<第159回国会 2004年5月11日 農林水産委員会 第14号>


平成十六年五月十一日(火曜日)
   午前十時開会
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本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○政府参考人の出席要求に関する件
○農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農業改良助長法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。ちょっと声が出にくいので聞きづらいかと思いますけれども、御了承いただきたいと思います。
 私は、今日は農業委員会改正法案についてお聞きします。
 これは全国農業会議所が出しているパンフレットで、「農業委員会組織はこんな活動をしています」と、五つの内容が紹介してあって、中を見ますと四つの重点事業ということで、一つは「「農地を守り、活かす」ための取り組み」、二つ目は「担い手・経営 認定農業者など担い手への支援の取り組み」、それから三つ目に「農業者や地域の声を代弁し、実現する取り組み」、四つ目に「地域」ということを書いていて、「「農」と「住」の調和のとれた農村地域づくりと「食」と「農」への国民理解に向けた取り組み」ということで紹介しているパンフ、去年もらったんですけれども。
 この農業委員会制度の在り方といいますか役割というのは、今回の改正で今まで担ってきた農業委員会の役割というのは変わるんでしょうか。

○政府参考人(川村秀三郎君) 農業委員会の改正につきまして今回御提案を申し上げておりますが、これにつきましては、昨今の農業を取り巻く状況、これを考えますと、非常に、優良農地の確保の問題、それから耕作放棄地の解消の問題、それから担い手への農地の利用集積、また農業の経営の法人化、非常に構造政策をめぐる課題、こういうものが非常に重要になってきております。
 こういう構造政策を進めるに当たりましては、やはり農業委員会、これは農業者主体の合議体として成り立っておりますが、農地の権利調整あるいは効率的な利用をやるということにつきましては、非常に公平、客観的にもできますし、またその農地についてのこだわりあるいは農村社会の特質、こういうものを踏まえますと非常にスムーズにできるのではないかということでございまして、そういった農業の土地の、特に土地に関します基本的な性格、役割というものは変更するものではないということで、むしろそういった農地に係ります業務、そういうものを重点化をしまして、その役割を一層発揮してもらうというのが今回の考え方でございます。

○紙智子君 変わるものではないという話がされているわけですけれども、今回の改正で法令以外の任意業務について重点化するというふうに言っているわけですけれども、これは本来の役割をむしろ狭め弱めることになるんじゃないかというふうに思うんです。
 改正案では、農業、農林に関する振興計画を作り、実施の推進と農業技術の改良、それから農作物の病害虫の防除、その他農業生産の増進、農民生活の改善に関する事項、これは任意業務から削除するわけですね。逆に、任意業務となっていなかった農地利用の集積、その他効率的な利用、法人化という、政府の農業構造改革の推進役を農業委員会の任意業務として押し付けることになると。
 これは農業委員会を農水省の下請機関にするものになるんじゃないか、農業委員会の性格を大きく変えることになるんじゃないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(川村秀三郎君) 今般の法律改正に当たりましては、事前にいろんな関係の方々、また国民の意見を代表する方々等に集まっていただきまして、十分な検討を行いました。その結果、非常に農業委員会の活動が総花的であって非常に分かりづらいという御指摘も強かったわけでございます。今後、市町村合併等も行われますし、一定のスリム化等も進行するという中で、農業委員会の基本的な役割、そういうものをより発揮させていくということから考えますと、農業委員会が主体として必ずしもやっていないような業務というものはこれは整理をすべきであるということでございます。
 例えば病虫害の防除等につきましては、基本的には普及なりが担うべきでございますし、また農業や農村地域の振興計画といったものも、基本的には地元の市町村あるいは都道府県、こういう行政主体が作成をするというのが実態であります。
 そういうことも踏まえますと、もちろん農業者の代表としてそういった計画なりいろんな事業の実施に適切に意見を反映するということは非常に重要でございますので、意見表明でありますとか建議、そういったものについては引き続き任務として残すわけでございますが、農業委員会が主体として行っていく業務というものは農地に係る業務に重点化をしたというのが今回の考え方でございます。

○紙智子君 そもそも一九五一年度に発足した当時の国会では、農業委員会の提案の理由として、従来の農業施策の実施において最も欠如していたのは、制度上の農民の自主性が重視されていなかった点だと、どうしても農民の声をして直接都道府県なり市町村の行う農業政策の上に反映させるための民主的な組織が必要だと、これ五一年の二月の衆議院の農水委員会で議論されています。議事録にありますけれども。こういうふうに農業委員会制度の必要性が強調されているわけですね。また、この法律を解説して、農林法規の解説全集、ここでは農業委員会の在り方を、農業全般にわたる問題を農業者の創意と自主的努力によって総合的に解決していくというふうにしているわけです。
 この基本というのは、この間、情勢の変化があったにせよ、今も非常に大事な中心点だというふうに思うんですね。やっぱり変えてはならない点だというふうに思うんです。結局はそれを、農業委員会を結局は目標どおりに進まない農地の利用集積の推進役に専念させるということになるもので、農水省の下請機関となることを求めるものだというふうに言わざるを得ないんですね。農家のやはり代表しての性格を、元々の性格を変質させるものだということを私は指摘せざるを得ないというふうに思うんです。
 それで、大臣、今回の法改正で農業委員会の必置基準面積から生産緑地以外の市街化区域内農地面積を除外すると、加えて農水省は政令改正によってこの必置基準面積の大幅引上げを行おうとしているわけです。
 三月十七日に開かれている地方分権改革推進会議小委員会で農水省に対するヒアリングが行われているんですけれども、そこに出席して説明されている川村経営局長は、農業委員会の必置規制廃止を委員会側から求められて何と言ったかというと、今回は全廃というわけにはいかないんですが、かなり自由度を高めるという方向でかなり大きな一歩を踏み出したと思っておりますと、まず第一歩を踏み出させていただいたと思っていますのでよろしくお願いしたいと思いますというふうに述べているわけです。
 この局長の答えからしますと、今回の改正は、農業委員会の必置規制廃止に向けた第一歩であって、この必置規制を廃止するということが既成事実ということになるんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(川村秀三郎君) 今回の改正はこの地方分権の議論が契機になったことは事実でございます。そういった御指摘を踏まえ、かつ、ただ昨今の農業情勢、これが大きく変化をしておりますので、農業委員会としてどうあるべきかということはこれはむしろ農林水産省としても主体的に検討すべきであると、こういうことで懇談会を開催をいたしまして、現時点でどうあるべきかということを非常に幅広くいろんな見地からまた熱心に御議論をいただいて、その結論を踏まえて今回やっているということでございます。
 農業委員会の在り方について未来永劫現在の案でということではないと思いますが、現時点で考えますと、先ほど来私お答えをしておりますが、最大限のものを御提案させていただいているということでございまして、今後どうするといったことを予断を持って考えているわけではございませんので、その点御理解いただきたいと思います。

○紙智子君 局長の答え方によると、この必置規制を廃止するということは既成の事実のように聞こえるわけですけれども、いや、そうじゃないというんだったら、大臣、これに対して明確に否定する答弁をいただきたいと思います。

○国務大臣(亀井善之君) 先ほども私答弁しておりますけれども、農業委員会、その担い手への農地の利用集積と、こういうこと等、構造政策を推進する上で農業委員会の果たす役割というのは高まっておるわけであります。
 そういう面で、農業者の合議体、こういうことでいろいろ今日までもその実績も踏んでおるわけでありまして、私は、引き続き市町村の必置機関としての重要性、これは持っておるわけでありますので、私もこの地方分権の会議あるいは経済財政諮問会議、こういうところに参りましても、改良助長法と併せてこの農業委員会の役割、そして今日まで非常にその実績を残しておられることはかねがね申しておるところでもございます。
 しかし、若干、時代の趨勢、そういう面でスリム化ということは、これ何の、どの機関、どの仕事につきましてもそれは時代の要請にこたえなければならないわけでありますが、しかしその農業委員会の役割というのは、これ農業者にとっては大変重要な機関であるわけでありますので、これは十分守っていかなければならないと、こう思っております。

○紙智子君 スリム化ということなんかも一方で言いつつ、しかし守らなきゃいけないという話もされたわけですけれども、今回の改正というのは農業委員会の解体に向けた大きな一歩になりかねない問題があるというふうに思うんです。
 必置基準面積から生産緑地以外の市街化区域内の農地面積を除外した場合、新たに二十三市町村が必置基準面積の九十ヘクタールを割ることになります。さらに、政令改正によって必置基準面積を大幅引き上げるというふうにしていますね。大幅というのは、これ、市町村合併の推進に併せて現行の二倍から三倍というふうにも言われているんですけれども、そのような引上げ幅になるというふうに考えていいんでしょうか。

○政府参考人(川村秀三郎君) 農業委員会の必置基準の面積につきましては、昨年六月の基本方針二〇〇三、この中で既に方向としては出ておりまして、大幅な引上げを行うということが結論付けてあるわけでございます。
 今後、この方針と、それから今回の改正を踏まえまして、政令の段階でこの具体的な数字を決めることになるわけでございますが、基本的な考え方といたしましては、今後の市町村合併に伴います農業委員会の区域がどの程度拡大し、その中の農地の面積がどうなるのかといった見通し、それから、これはあくまで業務量と負担との関係でございますので、その農地の規模別の業務量、こういうものがどういうふうに推移するのかという、どういうものになるのかと、こういうものを勘案をいたしまして、よく精査をした上で客観的数字に基づいて決定をしたいと、こういうふうに思っているところであります。

○紙智子君 今回の改正では見送られたんですけれども、農業委員会のこの必置規制自体が攻撃の中心になっていて、その点については農業関係者からは強い反発があったと思うんです。必置基準は農業委員会の存廃にかかわる重要な問題です。全国農業会議所からも政令に委任される必置基準面積について、農地総量の確保や農地利用の管理、それから農地法等の法令業務の適正執行等に支障のない範囲での水準とするように強く要請するというふうに要望が出されているんですよね。
 それで、引上げ幅がどうなるかというのは重大な問題で、本来これは法案審議の場に示されていなければいけないというふうに思うんです。必置基準面積から生産緑地以外の市街化区域内の農地面積を除外し、かつ必置基準面積を二倍にした場合、それから三倍にした場合に必置規制から外れる自治体数はどうなりますか。

○政府参考人(川村秀三郎君) 仮定の問題としてお尋ねでございます。
 今後の市町村合併、これがどういうふうに推移するか、またその農地がどの程度推移するか、どういう状況になるのかというようなことも踏まえなくちゃいけませんので、なかなかこれはお答えしづらいところでございますが、仮に平成十六年一月一日現在におきます市町村数、あるいは農地面積、そういうものをベース、そしてかつ現行の基準面積を二倍に引き上げた場合で言いますと、そういう仮定の下でございますので御理解いただきたいと思いますが、二倍の場合は四百四市区町村、三倍の場合は五百九十七市町村ということに計算上はなります。

○紙智子君 新たに増える市町村数と累計で幾つかということで言ってください。

○政府参考人(川村秀三郎君) 現在、任意必置とされているのが二百四でございますが、それが二倍にした場合は四百四でございますので、その差が二百ですか、それから三倍にした場合五百九十七で、二百四を引きますから三百九十三ですか、そういうことになります。

○紙智子君 三倍の場合ですよ。

○政府参考人(川村秀三郎君) 二百四を引きますから、五百九十七から二百四を引きますので四百……

○委員長(岩永浩美君) 正式に答弁してください。

○政府参考人(川村秀三郎君) 三百九十三ですね、はい、済みません。

○紙智子君 二倍にした場合、大体一三%くらいですよね。それから、三倍にした場合、大体二割ぐらいの自治体が結局必置基準以下になるということだと思うんです。
 ここで私、問題にしたいのは、都市農業に対する影響の問題なんですね。
 今回の改正による影響を都市部で見ますと、必置基準面積が二倍になった場合に、例えば東京ですとほとんどの市区町村で農業委員会が廃止される可能性が出てきて、残るのは、二十三区では練馬に、それから三多摩では八王子、町田、青梅、あきる野、立川、小平、東久留米、清瀬の端、あと瑞穂、大島、八丈の三町のみということになりかねないわけです。大阪で見ますと、四十四市町村中四三%の十九市町が下回ることになるんですね。三倍の二百七十ヘクタールになりますと、これ二十八市町村、三分の二が必置規制が外れることになるわけです。これは農地面積では大阪府の農地面積の三割を占めるんですね。
 三大都市圏で農業委員会の機能というのが大幅に後退するということは、これ否定できないと思うんですよ。都市農業における農業委員会の役割を否定することになるんじゃないでしょうか。いかがですか。

○政府参考人(川村秀三郎君) 今回の必置基準面積の引上げは、農業、都市農業と、重要性、そういうものとリンクしているものではございません。あくまでそういう農業委員会を置くことのコスト、言わば費用対効果といいますか、事務量とコストの関係、そういうことで市町村を義務付けることが過度の負担を与えることになってしまうという懸念から、その業務量に着目をいたしまして一定の線引きを行うということでございまして、都市農業を軽視するとかそういうものではございませんし、かつその基準、これはあくまで市町村の自主的な判断で農業委員会を置くかどうかという線でございまして、下回る場合でも当然置くことは可能でございますし、置くことに対する交付金の算定というのは従来どおり行うということでございますので、都市農業に対して直接的な影響を与えるというものではないというふうに考えております。

○紙智子君 今、最初の方のお答えですと、業務量に着目してというような話がありましたけれども、農業委員会は転用許可だけで農地を守っているわけじゃないと思うんですね。都市部の農業委員は、生産緑地の管理や、それから市民農園などの取組、相続への関与や相談など、重要な役割を果たしていると思うんです。それからまた、農民の代表として地域農業や農民にかかわる問題で意見を公表し、建議をし、国や自治体にそれを反映することができると。これらの活動で農地を守って地域農業を振興しているわけですよね。
 東京都の農業会議が「都市農業軽視の農業委員会法改正を糾弾する」という声明を四月六日にしているんですけれども、これは私、当然だと思うんです。基本法では都市農業について、都市住民の需要に即した農業生産の振興を図るために必要な施策を講ずるというようにしているわけです。東京都が実施したアンケートでも、九四%が東京に農業や農地を残したいというふうに言っているわけですね。
 だから、今回の改正は都市農業の振興に大きな支障を来し、都市住民の意向にも反するものだというふうに思うんですけれども、その辺の御認識いかがでしょうか。

○政府参考人(川村秀三郎君) 答弁として繰り返しになるかもしれませんが、今回の必置基準の引上げは、都市農業を軽視するとかそういう意味では全くございません。全く業務の量から判断をするという観点でございます。
 そういう意味で、今、委員が御指摘の中で生産緑地の問題を触れられましたが、生産緑地については確かにいろいろな業務が、それ以外の市街化区域内農地と比べまして業務がいろいろ想定をされております。したがいまして、その市街化区域内農地を一律に除くということではなくて、生産緑地についてはやはりこれは必置基準面積の算定にカウントをするということで、生産緑地以外の市街化区域内農地をカウントからは除外をするということでございます。したがいまして、算定上そういう引上げが行われましても、農業委員会が必要であるというふうに判断をされれば、それは置くことができるということでございます。

○紙智子君 もう一つ、先ほど交付金は変わらないということを言っていましたけれども、基準以下の自治体も任意設置されるという見通しをおっしゃるわけですよね。それはどういう根拠でそういうふうにおっしゃっているのか。
 必置規制以下の自治体の任意設置について、懇談会報告の中では、農業委員会の設置の必要性の検証等の観点から廃止も含めた設置の見直しの取組が進められているが、これらの取組を行政、系統組織として更に促進することが重要だと指摘しているわけです。これは、任意設置の農業委員会は廃止を促進すべきということなんじゃないですか。

○政府参考人(川村秀三郎君) 正に、この引上げによりまして、地元の市町村等の判断におきまして置くか置かないか、それは自由度が広がっていくということでございます。業務的な観点からいたしますと、農業委員会の業務が少ないところは正に無理をして設置をする必要はないというのが我々の考え方でございます。

○紙智子君 全国農業会議所は組織検討結果で、現行の必置基準面積以下の農業委員会の回答は、市町村合併に伴って廃止の方向で検討する予定というのが三七%、それから廃止は困難だというのが三五%あると。
 地方分権改革推進会議の小委員会、これ三月七日にやられているものですけれども、多分川村経営局長も参加されていると思うんですけれども、このとき西室議長が、必置規制を外すということがすぐに廃止につながらないどころか、ずっと慣習的にそれを続けているところがあるように伺ったと、やはり規制が外れたら、それをちゃんと行政の方ではもう一回見直すということがなければいけないと思いますというふうに批判の発言しているんですよね。これは、廃止に向けて見直せという趣旨の発言なんじゃないんですか。

○政府参考人(川村秀三郎君) 議長の真意を確認したわけではございませんが、分権推進会議の立場からすれば、そういう線を引いた以上、減少していくというのを想定はされていると思いますが、我々としては今申し上げたような考え方で、あくまで市町村の判断によって設置するのかしないのかを決めていただきたいと、こういうふうに考えています。

○紙智子君 市町村の判断というふうに、市町村にもうげたを預ける形での答弁になるわけですけれども、実際には市町村自身も財政的には厳しくなっている中で、やっぱり任意設置ということでそれで大丈夫というふうな根拠というのは示せないと思うんですね。先にやっぱりスリム化ありきで、都市部、それから小規模農業委員会というのが廃止の流れが強まることというのは避けられないと思うんですよ。私は、非常にこれは現場の声からいっても問題だというふうに思います。
 続きまして、農業生産法人の農業委員会への報告義務について質問します。
 耕地面積の減少は歯止めが掛からないという中で、基本計画の策定について九八年以後だけを見ても、四百九十一万ヘクタールから四百七十四万ヘクタールに減少しているわけですね。このままでは、基本計画の二〇一〇年において四百七十万ヘクタールと、この維持そのものが困難になっていると思うんです。大体四百五十万ヘクタールか四百六十五万というふうに推定されているわけですけれども、農地を守ることは農業委員会の重要な役割なわけですけれども、その業務にかかわる問題でお聞きしたいと思います。
 それで、二〇〇〇年の農地法の改正で、株式会社形態の農業生産法人による農地取得を認めた際に、年一回農業生産法人の農業委員会への報告を義務付けたと思います。これは農業生産法人の要件適合性を担保するための措置だったと思いますけれども、確認したいと思います。

○政府参考人(川村秀三郎君) お尋ねの株式会社形態の生産法人、これの導入に当たりまして農業生産法人の要件、これを厳格にチェックしていくということで農地法を改正いたしまして、農業生産法人に対しまして毎年事業の状況等を農業委員会に報告するように義務付けたところでございます。

○紙智子君 この農地法改正の国会の審議の中でも、農外資本に対する支配と転用目的による農地取得を排除するためにと説明ありましたけれども、農業生産法人をチェックする二重三重の手だてを取るんだということが強調されたというふうに思います。その一つが報告義務付けの徹底で、それに基づく国の土地買収の仕組みだったと思うんですが、農水省は、農業生産法人が農業委員会に対する報告義務を果たしているのか、その状況については掌握していますでしょうか。

○政府参考人(川村秀三郎君) ただいま申し上げたような報告義務というものを農業委員会、それぞれの地域の農業委員会に対しまして報告するように農業生産法人に義務付けをしたところは今申し上げたとおりでございます。農業委員会は正にその地域の農業事情に精通をして責任を持っておられるということでございますので、当該報告の状況を逐一すべて農林水産省に報告する仕組みにはなっておりません。

○紙智子君 私も実際に幾つかの農業生産法人が区域内にある農業委員さんの方に聞いてみました。それで伺いますと、初めに法人を立ち上げるときには出されているんだけれども、それ以降は一回もないと。それから、今までにただの一回も見たことがないというようなことが話をされていまして、あれだけ繰り返し議論をされていながらこういう状況になっていていいのかということを思うわけです。
 それで、法を施行してからは三年既に経過しているわけですけれども、それにもかかわらず地域に任せているという、こういうことでいいのかと。農水省がやっぱり農業生産法人の報告実施状況について把握するということが本来やられるべきであって、そうでなければ農外資本による農地や、農地の転用目的の排除の担保措置というのにならないと思うんですね。その辺のところはいかがですか。

○政府参考人(川村秀三郎君) 農地法の仕組みを考えます場合に、基本的にその地域の農業事情に精通をした農業委員会に任せるということで、制度としてその当該報告が農水省に自動的に上がってくるという仕組みには取っておりません。これは地方分権その他もありますし、そういう逐一縛るということは法制的に無理でございます。ただ、問題となるような事例につきましては実情を連絡するように指導しております。その結果、まだ十五年度の状況は出ておりませんが、十四年度には現場において三件ほど勧告を行った例は承知をしております。

○紙智子君 農地法の改正のときにやっぱり慎重に審議をして、そしてやっぱり規制緩和する場合に繰り返しそこはちゃんと二重三重のチェックなんだという議論を踏まえてきているわけですよね。それが、実際に聞いてみたら農業委員会の場では全然見ていないと、そういう議論になっていないというところがどれだけあるかということすら分からない状況なわけですよ。
 であれば、農水省としては把握しないということじゃなくて、やっぱりきちっとこれは把握もするとか、そういう指導を強めるという必要はあるんじゃないですか。やっぱり都合のいいときだけ地方分権という言い方じゃなくて、そこはやっぱり責任持ってやらなければ少しも担保の措置というのにならないと思うんですけれども、もう一度いかがですか。

○政府参考人(川村秀三郎君) 今申し上げましたとおり、問題のない状況では構わないと思いますが、いろいろそれぞれの地域において問題となったような状況がありました場合には、農林省の方にきちんと連絡をするということでの指導を更に徹底してまいりたいと思っております。

○紙智子君 ちょっとそれじゃ納得しないんですよね。
 大臣、そういうやっぱり現に聞き取りもしていないと、言いっ放しなわけですよ。問題のあるところだけというんですけれども、実際には、なぜこういうふうに繰り返し言うかといいますと、例えば千葉県の農業会議所、千葉県農業会議は、農地法の改正そして農業経営基盤強化促進法の改正後、相談面でどういう変化が起きているかチェックしているわけですね。農業生産法人に関する相談の中で二〇〇二年度は九十三件中三十四件、二〇〇三年度は百十三件中二十四件が生産法人設立を装った産廃関連事業についての相談がされていたと。NPO法人を介在させるなど手口も巧妙になってきているということなんですね。規制緩和に伴ってこの農地の権利を取得しようとする不当な動きというのが活発になっていると。
 だから、入口のところでの規制を厳格にすると同時にやっぱり農業生産法人に対するチェックというのはこれは不可欠だと。農水省としてやっぱり農業生産法人の報告が実施されるように調査、指導すべきだという趣旨でもって今繰り返して言っているんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(亀井善之君) 地域の事情、農業事情に精通をし、責任を持って農地行政に当たっております農業委員会に報告をさせ、また農業委員会に農業生産法人の要件チェックを行わせるのが最も適当と、このように私も考えるわけでありまして、そういう面で農林水産省といたしましても農業生産法人からの報告や農業委員会による要件チェックと、こういうものが円滑にまた適切に行われるように事務処理の指導と、こういうことをしておると、このように思っております。また、そのようにさせてまいりたいと、こう思っております。

○紙智子君 これからも更に強化するということで受け止めてよろしいんでしょうか。

○国務大臣(亀井善之君) 十分指導してまいりたいと、こう思っております。

○紙智子君 やはり今度の問題通じて、農業委員会にやっぱり土地の流動化含めて責任を転嫁するのではなくて、やっぱり農水省が、本当に担保措置をめぐって、これがあるから農外資本の支配の農地荒廃を防ぐことができるというふうに今まで繰り返し言ってきたわけですから、本当にそういう点では本気になって優良農地を守る立場でやっていただきたいというふうに最後に申し上げまして、このあとの法案の中身についてはまた次の機会にやらせていただきたいということで、これで質問を終わりたいと思います。