<第159回国会 2004年3月30日 農林水産委員会 第8号>


平成十六年三月三十日(火曜日)
   午前十時開会

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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○森林法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○植物防疫法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
それでまず、国有林の管理で、特に自然公園の樹木の管理をめぐってお聞きしたいと思います。
 私、住んでいるところは札幌なんですけれども、札幌と江別の間に野幌というところがありまして、ここに野幌原始林という国有林を含む貴重な自然公園があります。それで、昔から、家族ぐるみでレクリエーションですとか、それから小学生の体験教育ですとかバードウオッチングですとか、広く市民にも親しまれ愛されているところです。
 市民の中でも自然林を守っていこうということで自主的な活動がありますし、この自然公園の中の立ち木の管理をめぐって、毎年、安全性の視点に立って危険木について森林管理署が伐採計画を作って、危なくないようにということなんですけれども、そこで木を伐採するわけです。その際、市民のグループの中から切る必要のない木まで切っているんじゃないかというような意見が出て、本当にこの森林、昔から親しんできているところで、市民、道民にとっても森はやっぱりみんなのものなんだと、だから一度計画を作ったらもう全部伐採するんだということではなくて、我々の意見も聞いてほしいということで出されて、結局、何度かやり取りしたわけですけれども、結果的に、その出された意見を受け止めつつといいますか、生かされる中身で調整図られたというふうに聞いているんですけれども。
 ちょっとこの対応をめぐって、対応についてどういう対応をされたのかということをお聞きしておきたいと思います。
○政府参考人(前田直登君) 今お話ありましたのは、北海道立の自然公園の野幌森林公園内の危険木の伐採をめぐった話合いの話だと思います。
 状況につきましては先生の方がお詳しいとは思いますけれども、どうしてもそういった中では、遊歩道とかあるいは人が入り込むところにおきまして危険木、そういったものがございまして、そういったものにつきましてはある程度最初に取り除いておかないと、そこに散策に来た方、そういった方々がそれで被害を受けたりしますと大変なことになるということで、毎年調査しまして、こういった中で危険なものについては伐採するということでやってきたわけでございます。
 今、先生からもお話ございましたけれども、そういった中で、ちなみに例えば十五年度ですと、私どもの方が聞いておりますところでは、現地の方ではずっと見て回って百九十七本、これがこのままにしておくと危ないのではないかと、歩行者にまた危害を加えるんじゃないかというように予定したわけでありますけれども、いろんな様々なところからの御意見では、ちょっと多過ぎるというふうなことで何回か意見のやり取りがありまして、最終的には現地の方も見まして、そういった方々の意見、こういったものも受けまして、百六十本、これにつきまして縮小しまして処置したというように承知しているところでございます。
○紙智子君 私、この対応というか、聞きまして、やっぱり国民参加の森林づくりを推進しようという視点で見ても、市民が参加をして、やっぱりみんなで一緒に森林を大事に育てていこうということでは積極的な経験だというふうに思うんですね。
 それで、たまたまこういう言う人がいて、意見を言う人がいて、それで明らかになったわけですけれども、こうした自然公園の場合、市民に計画を示して意見を聞く場を設定するとか、こういう一方通行でなく、国民、市民も双方向で参加できるような森林づくりのシステムというのはやはり整備して確立するというのも大事なんじゃないかというふうに思うんです。
 森林と人の共生林に指定されてもいると思うんですけれども、林野庁の努力と併せて環境省とも連携をしてやっていくことが大事だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 確かに、御案内のように、私どももこの国有林、国民共通の財産であると。そういった中で、特にこの抜本改革、こういったものを通じまして正に国民の森林として位置付けまして、森林との触れ合いですとか国民参加、こういったものに努めているところであるわけでございます。
 そういった中で、特に、とりわけ今もお話もございましたけれども、私どもの方も、そういった中で自然景観に優れたようなところ、そういったところにつきまして例えば自然休養林というような形で指定いたしまして、そういったところにつきましては、実は多くのところで地元自治体で構成されております保護管理協議会、こういったものを多く設けておりまして、そういった下で利用者の利便を図るための歩道整備ですとかあるいは休憩施設、そういったものの設置に加えまして、利用者の安全確保を図るための危険木の伐採、除去、こういったものにも努めているところでございまして、そういった中で危険木の伐採等につきましては、今後とも自然休養林の管理を行う側としての利用者の安全を確保するということも念頭に置きながら、地域住民等から出されました意見、要望も踏まえながら、立木の、立ち木といいますか、立ち木の状態、こういったものを勘案して行ってまいりたいというように考えている次第でございます。
○紙智子君 よろしくお願いしたいと思います。
 それじゃ、森林ボランティアの問題で、次、質問さしていただきます。
 NPO法人などの活動を支援することは、国民に森林や林業の重要性を知ってもらうということでその機会を広げるということや、それから、将来そういう森林の、林業の担い手を生み出すということでは、そういう可能性も含んでいて、意義のあることだというふうに思います。
 今回の改正で、森林ボランティア活動を行っているNPO法人等と森林所有者等が締結する森林施業の実施に関する協定ということでは、市町村長が認可する制度を創設することになるわけですけれども、全国で初年度にこの施業実施協定を結んで活動する団体というのはどのくらいできるでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 若干少しこの背景等も御説明させていただきたいと思うんですが、市町村長が行います森林所有者と森林ボランティア団体との協定の認可に当たりましては、当然のことながら、施業の実施時期ですとか方法あるいは内容、こういったものを勘案いたしまして、協定を遵守いたしまして適正な森林施業、こういったものを実施し得る能力を有するNPO等、ここが森林所有者等と協定を締結するものというふうに考えられているわけでございます。
 こういったNPO等の中には、確かに一時的な植林等の施業に限定した活動を行っているものも多く、十分な施業技術を有していない団体といったものも多く見られます。しかしながら、一方では、森林所有者等との一定の取決めに基づきまして継続的に間伐等の森林施業を実施している団体が増えておりまして、実はこのような団体、昨年十月の調査におきまして全国で約七十団体把握しているところでございますが、今後このような森林施業の経験を積んだ団体、これが協定にまずは参加していくというように考えられるところでございます。
○紙智子君 森林所有者にとってもこの協定のメリットを期待することにもなると思うんですけれども、森林区域・面積だけでなく、NPO法人等の行う森林施業の種類やそれから実施方法、時期なども細かく協定を結ぶことになるわけですよね。で、NPO法人等の側の責任も出てくるということでは、今までとちょっと状況も変わってくるというふうに思うんです。
 それで、先ほどもちょっと出ていましたけれども、安全対策という問題も、これは非常に大事な問題だというふうに思います。最近も、二月の末に、兵庫でですかね、痛ましい事故が起きています。死亡事故ですね。ベテランの森林ボランティアが間伐作業中にチルホール、ねらった方向に倒すものだと思いますけれども、そのチルホールを扱っていて、倒した木の下敷きになってしまったと、そういう事故だったわけですけれども。日ごろからやっぱり事故が起きないようにということは十分注意を払って作業に当たっているというように思うんですけれども、それでも起こってしまうと。やっぱり、なぜそうなるのかという原因の解明ですとか、安全対策にこれ生かしていかなきゃいけないということでもあると思うんです。
 NPO団体が加わる新しい試みでもあるということでは、様々な事故の原因の解明とこの安全システムの確立ということについては、やっぱり林野庁も責任を持って講ずる必要があるというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 確かに、実は先ほどもちょっとお話し申し上げたかと思うんですが、森林ボランティア活動におきまして、安全対策につきましては、十二年のときのアンケート調査におきまして、ボランティア団体の約三割、これが安全の確保あるいは指導者の養成を、その活動で苦労している点というふうに挙げておられます。
 そういったことも踏まえまして、私どもといたしましても、森林ボランティア活動におきます安全確保等のためボランティアの指導者の養成研修に対します支援を行ってきたところでございますし、さらに十六年度におきましても、森林ボランティア活動への参加者を対象といたしまして、NPO等が実施いたします安全技術研修、こういったところへも支援を行うことにしているところでございます。
 当然、そういった中で不幸にもいろんな災害、そういったものが出た場合には、当然私どももその内容を把握して、関係のところにそういったものの情報を流すと同時に注意喚起をしていきたい、そういうふうに考えている次第でございます。
○紙智子君 安全対策については、今までも多くの関係者が指摘してきている問題だと思うんです。現場の人も承知して、なお起こる可能性もあると。それで、十五年度の保険の申請だけでも全国三十六件あったというふうに聞いています。二重三重の安全対策を取って、やっぱり責任体制もはっきりしておくというのは必要なことだと思うんですね。
 既存の森林組合の作業班や雇用関係のある事業体とはまた違った性格なわけです。NPO団体、自主的にやるということでもあるわけですけれども、NPO団体の性格や特徴に即した安全マニュアルが必要だというふうに思うんですけれども、この問題では、法律改正して位置付けるというふうになっているわけですから、団体と行政の協力や連携、このルールも作っておく必要があるんじゃないかというふうに思うんですが、この点いかがでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) ボランティア団体の活動ですので、そういったものにいろいろ条件的な枠をはめるというのはいかがかとは思いますけれども、確かにボランティア団体の活動、そういった中での安全確保、こういったものは大事だと思いますし、また、私どもも、今申し上げましたように、安全対策のためにいろいろな支援を行っているところでございます。
 また、今ちょっとお話にありましたけれども、事故に備えまして、民間におきまして森林ボランティア活動に対応いたしました保険といったものも複数ございまして、これらに加入することもある意味では望ましいというふうに思います。林野庁といたしましても、様々な機会を通じましてこのような民間ボランティアの保険につきまして紹介あるいは情報提供、こういったことも行っていきたいというように考えている次第でございます。
○紙智子君 それからもう一つ、国有林で今度新たに森林環境保全ふれあいセンターが新設されることになります。センターとして行うことでいえば、国有林での技術支援などの活動が中心になるというふうに聞いているわけですけれども、このボランティア団体の安全対策にかかわってどういうことができるだろうかというふうに思うんですけれども、ボランティア団体から見ますと、この対象は同じなんですね。民有林、国有林、施業というか、やるわけですけれども、やっぱり民有林、国有林で情報を共有して相談の窓口を充実していくということができればなおいいかというふうに思うんですが、どうでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 今度、四月一日から確かに御指摘のようなふれあいセンター、こういった、国有林といたしましても各地にそういった組織を作りまして、いろんな地域の国民参加の森林づくり、そういったものに資していこうということで取り組んでいきたいというふうに考えております。
 また、そのボランティアの関係につきましては、実は昨年の夏には林野庁の本庁の方にもボランティアの窓口を作りまして、いろいろな相談に応じていると。さらには各森林管理局、さらには各森林管理署、こちらの方にもそれぞれボランティアの相談窓口、こういったものを設けまして、いろいろ相談に乗っていきたいというようなことで今取り組んでいるところでございます。
 私どもも、こういった民有林と国有林、いろんな形で連携取りながらやっていくことが大事だと思いますので、今後とも民有林サイドの方とも連携を取りながら対応していきたいというように考えている次第でございます。
○紙智子君 あと、二〇〇一年以降の林野、土地の売払いの実績を見てみますと、五十ヘクタール以下の林野それから土地の売払いは千四百二十三件なんですね、二〇〇一年以降ということで見ますと。林野に限りますと千十六件と。大半が道路用地なんですけれども、そのほかに公共施設用地や公園やゴルフ場用地もあると。自治体に貸し出してもいいわけで、とにかく売ればいいということではなくして、国民共有の財産としてこれを維持して、例えばフィールドとして提供するとか、あるいはボランティア団体などに広く提供するとか、こういうことも大事ではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 私どもも国有林につきまして、いたずらにとにかく金を稼ぐためにばんばんどこでもかしこでも土地を売っているわけでは決してなくて、それなりに原則堅持森林、こういったものを想定し、例えば保安林とか大事なものにつきましては国として今後とも引き続き守っていく。あるいは一部豆粒みたいなところで飛び地みたいなところがありますれば、そういったところでは、要望等があった場合にはそれぞれの要件、そういったものを審査した上で売払いあるいは貸付け、そういったことを行っているところでございまして、今後とも国有林野の管理、特に利活用、そういったものにつきましては適切に対応していきたいというふうに考えているところでございます。
 なお、今お話ございましたボランティアのフィールドというお話でございますが、実は、私どもも先般の国有林の抜本改革、そういった中で、国民に開かれた森林にしていきたいという観点から、実は各森林管理署、全国の各森林管理署に少なくとも一か所ずつぐらいはふれあいの森というふうな形でエリアを設定いたしまして、そういったところで森林ボランティアの方々あるいは地元の有志の方々、そういった方々がいろんな森林体験できる、あるいは森林作業に携わることができる、そういった形のものに心掛けてといいますか、努めているところでございますし、さらには、最近ですと遊々の森とか森林教育の森、そういったものも作ったり、あるいは古事の森、いわゆるいろんなボランティアの力をかりながら森林を育てていくといったようなエリアも設定して取り組んでいるところでございまして、今後とも積極的に取り組んでいきたいというように考えている次第でございます。
○紙智子君 森林所有者等と協定を結んだこのNPO法人等の森林整備の活動というものは、民有林整備補助の対象になると思いますけれども、この補助単価の基準についてはどういう検討をされているんでしょうか。既存の団体と差を付けるのかということなんかもあるのかどうか、その辺のところをお聞きします。
○政府参考人(前田直登君) 今回の森林法の改正と併せまして、実は施行令の一部改正を行いまして、今お話に出てきました森林ボランティア、これが所有者の方と協定を結んで、それを市町村長が認定すると。そういった場所において森林ボランティアが森林の保育ですとかそういったものに携わった場合につきましては森林整備事業の助成対象に入れるということで、施行令の一部を改正いたしまして対応していきたいというように考えているところでございます。
 そして、ただ、こういったボランティアの活動につきましては、専業として行っております森林組合あるいは林業事業体、そういったいわゆる通常の森林整備事業の実施主体とは、その性格あるいはその必要とする経費、そういったものの内容が異なりますことから、森林組合等の通常の事業実施主体とは異なる補助単価を設定していくという考え方を持っておるところでございます。
○紙智子君 将来、NPO法人がだんだん発展というか育っていった場合に、地域によっては、森林組合や伐採の仕事をしている林業事業者との競合ということもあるかもしれないと、その場合のすみ分けなんかも検討しておく必要性なんかはどのように考えておられるでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 確かに、森林の整備保全活動を行っておられます森林ボランティアの団体の数は増加傾向にあるわけでございますけれども、やはり何といいましても、一般市民の参加による活動が主でありまして、高い技術力あるいはその運営体制、こういったものを備えている場合は少ないわけでございます。そういう意味では、直ちに森林整備の担い手や労働力というものにはなかなかなりにくいという面を有しておりますし、また森林ボランティア団体の活動につきましては、森林所有者等の理解と協力の下で、ある意味では限られた区域、こういったところで実施されているというようなことから、森林ボランティア団体の取組、これが既存の森林組合等と競合するというような状況にはないというように考えているところでございます。
 一方で、森林ボランティアにつきましては、森林整備保全に対します理解の促進、あるいは潜在的な林業への就業希望者の掘り起こし、都市と山村との交流等といった面でいろいろな活動が期待されるわけでございまして、そういったものも頭に置きながら、林野庁としても積極的に取り組んでいきたいというように考えている次第でございます。
○紙智子君 それじゃ、次、林業普及体制の見直しの問題でお聞きしたいと思うんですが、法案では林業専門技術員と林業改良指導員の資格を一元化するということになるわけですけれども、この林業改良指導員の質的な向上の要望というものもあると。これは確かに大事なことだというふうに思うんですけれども、この新たな林業普及指導員に具体的にはどのような役割や能力や資質を求めるということなんでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 端的に言いますと、今般の林業普及指導職員の関係につきましては、いわゆる従来のSP、いわゆる専門技術員でございますが、この方々は言わば試験研究とか高度の林業知識、こういったものを習得しまして普及員にいろいろレクチャーする、教えると。一方で、AGと呼ばれます林業改良指導員、この方々はそういったものを受けて地域の林家あるいは森林組合等々に対して技術の普及を図っていくという役割分担をやってきたわけでありますけれども、これを言わば一元化しようと、一体化しようということで、そういう意味では一人の普及職員がそういった林業関係につきます専門的な知識、こういったものを併せ持って普及活動に携わっていくということを私どもとしては期待しているということでございます。
○紙智子君 普及指導職員のこの一元化の実施というのは一年間延ばしたわけですけれども、本来であれば、やっぱりよくその関係者の要望も聞いて、よく検討した上で法案として出すと。これ自体を単独で審議してもいいぐらいのことだというふうに思うんですけれども。
 それによって、三年間の期間を設けて、その間に資格試験を受けて合格した者でなければ任務に就けないということですよね。どういう試験制度にするのか。現在の林業改良指導員は既に実績、経験を踏んでいる、積んでいるわけですけれども、そういうことも勘案されるのか、それについてお答えください。
○政府参考人(前田直登君) これまで、林業専門技術員、SPでございますが、これの資格試験につきましては農林水産大臣が、林業改良指導員、AGでございますが、の資格試験に関しましては都道府県知事が行ってきたということでございます。これにつきましては、今お話ございましたけれども、平成十七年度から一元化を行いまして、新たな資格試験につきましては農林水産大臣が実施するということにいたしているところでございます。
 この受験資格、それから試験項目等、試験の具体的内容につきましては、昨年十一月に設置されました林業普及指導事業の資格試験制度等に関する検討会、ここにおきまして現在論議を進めているところでございまして、今後、本検討会の論議の内容も踏まえ、柔軟かつ効率的な事業実施ですとか新制度への円滑な移行、こういったことが図られますよう検討してまいるという考えでございます。
○紙智子君 それから、地方分権改革推進会議や経済財政諮問会議で決めました交付金の縮減、これが十分な国会の審議もされずに、先行して、今年度の予算でも六・九%縮減されたと。平成十六年から三年間で二割削減が既定方針になっているわけですね。普及事業の重点化、効率化、資質向上とこの人員の削減というのは結び付けるべきではないというふうに思うんですけれども、結果として、これ、人員削減ということになるんじゃないでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 直ちにそのことが人員削減になるかどうかにつきましては、ちょっと今断定的にはなかなか申し上げにくいところでございますけれども、ただ、予算の方につきましては、今、先生御指摘にありましたように、実は林業普及指導事業の交付金、平成十六年度予算案におきまして三十三億八千万円となっているわけでございます。これが十六年度から十八年度までの三年間で約二割縮減することとされているところでございまして、林業普及指導事業、都道府県におきまして、これまでも効率的あるいは効果的な取組、こういったものを推進してきたところでございますけれども、今後、その取組課題の重点化によります普及活動の効果的な実施ですとか、あるいは一元化によります普及活動の効率的な実施、あるいは、民間で可能なものは民間で行うということで民間との役割分担の明確化、こういったものを進めることにいたしておりまして、これらの取組を通じながら普及指導事業の柔軟かつ効率的な実施に努めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
○紙智子君 二〇〇六年までの交付金の一般財源化については方向も決まっているわけですけれども、そういう中で、研究普及課が都道府県に行ったアンケート、この中で、一般財源化すれば林業事業の普及費が大きく減少するおそれが大きい、それから、交付金の廃止が普及制度の終末を意味し、地域と密着した行政が成り立たなくなるというように、十一件、こうした維持、存続を求める回答が寄せられているんですけれども、これ、当然だと思うんですね。このような出されている意見に耳を傾けて対応すべきだと思いますけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 私どもも、この普及事業の在り方等々につきましてはいろいろ検討会等も含めまして検討してまいってきているところでございまして、そういった中で、各地の方からいろんな御意見出てきているのは十分承知いたしております。
 私どもといたしましては、そういった御意見等々も含めながら、きちっと普及事業が今後とも進められていくように、きちっとした形で普及事業が担保されていくように、そういった方向で努力してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
○紙智子君 その直接減ることにはつながらないという話なんかもされているんですけれども、実際には財源的には非常に厳しくなってきているということでは、私はやっぱりこの点の懸念というのは否定できないというふうに思うんです。
 今回の改正の中で、林業普及体制の見直しについては、やはり一元化によって林業改良指導員の縮減や交付金の削減が加速されるというふうに思いますので、この点では私は賛成しかねるというふうに申し上げたいと思うんですね。
 それから次に、保安林対策の問題ですけれども、全国各地でこの保安林の整備は水源の涵養や山地の災害防止にとっても必要なことです。
 森林への産業廃棄物の不当投棄が今問題になっているんですけれども、地域の住民の運動が起きたり、県ではこの条例を作って対応するところもあるわけです。森林法では、この林地開発許可制度は、第十条の二で、地域森林計画の対象となっている保安林など以外の民有林において、一ヘクタールを超える規模の開発行為をしようとする者は都道府県知事の許可を受けなければならないというふうにしているわけですけれども、この条項は森林の公益的な機能を守る上でも役に立っているというふうに思うんですね。
 ところが最近、この一ヘクタールにならないように、小分けしてというか、三か所ぐらいに例えば分けて規制を逃れるという事例も出ていて、広島県なんかでもありましたけれども、こういうところにも厳しい指導、更にこの法的規制も必要だというふうに思うわけです。
 このような一ヘクタールの規制を逃れるようなやり方に対して、農水省として都道府県にどういう助言や援助をしているんでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 御案内のように、森林法におきましては、林地開発許可制度によりまして一ヘクタールを超える森林の土地の形質の変更をする行為、これにつきましては知事の許可制にいたしまして、当該行為に伴って災害等の発生が起こらないようにということで措置しているわけでございます。
 この一ヘクタール以下の林地における開発行為につきましても、実は森林法を前に改正いたしまして、伐採あるいはその伐採後の造林、こういったものを市町村長に届出を行うということにいたしております。
 そういったことで、その状況の把握に努めますとともに、特に一ヘクタール未満であっても一体性を有する、今お話にございましたけれども、一体性を有する複数の小規模の林地開発行為の合計面積、これが一ヘクタールを超える場合には、通常連檐というふうに私ども呼んでおりますが、そういったものにつきましては林地開発許可制度により対応しているということでございます。
 さらに、都道府県あるいは市町村におきましては、森林法に基づきます林地開発許可制度の対象にならない小規模な開発行為につきましても、地域の実情に応じて必要な場合は条例を定めて対応というふうなことも行っているところでございます。
 なお、森林法におきましては、先ほどお話に出ましたけれども、林地開発許可制度のほかに保安林制度、特に重要なところにつきましては保安林に指定いたしまして、規模の大小を問わず開発行為を規制しているところでございまして、これらの制度の適切な運用、こういったものを通じまして、森林の有する公益的機能の確保、これに努めてまいりたいというように考えている次第でございます。
○紙智子君 環境破壊を許さないということでいいますと、森林を守るために更に必要な政令などの改正を求めていきたいというふうに思います。
 あと、もう少し時間がありますので、違法伐採問題についてお聞きしたいと思います。
 地球温暖化対策の上でこの違法伐採問題の解決というのは非常に重要だというふうに思います。日本が大量に木材を輸入する国でもこの違法伐採による森林破壊というのは深刻になっているということですね。二〇〇三年、去年、千葉県で開かれた国際森林専門家会議が、ここで議論もされているわけですけれども、日本に対しても、日本はこの熱帯木材の消費大国だと、そういう中でリーダーシップを期待するという声も出されているんです。
 それで、大臣、国内の森林法規の実行やこの林産物の違法な国際貿易や持続可能でない伐採について早急な行動を起こそうということで合意されているわけですけれども、この違法伐採問題についてどう日本として取り組んでいるのかということについて、お話をいただきたいと思います。
○国務大臣(亀井善之君) 違法伐採問題につきましては、我が国は二〇〇〇年の九州・沖縄サミットにおきまして、沖縄サミット以来、様々な国際会議におきまして、この問題に取り組むことの重要性を強調しておるわけでありまして、実は昨年六月、私も、我が国とインドネシアの間での合法に伐採された木材の確認・追跡システムの確立と違法に伐採された木材を貿易から排除する仕組みの検討等を内容とするアクションプランを策定をし、両国担当大臣間で署名をしたわけでありまして、これを、その後、この取組、二国間のあるいは多国間での協力と、二〇〇二年のヨハネスブルクのサミットで発足いたしたアジア森林パートナーシップの活動などの連携を通じまして、地球規模での持続可能な森林経営と環境保全への取組を推進しておるところでもございまして、これは、違法伐採の問題につきましては、重要な問題として今後とも努力をしてまいりたいと、こう思っております。
○紙智子君 やっぱり、今、政府の早急な取組というのが求められているというふうに思うんです。
 二〇〇三年二月十一日に、日刊木材新聞というのがありますけれども、この新聞によりますと、全国木材組合連合会がまとめた森林違法伐採問題に関するアンケートと。その結果で、違法伐採された木材が日本に輸入されているかどうかということで、そう思っているという人が六九%、思わないという人が三%と。ですから、アンケートの対象となっているのは、製材業や流通業の木材を扱っている実際の現場によく精通している業者の方たちだと思うんですけれども、多数のやっぱり認識になってきているということでは、そういうやっぱり実態といいますか、掌握をできるということでもあるというふうに思うんです。
 政府としてやっぱり、違法伐採に取り組むということは、国内の法規制もきちっと進めるということだというふうに思いますし、やっぱり、一方では国内の今森林・林業を国民合意で進めていくんだというふうに言いながら、その一方で違法伐採の木材が大量に入ってきているということになると、これ矛盾するわけで、こういう点、本当に矛盾した構図を断ち切るというところで力を尽くすべきだというふうに思うんですけれども、もう一度この点でお答えを求めまして、質問にさせていただきたいと思います。