<第162回国会 2005年3月15日 参議院予算委員会公聴会 第1号>


平成十七年三月十五日(火曜日)
   午前十時開会

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本日の会議に付した案件
○平成十七年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)
○平成十七年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)
○平成十七年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、二人の公述人の方、ありがとうございます。
 最初に、伊豆見公述人の方からお聞きいたします。
 既にお話も出てきておりますけれども、北朝鮮問題の対応をめぐって、言うまでもなくこの六か国協議という問題、先ほども開店休業の可能性と、実際にはまた使われるというお話もあって、各国が賛成もしているという話もあったわけですけれども、日本の直接の北朝鮮に対する働き掛けと同時に、やはり関係国との共同歩調といいますか、連携でもって対話のテーブルに着かせていくという努力というのは必要だというふうに思うわけです。
 その点で中国の影響力というのも一定あるのかなというふうに思うわけですけれども、先日、二月の二十一日ですか、中国の幹部とそれから金総書記とが会談をしているわけです。その中で、朝鮮半島の非核化と核問題は対話を通じて平和的に解決する原則は維持しているといったようなことが述べられたということが伝えられているわけですけれども、中国との関係が重要だということになれば、日本が中国への働き掛けを通じて様々な可能性を追求するということも大事ではないかというふうに思うんですが、この点、いかがでしょうか。

○公述人(伊豆見元君) 中国に彼らの持っている影響力を十全に発揮していただいて北朝鮮の姿勢を変えてもらうようにするというのは一つのアイデアでありまして、それを働き掛けるというのはこれまでも日本政府随分やってきたと思いますし、今後も続けるということだと思いますが、しかし、中国が影響力を持っているという意味は、中国は北朝鮮に援助をしていますし、多大な貿易をしておりますし、さらに直接投資もしているという、その三つがあるからであって、その三つのカードを彼らが使って、すなわち圧力として使うということでありますが、そういう北朝鮮に対して与えているものを減らすとか止めるとかいうようなことをやれば、もちろん北朝鮮は動く、の姿勢は変わるかもしれません。しかし、中国はそれを嫌っているというのは先ほど来何回か御指摘したところでありまして、安定というものを前提にしておりますと、中国はそういう手段に打って出ないと考えられます。
 実は、唯一中国を動かす道というのはございます。特に、それが日本がやれば確実なところがありますのは、それは実は核武装論であります。
 我が国が北朝鮮の核に対抗するために自らも核武装ということを考えざるを得ないではないかという議論が日本国内で多くなり、これが真剣な議論というものが行われるようになったら、中国は確実に動くだろうと思います。あえて北朝鮮の安定を損ねるかもしれないというリスクを冒してまでも北朝鮮に圧力を掛けて核兵器を廃棄させようとするでしょう。
 しかし、現在、今中国の目から見ると、日本というのは極めてまともな立派な国だというふうに見えるわけでありまして、北朝鮮が核兵器を着々と増やそうとも、そして日本に対してばり雑言を投げ掛けようとも、じっくりと構えて、どっしり構えて、経済制裁をやろうかという声は出ても、核に対しては核をと、我々も核武装をといった話にも全然ならないと。そうしますと、中国の目から見ていると、日本にそういう核兵器開発の口実というものを特に与えるものでない北朝鮮の核開発であったり保有であったりというのは見逃しておいていいと、こういう話になっているんだろうと思います。
 ですから、これは実際、ある意味では皮肉な話でありますが、日本が中国を動かすことは私は可能だと思いますが、それは一番効果的なのは核武装論であります。

○紙智子君 一方、そういう日本が中国を動かすという話もあるんですけれども、この間、日米の2プラス2で、その共通戦略目標の中に中国、台湾問題を含めたということで、中国の側の反発が、招いているということもあるわけですけれども、こうしたことがこの六か国協議にも影響を与えるということがあるのではないかと。この点についての御意見はいかがでしょう。

○公述人(伊豆見元君) 中国はもちろんそういうことを言いますし反発もします。六か国協議にも影響するかもしれないと脅しも掛けてきますが、私は余りそれを気にしないでいいんだろうというふうに考えております。
 もちろん、台湾の問題と北朝鮮の問題をある程度リンクさせて、中国に北朝鮮問題で汗をかかせたいんであれば、日本とアメリカが台湾問題について中国の側に立ってほしいというのが中国側の考え方であることは間違いないわけでありますが、我々からすればそれは必ずしも結び付ける必要があるわけではありませんね。北朝鮮の問題についても平和的に核問題が解決できればいいわけですし、台湾海峡の平和的な解決というのも我々望むところでありますから、中国はいろいろなことを言ってきますけれども、私はそれをそう真に受けなくてもいいというふうに感じております。

○紙智子君 ありがとうございました。
 それじゃ、次に村田公述人にお聞きいたします。
 雑誌などで言われていることですけれども、沖縄の普天間基地の移転と、それから地位協定の改定、本格的な見直しが必要だというふうに言っておられます。実は、私は去年八月の米軍ヘリの墜落の事故現場にも調査に行きましたし、今年一月も沖縄北方特別委員会の委員派遣で再度現地に行きまして、やはりこの墜落事故を通じて、現場検証もできずと、大学の自治も踏みにじられたということで強い怒りが今も続いているというふうに思うんですね。それで、公述人は、地位協定についての改定といった場合に、どこをどのように改定すればいいというふうにお考えでしょうか。

○公述人(村田晃嗣君) 地位協定の改定、私は改定をすべきだというふうにどこかで書いているのかもしれませんけれども、厳密に言うならば、改定をも視野に含めた見直しというものをすべきであると。つまり、地位協定の改定というのは、一部の専門家が言うように、やり出すと切りがない、パンドラのふたを開けてしまって、アメリカが地位協定を持っているのは日本だけじゃなくて各国ある、連鎖的になっちゃう、大変これは煩瑣であると、だから地位協定そのものには手を付けずに弾力運用でやっていこうという議論だけでは私は恐らく政治的にもうもたない。地位協定を改定することも可能性として考えながら議論をすべきときに来ているというのが私の基本的な立場でございます。
 そして、もしその改定というものを視野に入れたときにどういうことが検討されるべきかということで申し上げますと、今、いわゆる米軍の被疑者の身柄の引渡しについては、もうこれはほとんど例外なく、昨年の四月でしたか、五月でしたかの日米当局の覚書でもって被疑者の身柄が日本の当局に引き渡されることに弾力運用でなっておりますけれども、もし地位協定の改定というものをも視野に入れて考えるときに、それを明文化するというのは一つの可能性かもしれませんし、それから、より私にとって重要だと思われますことは、環境基準というものについて、やはり地位協定というものがつくられたときと今日との環境に対する考え方というのは随分違うわけでございまして、そういうものについての見直しというものもあるいは可能性かというふうに存じます。

○紙智子君 あともう一つお聞きしますけれども、基地の返還を求める声が相次いでいるわけです。それで、普天間基地に代わる新基地を名護市辺野古沖に建設計画があるわけですけれども、これについても長年圧倒的な反対の声で進んでいないと。私は、辺野古への基地の移転はすべきじゃないというふうに思っているわけですけれども、政府はこれをやろうと固執しているわけです。一方、衆議院での予算委員会で大野防衛庁長官が、針の穴みたいな小さな穴かもしれないが良い案が出てくれば見直しは当然だというふうに述べられているんですね。
 辺野古移転について、移設については事実上これは破綻しているんじゃないかというふうに思うんですけれども、この点についてはどのようにお考えでしょう。

○公述人(村田晃嗣君) 辺野古移転について強い反対があるのかどうかは私には分かりません。一部の方が強く反対しておられることは間違いございませんが、広範に強い反対があるかどうかは分かりません。
 やはりここでも環境アセスメントということが非常に大きなポイントになっているわけでして、目下、県ですか、が進めておられるアセスメントだけで数年掛かると。それから着工ということになると、移転そのものが順調に進んでも十数年掛かるということでございますから、この大きな戦略環境の変化の波の中で十数年待てるかということになると、これはまあ大変難しいところがあるというので、冒頭の陳述で申し上げましたように、もちろん辺野古の可能性というものも、現にその方向で進んでいるわけですから可能性は追求しながら、県内外での、場合によっては国外への移転を含めた柔軟な検討というのが必要である。
 ただ、そのときに地位が、基地が移設された後の沖縄の経済というものをどうするのかということについても十分な準備というものがなければならないと考えております。

○紙智子君 ありがとうございました。