<第159回国会 2004年5月18日 農林水産委員会 第16号>


平成十六年五月十八日(火曜日)
   午前十時開会
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本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○政府参考人の出席要求に関する件
○農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農業改良助長法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。競馬法の一部改正について質問いたします。
農業の三法案の質問の前に、最初にハンナン牛肉偽装問題について質問いたします。
 市場隔離牛肉緊急処分事業というのは、これはその実施要領また実施要項に基づいて行われることになっているわけですけれども、全国同和食肉事業協同組合連合会、ちょっと長いのでこの後全同食というふうに言わせていただきますが、この焼却計画の申請書が上がったのはいつで、農水省がこの文書を受け取った、いわゆる接受したのがいつで、そしてまたこの事業団から承認通知文書が下りたのはいつなのか、まず最初にそれをお聞きしたいと思います。
○政府参考人(白須敏朗君) お答え申し上げます。
 ただいま委員から御指摘の全国同和食肉事業協同組合連合会から承認申請が上がりましたのが平成十四年の一月八日でございます。それを農林水産省として接受いたしましたのは一月十五日でございます。それで、事業団から全同食の方にその承認申請が下りましたのは平成十四年の二月二十六日というふうに承知をいたしております。
○紙智子君 上がったのが一月八日で、農水省が受けたのが十五日と、それで承認が下りたのが二月二十六日ということですけれども、ところが肉の焼却は一月十一日から始まっているわけですよね。
 それで、大臣、この時点で結局承認通知が出ていないんじゃないかと。そもそも申請書が農水省に届いていない段階ですよね。当時の事情はいろいろあったとはいえ、この要項に基づく正式な手続を欠いた焼却だったんじゃないかと。これは否定できないと思うんですが、この手続上問題があったことについてお認めになりますか。──今、大臣に聞きました。
○政府参考人(白須敏朗君) 事務的なことでございますので、私の方から。
 ただいま申し上げましたとおり、一月八日に申請書が提出をされたわけでございます。それで、申し上げましたように、事業団からは二十六日に承認通知が出ておるわけでございますが、ただ、今、委員からも御指摘のとおり、一月十一日から焼却が開始をされておると、お話のとおりでございます。これにつきましては、当時、早期に焼却すべきという社会的な要請もございまして、焼却計画のただいま私申し上げました申請から承認に至ります決裁手続、これはやはり時間が掛かるわけでございますが、その期間中に事業実施が滞ると、こういう事態も想定されたわけでございますので、事業団といたしましては各事業実施主体に対しまして、全同連も含めてでございますが、それぞれの事業実施主体に対しまして焼却計画の申請と同時に計画承認前着工届と、こういうものを提出をするように指導をいたしまして、この計画承認前の着工届というものを一月八日に提出をいたしております。
 したがいまして、そういう全同連も他の団体と同様にこの計画承認前の着工届を提出をした上で焼却を開始しているというところでございます。
○紙智子君 私は大臣にお聞きしたんですよね。
 それで、今の答えから聞いても、結局要項に基づくんじゃなくて、そのほかの運用の部分でそういう形でやったということが今のお話聞いても明らかになったわけで、やっぱり正式な、要項に基づく正式な手続に乗ったものじゃないということが明らかになったと思うんです。
 それで、しかも一月十一日に柏羽藤クリーンセンターの試験焼き、ここには農水省の鶏卵課から一名、事業団から二名立ち会っているわけですね。
 この柏羽藤環境事業組合、総会をやっていまして第二回定例会という議事録があるんですけれども、これ読みますと、その中で管理者の方が、農水省の方が試験焼きさせてほしい、協力してほしいと言われた、国の方からの要請なので一生懸命焼いたんだというふうに説明しているわけです。
 ちなみに、農水省の資料で、一月中全国で焼いたのが一千四百六十六トンですね、そのうちの九二%の千三百五十四トンがこの大阪の同和、愛知の同和、それから大阪府肉連の浅田氏の関連部分なんですね。なぜこのように早く焼却できるように協力したんでしょうか。局長。
○政府参考人(白須敏朗君) ただいま委員のお話でございますが、この牛肉在庫の処分事業、平成十四年の一月時点におきましては事業実施期間が平成十三年度内というふうにされておったわけでございまして、期間が非常に限られてほとんど時間がなかったというのがまず第一点あるわけでございます。
 それから、消費者の不安を払拭するために早急に焼却すべきであると、こういうふうな形で当時与野党挙げての大変強い御要請もあったということを踏まえまして、私ども検品をそれぞれきちっと行いまして、それから焼却施設の確保ができたものから順次焼却を進めるということで、正にこの同年の三月の年度末までに全量の焼却ができるように関係者に協力を求めておったと、そういう状況があるわけでございます。
 そこで、ただいまの職員の立会いという観点でございますが、実は当時、要すれば牛肉は冷凍されておったわけでございまして、これを大量にとにかく焼くということでございまして、この冷凍しておるものを大量に焼くということはなかなか難しいということでいろいろ焼却場で試行錯誤をやっておったわけでございますが、非常にこれが難しいというふうなことでございまして、ただいま委員からのお話ございました柏羽藤の焼却場におきまして比較的早く、いろんな試行錯誤の末に焼却を始めることができたというふうなことで、そういう点について、私どもとにかく早急にやらにゃいかぬという要請を受けまして、それではその焼却場についてどういうふうなやり方で、例えば事前にその牛肉、冷凍になっております塊を少しずつ裁断をするでありますとか、どういうやり方であればきちんと焼けるのかというふうな点について、職務参考上非常に参考になる、他の焼却場でもそういう同じような方法を取れば早急に、早く焼けるのではないかと、こういうふうなこともございまして、職員が出張いたしまして、それでそこを見せてもらったというふうに聞いているわけでございます。
○紙智子君 聞いていることが違うんですよね。
 その急いでやらなきゃいけないというのは当時の事情から見てそういう議論があったことは知っていますけれども、問題は、実際に焼かれたのはほとんどこの全同食の肉ですよね。今言ったように、全体の九二%、その部分が大阪の同和、愛知の同和、大阪府肉連と、この関連の肉が、それだけが何でこんなに急いで焼かれているのかということを聞いたわけですよ。
○政府参考人(白須敏朗君) 私、申し上げましたとおり、要すれば他の焼却場におきましてはなかなか、どういう形でやれば焼けるかということがなかなかうまくいかなかったわけでございまして、とにかく私どもとしては早急に焼却をすると、こういうことでございますので、焼却施設の確保ができたものから順次焼却を進める、しかも、それはもちろん当然のことでございますが、検品を受けまして、検品を受けて適というふうに、適というふうに判断を受けたものから、かつ焼却施設の確保ができたものから順次焼却を進めるということでございまして、そういった意味で、ただいまの府同食の焼却場におきましては、いろんな他の焼却場でも試行錯誤しておりましたが、なかなかうまくいかない、そういう中でこの焼却場が比較的早く焼却を始めることができた、こういうことでそこの焼却場におきまして焼却が行われたというふうに理解をいたしております。
○紙智子君 今の答えを聞いてもよく分からないですよね。
 それで、やっぱり浅田・ハンナングループを特別に重く見る、こういう関係があったと見ざるを得ないんです。大臣、この全同食は全肉連から業務委託を受けている事実上の実施団体ですよね。委託は事業団の理事長が適当と認める団体とするとなっているわけです。しかし、買上げ事業での対象外の肉を扱ったとして逮捕された。こういう不正事件を起こした団体を事業団が適当だというふうに認めた、これ国の責任、これをどういうふうに受け止めているでしょうか。──大臣に聞いているんです。
○国務大臣(亀井善之君) この事業、極めて短期間のうちに約一万三千トンですか、この多量の牛肉を隔離する、こういう必要があったわけであります。そういうことで、事業の執行上、こういう面から、全同食ですか、これを委託団体としたことにつきましては、私は問題がなかったんではなかろうか。ただ、今日、結果としてこの事業が悪用され、そして全肉連の委託事業の受けた全同食の幹部が対象外の牛肉の偽装による助成金を搾取しているという、そして逮捕されていると、こういうことは極めて残念なことであります。
 いずれにいたしましても、現在捜査当局によりまして捜査が行われておるわけでありまして、当局によります捜査に私ども全面的に協力をいたしまして、徹底した捜査によりまして一刻も早く全容の解明が図られることを期待をしておるところであります。
○紙智子君 最初の時点では問題なかったというお話と、残念であったと。私はやっぱりその程度では駄目だと思うんですね。やっぱりその判断も含めてもっと慎重にやるべきだったと思うし、やっぱり農水省としての責任という問題をはっきり感じていただかなければならないというふうに思うんです。
 それから、国が十月の十八日に保管管理の方針を出しましたが、要項ができたのが十月の二十九日です。ところが、その二十九日のうちに全同食と全肉連との間での委託契約が結ばれているんですね。もうできてすぐ結ばれているわけです。ほかの二団体の契約がどうなっているかというと、もっとずっと後になってからですよ。余りにもこれ、手回しが良過ぎないかと。これは国がむしろ積極的に全同食に働き掛けて委託団体にしたんじゃないですか、局長。
○政府参考人(白須敏朗君) この事業実施、ただいまの委員の御指摘でございますが、事業実施主体の選定に当たりましては、まず一つは全国的な食肉の生産者の団体、それから加工業者の団体、流通業者の団体でございまして、それで国産牛肉の流通の大宗を担うということで、全肉連を含むまずその六団体が事業実施主体にされたわけでございます。ただ、そういうことでございますと、これら団体に所属をしない事業者が事業に参加できないということになりかねないわけでございまして、そういうことになりますと、できる限り多くの牛肉を市場から隔離する、こういう事業目的が達成できなくなるということもございまして、したがいまして、こういった団体の会員以外からも効率的に対象牛肉を買い上げる、こういう必要があったわけでございます。
 したがいまして、全肉連から、ただいま委員からもお話ございました、いわゆる全同連、全同食を含みます三団体、全同食だけではございませんで、ほかに東京食肉市場卸商協同組合でございますとか、あるいは日本食肉流通センター卸売事業協同組合、そういった三団体に委託をする、委託をして団体の会員以外の牛肉を買い上げてもらうというふうなことで委託をしたわけでございまして、この全同食だけを優遇とかいうことではないということはひとつ御理解を賜りたいと考えております。
○紙智子君 新聞報道を見ましても、全同食の会長の山口氏が記者会見、記者取材で語っているのを見ますと、事業団から三人が来て説明していったということも出されているわけですよね。
 それからもう一つ、この浅田氏が逮捕された府肉連のルートの偽装問題で、広島の業者との関係についてなんですが、この広島の輸入業者の偽装牛肉を補助申請した件が上げられているわけです。それで、実はこの広島の業者も実は浅田氏に紹介したのも農水省だということが分かっているわけですけれども、なぜほかにも数多くある業者の中で農水省はこの業者を浅田氏にあっせんしたのか。広島ですから、普通だったら広島に、食肉組合にというふうにも思うんですけれども、なぜわざわざ大阪の浅田氏に紹介したんでしょうか。
○政府参考人(白須敏朗君) この点でございます。当時の食肉流通、もう委員も御案内のとおりだと思いますが、BSEの発生後ということで大変に混乱をいたしておったわけでございまして、BSEの全頭検査前の国産牛肉を対象といたしますいわゆる保管事業につきまして、組織に入っておらない事業者から事業に参画できないかといったそういう問い合わせが殺到いたしておったわけでございまして、事業担当課としては、それぞれの大変多くの問い合わせに対して忙殺をされておったという状況がまずあるわけでございます。
 そこで、ただいま委員のお話ございました今回の事件に関与したとされる業者は、お話のとおり、広島県に所在をしておったわけでございますので、私どもとしては、そういった方からのお問い合わせに対して近畿圏を中心とする組織でございます全国同和食肉事業協同組合連合会の方に相談したということでございます。
○紙智子君 やっぱりこれも回答を、聞いたことに答えていないと思うんですよね。
 そういうたくさんの殺到されている中でなぜ大阪の浅田氏に紹介したのかというふうに聞いたわけで、そういう意味でもこれも答えになっていないと思うんです。
 浅田氏は、結局、農水省の中で特別に重い位置にあった表れだというふうに思うんです。あっせんの問題といい、委託団体にする問題といい、そして正式な焼却手続を踏まずこの焼却について促進をお願いしていると。浅田・ハンナングループとの関係で農水省のこの反省というのは必要だというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) 今回の事件の対象になった牛肉の在庫の保管あるいは処分事業につきましては、平成十五年の六月十八日に提出されました食肉流通問題調査検討委員会の報告書、これに、BSEに関する一種のパニックというべき事態の中で極めて短期間に事業が創設、執行されたため、事業の仕組みや実施手法に不十分、不徹底な点があったことが補助要件に適合しない事例や偽装を誘発し、結果論であるが、事業創設の段階で偽装防止措置についての検討が不十分であったと、このような指摘を受けたわけであります。
 このような反省を踏まえまして、私どもといたしましては、食肉行政の運営に当たりまして、消費者重視の政策決定のシステムの構築、また危機管理体制の強化、リスクコミュニケーションの推進、また食肉関係企業のコンプライアンスの推進、トレーサビリティーシステムの導入の普及、これに全力を挙げて取り組んでおるところでもありますし、さらに、農水省といたしましては、昨年七月に消費・安全局の創設を始めとする大幅な組織改正を行い、また、それと同時に、私はそのときに、この報告書を踏まえまして職員の意識改革の徹底をすることを訓示をいたしたところでもございます。これらの取組によりまして適正な食肉行政の推進に全力を挙げて努力をしてまいりたいと、このように考えております。
○紙智子君 結果として見れば、この対応の中に不十分さがあったという点の反省を踏まえつつという話もされましたけれども、こういう問題が再び起こることのないようにやっていただきたいというふうに思います。
 次の質問に移ります。
 前回の続きですけれども、農業委員会法の問題です。現在十名と定められている選挙委員の定数の下限の条例への委任についてお聞きします。
 大臣、選挙委員の位置付けというのは農業委員会制度の基幹を成すもので、公選制が基本ということだと思うんですけれども、その点、変わりないと思いますけれども、まず確認したいと思います。
○国務大臣(亀井善之君) 農業者の財産であります、基礎的な生産手段であります農地の利用集積等の権利調整の業務、地域の農業者の意向というものを十分反映し、そして客観性と公平性を確保していくということが不可欠なことであるわけでありまして、そういう面でこの農業委員会、独立の行政委員会として市町村に設置されたものでありまして、その組織運営、民主的に選ばれた農業者の代表によってなされることが適切であるわけでありまして、農業委員会の基本的な性格、これを踏まえて農業委員会は選挙による委員を基幹として構成されるべきものと、このように考えております。
 そういう面で、今後とも農業者の信任の下で組織をされ、公平、客観的に農地政策を遂行できる公選制を引き続き維持することが必要であると考えております。今回の改正によっても、選挙委員の位置付け、これは何ら変わることはないわけであります。
○紙智子君 今回の改正で十名だった選挙委員の定数の下限を条例委任するということは、農地や農家数がどのような規模の農業委員会でも選挙委員定数の引下げができるということになるわけです。
 農水省は政令で選任委員よりも選挙委員が多くならなければならないように定めるというふうにしているわけですけれども、選任委員は最低四人ですね。団体推薦三人、議会推薦一名から四人と。最低四人ということになると、選挙委員定数を五人まで下げることができることになるんじゃないか。十名だったのが、そういう意味では五人まで下げることが理論的に可能だということなんでしょうか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 選挙委員の下限定数の条例への委任でございます。
 今、十名というのが下限になっておりまして、全体の設定状況を見ますと、約三分の一の農業委員会におきましてこの下限の定数であります十人というところに張り付いておる実態でございます。そして、私どものいろんな調査によりますと、約六割の農業委員会が、この十人を設定しておるところの六割が定数の引下げの意向を示されているという実態にございます。
 今回、この下限を撤廃するわけでございますが、これは市町村の自主的な判断を尊重するということでございまして、ただ、今、大臣が答弁いたしましたとおり、この農業委員会の基本的な性格、これは変わらないということで、やはり選挙による委員が根幹と、根幹といいますか、基幹として構成されるべきものというふうに考えております。
 そういうことでございますので、定数の基準におきまして、これは政令で定めることになっておりますが、選挙委員の定数は選任委員の定数を上回るように定めなければならないということを定める予定でございます。したがいまして、今具体的にお尋ねのあったような数字の事態も当然あり得るというふうに考えております。
○紙智子君 これまで一農業委員会当たりの選挙委員数は十三・七人、これが農地の規模や農家の戸数に関係なく五人まで引下げ可能ということになるわけです。こうなりますと、幾ら選任委員より多いとはいっても、スリム化とか交付税の削減、交付金の削減という圧力の中では定数削減に向かわざるを得なくなるんじゃないかと思うんです。結果として、選挙委員の役割が役割低下をもたらすことになるんじゃないかと思うわけですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 正に今回の改正は、先ほど言いましたように、市町村の自主的な判断を尊重したいということでございます。
 先ほど申し上げました実態調査の中でも、他の組織等とのバランスも考えて引下げの意向を持っておられるところも当然あるわけでございますので、そういった市町村の自主的な御判断というものは当然この制度改正によって尊重されるべきものというふうに考えております。
○紙智子君 先日の参考人質疑の中でも鹿児島の農業委員会の会長をされている中釜参考人が発言していたわけですけれども、市町村合併によって区域内の農地面積が大幅に拡大する、にもかかわらず選挙委員の上限の見直しがされていなかったこともあって、農業委員数が大幅に削減されることになると。喜入町、中釜さんのところ、喜入町と言いましたっけね、その喜入町でいいますと、合併に伴って、十四人だったのが五人に減ってしまうことが決まっていると。これによって農業委員一人当たりの守備範囲が大幅に拡大して、農業委員の農地の確保などの活動の後退が懸念されるんだと。それから、せっかく女性の農業委員が増えてきているのに、また減ってしまうんじゃないか心配しているんだと、こういう話がされました。
   〔委員長退席、理事常田享詳君着席〕
 なぜ上限の見直しをしないのか。そして、選挙委員が減るということは、減って、この農業委員会全体の数が減るということになれば、やっぱり、幾ら基本は変わらない変わらないと言いながら、農業委員会の姿が見えなくなっていって、結局この農業委員会の存在、役割というのが否定されることにつながっていくんじゃないでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) 今、市町村合併に伴い農業委員会の区域の面積が全般的には拡大すると、こういうことは見込まれるわけであります。
 昨年六月の閣議決定、基本方針二〇〇三、こういう中で農業委員会につきましての組織のスリム化が求められたところでもございます。
 今回の法律改正におきまして、組織のスリム化と併せまして、農業委員会の業務につきましては、農地に関する業務及び農業経営の合理化に関する業務に重点化をすると、こういうことでありまして、農地法に基づく許可業務等を処理する農地部会につきまして、これ町村合併、こういうような問題、市町村の区域に分けて複数の部会を設置をすると、こういうようなことができるわけでありまして、機動的な対応が可能、こういうようなことから、選挙定数の上限の引上げ、これは行わないこととしたところであります。
○紙智子君 この前の参考人質疑の中でも話を聞いていて改めて思ったわけですけれども、農業委員のやっている仕事の中身というのは非常に多面的だと思うんですよね。
   〔理事常田享詳君退席、委員長着席〕
 確かに、農地の荒廃を防ぐ、耕作放棄地が出ないようにするということをめぐっても、本当に隣のところに行ってお願いをして、引受手になってもらうお願いをするだとか、それから、ただそれだけじゃなくて、やっぱり日ごろ様々な相談にもこたえながら、そういう信頼関係を培う中でそういうことの中身もできてくるという話もあって、改めて、やっぱり事務的に何か項目のことをやっていればそれで済むことではなくて、そういった多面的な、総合的な中でやっぱり本当の意味で農地を守っていく仕事にもつながっていくんだということを思うわけです。
 そういう意味では、実際に少なくなって、範囲が広くなって、幾ら効率的に重点化してやればといっても、そもそものそういう部分が失われていくというふうに言わざるを得ないと思うんです。そういう点では、私は、やっぱりこれ、何回聞いても、この方向というのは違うんじゃないかというふうに思うんですね。
 それから、改良助長法の質問に移りますけれども、法改正がされた場合に、昨年三月に出されました普及事業の在り方に関する検討会報告、これに沿って協同農業普及事業の運営に関する指針を大幅に改定することになると思うんですけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 協同農業普及事業、これは国と都道府県が統一した方針の下に行える協同事業ということで位置付けておりまして、国が基本的な方針であります運営指針、これを定めまして、これに基づいて都道府県が実施方針、こういうものを作って協同事業としての真価を発揮していくと、こういう仕組みになっております。
 今回、こういった形で法案の大幅な改革といいますか、内容の法案も提案をさせていただいておりますし、この普及の検討会の報告書もございます。そういう意味では、かなりこの普及の内容を変えていくということでございます。
 端的に言いますと、一つは、その機能として、高度技術への支援、それからまたコーディネート、それから試験研究機関や農業大学校との一体的な取組、また民間との連携、積極的活用、普及職員の資質向上等々の項目におきまして見直しが必要だというふうに考えております。
○紙智子君 検討会報告で示された内容が非常に問題だと思うんですけれども、その報告で、普及の基本的な性格を高度な技術的支援というふうにしているために、多様な就農者等の技術レベルの底上げのための支援というふうに言っていますね。これは公的普及事業の対象とはしないという結論付けているわけです。局長は、衆議院の質疑の際に、コーディネーター機能があるので、先進的な経営以外の多くの農業者が協同農業普及事業から排除されるようなことはないんだという趣旨の答弁をされたと思うんです。
 しかし、この検討会報告は、その部分は非常に分かりづらいわけですけれども、コーディネートというのはあくまで新技術を効果的に浸透させるんだと、担い手を中心とした産地育成を図るためなんだと、担い手に対する総合的な支援体制を構築する観点からのものだと。コーディネート機能も、一義的には先進的経営体であって、担い手を中心としたものになるということが示されているわけですけれども、そういうことなんじゃないんですかね。
○政府参考人(川村秀三郎君) 普及の今回の重点の中で一つの柱が、今も申し上げましたように、地域農業をコーディネートしていく業務と、こういうことで位置付けております。これは正に、担い手のみならず、地域全体に新技術を効果的に浸透させるということで図られる農業の振興、地域農業の振興というものがあるわけでございます。
 例えば、端的な例で言いますと、水田農業、こういったものを考えますと、これは非常に多くの方々によって担われていると。もちろん、中核となる経営に集中をするという地域もあるわけですが、今回基盤強化法の中で位置付けをしました集落営農、そういった形で今後地域の農業を再編成していくと。今、米対策の中で地域水田農業ビジョンというものを作って、こういった形での地域農業の振興、こういうものも図っていこうという大きなうねりがあるわけでございますが、その中で、正に普及も、技術的な面、また普及は県の職員という公的な側面がありますので、いろんな関係機関を結集していくという、そういう中心となって、そういう力を合わせていく核になれるということで、そういう面を含めてコーディネートという機能を想定をしております。
○紙智子君 そういうふうにおっしゃるわけですけれども、検討会の座長であった高橋正郎さん、雑誌、「DAIRYMAN」という雑誌の七月号でこういうふうに言っていますよね。農地の所有と利用を分離して先進的な経営体に集積させ、利用させることがコーディネーター機能なんだというふうに言っているわけです。つまり、先進的経営体のために農地集積するのがコーディネートだと。
 これ、法改正の基になった報告をまとめた責任者の理解ということだと思うんですね。これは、その他多くの農業者は結局技術支援の対象ではなくて、普及事業の対象とみなさないという方向になっていくんじゃないかと。普及事業を大幅に縮小、後退させていく方向になるんじゃないかというふうに言わざるを得ないんですね。
 報告の中で、新たに農業を開始する者、つまり新規就農者について、普及職員でなければ対応できないものではないという形で、農協と役割分担、連携を図るとしています。農協の営農指導が手薄で民間の活用が困難な段階でも、普及組織がかかわる場合も、新規就農青年に対してその発展段階に応じて指導農業士制度を積極的に活用するとなっています。この報告に基づいて運用指針の見直しを行えば、新規就農者への技術支援というのは公的普及事業の対象としないことになりかねないんですね。十三日の参考人の質疑でも、この新規就農者に対する普及によって、技術支援の重要性という問題や、地域への定着のために普及が果たす役割ということが非常に語られました。新規就農者については国が責任を持つべきで、やっぱり従来以上にこの育成や定着のために責任を尽くすべきだというふうに思いますけれども、どうでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) 協同農業普及事業につきまして、これまでも新規就農者につきましては、都道府県青年農業者等育成センター等とも連携して就農相談活動、あるいはまた就農に当たりまして栽培技術の習得や就農後の技術の定着向上、あるいは経営管理に関します濃密的な指導を行うなど積極的に支援を行ってきているところでもあります。
 新規就農者にとりましては技術の習得が重要な課題であることから、今後も、普及事業の重点課題として、将来の担い手となり得るような新規就農者や農業後継者の育成につきまして位置付けているところでもありますので、具体的には、技術の専門家集団であります普及組織、農業大学校、あるいは青年農業者等育成センター等の関係機関とも連携をいたしまして、就農前、就農時、あるいはまた就農後にわたる継続した技術指導や経営改善の支援、そして早期営農の定着化などに積極的に取り組んでまいりたいと、このように考えております。
○紙智子君 最後に、青年就農促進法の問題について質問します。質問というか、この促進法の改正については我が党もこれは賛成であります。
 一点要望しておきたいんですけれども、この新規就農者数についていえば増加傾向にあるわけですけれども、しかし、高齢化などによって、離農者をカバーするということになると、これは遠く及ばないというのが今の実態だというふうに思います。
 新規就農者の確保が待ったなしだと、本当に重要課題だというふうに思うわけですけれども、最近では農家出身でない新規参入者が増える傾向にあるわけですね。意欲は非常に高いと。しかし、農家出身者が経営を継承する場合とは違って、資金もないし農地も技術もないと。就農に必要な経営基盤や生活基盤、これも新たに確保しなきゃいけないわけです。そういう意味では、非常に経営維持のためのハンディキャップというのが大きいわけです。スタート時点のハードルをやっぱり少しでも低くするというのは、国や行政の責任でもあるというふうに思うんですね。
 地方自治体でこの新規就農者を確保するために、やっぱり国の就農支援資金だけでは不十分だということで、非常に地方も厳しい財政状況の中ですけれども、そういう中でもこの支援資金の償還免除の制度や、それから独自に助成制度を設けているところ、これがたくさん今出てきているわけです。そういう自治体で就農者が実際増えているというのも事実だと思うんですね。やっぱり国としてこの新規就農者に対する助成制度を設けるべきだと。これは大臣の決意にも懸かっているというふうに思うんですけれども、最後に大臣、お願いいたします。
○国務大臣(亀井善之君) 農業後継者以外、いわゆる農外からの新規就農者、農家の子弟の就農に比べまして、農地の取得やまた資本整備のみならず、農業の技術、経営ノウハウの習得や、あるいはまた農村社会への定着、そういう面でハードルが高いわけであります。このために、これらの課題に対応して就農後に早期に定着をしていけるような支援をしていくということは重要なことと、こう認識をいたしております。
 農水省といたしましても、新規就農と就農キャリア形成プログラムの推進事業等によりまして、農業者大学校におきます就農後研修や農業改良普及事業による農業技術や経営ノウハウの習得への支援、あるいはまた土地の習慣やあるいは社会全般にわたる相談、こういう面での先輩就農者や指導農業士等の就農サポーターによります経営定着までの支援体制の整備の問題、あるいは四Hクラブ等々の活動、新規就農青年相互の交流に対します支援、あるいは加工、流通、こういう面での消費者との交流活動の促進によります販路の確保の支援、このように政策をいろいろ推進して、今後とも新規参入者が、新規就農者の就農の早期の経営定着が図れるように支援をしてまいりたいと、このように考えております。
○紙智子君 終わります。
○委員長(岩永浩美君) 他に御発言もないようですから、三案に対する質疑は終局したものと認めます。
 これより三案について討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、反対討論を行います。
 反対の第一の理由は、農業委員会の必置基準面積の算定から生産緑地以外の市街化区域内農地面積を除外することは、三大都市圏の市街化区域を抱えている自治体から農業委員会を廃止することを促進することになり、その結果、都市農業の振興に障害をもたらすことになるという点であります。
 反対の第二の理由は、農業委員会の法令業務以外の任意業務について、農地に関する業務及び農業経営の合理化に関する業務に重点化することは、農業委員会の本来の発展方向ではなく、政府・自民党の農業構造改革路線の実施部隊に農業委員会を据えることになり、認めることはできないという点です。
 また、選挙委員の下限定数の条例への委任は、農業委員会における選挙委員の役割を低下させ、今後の農業委員の公選制の廃止に道を開くものであり、賛成することはできません。
 以上です。