<第159回国会 2004年3月25日  沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第3号>


平成十六年三月二十五日(木曜日)
   午前十時開会
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○平成十六年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成十六年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成十六年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について
 (内閣府所管(内閣本府(沖縄関係経費)、北方対策本部、沖縄総合事務局)及び沖縄振興開発金融公庫)
○沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査
 (派遣委員の報告)
 (沖縄及び北方問題に関しての施策に関する件)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 二十分の時間でちょっと聞きたいことたくさんありますので、お答えの方はできるだけ簡潔によろしくお願いしておきます。
 最初に、予算に関連してお聞きしますけれども、今度の国土交通省北海道局の予算の中に北方領土隣接地域振興等事業推進費補助金というのが新規で盛り込まれています。注目しているわけですけれども、水産資源の増大対策事業などの産業振興と、それからそれに交流の推進を加えて、規模で一億円のこの補助が新設されたということなんですけれども、従来北方基金によって行われていた事業を一定程度こちらの方に回して、その分ほかの基金の事業を広げることができるなどのこれ改善というふうに受け止めてよろしいんでしょうか。
○政府参考人(藤本保君) 北方領土隣接地域振興等事業推進費補助金についてでございますが、平成十五年度からの第五期の振興計画に基づきまして、この地域の安定振興に向けた諸施策の推進が図られることとなっておるところでございますが、旧島民の高齢化でありますとか地域住民の減少、産業活動の停滞が一層進みまして、同地域の安定振興を図る上で大きな懸念となっているところでございます。このため、第五期計画期間中に、計画期間中におきまして、これまで以上に地域の産業振興を強力に推進することが必要となっておるわけでございます。
 こういった観点から、地域の産業振興や交流推進に係る施策を推進し、北方領土隣接地域の安定振興の充実を図ることを目的といたしまして、北方領土隣接地域振興等事業推進費補助金を創設することとしたものでございます。
○紙智子君 それと内閣府の基金事業の補助率を上げてほしいという要望がずっとあるわけですけれども、これにおこたえをしようというお気持ちはありますか。
○国務大臣(茂木敏充君) この補助率でありますが、現行が二分の一以内とされているわけでありますけれども、委員も御指摘のように、北方領土隣接地域一市二町に加えまして、この基金を管理しております北海道の方からも引上げの強い御要望をいただいているところであります。
 現下の厳しい地方団体の財政事情等を踏まえまして、補助率三分の二以内への引上げを了解することとして、平成十六年度から適用してまいりたい、このように考えております。
○紙智子君 本委員会でこの間いわゆる北特法の改正問題がずっと議論されてきたわけです。それで、法改正に至らないまでも、こういう形での措置というのは本当に少しでも役に立つものだというふうに私も思います。しかし、地方財政の今現状というのは三位一体改革などで本当に予算が組めないぐらい逼迫しているということもありまして、実は先日、根室の市の職員組合からも要請を受けたところなんですけれども、これらの措置についてもやっぱり今の状況の中では実は焼け石に水なんだよということもありまして、そこで委員長にお願いをしたいんですけれども、昨年議員立法で北特法の改正を図ろうという動きがあったんですけれども、結局それがそのまま飛んでしまった形になっているんです。それで、改めてこの隣接地域への特別の助成が確実に図られるように北特法の改正を目指していくことを委員会としても検討していただきたいと思いますが、いかがでしょう。
○委員長(谷林正昭君) 理事会において協議いたします。
○紙智子君 次に、内閣府北方関係予算に関連してお聞きしたいと思いますが、元居住者の自由訪問について、現在は元島民、その配偶者及び子というふうになっているわけですけれども、高齢化してきています。それから、運動を引き継ぎ、発展させるということでも大変になってきているわけなんですけれども、その子供の配偶者、そしてその子供、つまり元島民にとっては孫に当たるわけですけれども、そこまで拡大してほしいという要望もまた出ているんですね。これはもっともな要望だというふうに思うんです。
 それで、外務大臣が二月二十六日の衆議院の当委員会で、参加のその対象者の拡大について、翌日、日ロ局長会議がやるということで、そこで申し入れるんだということをおっしゃっておられて、その後どうだったのかと。欧州局長も参加されていると思うんで、お聞きしたいと思います。
○政府参考人(小松一郎君) 自由訪問でございますが、九九年に初めて実施されましたけれども、二〇〇〇年以降、毎年四回の訪問が行われておりまして、これまでの参加人数は延べ七百人を超えるなど着実に実績を上げてきております。
 今委員から御指摘がございましたように、旧島民及びその家族による四島への最大限に簡易化された訪問を可能にするこの人道的な意義、それから事業の一層の拡充に関する旧島民の方々の御要望を踏まえまして、ロシア側に対しまして従来よりこの枠組みの改善を働き掛けてございます。その中には、通過点の開設の問題、増加、増設の問題、それから今御質問のございました訪問対象者の範囲の拡大でございます。
 で、今の二月二十七日の、私もモスクワに参りまして日本担当の外務省の局長と協議をいたしましたけれども、その際に、この通過点の更なる開設の問題、それから自由訪問の対象者の拡大についてロシア側に改めて申入れをいたしたところでございます。
 ロシア側の反応でございますが、一連の四島訪問事業が平和条約交渉をめぐる良い雰囲気作りにも貢献しているということも確認をいたしまして、この日本側の提案についてはよく検討をしていきたいという対応でございました。
 今後とも、対象者の拡大を含めまして、この枠組みの改善につきまして内閣府とも緊密に御相談をしつつ、旧島民の方々、千島連盟を始めとする関係者の御希望を可能な限り実現できるように外交努力を継続していきたいと考えております。
○紙智子君 それから、訪問の定員枠が一回四十人のところを百人も申込みがあるというような状況だということなんですけれども、回数や人数の拡大について、これもロシア側に申し入れているのかということと、あわせて、私もこれまで何回か質問してきたんですけれども、墓参や訪問に使う船舶の改善ですね、できるだけやっぱり専用の船舶を確保する、していただきたいということで、その検討が進んでいるのかどうか。
 そして、元島民の方はもうだんだん年を召されていて、やっぱり祖先を島に残しているという、そういう胸の痛みといいますか、もう九十ぐらいになっても無理に参加をしてくるということもありまして、やっぱり本当に年金生活で厳しい中でそうやって参加をされる方もいるということなんで、せめて体力を消耗しない形で島に降りられるような、そういう船を用意してやってもいいんじゃないかというふうに思うわけですけれども。これまでも、そのつど内閣府の方からは改善策を検討しますということでずっと、もう大分たったんですれども、実際今年はどういう改善策をやろうとしているのかということについて併せてお答え願います。
○政府参考人(小松一郎君) 訪問回数の拡大なども含めまして申入れをしております。
○大臣政務官(宮腰光寛君) 船舶の問題でございますが、私も三回これでビザなし交流に参加をしておりまして、老朽化あるいは階段の傾斜が強いといったようなことなど、十分理解をさせていただいております。高齢者には快適性、安全性が十分でないということも実感をいたしております。
 ただ、使用船舶につきまして、例えば専用の船舶ということにつきましては、予算制約等の関係から、現時点では専用船舶を保有をするということについては困難であるというふうに考えておりますけれども、その利用船舶の改善方策につきましては今後ともしっかりと検討してまいりたいというふうに考えております。
○紙智子君 できるだけ快適になるようにやっていただきたいと思います。
 それから、今、日ロ経済協力の中で大きな課題になっているのがサハリンの原油、ガス開発なんですけれども、政府はこれらの経済協力を進めることが領土問題の解決につながると、そういう認識でおられるんですが、一方、この領土問題が後回しになるという懸念も出されています。決して経済協力に埋没させることがあってはならないというふうに思うんですが、実は昨日、これは北海道新聞、ちょっとコピーを取ったんですけれども、社説の中で、ロシア側に誤解がある、日ロ行動計画で日本は対ロ政策の優先順位を変えた、経済を重視して領土問題を後回しにしたと受け止めていると、ロシア側がですね、そういうことが書かれているんです。それで、外務省としてそのような誤解が大きくならないようにどう取り組んでいくつもりなのかということをお聞きしたいと思います。
○政府参考人(小松一郎君) 日ロ関係におきます最大の課題は、申すまでもなく四島の帰属の問題を解決いたしまして平和条約を締結するということだというふうに心得ております。この日ロ行動計画におきましても平和条約交渉はその重要な柱と位置付けられておりまして、また昨年の一月に両首脳が日ロ行動計画を採択いたします際に、この日ロ行動計画の採択に関する共同声明というものを発出しておりまして、その中でも両首脳が平和条約を可能な限り早期に締結するとの強い決意を確認をしているところでございます。
 北海道新聞の社説は私も拝見をいたしましたけれども、昨年、例えば総理は、一月の訪ロの後、二度、サンクトペテルブルクそれからタイのAPECでプーチン大統領と首脳会談を行いまして、私もそれに同席をさせていただきましたけれども、総理はこのプーチン大統領との会談のときに、際に、この平和条約の締結の重要性、これが最重要の課題であると、これは非常に強調をなさっておられます。これに対して、例えばサンクトペテルブルクでは、プーチン大統領の方から、自分はこの問題を先延ばしにするとか、沼に埋めるとかいうつもりはないということをおっしゃったということでございまして、これは、その首脳レベルのみならず、外務大臣が昨年イワノフ外務大臣と会談をいたしましたときにも、私どもの事務レベルでロシア側と折衝いたしますときにも常に強調をしているところでございまして、そこのところに私は誤解はあってはならないし、ないのではないかというふうに考えておりますけれども、いずれにいたしましても、今後ともそのようなことのないように、あらゆる機会、接触の場でこの重要性を強調していきたいと思っております。
 具体的には、本年前半にも川口外務大臣は訪ロして、ラブロフ新外務大臣との間でこの平和条約交渉を粘り強く行いたいと、こういうことを向こうにも伝えて、向こう側もこれはその方向で考えておる次第でございまして、その機会にも、今委員の御指摘を踏まえて進めていきたいというふうに考える次第でございます。
○紙智子君 この新聞記事というのは、やっぱり取材もしてそういうことを感じて書いているということだと思いますので、そこはよろしくお願いしたいと思います。
 それから、サハリン開発がその自然環境の破壊に非常にかかわってくることでもあって、対策が不十分であれば、今度、北海道の側の漁業とか大きな影響が、例えば油が漏れたりというようなことになれば大変な大きな影響を受ける問題にもなるわけです。
 現在、事業主体のサハリン・エナジー社は環境対策を作ってこの油流出対応計画について策定作業を行っているというふうに聞いていますけれども、これらについて日本政府は十分研究をし、改善すべき点は改善させると、そういう態度で臨んでいるのかどうか。そして、広く公開の協議や意見を反映させるということのために、やっぱり日本語訳で公開するということなんかをやるべきじゃないかというふうに思うんですけれども、この点いかがでしょうか。
○政府参考人(小松一郎君) サハリン・プロジェクトでございますが、我が国にとりましてはエネルギー供給源を多角化するという観点から非常に大きなメリットを持っている、重要な意義を有すると、これは日ロ互恵のプロジェクトでございます。今御指摘がございましたように、民間企業が商業ベースで進めている案件ではございますが、政府といたしましても、そのプロジェクトの有します意義を踏まえまして、この進捗状況を見守り、可能な範囲で側面支援を行っていきたいと考えておる次第でございます。
 環境面に配慮する必要でございますが、これは私どもとしても認識しておりまして、このプロジェクトの円滑な実施のために、環境についても十分配慮するように一貫してロシア側に求めてきておるところでございます。
 具体的には、昨年一月の、先ほどの日ロ行動計画でございますけれども、ここにも「自然環境に配慮しつつ、サハリン1・2プロジェクトの進展並びに関連する生産物分与協定」云々と、こういった文言がございますし、それから、カシヤノフ首相が昨年十二月に参りましたときに発表いたしました共同声明におきましても、「双方は、同プロジェクトの更なる進展のために努力を傾注しつつ、環境に十分配慮する意向を確認した。」というような文言も含まれているわけでございます。
 具体的な環境保全措置でございますが、これは基本的には事業主体が講じることになりますけれども、政府レベルにおきましても、例えば今委員の御指摘の中にもございました油流出でございますけれども、万が一にもあってはならないと思いますが、万が一にもこういうことが発生した場合に直ちに所要の対処を行えるよう体制を、これは私、外務省の本省それから在外公館、サハリンの領事、総領事館でございます、それから資源エネルギー庁とか海上保安庁など、それから内閣府など関係の省庁間で整備しておりまして、そういうような対応をしているところでございます。
 今後とも、ロシア側への働き掛けなどを通じまして、引き続き環境の観点からもこの本プロジェクトが適切に実施されていると、いくというふうに努力をしてまいりたいと思っております。
○紙智子君 NGOからも指摘もされている問題ですから、政府としても厳しく対応していただきたいというふうに思うんです。
 それで、油流出事故への対応計画というのは政府レベルの協定が必要だというふうに思うわけですけれども、油防除の活動の指揮命令系統とか、それから責任とコスト分担、それからお互いの領域への乗り入れなどの権限、それから防除資材、機材の運搬や補給とか、やっぱり具体的にこの種の協定が存在していなければ、もしそうなったときには支障を来すというふうに思いますし、現在は両国は窓口が政府機関でいろいろ合同訓練や専門家の協議を確認しているということではあるんですけれども、やはり法的拘束力を持つ、そういう協定が必要だというふうに思うんですけれども、この点いかがでしょう。
○政府参考人(小松一郎君) 油流出事故、あってはならないことでございます。それで、先ほど申しましたように、万が一にもこうした事態になった場合の体制というのは関係省庁間で緊密に協議をいたしまして整備を進めているところでございますが、今、取決め、必要な、取決めの必要性というような御指摘も踏まえまして、今一層検討を十分進めたいと考えております。
○紙智子君 ロシアとノルウェーの間でもそういうものがきちっとできているということでもありますので、あいまいにせずにというか、やっていただきたいと。
 それから、あと漁業問題についてお聞きしたいんですけれども、昨年八月に私、根室に行きまして、漁業関係の皆さんのところを回って要望を伺ったんですが、この地域の漁業は領土問題が未解決のために大変な御苦労をされているわけです。それで、国の責任からしても漁業の維持発展に努めるべきだと思うんですが、一つ、貝殻島の水域における民間協定による昆布ですね。これ、外務省は局長会議でこの間この問題を取り上げているわけですけれども、昨年の昆布漁についてはロシア側のせいで六月からの漁が半月遅れちゃったということがありました。非常に大きな影響を与えたわけですけれども、来年はこういうことがないだろうなということで非常に心配をされているわけです。
 なぜ去年そういう事態になったのか、そのようなことがないように、この後どのように手を打っていくのかということについてお答え願います。
○政府参考人(小松一郎君) 貝殻島昆布操業でございますけれども、委員の御指摘にございましたように、八一年に取り交わされました現在の民間取決めに基づいて操業が毎年行われているわけでございます。
 昨年の操業の遅れでございますが、これは、私どももその遅れの事態に対して何度も申入れをいたしまして、ロシア側の説明は操業準備にかかわるロシア側の内部の手続の遅れによると、こういう非常に遺憾な事態であったわけでございます。
 これにつきましては、昨年のその事態の発生以来、我が方よりロシア側に対して、こういうことが繰り返されることのないよう何度も強く申入れを行ってきているわけでございます。
 それから、一番最近でございますが、二月の二十七日に行いました相手側の局長との協議でございますけれども、この局長の協議におきましても、私どもより、現行の民間取決めに基づいて円滑な操業を確保することが日ロ双方にとって極めて有益であるし、これは必要であるということを強く申し入れた次第でございます。
 これに対してロシア側より……
○委員長(谷林正昭君) 答弁者、時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。
○政府参考人(小松一郎君) はい。
 本件操業は日ロ双方に利益があり、その操業の継続は是非とも確保していきたい、二十年以上にわたって実施されてきた操業に対して障害を作ることを考えているわけではないという発言がございました。引き続き円滑な操業が確保されるためにその努力を続けてまいりたいと考えております。