<第162回国会 2005年3月17日 参議院予算委員会 第13号>


平成十七年三月十七日(木曜日)
   午前九時開会

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本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○平成十七年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)
○平成十七年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)
○平成十七年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 ライス国務長官が来られるようですけれども、今、日米間で牛肉の輸入再開、この問題が大きな問題になっています。国民みんな不安に思っています。先日のNHKの世論調査でも、八四%の人が安全性を重視するためには専門家の議論がまとまるのを待つべきだというふうに答えています。圧倒的な人がやっぱり安全第一と、慎重にというふうに思っていると思うんです。
 元々、BSEについて言いますと、ヨーロッパで発症して、発生国から輸入規制のそういう措置をとってきました。一昨年の十二月にアメリカで発生をすると、当然のことながらこれに対する輸入禁止の措置をとって、今日も韓国、ロシアを含めて四十か国もの国がこの禁止措置をとってきているわけです。アメリカは、日本に対してこの輸入再開をしたいということであれば、日本と同じように全頭検査をやればいいと。ところが、それは拒否して、そうじゃなしに、あれだけ議論してつくってきた日本の国内措置を無理やり変えようとしていると。こういう事態に対して総理はどのような態度で臨むおつもりでしょうか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 日本としては、安全な牛肉を食べたいという国民の気持ちがあります。そういう点につきましては、食の安全、安心、この確保の観点から科学的知見に基づいて日本国民に安全な牛肉を、日本の牛肉であれ、アメリカの牛肉であれ、その他の国の牛肉であれ、提供していかなきゃならないと、そういう方針で交渉に臨んでおります。
○紙智子君 そもそもアメリカが言っていることというのは私は理不尽だと思うわけです。
 三月三日に、資料もお配りしていますけれども、アメリカの下院で決議が出されています。(資料提示)米下院は、日本政府が米国産牛肉の輸入を再開しない場合、米通商代表部は直ちに日本に対して報復的な経済措置を科すべきであると考えると、こういうことが出されているわけです。今正に日本の国内においては、食の安全のために、それこそ科学的な審議、今真剣にやっているその最中に制裁をちらつかせて輸入再開をせよと。こういう事態に対して総理はどのように思われますか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) この提供いただきました資料におきましてアメリカの下院の決議を出されておりますが、これはアメリカの事情はアメリカの事情であります。日本は別に米国産牛肉の輸入を遅らせているわけじゃないんです。アメリカにそういう誤解があったんなら解いていかなきゃならない。日本としては安全な牛肉を食べたいという気持ちは変わらないんです。しかし、安全な牛肉であるかどうかということにつきましては、政治的判断でなく、科学的知見に基づいて判断すると。決して日本は遅らせているわけじゃないということをアメリカ側にも申しておりますし、遅らせているんだという誤解がアメリカ側にあるならば、これを解いていかなきゃならないと、誠意を持って。日本国民としても、安全な肉であれば、アメリカ産であろうが、どこの国産であれば、早く食したい、再開したいという気持ちは持っているわけでありますので、遅らせているわけでもないし、国内の畜産業界を保護しているわけでもない。必要なのは、安全な牛肉を食べたいということであるんだと。
 そのためには、しっかりとした誠意ある対応をしているんだということをアメリカ側の理解を得るべく、今後もそのような努力を続けていって、安全な肉を早く食すことができるような環境を整備していきたいと思っております。
○紙智子君 アメリカは、日本に対して制裁というふうに言いながら、自らの国内対策さえ満足にできていないと思うんです。
 もう一つ、もう一回見ていただきたいんですけれども、(資料提示)米国は、会計検査院報告書、こういうものが出されているわけですけれども、この中で、食品医薬品局は、業界の動物飼料禁止の遵守を誇張し、ちょっと省略しますけれども、米国牛のBSEの潜在的なリスクについて実態よりも低く評価していると。つまり、リスクは高いのに低く見せていると、こういうことがアメリカの国内でさえも指摘されて問題になっていると、評価されているという事態なわけですよ。
 ですから、まずやるべきは、アメリカ自身がこの国内の条件、つまりトレーサビリティーだってできてないわけですし、飼料の規制、混ざらないようにするとか、それから特定危険部位の除去とか、こういった条件を整えてもらうことが先だと。
 総理、このことについてアメリカに対してはっきりと言うべきじゃないですか。おっしゃいますか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 既にはっきりと申し上げております。
○紙智子君 それでは、今日、ライスさんがお見えになるということですけれども、直接はっきり言われるんですね。ブッシュ大統領にも言われるんですね。お答えください。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) ブッシュ大統領だろうが、ライス国務長官だろうが、はっきりと申し上げております。
○紙智子君 この前、電話が掛かったときには言ったんですか、そのことについては。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) はっきりと申し上げております。
○紙智子君 私は、何でアメリカがこんなに強烈に言ってくるのかというふうに思うわけです。それは、やっぱり日本が対米関係で弱腰だということで、足元を見られているからですよ。米国の畜産業は、畜産業界が突き上げをやっていると。カナダ産の牛肉が輸入再開になれば米国の牛肉がだぶつくと、相場が下がると、そうなっちゃ大変だ、もうこの際日本に早く開いてもらって受け取ってもらおうと、こういうことが言われているわけですよ。
 こんなことで日本の食の安全が曲げられようとしている。あれだけ日本の中でけんけんがくがくの議論をやって、そして安全対策のために大変な努力がありました、苦労がありました。そういう状況が今こういう中で曲げられようとしていると。日本の国民の安全を守るのかどうか、そのことが今総理に問われているんだと思いますよ。いかがですか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 何が曲げられているんですか。日本の立場は一貫しております。
○紙智子君 曲げられようとしています。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 曲げられようとしているというのは、あなたの誤解であります。
○紙智子君 とても誤解ではありませんよ。だって、この間どういうふうに推移してきたのかということを見れば明らかじゃないですか。アメリカの側は、日本がまだいろいろ審議をしている途中でもこういう制裁という形でやってきていること自体が足下見られているということじゃありませんか。
 私は、総理に是非考えていただきたいのは、日本でも先日、変異性のクロイツフェルト・ヤコブ病、発生が出ました。これ、どんな思いで家族の方が思われているかと思うんですよ。そしてまた、自分はいつなるだろうかと不安を持って、厚生労働省にも問い合わせの電話が何件も来ているという事態なわけですよね。
 そして、これ、調査しますと、発症者はすべてMM型という同一遺伝子を持っていると。実は、この日本の人口に対して九三%がこの遺伝子型を保有していると。ヨーロッパと比較しても、日本の国民というのはその意味では感染しやすいということが研究者の結果でも明らかにされているわけですよ。だから、慎重にやるのは当然だと。
 そして、全頭検査についてですけれども、これはプリオン研究でノーベル賞を受けられたプルシナー博士、全頭検査が合理的なんだと言っているわけですよね。全頭検査が合理的なんだと、何か月以下はプリオンがいないというのは言えないんだというふうにおっしゃっているわけですよ。そして、国民の声は全頭検査続けてほしいということなわけです。この声にこたえて、何よりもやっぱり国民の安全優先で、アメリカの圧力に屈しないでやるということをお約束できますか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 食の安全についてはすべての国民が大きな関心を寄せています。食の安全を重視して対応してまいります。
○紙智子君 今そのように、お約束できるというふうに受け止めましたけれども、受け止めます。
 そういうことで、頑張って貫くということを申し上げまして、私の質問を終わります。