<第159回国会 2004年3月24日 農林水産委員会 第4号>


平成十六年三月二十四日(水曜日)
   午前十時開会

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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○平成十六年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成十六年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成十六年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について(農林水産省所管及び農林漁業金融公庫)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、大規模林道の問題を質問をいたします。
 二月に、大規模林道事業の整備のあり方検討委員会、第三者を含めたこういう委員会の報告書が出されました。これ見ますと、全部で百四十四区間ですけれども、そのうちの二十区間、建設予定区間ですね、二十区間について、検討の結果、建設予定区間のすべての二十区間についての抜本的な見直しが適当という結論が出たと。そのうちの七区間については当該区間すべて大規模林道での整備を取りやめることと、それから十三区間については区間の一部取りやめとか幅の縮小とかあるいは変更をやるということを書いてありますね。
 それで、その結果のところを見ますと、多くは既存の公道の整備などで建設の必要性が乏しくなってきたというふうにしているわけです。無駄をなくしていくというのは当然大事なことだというふうに思うわけですね。一層見直しが必要だと思うわけですが、同時に、今回、計画変更するが実施が適当だという結論を出している十三区間についても、私は、建設が自然環境の破壊を伴うということもありますから、そういう面からもより慎重な検討が求められているんじゃないかというふうに思うんです。
 例えば、北海道の置戸―陸別区間というのがありますね。この区間は氷河期からずっと生存していると言われているナキウサギが生息していると。あるいは、希少猛禽類やクマゲラなどの貴重な生物が生育しているというふうに言われているわけですね。しかし、この委員会の中では環境保全対策を検討、実施するというふうにして、実施が妥当なんだというふうにされているわけです。
 そこでお聞きしたいんですけれども、環境保全対策を検討、実施するということであれば、その方面でもう日常ずっと日ごろから非常に熱心にやっておられる自然保護団体や住民の皆さんとの協議、協力ということが非常に大事だというふうに思うんですけれども、この点でどういうふうな連携を強めていくつもりなのか、まずお聞きしたいと思います。
○政府参考人(前田直登君) 今の先生からお話ございましたように、今般、大規模林道のあり方検討会、そちらの方で今後建設を予定している区間、これにつきまして見直し検討を行ってきたわけであります。
 御指摘にございましたように、今後二十区間、このうちの七区間につきましては取りやめと、残りの十三区間につきましては実施ということになったわけでありますけれども、率にいたしますと、約四割ぐらいは取りやめということになっており、そして、その十三区間の方につきましては、今後五メートルないし七メートルというような形で、あるいはその路線の線形を変えるというようなことで必要な変更、こういったものを講じながらやっていくということにいたしておりまして、これの過程で実は先生方の方からは、地元のいろんな御意見あるいは自然保護団体の御意見、こういったものもお聴きしながらこういった結論に導いてきたということでございます。
 それで、今後の取扱いなのでございますが、今後、新規着工していく際に当たりましては、当然関係道県知事への協議ですとか、あるいは関係市町村の長及び利害関係者による意見書の提出、こういった手続を経て必要な林道事業実施計画の変更を行うと。その上で、事前評価ですね、費用対効果分析等の事前評価、こういったものも行うと同時に、環境保全調査等を実施するということにいたしているわけでございまして、当然、調査等の実施に当たりましてはあらかじめ公表いたしまして、その結果につきましても原則公表することにいたしております。
 そして、そういった過程の中でいろいろ必要な御意見あるいは意見等々につきましては十分いろいろお聴きしながら検討していくということになるというふうに考えているところでございまして、今後とも関係情報の提供ですとか関係者の意見の把握等、こういったものにも意を酌みながら適切な実施になるように努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
○紙智子君 今のお話の中でも、そもそも公聴会なんかも開いて、そこに来ていただいて意見も聴いてと。その結果としてということでもあるし、これからも、そういう意味では、説明会や協議の場を持っていくというふうに今おっしゃられたと思うんですけれども、それでよろしいですね。
○政府参考人(前田直登君) 結構でございます。
○紙智子君 それでは次に、現在既に建設中の区間についてお話お聞きしたいと思うんですが、北海道の平取からえりもに向けての平取・えりも線、その中の様似―えりも区間についてなんですが、平成十五年度の期中評価、その期中評価の中では、引き続き猛禽類のモニタリング調査、ナキウサギの生息状況の調査に基づいて環境保全に配慮した事業を実施することが適当ということで、これ十三年度から再開した工事ですけれども、更にこれから先も進めるということで評価を行っています。
 しかし、この予定ルートの近辺でナキウサギの生息地があるかないかということをめぐって、自然保護団体と林野庁、緑資源機構と対立しているわけですよね。それで、平成十三年の環境アセスメントで、変更したルートだから、これは影響がないというふうに林野庁の方はしてきたわけですけれども、ところが、その後、「ナキウサギふぁんくらぶ」がそのルート付近で二か所生息地を発見したと。これ十五年、去年の六月の話ですね。ところが、その後、今度、緑資源機構がまた調査報告を発表して、これ十一月ですけれども、確認されていないと。食い違っているわけですよね。
 それで、お聞きしたいのは、こういう食い違っている状況の中で、お互いの調査のどっちが正しいのかということの結論がまだ明らかにならないまま、これ期中評価が決められてしまったんじゃないかということなんですけれども、そうなんでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 私どもといたしましては、この検討に当たり、実施に当たりましては、当然いろんな状況、そういったものを調査して、その上で御指摘のような結論に達しまして実施することにした次第でございます。
 そして、その過程で、今お話にございましたように、自然保護団体の方からは当該地にナキウサギがいるのではないかというような御意見も実は賜りました。そういったものを受けまして、緑資源機構の方では十五年の九月からナキウサギの生息に関します調査、これを再度また実施いたして、その調査におきましてナキウサギが確認できなかったということでございます。
 ただ、この調査結果によって確かに当該区域周辺におきます生息の可能性までは否定されているものではないということだと理解しておりまして、十五年度期中評価委員会の評価結果では、なお引き続き猛禽類のモニタリング調査及びナキウサギの生息状況調査、こういったものに基づいて環境保全に配慮しながら事業を実施することが適当というふうに結論が出されておるというふうに理解いたしております。
 私どもといたしましては、こういったものの中で、きちっと状況をモニタリングしながら、この事業には着手してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
○紙智子君 ですから、その食い違いがあるまま期中評価では進めるということにするわけですから、これは私ちょっとまずいんじゃないかと思うんですよね。
 しかも、さらに、そのナキウサギの生息地が、その後、人為的に破壊されているという訴えがされているわけですよね。予定ルート付近に本当に生息しているのかどうかということとともに、だれかが巣穴のところに土を入れたりしてつぶしたんじゃないか、破壊したんじゃないかと。これは今のルートのままで建設していいかどうかということにかかわる重大な問題だというふうに思うんですね。
 それで、十一月の二十五日に、その大規模林道事業の期中評価委員会が会議がされているわけですけれども、その会議録見ますと、その中でも、例えば委員から、調査をした上で結論を出すのが適当だという意見や、もうこれでいいということで結論を出すのは少し引っ掛かるという意見も出ているわけです。しかし、もう調査も林野庁としてはやってきているしということで、林野庁が押し切ったような形でこれ決めているわけですよね。
 それで、林野庁はこの真相について究明する気があるのかどうなのか、そこのところをちょっと確認したいと思います。
○政府参考人(前田直登君) 確かに御指摘のお話につきましては私どもも承知しております。
 それで、私どもの方とすれば、今現在、緑資源機構の方に、十分自然保護団体、そちらの方と話し合ってほしいということで再三要請してきておりますし、そういった中で何度かそこら辺の試みをなされているというふうに承知いたしております。
 ただ、事業の方につきましては、若干繰り返しになりますけれども、ナキウサギの生息の可能性のあります石とか岩、あるいはそういったものが堆積しましたがれ場、こういったところでの調査、これを継続的に実施した上で、具体的な路線位置、あるいは環境保全に留意いたしました工法の検討、こういったものを行って事業を実施していくことが適当というふうに考えておりまして、こういった面からも緑資源機構の方が適切に対処するように指導してまいりたいというふうに考えております。
○紙智子君 なぜ中止しないでですね。いったん止めて、そしてやっぱり明らかにしてやるというのが本当だというふうに思うんですよ。
 やっぱりこの期中評価については、そういうふうに双方が食い違ったまま工事は進めさしてもらうということになると、これは関係が、ますます不信感が募って、悪化していくことになっちゃうと思うんですよ。事態はやっぱりよくないと思うんですね。
 ですから、ゴーサインをしているんですけれども、いったんこれについては棚上げをして、やっぱり工事も中止をして、そしてやっぱり中立的な立場に立った専門家を入れて調査をすべきだというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 私どもとすれば、それなりに専門家の意見も聴きながら、あるいはその専門家のアドバイスを受けて、相当調査もやりながら、綿密に調査もやりながらやってきているわけでありまして、ただ、御指摘のような意見もありますので、その点につきましては十分自然保護団体と話合いをやりながら実施していってほしいということでやっているわけでございますので、そういう観点から対処させていただきたいというふうに考えております。
○紙智子君 だから、不信感が広がっている中で、やっぱり一方的に進めるということはおかしいと思うんですよね。それで、もう少し付け加えさせていただければ、自然環境保全に配慮するということをせっかくこの間議論してきているわけですから、その立場に立つなら、やっぱり真っ先に、その矛盾点といいますか、今出てきているいろんな疑惑について明確にするべきだと思うんです。
 そして、調査をどういう団体にさせていくのかということも大事な問題だというふうに思うんです。それで、緑資源機構ということなんですけれども、平成十年から十四年に、この様似―えりも区間の調査を日本林業技術協会、ここに委託してやってきていると思うんですよ。十五年も同じですよね、調査、この技術協会がやってきたと思います。
 それで、この団体の役員なんですけれども、常勤七人のうち五人までが元林野庁の幹部の天下りですよね。それで、理事長でいえば林野庁の指導部長でしたし、それから専務は北海道森林管理局長ですし、常務は名古屋の営林支局長と。あと、常勤理事のうち二人が林木育種センターの所長、帯広営林支局長ですね。これ、間違いないですよね。
○政府参考人(前田直登君) ええ、間違いございません。
○紙智子君 ですから、やっぱり優れたそういう技術を持っている協会であったとしても、こういうふうに役員が業者側にいた人たちで占められていると。天下り団体なわけですよ。ですから、こういうことでは、調査をやったとしても、やっぱり国とか事業者に有利な報告になってしまうんじゃないかというふうにだれもがやっぱり疑念を持たざるを得ないというふうに思うんですね。これで本当に公正な結果が出るんだろうかというふうに疑われるのはやむを得ないというふうに思うんですよ。
 ですから、私、やはりこういう天下り団体による調査というのは再考すべきではないかというふうに思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 確かに、この社団法人日本林業技術協会の役員構成は御指摘のとおりでありますけれども、ただ、実際に調査を行う、あるいはそういったものの取りまとめをやっていくという過程におきましては、独断でやっているわけではなくて、当然第三者の学識経験者あるいは専門家の方々、そういった方々の御指示、御指導の下に実施しているわけでございまして、うちの林野庁のOBが行っているからそれを偏見でこういう形に曲げているということは決してないというふうに理解いたしております。
○紙智子君 もちろん、専門的な技術を持ってその分野によく精通している人が当たるというのは大事なんです。ただ、やっぱりだれが選ぶのかと、やっぱり幅広い人たちから是非この人もという形でそういう調査体制というものについても確立をして、やっぱりだれが見ても公正だと納得できる体制でもってやるべきだというふうに思います。
 それから次に、日高地方を昨年襲った台風十号、この教訓から、このような大規模林道を始めとする奥地の山岳地帯の道路については、やはり災害を誘引する、被害に拍車を掛けると、そういう側面もよく検討しなければならないというふうに思うんです。
 それで、同じ平取・えりも線の平取―新冠区間、この区間について災害があって、全部で六・九キロの長さなんですけれども、この区間でどれだけの被害が出たかということについては掌握されているでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 今御指摘のございました平取・えりも線の平取―新冠区間、六・九キロでございますけれども、これは平成八年度に完成いたしまして、現在は門別町の方に移管されております。
 この区間につきまして、昨年八月の台風十号、これに伴いまして、平取町の方では最大二十四時間雨量が三百七十八ミリメートルという異常な記録的な集中豪雨という中で、実は二十五か所におきまして路体の決壊、土砂の堆積等、延長にしますと千九百三十五メートルの林道の災害が発生いたしております。
 この林道の管理主体でございます門別町の方におきまして、今年の三月十九日から復旧事業、これは総事業費約三億三千万でございますが、に着手したところでございまして、平成十六年の十月までにほぼ五割復旧させまして、平成十七年十一月には復旧工事をすべて完了するというような予定であるというふうに承知いたしております。
○紙智子君 それで、私、今日はこれ持ってきたんですけれども、ちょっと遠くて見えないかもしれませんけれども。(資料提示)
 これは台風十号でもって被害を受けた大規模林道なんですね。こっち側が、ずっとこっち延ばしていくと札幌方面というか、こっちの方ずっと行きますとえりもの方に向かう方面なんですけれども、ずっと白く見えているのが道路なんですけれども、これ大規模林道、六・九キロですね。それで、ところどころこう白くはげているの何となく分かるかと思うんですけれども、これは全部崩れたり、あとは、その下を川が流れているんですけれども、えぐられたりということで、今のお話でも二十五か所ですか、そういうところがあるということなんですけれども、自然保護団体の皆さんがずっとここ歩いて丹念に調査をしましたら、六十七か所路面が陥没していると、それから、のり面についても崩落していたり土砂崩れだったり地すべりだったりと、合計の長さが、その部分だけ足していきますと三・六キロなんですよ。ですから、半分くらいはそういう形で被害出ているわけですけれども。それで、ここから流木がもう大量に川に流れていくという状況になったり、道路自体が、もしものときは迂回道路にもなるんだということを言われたんですけれども、道路自体が災害道路という感じになってしまったということなんです。
 それで、日高山脈をこの地域というのは抱えていまして、そもそもがやっぱり、この地域は元々は海底の造山運動で隆起してできた地域ということなのでやっぱり地盤そのものが、硬いところもあるんですけれども、かなりもろい、泥岩なんかで造られている土質が多いわけです。
 それで、去年この被害の後、私も災害特で質問したんですけれども、日高横断道路がこういう土質による難工事を結局余儀なくされて元々の工期をうんと長くやらなくちゃいけなくなって、途中でもうこれ以上ちょっとお金も掛かり過ぎるということで中止になったわけですけれども、このやっぱり大規模林道、平取―新冠の区間もあらゆるところに地すべりの看板が出ていまして、それで既に十三年から通行止めになっているところなんです。
 今問題になっているえりも―様似区間もそういう意味では同じような災害道路になるおそれがあるということで、台風の災害の教訓としても、そのような視点からも改めてやっぱり建設が妥当なのかどうかということについては検討すべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 確かに今回の八月の台風十号で相当大きな被害を受けたことは事実でございますし、ただ、これにつきましては、先ほど申し上げましたように異常な降雨によると。
 それで、そういった中で、実は私どもの方も、学識経験者から成ります山地災害対策検討委員会、これを設けまして現地の調査もやっていただきました。そういった中で、中間取りまとめの中では、これにつきましては、森林の状況にかかわらず、硬岩等の基岩上の薄い表土層が記録的な豪雨により崩壊したものと判断するということで報告がなされておるところでございまして、必ずしも大規模林道、これが原因となってなったということには理解いたしていないところでございますけれども、いずれにいたしましても、その工事に当たりましては、地質の問題、あるいは先ほど申し上げました環境の問題、いろいろそういうものを十分精査しまして、適切な工事、こういったものに努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
○紙智子君 大規模林道構想ということでこの間いろいろやってきているわけですけれども、今のこの平取―新冠区間の実態を今見ましたけれども、平成八年一応完成で、それで十三年度まで開通していたわけですけれども、その後ずっと通行止めで実際には役に立たない状況で来ていたわけですよね。
 それで、二つ、さっきの地図の中にもあるんですけれども、三和から里平という集落を結ぶ道で、元々道道があり、そして町道が通り、大体二十分掛ければ行くというところだったんだけれども、この大規模林道ができれば五、六分に縮まるんだというようなことだったわけですよね。ところが、一日に数台の車しか実際は通らないと。そして、最初言われていたんだけれども、林業のために役立つということなんだけれども、木材を積んだ車は一台も通っていないと、もう皆無だというふうに地元の人は言っているんです。そういう中で、建設の必要性をもっとやっぱり厳しく点検をすべきじゃないかというふうに思うんです。必要性があるということで一応今回出されているんですけれども、やっぱりもっとそこのところは厳密に厳しく見る必要があるというふうに思うんです。
 こういう実態なわけですけれども、ここに言わば二十七億円のお金を使ってきたわけです。それで、完成した後は維持管理は今度は町の方に行くわけですから、そうすると町がお金が掛かるものですから度々壊れても修繕できないと。もう本当、正直な話としては、この維持管理は返上したいというのが正直な気持ちということも言われていたわけですよ。
 そういう中で去年災害が起こって、それでさっきお話あったように、三億数千万円ですか、お金が投じられて改修していると。これは国がそういう意味では出したということなんですけれども、しかし、今言いましたように、地すべりの地域でもあってまたいつ同じようなことが繰り返されるか分からないということでもあるわけで、やっぱり林業の効果も交通の効果もほとんどないに等しい中で国にとっても町にとっても結局はお金だけが掛かってしまう、もう金食い虫になってしまうと。
 こういう轍を各区間で、このほかの区間でも繰り返さないように、やっぱり平取―えりもの全線について中止を求めたいというふうに思います。いかがでしょう。大臣、大臣に対する質問です。これについてちょっと今、大臣。
○国務大臣(亀井善之君) 森林の整備、林業の振興と、こういう面でやはり、あるいはまた地域の振興と、こういう面からこの大規模林業圏、いわゆる大規模林道と、この使命があるわけでありまして、もう先ほど来、午前中もお話がありましたが、やはり森林の整備の面でいろいろ遅れもあるわけであります。そういう面でこの林道、これは地元からの御要請がございまして、平成八年、完成したわけでありますが、先ほど来お話しのとおり災害と、こういうことで、いろいろ問題点があるわけであります。
 しかし、このルート、これは効率的な林業経営、あるいはまた森林の適切な保育管理等、先ほど使われていないと、いろいろなお話もございましたが、やはり日高地域のこれは幹線という面での使命があるわけでありまして、地元からも復旧工事が三月十九日に着手がされた、こういうわけでありまして、これらの復旧後の効果、もうこれが発揮できるように私どもは是非進めてまいりたいと、こう思っております。
 それぞれ大規模林道の問題につきましても、いろいろ見直しをすることも当然必要でありますけれども、しかし森林の保全、こういう面、あるいは地域の振興、こういう面でのまた必要性も十分あるわけでありますので、その辺は十分総合的に考えていかなければならないと、こう思います。
○紙智子君 ちょっと余りかみ合っている感じがしないんですけれども、いずれにしても、こういう実態を見ていただければ、もっとやっぱり慎重に、今見直しをするというような傾向になってきているのはいいことだと思うんですけれども、しかし、より一層やっぱり厳密に、今までは計画があったし地元からも要望もあったということなんだけれども、しかし実際に、今紹介しましたように、三位一体改革の中でそれぞれの町村なんかも非常に財政的には苦労しているわけですよね。そういう中で、これ以上続けてどうなのかと、当初は要求して手も挙げたかもしれないけれども、しかしやっぱりここに来てどうなんだろうかという思いもあるわけで、そこはより一層厳密に厳しい検討をしていただきたいということを再度併せて要求をしまして、次、諫早湾干拓の問題で質問をさせていただきたいと思います。
 それで、農水省、水産庁は、有明海のノリの被害が大変で、それに向けての融資を漁業者の皆さんがやって、その猶予が今年で切れるということもあって、水産庁、今年から新規に漁業者に対する無担保無保証制度を創設をされました。
 それで、ところが、なかなかこの事業の主体者である県が、具体的に予算化したりということが進んでいないという状況もあって、先日、三月の二日に衆議院で、我が党の赤嶺議員が、この事業をもっと県がやれるように国としても指導を強めたらいいんじゃないかということを質問しました。水産庁長官は、せっかくの制度なんで、これがちゃんと実施できるように指導していきたいというふうにお答えになったと思うんですが、その後どのように県に対しての御指導をされてきているでしょうか。
○政府参考人(田原文夫君) お答えいたします。
 無担保無保証人制度、正式には経営改善等資金融通円滑化事業、これが十五年度から始まっておりますけれども、なかなか各県対応ができていないということで、今、先生御指摘されましたように、三月二日、これは衆議院の予算委員会分科会でございますけれども、赤嶺先生から、もっと積極的にやれという趣旨の叱咤、叱咤といいますか、をいただきました。
 私ども、実は都道府県の主務課長会議ですとかブロック会議ですとか、再三にわたって申し上げておりましたけれども、さらにその後ということで、昨日まででございますけれども、具体的に取組が全然なされていない県ということで、その御質問以降、四県に私どもの担当者を派遣いたしまして、県でございますとか、具体的には県の漁業信用基金協会、こういったところになりますけれども、そういったところへ対応方、四県ほど働き掛けを行っております。
 また、月内ということで、あと二県ほど行かせたいというふうに思っておりまして、いずれにいたしましても、せっかくこういう制度を設けましても県の方で対応されないということになりますと漁業者の方々の期待にそぐえないということになりますので、私どもといたしましては、今後ともこうしたことにつきましては、機会をとらえまして各都道府県に働き掛けていきたいと、かように考えている次第でございます。
○紙智子君 都道府県がなかなか具体的にできないということの詰まっている要因といいますか、その辺はどのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(田原文夫君) 十五年度はかなり少なかったわけでございますけれども、十六年度、実は私ども各県から聞いておりますところでは、一応十一県ほどは取り組むという状況であるというふうに聞いております。まだ過半は取り組まない、今の段階においてはまだ取り組まないという状況のようでございますけれども、その原因ということでいろいろ聞いてまいりますと、やはり、都道府県の財政状況が厳しいという中におきまして、こうした長期にわたりまして、将来にわたっていろいろと予算措置を伴うものがなかなか財政当局、県の財政当局の理解が得られないということで対応が遅れているということではないかと考えている次第でございます。
○紙智子君 今少し言われましたけれども、やっぱり県自身の財政状況とか、この検査が厳しいというのも聞いているんですけれどもね。それから、結局は県の持ち出しになってなかなか大変だと、使いづらいというような声なんかがあるわけですけれども、そうであれば、活用しやすくできるように条件を緩和したり、予算面で国がもっと支援するとか、そういうことが大事だと思うんです。
 特に有明海の関係地域にあっては、特別にそれが求められていると思うんですね。やっぱり国の責任としてそれをやるということがこの有明海地域については特に大事だというふうに思うわけですけれども、先般成立した有明海の特措法でも、その中に、資金の確保、それから赤潮等による漁業被害等に係る支援、それから赤潮等による漁業被害者の救済と、こういう条文がちゃんと国の仕事としてやらなきゃいけないということで盛り込まれているわけですし、この趣旨からしても、特別に有明海の漁業についてはこの無担保無保証制度が設置できるようにしなければならないというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(田原文夫君) まず、有明海のノリの不作等に対します金融措置ということでは、これはもう先生御案内のとおり、国庫資金で、沿岸漁業経営安定資金でございますとか、負債整理資金等々ございます。こういった措置を既に講じたり、あるいは緊急の場合には、個別の案件でございますけれども、償還猶予の話あるいは中間据置期間の設定、こういったこと等を金融機関等に対しまして指導をすると、こういったことをやっているところでございまして、このいわゆる無担保無保証人のこの新しい制度でございますが、これだけで直ちに、そうした沿岸漁家の経営悪化に対する資金ということに直ちになるというものではないんじゃないかと思いますけれども、ただ長崎県辺りは既に対応を取るということも、こう言っておられるというような話もございますし、私どもは、言わばそういった資金を補完する形ということで、より資金の、融資機関からの資金が流れやすいようにするという仕組みでございますので、そういった面からも私どもも今後とも努力をしていきたいと、かように考えている次第でございます。
○紙智子君 やはり、これまでのものではやっぱり救済できないということなんですよね。
 私も、実はこの二月に、諫早湾、ずっと干拓の事業や、有明海をずっと歩いて漁業者の皆さんとも懇談して、本当に二十代、三十代の若い後継者の方がたくさん来てくださって、それでやっぱりその窮状といいますか、これから親の後を継いでやろうという気持ちで頑張っていこうということで来てきておられたわけですけれども、その皆さんが、やっぱりノリの不作が今年もある、続いている、来年の漁を行う資金さえままならない状況なんだ、借金するにしても保証人、担保もないんだと。だれが保証人になるかという、これもやっぱり今いないということになってきているわけですね。
 そういう点で、全部が全部それで補えるわけじゃないというふうに今おっしゃいましたけれども、やっぱり無担保無保証制度の適用がその改善をしていく措置になっていくわけですから、だからそこは本当にやっていただきたいところですし、それで、十分これ知らされていないというのもあるんですね、そういう制度がちゃんとあるんだということが知らされないということもあって、そこをやっぱり周知徹底もしながらやっていただきたいと。
 こういうやっぱり漁業の状況になった原因についていえば、ほとんど漁民の皆さん言っていたのは、その諫早湾干拓のやられた後、こういう事態になってきているんだと。でも、農水省はそれは認めないでしょうけれども、少なくともその疑いがあるということは明白なわけで、だからやっぱり国の責任でこの融資の措置とか、借換えとか償還延期だとか、こういうことを含めて、融資の措置ができるようにすべきだということを強く要求したいと思うんですが、大臣、この点で一言お願いします。
○国務大臣(亀井善之君) 先ほど来、長官からも御答弁申し上げておりますとおり、この制度につきましては、いろいろ昨年来、団体あるいは都道府県、そして先ほどお話し申し上げましたとおり、既に四県、また今月二県と、そういう面でその説明等々に今就かせておるわけでありますし、またやはり予算、都道府県、厳しい財政状況と、そういう面での予算化の問題等々いろいろあるわけであります。この面につきましても、更に私ども努力をし、その対応ができるようにしていかなければならないと、してまいりたいと、このように思っております。
○紙智子君 この二月に懇談したときに、こういう制度もあるんですよという話はしたんですけれども、借りたら返さなきゃならないと。だけれども、問題は返せるめどが立たないことが非常につらいということを言われていたんです。
 それで、農水省は水産基本法を定めているわけですけれども、「水産動植物の生育環境の保全及び改善」と「人材の育成及び確保」というふうに定めているわけですけれども、この有明海の本当に豊かな海というふうに言われていたわけだけれども、この地域の漁業者を、漁業をどのようにしていこうとしているのか。干拓事業が始まって、潮受け堤防が締められて魚や貝が取れなくなったと。最後の頼みのノリも大不作と。その後も不安定な状況が続いていて、若手の後継者が、本当は続けていきたいけれどもままならないということで、ほかに仕事を探そうということで出掛けたり、親子で慣れない出稼ぎで本州を渡り歩いている人もいるということなんですね。地域の会社も崩壊されていると。
 それで、賛成派というところもあるんですけれども、その漁協の中でも、干拓事業がこれ完成したら今請け負っている仕事、工事もなくなってしまうと。そうすると、何も取れない漁場が残るだけだなというような声まで出て悩んでいるということなんですよ。
 ですから、大臣、まさかこの地域の漁民の皆さんを切り捨てるようなことはないと思いますけれども、そこのところを万全を期すということで、どうかもう一つお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(亀井善之君) 一つは、平成十四年に成立しました有明海及び八代海を再生するための特別措置法、これに基づきまして関係省庁、また関係各県と連携を図りながら、環境の保全・改善、また水産資源の回復、これに向かって漁業の振興に今全力で尽くしておるところでもございます。このことにつきましては、なお引き続き関係省庁、また関係県と一体となって対応してまいりたいと。
 私も現地に参りまして、ノリの問題も見てまいりました。今年はノリにつきましては、以前に比較をいたしますれば、私が行きましたときは赤潮、赤腐れ病と、こういうようなところも心配いたしましたが、冷凍網になりましてそれなりの本年は成果を得ている、こういうことも承知をいたしております。引き続き、この特措法に基づく対応をしっかりやってまいりたいと、こう思っております。
○紙智子君 二〇〇二年の秋に成立した有明海の特措法というのは、漁場環境整備などの公共事業が主なんですよね。ですから、覆砂とか耕うんとかそれから放流とか、こういうのはやっているんですけれども、本当に広く皆さんの声を聞いて歩くと、やっぱり一時しのぎだと、やっぱり根本からの解決というのは、有明海の異常の構造の変化にメスを入れなければ解決につながらないんだということが出されるんです。
 それで、漁業を本当に再建しようということになれば、やっぱり私は、大臣も今直接行かれたということなんですけれども、漁業者の皆さんの声をやっぱりしっかり受け止めることだというふうに思うんです。
 それで、有明海の漁民・市民ネットワークの皆さんなんかもアンケートをやっているんですけれども、その調査結果を見ますと、漁獲高は潮止め前の六割になっていると。潮の流れや速さが変わって浮泥が海底に沈殿するなど異変の原因、その原因については、八九%、約九割の人がこの諫早の干拓を挙げているんですね。やっぱり干拓を中止して元の海に戻してほしいというのが大部分の漁民の願いです。せめて中・長期の開門調査をというのが、今福岡県、佐賀県、熊本県、この三つの漁連が一致して要求していることでもあるんです。
 やっぱり、大臣にお聞きしたいのは、本当にこの懸案になっている中・長期の開門調査の実施を、皆さん方の御意見を伺って判断するというふうに言われたわけですけれども、先日。是非、最もやっぱりそういう意味で切実な声を、願いを持っている漁業者のことをしっかり考慮していただいて、意見を尊重して判断をしていただきたいと。そのことについてお約束いただきたいと思いますが、いかがでしょう。
○国務大臣(亀井善之君) 地元の漁業者の御意見あるいは関係県あるいは漁連等、関係の皆さんのお話は私も何回か承っております。正にこの漁民の皆さんが強い危機意識をお持ちになっておるということも十分承知をいたしております。
 今、いろいろなところでその議論がなされ、そしてまた論点の整理等々もいろいろ承っておるわけでありまして、さらに、関係の私は皆さん方、先ほど申し上げましたような方々のお話も承り、そして対応しなければならないと、このように考えております。
○紙智子君 終わります。