推進を挙げているんですが、その重点は小規模未合併農協となっています。これは経営が不振なJAの早期合併ということで、その経営状況を考慮しないで、とにかく小規模なら十把一からげに合併を指導するということではありませんね、確認をしたいと思います。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 全中が作りました基本方針、農協の合併推進ということでございます。
 四月一日からペイオフの全面解禁ということでございまして、基盤を強化しないといけない、それから何よりも組合員農家への便益、サービス供与に遺憾なきを期さなくてはいけないと、こういうことで、基本的には県域での農協合併構想の完遂と、こういうことを基本として、未合併農協の早期合併を実現することが基本でございます。その中で、特に小規模で未合併、経営不振農協の早期解消に取り組むと、重点的にそういう小規模経営不振農協の早期解消に取り組むという重点指導事項が示されているというふうに理解しております。
○紙智子君 機械的、強制的にやるものではないというふうに理解をしてよろしいと思います。
 それで、実施方法の項の中になお書きで、出資金五億円以上を原則とするとあります。現在、出資金五億円以下のところというのはかなりありますね、三分の一が五億円以下だと思います。これらに指導が掛かることになると。しかし、法律では一億円となっているわけですから、これはあくまでも指導であって強制ではないと。まして、このJAバンク基本方針で言っているペナルティーにつながるものではありませんよね、これも確認したいと思います。
○政府参考人(須賀田菊仁君) おっしゃるように、現在、法律では信用事業を行う農協の最低出資金は一億円となっております。全中のこの基本方針といいますのは、言わば備えあれば憂いなしという考え方に基づきまして自主的な目標基準として五億円というふうに定めまして、その目標基準未達の農協の解消を目指して財務基盤を強化したいというものでございます。
 おっしゃいますように、これに到達していない、五億円に到達していない農協の独自性とか自主性を損なうというようなものにはならないというふうに考えておりますけども、よく農協の方でも今後の厳しい情勢を考えていただいて、やはり自ら作った自主ルールに即した行動を取るということが望まれるものというふうに考えております。
○紙智子君 小規模ながら健全な経営を行っている多くの農協がこの出資金の積み増しを要求されると、これを心配する声が出ているんですね。
 静岡の例えば小規模農協の組合長さんがおっしゃっていますが、戦後開拓の苦しみをともにした同志的連帯感を大切に、顔の見えるつながりという小規模農協の利点を活かして組合員本意の運営に努力してきたと。で、正組合員で三百人弱、準組合員で四百二十人。経常利益でいうと毎年二千五百から三千万円、それから当期の利益で千七百万から二千万弱と計上しているわけです。販売では、契約栽培や産直、それから土の市とかトウモロコシ狩りとか、市民との連携も強めているわけです。購買事業の手数料は全国平均よりも三分の一安いわけです。信用部門では自己資本比率は三一・五%ということで、県下の平均の一七・五%をはるかに上回っていると。不良債権の比率も全国平均よりも低いわけです。農協が適正な規模で、人的なつながりが密接に保たれて、この民主的な運営に心を砕いているからこそ健全な経営ができるんだと。まあ、足腰が強いというのはそういうことじゃないかということですね。
 しかし、今度の出資金の五億円については、これクリアするというのはなかなか、まず難しいということも出されているわけです。
 大臣にお聞きしたいんですけれども、これらの小規模で健全な経営を維持して頑張っている農協の努力、これをどのように評価しておられるのでしょうか。そしてまた、このようなところに対して過大な出資金の積み増しなどを強要して逆に経営を窮地に追い込むことにならないように、今回の基本方針の運用がされるように留意することが大事じゃないかなと思うんですけれども、大臣の御意見をお願いします。
○国務大臣(島村宜伸君) お答えいたします。
 農協は農家の相互扶助を目的とする共同組織でありまして、農家に対する各種のサービスの提供を使命とするものであることは御高承のとおりであります。
 今後、農協がこの使命を全うしていくためには財務基盤をしっかり強化していく必要があることは、ペイオフを控えまして、御理解いただけると思いますが、このたびの全中の作成した基本方針はこのような考え方に立脚して、系統自らの自主ルールとして原則出資金五億円未満の農協の解消を進めようとするものと言わば理解しております。
 したがいまして、小規模ながら、言わば健全に事業を行っている農協の独自性や自主性に配慮しつつ、この基本方針の下で農家に対するサービス機能が強化されることが望ましいと考えております。
 いずれにいたしましても、これからやはり、農協に所属する言わば農家自身が安心してこれからの言わば経営が行えるということになれば、当然やはりこの財務基盤をしっかりするということは求められるところでございますので、私どもはそのように受け止めているところであります。
○紙智子君 それでは、漁業の問題ですけれども、漁業の金融問題について御質問いたします。
 昨年、これ質問した問題でもありますけれども、漁業の無担保無保証制度の問題で、今回の中小漁業関連資金融通円滑化事業について、大臣も改善の努力をするというふうに言われているわけですけれども、どのような改善策を打っているのか。それによる、来年度、各県にどれぐらい広がると見込んでいるのか。今実績は六県程度ですけれども、都道府県、市町村などの財政が厳しい中でこの制度の活用にどのような努力をするのかということについてお答え願います。
○政府参考人(田原文夫君) お答え申し上げます。
 漁業経営を取り巻く環境は厳しいということで、先ほど来申し上げておりますけれども、意欲を持って経営改善に取り組まれます漁業者の方々に対しまして、ただいま御指摘の中小漁業関連資金融通円滑化事業、いわゆる無担保無保証人保証制度ということで、平成十五年度からこの事業の実施をさせてもらっているところでございます。
 現在までの実績でございますが、六都道府県ということでございまして、保証引受け件数にしますと三百件強という状況でございまして、まだまだなかなか各県の取組状況が遅いということで、平成十七年度におきます改善点でございますが、これまでこの求償権の償却引当金、国それから都道府県それから基金協会、これが三分の一ずつ持つということになっておりましたけれども、県がなかなか対応できないということで、都道府県の負担の弾力化ということで、市町村ですとか漁業者団体、こういったところが都道府県の負担を一部肩代わりできるような仕組みにしたいということで改善をさせてもらっているところでございまして、私どもといたしましては、今まで、各都道府県あるいは漁業者の団体、こういったところへ説明会の開催等やっておりまして、まずは周知に努めているところでございます。
 これでどの程度の県に広がっていくかという点は、今そういったところに取り組んでいるばかりでございますし、私どもといたしましては、こうした実施件数が増えてまいりまして、本当に経営改善の意欲があるような漁業者の方々にこうした保証制度が行き渡るようにということで努力してまいりたいと、かように考えている次第でございます。
○紙智子君 県や市町村も財政状況厳しい中で、やはり国の補助率の引上げを是非入れるべきだということを最後に申し上げまして、質問を終わります。
○委員長(中川義雄君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う農業近代化資金助成法等の一部を改正する等の法律案に反対の討論をいたします。
 農業近代化資金及び漁業近代化資金は、ともに施設資金として農業者と漁業者の経営を直接支援する融資制度の柱であり、国が食料政策に責任を果たす上で重要な制度資金の一つです。この施設資金は、国が利子補給を行う低利資金と位置付けられ、機能してきたものであります。こうした制度資金の中核的機能である利子補給事業を事実上地方任せにするということは、国の食料供給に対する責任の後退につながるものと言わざるを得ません。現に、農業関係者や漁業関係者からは、新規融資抑制にならなければいいがと懸念が表明されております。
 以上の点から、賛成できないことを表明し、反対討論とします。