<第162回国会 2005年3月18日 参議院農林水産委員会 第4号>


平成十七年三月十八日(金曜日)
   午後一時開会

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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○平成十七年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成十七年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成十七年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について
 (農林水産省所管及び農林漁業金融公庫)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず初めに、BSEの問題についてお聞きします。
 食品安全委員会による国内措置に関する検討が続いているにもかかわらず、アメリカ産牛肉の安全性評価を食品安全委員会に諮問する際は検討期間のめどを指定して諮問することを検討しているような報道がされているんですが、こういう事実はありますか。
○国務大臣(島村宜伸君) 私もそのような報道があったことは承知いたしておりますが、私なりに調べてみましたところでは、そういう事実は今まで全くございません。まあ恐らく推測記事なんだろうと思いますが、そのことをまず申し上げたいと思います。
 また、米国産牛肉の輸入再開につきましては、従前どおり、科学的知見に基づき、消費者の食の安全、安心の確保を大前提に、必要な手続を着実に進めていくこととしております。
 また、食品安全委員会はリスク管理を担当する農林水産省や厚生労働省からは独立しまして、言わば科学的知見に基づきリスク評価を行うという立場にあるわけでありますから、あらかじめ答申時期を区切って諮問することは適当でないと私は考えております。
○紙智子君 もう一つ確認したいんですけれども、今日の読売新聞なんですね。ここでは、食品安全委員会の審議期間を短縮するために諮問項目を絞り込む方針を固めて、来日するライス米国務長官に説明する方針だと報道されているんですけれども、これ事実ですか。
○国務大臣(島村宜伸君) それは聞いたことがございません。
○紙智子君 記事の方がこれは違うと、事実じゃないということですね。
○国務大臣(島村宜伸君) もしそれが本当に事実の形で進むならば、当然私には事前から御相談がある、こう思います。
○紙智子君 事実ではないということで確認してよろしいですかね。──はい。
 この問題も非常に重要な、重大な問題だというふうに思っています。この間の議論の経過を経てもそうだと思います。
 それで、早期再開先にありきという形でやはりこの食品安全委員会の結論を急がせるということは、これは許されないことだと思うんです。
 米国産牛肉の評価を進めるためには米国の汚染状況やそれから飼料規制の問題など全面的な評価が必要になってくるわけで、この二十か月齢以下の牛を肉質で判断するということもこれ科学的な知見に基づかないもので、やっぱり安全性に対する評価、ここのところが必要なわけです。アメリカの会計検査院が再度このアメリカのBSE対策について、国内の対策について、飼料規制に欠陥が続いているということを指摘していることが明らかになっているわけですから、当然このような新たな事実も踏まえた検討が必要になってくると。
 プリオン専門調査会の吉川座長はインタビューなどにも答えて、新聞に載っていますけれども、分析を進める中で必要な情報がたくさん出てくる、米国のリスク評価では米国がデータや資料提示ができるかどうかというのが最大の課題だというふうに語っているわけです。アメリカがどれだけ必要なデータ提示に応じるかと。月齢判定の追加的検証を日本側からも要求したわけですけれども拒否していることに見られるように、疑問の声も上がっているわけです。そうなりますと評価の作業というのは進まないことになっていくと。
 昨日私、予算委員会で小泉総理に質問したわけですけれども、食の安全の問題なんだと、だから政治的ではなくて科学的判断でその決着付けていくというか、そういうことを答弁されていましたけれども、やっぱり科学的検討を行う食品安全委員会の諮問に検討期間や検討内容に縛りを掛けるようなことがあってはならないというふうに思っているんですけれども、その点、同じ意見ということでよろしいですか。
○国務大臣(島村宜伸君) 私もそう考えておりますし、今まではそういうことで来ていると、こんなふうに思います。
○紙智子君 じゃ、次に移ります。ビートの生産についてです。ビートの生産努力目標について。
 ビートの生産は北海道の畑作の輪作体系を維持するためには本当に不可欠なものです。しかし、今度の新たな食料・農業・農村基本計画によりますと、一五年度までの生産努力目標というのは二〇〇三年度の実績よりも五十万トン少ない三百六十六万トンとなっています。これでは北海道のビートの作付面積は二千ヘクタール減ることになるんですね。これではやっぱり適正な輪作体系の維持が困難になるんじゃないかということで、生産者にも大変大きな衝撃を与えているんです。
 やはり自給率を引き上げるというふうに言いながら、なぜこの生産努力目標の引下げになるのかということについて、まずお答え願います。
○政府参考人(白須敏朗君) ただいまのてん菜の生産努力目標の関係でございます。
 この基準となりました平成十五年度のてん菜につきましては、委員も御案内のとおり、大変に気象条件に恵まれたときでございまして、単収は平年で十アール当たり五・六トンでございましたんですが、一割増の六・一トン、あるいはてん菜の生産量は四百十六万トン、また歩留りも一七・九%といったようなことで、要すれば、通常でございますればてん菜糖換算でいきますと大体六十万トンの中ごろが標準なてん菜糖の取れ高なんでございますが、その十五年度は七十四万トンといったことでございまして、史上まれに見る豊作であったわけでございます。
 一方、ただいま委員からもお話ございました、生産努力目標として私ども考えております平成二十七年でございますが、これ、規模で、北海道畑作農業の経営規模を見てみますと、当然のことながら拡大をするというふうに想定をされておりまして、十勝でいいますと現在の約三十五ヘクタールから約五十ヘクタールへということで一・四倍程度拡大するというふうに見込まれているわけでございますが、委員も御案内のとおり、三月から四月の時期は、てん菜はもちろん播種あるいは移植でございます。他方、同時に春小麦の播種でございますとかあるいは芋の植付けといったようなことで、いわゆる春作業の競合が起こるわけでございますので、現在の技術体系をもっていたしますと、一戸当たりの経営面積は畑作農業三十ヘクタールから四十ヘクタールが限界というふうに言われているわけでございます。
 そういう中で、委員も御指摘のとおり、やはり輪作体系、これを維持していくということがもう最大の課題でございますので、そういう中で輪作体系を維持しながらてん菜を作付けしていくといいますためには何といいましても省力化が絶対的に必要であろうというように考えているわけでございます。
 現在のところは、御案内のとおり、ポット苗によります栽培体系が一般化しておりますが、これではやはりコストも掛かりますし労働時間も掛かるということでございます。したがいまして、今回の生産努力目標の策定に当たりましては、その省力化という観点から、直播栽培というものの普及を相当程度見込みまして、てん菜の生産量を三百六十六万トン、てん菜糖の換算としては六十四万トンといったようなことで算定をいたしたというところでございます。
○紙智子君 一つには豊作、非常にまれに見る豊作だったということを言われたんですけれども、ビートは豊作のとき、凶作のときで物すごく幅があるんですよね。面積を減らしますと、凶作の場合は、今まででさえも国産の需要を圧迫してきたわけですけれども、輸入調製品などが増えて定着をしてきていると。そうすると、国産糖に置き換わってしまう可能性もこれ否定できないことになるわけですね。影響なしというふうには言えないわけですよ。
 それから、今、直播、直まきですよね。直播栽培にすればもっと手間も掛からないだろうという話なんですけれども、そんな簡単な話じゃないですよ、現場では。元々は直播だったんですよね。だけれども、やっぱり寒いところで、気候的にも直播でやれば被害を受けやすいということで、ハウスを造ったりして施設や機械の装備に本当にお金掛けて投資して、移植栽培に移行して品質も向上させていくということでやってきた経緯があるわけです。だから、今更また直播に戻せということを言われても困るというのが、生産現場ではもう逆戻りというのは難しいんだという声もあるんですね。
 ですから、やはり豊作と言っているんだけれども、三年続いてきたわけです。つまり、これは何を示すかというと、条件が良ければ北海道にはそれだけの生産する力があるということの裏返しなわけで、それをやっぱり引き下げる目標を掲げるというのは、これ生産力を縮小しろと言っているのと同じじゃないかというふうに思うんですね。本来、生産されたビートというのは全量この最低生産者価格ということで買い取らなきゃいけないことになっていると。しかし、自主的な取組だという形で、この間、豊作になった分については最低生産者価格での買取りの対象にしないで、二割とかということで対象から外して生産者がトン当たりで千円も拠出すると、自分たちでお金千円出すと、こういうふうな形でやってきているわけです。生産者から見れば、これペナルティーだという言い方してるんですけれども。
 生産努力の目標の三百六十六万トンが事実上このビート生産の上限になってしまって、今後、恒常的にこれ以上は買い取らないと。ペナルティーの対象になってしまうんじゃないかと、こういう不安の声もずっと出ているんですけれども、いかがですか。
○政府参考人(白須敏朗君) ただいまの委員のお話でございますが、やはりこれから北海道畑作農業、規模が当然のことながら拡大していくだろう、これは想定がされることであろうというふうに考えているわけでございます。
 そういう中で、私どもやはり何としても省力化が必要であるというふうなことでございまして、今も委員のお話のとおり、やはりそうなりますと直播栽培というのが当然考えられるわけでございますが、確かに単収は一割強低いというふうなデメリットがあるわけでございます。ただ他方、移植に係る作業も省ける、あるいはまた労働時間が約半分に短縮するといったようなことでございまして、ですから全体としてそのコスト低減が非常に可能であるということでございますので、さらに加えましてその技術開発も行われまして、直播でありながらいわゆる狭畦栽培といったようなことで、一種の密植栽培でございますが、こういうことで行いますと、通常の直播の単収よりも更に一割程度向上させるというふうなことも可能であるというふうなことになってまいったわけでございます。
 したがいまして、今、委員のお話しのように、一方的な所得の減ということではございませんで、私どもとしてはこの規模が大きくなった、大きくなる中でこの輪作体系を維持しながら農家所得の確保も十分に可能であろうというふうに考えているわけでございます。
 この生産努力目標というものは、今、委員からもお話ございましたが、私どもとしてはやはり農家所得をも考慮いたしました望ましい生産規模を示すということでございまして、ただこれは、要すれば平成二十七年の目標といたします生産の努力目標ということでございまして、委員もお話ございましたとおり、この生産自体を、来年以降の生産自体を何ら規制するということではございません。
 それと、今、委員からお話ございました、生産者の方々が豊作の過程におきましてそれぞれ拠出をされましてその一部財源に充てられたというふうなお話でございます。これは、この生産努力目標とはまた別の問題だというふうに私どもは理解をいたしておりまして、それはこの現在におけます糖価調整制度という制度を、やはり生産者としてもその制度の在り方をしっかり自ら守っていこうというふうな、私どもはそれは大変高く評価するわけでございますが、生産者の皆さん方の努力の表れだというふうなことでございまして、そのこととこの現在の生産努力目標の策定ということは、私どもとしては別の問題であるというふうに理解をいたしておるところでございます。
○紙智子君 これまでの議論を踏まえた課題と検討の方向っていう、この砂糖・甘味資源作物関係のこの資料がありますけれども、この中で、検討会の中で砂糖分科会が示した検討方向で言っていることは、財政負担を軽減することが必要だと。で、国産糖の供給量が適正規模を超える場合には、政策支援の上限設定を行うことが必要だというふうに言っているわけですよ。ビートの適正規模が最大でも三百六十六万トンだということになると、生産縮小に追い込まれかねない問題だというように思うんですね。
 先ほども言いましたけれども、生産者は余剰分だということでトン当たり千円の拠出を行っているわけです。これは農家の規模にもよるんですけど大体農家一戸当たり五十万とか六十万なんですよ。それだけのお金を出してやらなきゃいけないと。豊作だといってこれだけの重い負担が強いられるということになると、生産意欲どころじゃなくなるんですね。
 食料・農業・農村基本計画では、この国内生産の増大を図ることを基本とするというふうにしているわけです。新たな基本計画の案でも、食料自給率の向上は生産面では国内の農業生産の持てる力の最大限の発揮を前提にすると、こんなふうにも言っているわけですね。
 じゃ、持てる力を最大限発揮したと、頑張ってやったところがペナルティーの対象になってしまって、更に今度出さなきゃいけないということになったら、これあべこべじゃないかというふうに思うんですよ。自給率向上というのであれば、やっぱりこの砂糖の自給率をまず引き上げるべきだというふうに思いますよ。いかがですか。
○政府参考人(白須敏朗君) 先ほど申し上げましたように、十五年、非常に史上まれに見る豊作だというふうなことでございまして、そのときは自給率三五%だったわけでございます。
 私どもが二十七年の目標といたしております自給率三四%というふうなことでございまして、そこのところは、ただいま申し上げましたような史上まれに見る豊作ということを除きました平年の大体収量というふうなことになりますと、自給率としては三四%というのは私どもとしては適正なところだというふうに理解をいたしているわけでございます。
 それと、ただいま委員からもお話ございましたお挙げになりました資料は、ちょっと私あれでございますが、多分それは現在、砂糖の、それぞれ在り方について、それぞれ生産者の方々あるいは消費者の方々、それぞれ学識経験者、お集まりいただきまして、将来のその制度の在り方について検討会を行っているわけでございますが、その検討会の議論の過程のお話であろうかなというふうに思うわけでございますが、この砂糖の制度というのは、もう御案内のとおり、これはやはり相当な内外価格差があるわけでございます。その高い国産のお砂糖を、やはりそれを、外から入れてきます粗糖を国内で精製いたしまして、それをまた同じ価格にいたしまして消費者に提供しておるというふうなことで、大まかに言いまして、大体その国産の自給率、大体三分の一だというふうに御理解をいただきたいわけでございますが、そこのところを調整金という形で消費者の方に御負担をいただいておる、それと国からも交付金を出しておるというふうなことで、この高い国産のお砂糖を輸入しておる粗糖からできる精製糖と同じ値段にして消費者の方に提供しておると、こういうふうな制度、仕組みになっているわけでございます。
 したがいまして、私ども一概に消費者の負担を高くする中で、幾ら生産してもこの消費者が負担してくれればいいということにはこれはなかなかならないわけでございまして、やはりそこのところはコストを削減しながら消費者にも適正な価格で提供していくという生産者としても安定供給の義務があろうかというふうに考えているわけでございます。
 したがいまして、そこのところはやはりこの制度の負担の私どもはバランスが大変必要だろうというふうなことでございますので、そこの生産者、消費者そしてまた精製糖あるいは国産糖と、それぞれの皆様方がそれぞれ御負担をいただきながら消費者に対する安定供給ということでございますので、そこの点はひとつ今後とも更に検討を進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
○紙智子君 消費者にすごく負担を掛けるというようなことを何か印象付くような話をされるんですけれども、そうじゃないんですよね。豊作になってすぐ超えるような数字が、これ自給率の向上目標というふうには言えないというように思います。
 砂糖は国際的に見ても酪農と並んで最も各国で手厚く保護されている部門だと思うんですよ。本当に砂糖を御飯のように食べる人はいないんだけれども、しかしなければ困ると、糖分というのは。これはやっぱり水や塩と同じように、なければ困るということで、各国が安全保障の問題としても位置付けている問題ですよ。欧米を含めて各国が保護政策を取っているんですね。国内のこの砂糖の需要を圧迫しているのが実は輸入の加糖調製品です。国内の砂糖需要が減少しているにもかかわらず、関税の低い、糖分の含有率が八五%ですね、これ以下の調製品の輸入が増え続けてきているわけですよ、一方で。この対策は長年求めてきているのにいまだ抜本的な対策が打たれていないと。
 そういう抜本的な対策を、この加糖調製品の対策をやっぱり打つ必要があるし、そもそもこの加糖調製品の問題というのは、九八年までは輸入数量の制限を行ってきたわけです。ところが、アメリカからガットに提訴されてこの輸入数量制限廃止に追い込まれて、八五%以下の含有率の、含糖率ですね、糖の含まれている率の調製品は低関税にさせられたというのが原因ですよ。ところが、その実際に提訴してきたアメリカはどうかというと、この糖の含む含糖率ですね、これ六五%以上で線を引いて調製品の輸入を規制しているんですよ。日本に対しては八五%じゃなきゃ駄目だと、しかし自分の国はそうやって守るということでやってきているわけで、これに対してやっぱり毅然として日本は国内対策でしっかり対策を取るべきだということを申し上げまして、ちょっと時間になりましたので終わります。