<第159回国会 2004年5月13日 農林水産委員会 第15号>


平成十六年五月十三日(木曜日)
   午後一時開会
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本日の会議に付した案件
○農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農業改良助長法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。ちょっと風邪を引きまして、声が聞きづらいかもしれませんけれども、よろしくお願いいたします。
 それで、最初に、ちょっと順番を変えまして、種本博参考人にまずお聞きしたいと思うんです。
 それで、先ほど、こういうA3の資料を出していただいてお話を伺いましたし、それから、その前にヒアリングをされたときの資料を見ていまして、それに基づいてお聞きしたいと思うんですけれども、種本参考人は協同農業普及事業に対しての国の交付金削減の影響について、先ほどの発言の中でも、交付金の九二%を人件費で、やっぱり配慮がほしいという話されていました。それで、農水省は三年間で交付金を二割削減していくことを約束しているわけですね。それで、種本参考人は普及事業の在り方に関する検討会のヒアリングの中でも、普及員の人員について、現有の人員は最低限の人数だと、もう既に三分の二、減っているという話、おっしゃっておりました。
 交付金が削減されますと人員削減というのは避けられないんじゃないかという懸念をするわけなんですけれども、まず、この影響についてどのようにお考えでしょうか。
○参考人(種本博君) おっしゃるとおりでございまして、交付金の削減というのがそのまま普及員の削減につながるのではないかと。これは実際にやってみない段階でございますのでそうはっきりしたことは分かりませんけれども、そういうおそれは非常に、多分にあるなというふうに考えております。
 ただ、私どもとしてはその中でも、一つは、ある程度のところは重点化なり、対象の重点化ですね、そういう中で明確にしながらやっていけばある程度はできるだろうけれども、それが大幅になってきますと、これは恐らくそれだけでは対応できなくなってくるんじゃないかというような心配をしております。
○紙智子君 今回の改正でこの普及事業を、国の交付金の対象となる協同農業普及事業とそれから都道府県が自主的に行う普及事業と、この二本立てにするというふうになっているわけですね。それで、交付金の削減に、都道府県財政が厳しい状況の中で都道府県の自主的普及事業がどれだけ確保できるのかと。普及事業全体が縮小するということにならないかどうかというのもまたこれ心配なんですけれども、この点どうでしょう。
○参考人(種本博君) これにつきましてもそのとおりだというふうに思っておりまして、そうならないようにしていただければというふうに思っておるところでございます。
○紙智子君 ならないようにということなわけですよね。
 それから、同じくヒアリングの中で、必置規制の在り方の問題で述べられていますけれども、ここ数年で都道府県によりばらつきが生じていると。それで、これ以上の格差が生じると基本的な農政推進に影響が出てくると。普及センターの必置の問題でも各県の格差の問題を指摘されていますよね。
 この点で、実態や考えられる影響というのが一体どういうことがあるのかということを少し詳しくお聞きしたいのと、加えて、この必置規制がなくなってしまうと、拠点となる普及センター、北海道の場合は基幹センターという言い方しています。基幹というのは基幹産業の基幹ですけれども、と言っていますけれども、その他の地域というのは地域センターということなんですけれども、合併が進んでいきますと吸収されたりいなくなっていく、減少していくんじゃないかと。そうなると、回る範囲というのがすごく広大なんです。北海道なんか物すごい広い範囲なんですね。そうすると、本当に事細かにやって、例外だけれども、そういう中でも深水管理だとかいうことを含めて、もう足しげく通って、そういう中で収入を上げさせるということで努力してきた役割があるんですけれども、そういったことなんかがきめ細かくできなくなってしまうんじゃないかというふうに思うんですけれども、この点も併せてお願いしたいと思います。
○参考人(種本博君) まず、センターの形態でございますけれども、もう既に御承知だと思いますけれども、いわゆる普及センターとして単独でやっている県と、それから農林事務所的な形で、土地改良関係とか林業関係と一緒な事務所の中で部なり課という形でやっているところと、それからもう一つは、今ほどのおっしゃられたように、拠点的なセンターと、それから地方のセンターといいますか、二つのものを持ってやっている。いわゆるそういう面からしますと、もう既にかなりその辺の事務所の、センターとしての拠点というのがかなりばらついてきている、そういう現状にあるんではないかなというふうに思っています。
 その影響でございますけれども、地方分権の流れにもありますように、いわゆるそれが地域で機能するような、いわゆる活動拠点としての場としてある程度明確に位置付けされれば、それはある程度の融通性は出てもそう影響はないだろうというふうに思っております。特にそれは、一律的にやることがいいのかどうなのかというようなところにもございますので、今回もできる規定としてそれは残ったということでございますので、私はそう影響的にはないんではないかなというふうに思っております。
○紙智子君 新規就農者が地域の農業の担い手として定着するためには地域全体で育てていく体制というのはとても大事だと思うんですね。その点で、地域の普及所や普及員の果たす役割というのは大きいと思うんですけれども、その点についても一言どうでしょう。
○参考人(種本博君) 新規就農者の育成という場面でございます。これも先ほど言いましたように、私どもの機能としてはこれが非常に重要であるというふうに思っておりまして、実は私、昨年まで金沢の普及センターにおりまして、特に、最近の相談に来る人というのは新規参入される方が非常に多いです。土地もなければお金もないし機械もない、そういうような人がよく来ます。実際にいろいろ相談にも乗ります。その中で、単なる夢だけで来る人と、本当に一生懸命にやりたいんだと、土地がどこかにないかという、そういうところから来る人と、二通りおるんですね。
 私どもとしては実際に、一つは、そういう法人等への相談を掛けて、そこで働いて、それから自立するなり、そういう道も一つありますよと。もう一つは、ある程度お金があるという余裕のある方には農地もあっせんといいますか、それは農業委員会の方とも相談しながらやっていくというような形の中であるんですけれども、一番大事なのは、やっぱり技術力というのがそう簡単に身に付かないということなんですね。それをするというのはやっぱり普及員がやらないと、なかなかそう簡単ではない。いわゆる農地なりお金だけの問題ならやるんですけれども、継続的に営農をやるということは、まず技術がないとできないんですね。意外と簡単な感じで入ってきている人も多いので、その辺については地域でやっぱり応援してあげる、そういう体制がないとうまくいかないんではないかなというふうに思っております。
○紙智子君 どうもありがとうございました。
 じゃ、続きまして、中園良行参考人にお伺いしたいと思います。
 新規参入者にとってやっぱり資金問題というのは最大の課題だというふうに思うんですけれども、国が行う就農支援資金による無利子融資、これだけではやっぱり、融資だけではなかなかという、不十分だと。参入を進めるために現場では多くの自治体で独自に償還免除をしたり、あるいは助成措置を取っているというところもあるというように思うんですけれども、どの程度自治体で償還免除や独自の助成を行っているか、この点は掌握されておりますでしょうか。もしされていれば、どのくらいあるのかということと、それからどういう効果が出ているのかということをお聞きしたいと思います。
○参考人(中園良行君) 具体的な数字についてはちょっと私、今手持ちございません。確かに資金の問題は大切な問題であるし、おっしゃるように、単に資金だけではなくて、今度はリースという方式だとか、そういう意味で市町村の独自の支援措置が増えていることは事実でございます。
○紙智子君 就農支援資金は創設から約九年、今まで経過しているんですね。それで、貸付実績の推移を見ますと増加傾向にあるわけですけれども、貸付額を下回っていますよね。それで、非農家出身の新規参入者にとってはなかなか使いにくいんじゃないか、そういうこともあるんじゃないかということなんですけれども。
 例えば、就農計画を承認してもらわなきゃいけないだとか、それから保証人がないといけないとか返済の問題とか、ちょっとそういういろいろ相談なんかも受けているかと思うんですけれども、実態や出されている意見なんかあれば御紹介いただきたいと思うんですけれども、あと改善点も含めて。
○参考人(中園良行君) お話を伺っていますと、先生今御指摘がありましたような保証人の問題だとかいうお話はよく現場で聞きます。それとともに、やっぱり現場は地域でございますので、地域にいかに溶け込むかという相談が一番多うございまして、私どももう既に就農された先輩の方々ともお付き合いもあるものですから、その話をお聞きしましたら、熊本の木之内農園の社長さんなんですけれども、五か条あるんだと、地域ときっちりやるためには。道で出会ったときには必ずだれでもいいからあいさつしなさい、それから三年間は村の酒飲みには最後まで残れ、それから三点目は契約書だとか言うな、人と人との口約束を大事にせい、それから四点目は村の役職を回ってきたらいろいろあるけれども必ず引き受けろというようなことをおっしゃっておりまして、地域との関係が大変大事だというふうに思っておるところでございます。
○紙智子君 ありがとうございました。
 それでは次に、中釜靖子参考人にお聞きしたいと思います。
 先ほどからいろんな方から質問もされているんでちょっと重なる部分もあるんですけれども、二〇〇二年の九月の全国農業新聞で女性農業委員会会長の座談会されていますよね。そのやり取りを見ていたんですけれども、今後の活動目標の中で、荒れ地の解消をどう実現するかということが課題だということをおっしゃっておられまして、それで、私、実は地元北海道なんですけれども、北海道も女性の農業委員が最近増えてきているんですけれども、お話聞きますと、確かに優良農地は受け手がすぐあると、だけれども問題は受け手のない土地、割と荒れているとか牧草地のようなところだとか、なかなか受け手がないところをどうするかというのが非常に悩ましいということを、苦労しているという話をされていまして、いろいろ先ほどの話の中にもあったんですけれども、やはり今農業情勢が厳しい中で、この受け手のいない農地をどうするかというところで、会長さんとしてその点で苦労されている点、努力されている点、どういうことがあるのかということと、それと併せて行政に対する要望などあればお聞きしたいと思います。
○参考人(中釜靖子君) 先ほど羽田先生の方からも質問がありまして、少し重なった答えになるかもしれませんけれども。
 私も、農業委員会としての大きな目的は農地を守るということが一つの大きな柱ですので、そこの荒れ地をどう守っていくかというのがもう一番の頭にありましたので、やっぱり集積というのは、優良農地は非常に、認定農業者とか、耕作をしやすい部分は先ほど先生言われるようにしてもらえて、使ってもらえるんですよ。でも、私たちが表現する言葉の中で虫食い状態の荒れ地と言うんですけれども、点々とあっちこっちにある荒れ地というのは、そういう大きな認定農業者の集積して耕作しない、経営条件が悪いところとなるとどうしても耕作してもらえないというのがあって、そういう虫食い状態の荒れ地をどう解消していくかというのが一つの大きな課題であります。
 今、私たちは、私がさっきも言いましたように、子供たちと食農教育、農業体験をさせるというのが一つの柱で、それは私たち農業委員会だけではどうしても難しい部分がありますので、教育委員会で子供たちの教育の柱の中に農業体験、食農教育を入れようという柱と、そして今度は高齢者対策、福祉の関係の部署のところに、高齢者対策の中で元気な地域の高齢者をそこの地域の子供たちを教える先生になってもらう、そうすると高齢者は先生と呼ばれて何か自分が生きがいを持つとなおさら元気になる、そういうことで地域活性化もなる。
 地域の高齢者対策、子供の教育の問題、そういうのを行政が横で連携取りながら、一緒にこれからやっていかないと、縦割りだけでは非常に難しいというのが私の農業委員会長をするときの考えでしたので、それを、先ほど言われたように、行政に、今、町長さんの方に、そういう形で町長さんからそういう各部署に連携取るような会議、推進会議みたいな会議を作って取り組もうじゃないですかという提案を再三しているんですけれども、新規事業は合併で先ほど言われたようにストップが掛かっていまして、今できない状態でありますけれども、これはどうしても取り組んでいかなければ、荒れ地一つの問題じゃないと思います。本当にこれから農業というのを考えたときに、子供たちの教育もそこからやっていかないと大変だと思いますし、高齢者問題も、いかに元気で一日でも長生きしてもらうかっていうのが一番の柱なんです。そこをするための行政が横の連携というのを非常に取るべきだと思っていますので。
 それと、やっぱり子供たちの教育にかかわれるのは、高齢者でありますけれども、地域の女性なんですよね。子供たちと一緒に、PTA活動で一緒に消費者と連携取れるのも女性ですので、その地域の女性がまたいろいろ参画していくことで地域活性化もつながるんじゃないか、そういうことで荒れ地も少しずつでも解消できるんじゃないかなという思いで、今まだ取組が実際できていませんけれども、そういう思いでこれからも言い続けていくべきだと思っております。
○紙智子君 本当に今のお話聞いても、すごく大事なことをお話しされているというふうに思いまして、やっぱり、この後本当は聞こうと思っていて、それと重なったので続けてお聞きしたいわけですけれども。
 やっぱり食農教育といいますか、しかも活性化、地域の活性化とか、とにかくさっきのいろいろなやり取りから聞いているんですけれども、やっぱり地域の農業委員の活動の中身というのが非常に多面的で、いろんな相互にかかわり合ってされてきているということを思うんです。
 それで、本来そうなんだというふうに思うんですね。とってもそういう意味では幅広い多様な役割を果たしているというふうに思うんですけれども、今回の改正の中で、農業委員会の業務について、農地の利用集積や法人化の推進など、農業構造改革の推進に重点化するというふうに言っているものですから、これは実はこの前、前提のところの質問の中でも私狭めちゃうんじゃないかと、逆にね。せっかくそうやって多面的にいろいろやってきて、それが実態に合ったやり方なんだから、狭めないで、やっぱりそこを本当に生かしていく農業委員会の活動の在り方が大事なんじゃないかというふうに思っているわけなんですけれども、そういう本来の農業委員会の活動の在り方というところから、今回の改正で、やっぱり重点化という中身ももちろん大事な中身はあるけれども、しかし、やっぱり今の現状に照らしてどうかというところでまた一言ちょっとお聞きしたいと思うんですけれどもね。
○参考人(中釜靖子君) 先ほどから言っていますけれども、そういう言葉の中で狭められるんじゃないかなという不安はあるかもしれませんけれども、私たちはそのとらえの中で逆に利用集積を図れないか、有効利用しようという言葉もありますし、そういうのを利用する中では、農業委員会の仕事が余りにも多過ぎたから重点化しようという形でできていると思うんですけれども、そういう中で私たちはそれはできないことじゃないですよね、農地をどう守るかということの中は柱に大きくあるわけですので。そういう形の中でとらえていけば、必ずそれはしてはいけないことじゃないと思っていますので、そこは法律の中でまたしっかり考えていっていただければ。私たちは、余りにも農業委員会の仕事が幅広く、それと行政の担当のところと重なる部分のあった部分を少し明確にしようやというのもうたっているんじゃないかなと。私はまだそこの中身まで、済みません、勉強不足ではっきり分かりませんけれども、そういう役割分担というのをはっきりしていくという中での重点化という言葉を使っているのではないかなと思いますし、農地を守るということに変わりはないと思いますので、そういう本当に多面的な機能をいろんな形まで広くとらえて、農業委員会の役割は大きいと思いますので、そういう中でできるんじゃないかなととらえていますので、是非頑張って私たちもいきたいと思いますので、法の中でもそれを十分できるような法をまた考えていただければ有り難いと思います。
○紙智子君 時間ですか。
○委員長(岩永浩美君) 紙智子君、時間です。
○紙智子君 もう本当は八木先生に一問聞こうと思ったんですけれども、時間になりましたので。──いいですか、ちょっと一言。
○委員長(岩永浩美君) じゃ、簡単に。
○紙智子君 じゃ、最後、一言だけ八木先生に。済みません。
 法案では生産緑地以外の市街化区域内の農地を農業委員会の必置基準面積から除外することになっていて、都市部の農業委員会から批判の声が上がっているんですね。それで、この市街化区域内の農地を除外するという問題は検討会の報告には触れられていないんですけれども、検討会で議論と検討というのはされているんでしょうか。
○参考人(八木宏典君) 懇談会の中で特に明示的には議論をしておりませんけれども、農業委員会の全体の業務量の中で、業務量ですね、その中でどうするかという議論はいたしました。
○紙智子君 ありがとうございました。