<第159回国会 2004年3月18日 農林水産委員会 第4号>


平成十六年三月十日八(木曜日)
   午後二時開会

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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○農林水産に関する調査
 (畜産物等の価格安定等に関する件)
 (畜産物価格等に関する決議の件)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初にちょっとお願いしておきたいんですけれども、三十分の中なので答弁はできるだけ端的にお願いいたします。
 それで、最初に鳥インフルエンザの問題についてなんですけれども、京都での封じ込めの失敗は、大規模経営で感染が発生した場合に、その防疫体制に対する国の責任の在り方が問われているというふうに思います。
 そこでお聞きしますけれども、家畜伝染病予防法の三十二条の二項、ここで、農水大臣は、家畜伝染病の蔓延を防止するため必要があるときは、農林水産省省令の定めるところにより、区域を指定し、一定の種類の家畜、その死体又は家畜伝染病の病原体を広げるおそれのある物品の当該区域外への移動を禁止し、又は制限することができるとしています。これまで農水大臣がこの規定を発動したことがあるのか、また、省令はあるのかどうか、そのことについてまずお答えください。
○国務大臣(亀井善之君) 今日までその発令をしたことはございません。
○紙智子君 そういうふうな事態に遭遇しなかったということなんでしょうか。
 それで、あわせて、省令はないですか、ありますか。
○政府参考人(中川坦君) まず、省令はございません。
 それから、これまでどうしてきたかということでありますけれども、御承知のように、重要な家畜の伝染病につきましては既にマニュアルがございます。これを適切に運用することによりまして、移動制限の区域の設定等についてもこのマニュアルには設定をされておりますので、これによって実質的には問題がなかったということでございます。
○紙智子君 今まではその必要がなかったということでは、やっぱり本当の意味で危機管理にならないというふうに思うんです。
 今回、やっぱり初動の対応が大事だったというのが改めて示されたわけですけれども、必ずしも今回発生して連絡がぱっとできて対応できたというわけじゃないわけです。
 それで、いざというときに備えて、やっぱり知事がやれない場合にはカバーできるようにしておく必要があるんじゃないかというふうに思うんですね。移動搬出制限というのは、この高病原性鳥インフルエンザに限らず、感染症が発生した場合に感染拡大を防止するためには不可欠の措置だと思うんです。
 それで、今回のような大規模経営の場合に、ウイルスの量も膨大というか、本当にわっと爆発的に増えていくということですから、感染拡大の可能性も大きいですし、それから出荷量も増えて、そしてその流通のスピードもすごく速いと。今回も、発生して瞬く間に二十三県に流通していたわけですからね。そういうことを考えますと、全国そして県域を越えて迅速な対応をするということが必要なわけで、国がその点では直接責任を負うべきじゃないかと。
 それで、規模も十万羽以上の採卵鶏農家が三百六十戸で、シェアでいうと五四%になっている。それから、ブロイラーは年間出荷羽数が十万羽以上が千八百八十戸ということで、この分野のシェアが八八%ということですから、やっぱり大きな規模のところが大部分を占めて動いているということになりますから、本当にそういう意味では大事な問題だというふうにこの間感じていることなんです。
 それで、改定された防疫マニュアルを見ますと、都道府県が実施主体となるということしか書かれてないんですよね。やっぱり大規模経営でその及ぼす影響が広範になる場合に、事は感染症をいかに早く封じ込めるかということが時間を争って急がれるということですから、そういう場合に国が責任を持って移動制限を掛けるべきではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) 家畜伝染病予防法、これに基づきまして知事並びに農水大臣の命令が可能になっておるわけでありますが、現在、受託事務と、こういう形で、家畜都道府県防疫マニュアルを農水省で作り、そして家畜保健所等々でいろいろ対応しておるわけでありまして、我が省といたしましても、やはりこの専門家等の問題があるわけでありまして、いろいろリストアップをし、さらにまた都道府県におきましてもリストアップをそれぞれしていただいて、そしてそういう事態になったときにそれらの関係者がすぐ派遣できるようなそういう体制、こういうものを今作っておるわけでありまして、そういう中でどのような事態に対応できるかと。それは農水省、都道府県と緊密な連携を取ってしっかりした対応をしてまいりたいと、こう思っております。
○紙智子君 その今緊急の体制を作っているということは私も知っていますけれども、問題は、実際に周りから見ていても、その報道をテレビ通じてわっと流れているときに、早く封じ込めなきゃいけないということなんだけれども、実際にその権限というのは都道府県にあるというときに、早く何とかしなきゃいけないけれども手を出せないという状況が出てくるんじゃないかと。今回限りじゃなくて、今回だけじゃなくてですね。
 そういうときのことも考えて、私が言いたいことは、そういう省令がないのであれば作るということも含めて、そういう法自身の在り方も含めて考えておく必要があるんじゃないかということなんですけれども、いかがでしょう。
○国務大臣(亀井善之君) 今回の家伝法の見直しに関連いたしまして、省令につきましても整備する方向で検討してまいりたいと、このように考えております。
○紙智子君 それでは、次に畜産の問題に入ります。
 それで、酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針の見直しということで、我が国でのBSEの発生が、これ牛への肉骨粉の給与が直接的な原因だというふうに言われているわけですけれども、飼料基盤の確立とは切り離して、輸入飼料に依存して規模を拡大すると、効率化一辺倒ということで推進されてきた我が国の酪農・畜産政策の転換の必要性を提起したことでもあったというふうに思います。
 それで、来年度をめどに新たな酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針が策定されることになるわけですけれども、この基本方針、新たな基本方針の策定に当たっては、地域の条件を生かしてやはり飼料自給を拡大をすると、適正規模の飼養頭数で牛の生理や健康を大切にする経営に転換していくということを強く打ち出すべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(井出道雄君) 我が国の畜産は、既に農業総産出額の四分の一を占めて、地域の雇用、経済を支え、また自給飼料生産を通じて自然環境の保全等の重要な役割を果たしております。
 その中で、担い手の問題あるいはゆとりある経営の実現のための労働負担の軽減の問題、更には自給率の向上のために輸入飼料依存から自給飼料基盤に立脚した経営への転換と、こういった課題を抱えております。さらに、BSEの発生や鳥インフルエンザの流行によりまして、安全な国産畜産物の供給の重要性も増してきております。
 こういった課題に対処するということで、今審議会において新しい基本方針の策定作業に入っておりますが、今申し上げたような、ゆとりある生産性の高い酪農・畜産経営を実現したい、あるいは日本型放牧の普及等を通じて自給飼料基盤に立脚した資源循環型の大家畜畜産を実現したい、安全、安心で良質な畜産物の安定供給を図りたいと、こういったことを主要課題として検討を進めております。
 そういった方向で御論議を重ねていただき、新たな基本方針を策定していきたいと考えております。
○紙智子君 現在の基本方針では、それまでになかった飼料基盤の拡充という問題や自給飼料生産の推進と、それから日本型放牧の促進と、こういう言葉が掲げられているんですよね。しかし、具体的な生乳の生産数量目標ということになりますと、一頭当たりの乳量の拡大などを通じた生産コストの低減と、それでもって国内生産の拡大を図ることが課題だというふうになっているんですね。これは従来と変わらないと思うんですよ。それで、このことというのが政策の主流になっているというふうに思うんですね。
 やはり放牧主体、そして粗放的な酪農、そして飼料稲等のこの地域資源を生かした適地適作的な飼養形態の普及、育成、そして自給飼料拡大のための具体的な施策ということで、ここをもっともっと示すことが大事じゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょう。
○政府参考人(井出道雄君) 現実に存在しております酪農経営におきましては、そういうふうに乳量増を図る、大規模経営化を図るという経営体の方々も数多く出てきておりますが、一方では、都府県ではもう三十頭以上は飼わないということで、草地基盤に立脚し、しかも労働もそこそこで家族楽しくと、そういうことで教育ファーム等も兼営をされているというような方も私の知っている限りで何人もおられます。酪農家の経営姿勢というものも、そういうふうに時代の背景を、時代背景を映しまして、様々になっているのではないかと思っております。
 そういう経営実態も踏まえて、十分な議論をしてまいりたいと考えております。
○紙智子君 十分議論をしたいということなんですけれども、この基本方針の中に、具体的な目標のところを見ますと、実際にはやっぱりどれだけ搾るかという目標が定められていて、それでかなりやっぱりそれがなかなかきついものであるということなんかが現場の方からも出されてくるんです。ですから、是非そういう議論を進めていただきたいというふうに思います。
 それから、当面の問題としてなんですけれども、先ほどもちょっと議論の中で出されていましたけれども、一つは、稲わら、稲わらじゃなくて、稲発酵粗飼料給与技術確立助成ですね。先ほどもちょっとあったんですけれども、ちょっとはっきりと確認をしたいのでもう一度言いますけれども、これは利用酪農家に対して十アール当たり二万円の助成を行うんですね。直接農家を応援するもので欠かせないものですけれども、一層拡大継続をしてほしいというのはやっぱり強いわけです。
 これについては拡充継続するということでさっき御答弁があったというふうに確認をしてよろしいんでしょうか。
○政府参考人(井出道雄君) その稲発酵粗飼料につきましては、稲作農家にとっては作りやすい転作作物であると、畜産農家にとっては家畜の嗜好性の高い飼料作物として評価をされているわけでありまして、十五年度は約五千ヘクタールまで作付面積が増えてまいりました。
 この稲発酵粗飼料の作付け利用に当たりましては、当然、稲作農家と畜産農家との連携が重要でございますので、十六年度からは、いわゆる米作りの方の水田農業構造改革対策の中でも、産地づくり対策と耕畜連携対策の助成対象としてこの稲発酵粗飼料がその作付けを推進されることになっております。
 ただ、この稲発酵粗飼料の給与技術確立型という、この稲発酵粗飼料を給与する農家への助成につきましては、今までこういった稲発酵粗飼料を給与した経験のない畜産農家が非常に不安がるわけでございまして、そのための実証展示を目的として実施をしてまいりました。この稲発酵粗飼料の定着状況を踏まえますと、この実証という目的は既に達せられたと考えられます。
 ただ、しかしながら、自給率の向上のために輸入粗飼料を稲発酵粗飼料に置き換えていくと、こういう視点からは、助成単価を見直した上で、畜産農家の負担軽減対策として十六年度についても継続することといたしております。
○紙智子君 自給率引き上げる上では、これは本当に大事な位置付けだというふうに思います。それで、是非長期的な展望を持てるような制度にするべきではないかというふうに思って指摘をしておきたいと思います。
 それからもう一つ、現在実施されている直接支払の役割を果たしている土地利用型酪農推進事業についてですけれども、これもさっき継続されるというお話だったわけですけれども、しかし、何か報道などを見ますと、手取りになる部分というのが削られるのかというようなこともあるんですけれども、これはどうでしょうか。
○政府参考人(井出道雄君) 本事業は、平成十一年度に畜産環境問題に適切に対応し得る飼料基盤に立脚した酪農経営を実施している生産者を支援するための施策として措置されております。
 飼料基盤の確保には一定の役割を果たしてまいりましたけれども、一方で、飼料作付面積がゼロの農家に対しても補助金が交付されていたり、実際にはその飼料作付面積が思ったほど伸びないどころか、地域によっては減退したり、あるいはその後の奨励金の一律加算によりましてランク格差が縮小して、ランクアップへの誘導効果が低下している等々の指摘がなされております。
 本事業については五年間ということで、本年度が終期となっておりましたけれども、関係者の強い継続要望にも配慮をいたしまして、畜産環境問題に対応した飼料基盤の確保対策として更により有効に機能するようにということで、事業創設時の趣旨も踏まえまして、事業内容の改善、見直しを行った上で継続するということにしたところでございます。
○紙智子君 やはり牧草地に立脚して酪農を営む人たちにとっては、これは不可欠の問題なんですね。それで、やっぱり精査するようなこともあるわけですけれども、この中身としては、やっぱり削らないでとか、手取りが減らないようにやっていただきたいというように思うんです。
 それで、飼料基盤の拡充や自給飼料生産の推進を掲げて全体努力しようというわけですから、それに逆行することになってはいけないというふうに思うんですね。畜産農家にとっても重要な収入源をなくすことはすべきでないと。
 それで今、国内の、国内産の飼料自給率というのは、この現在の基本方針がスタートをしたのが二〇〇〇年ですから、二〇〇〇年のときで自給率二六・二%だったのが下がってきているわけですよね。それから、粗飼料の自給率についても、当初七八%だったわけですけれども、これも下がってきているわけです。だから、飼料作物の作付面積そのものも減少に歯止めが掛かっていないという中では、やっぱりそういうときにこれらの施策を削るというのは、やっぱり自給率を上げようといっても下がっていくことにつながってしまうということでは、やっぱりそれでいいのかというふうに言いたいわけですよ。
 それで、今日の議論の中でもありましたし、新聞報道にもされていたんですけれども、やっぱりふん尿処理などの財源が足りないと。そのために、この財源を確保するために一部を削って回そうというようなことなんかも言われているんですけれども、私はやっぱりこれとんでもないなと思うんですよ。
 やはり財源が厳しくなったというのはBSEの対策に関税収入を充てたということもあるわけで、元々この関税収入というのは、輸入自由化で影響を受けた、そういう畜産のために使うことになっていたと思うんです。それで、本来BSEの対策は国がきちっと責任を持って、そこに予算も付けて対策を持つべきものであって、そこに関税収入を使ったというのは私は間違いだというふうに思うんですね。
 今なくなったからといって、必要な施策を削るというのはこれは間違いだと。だから、関税収入だけではなくて、必要な予算は国がきちんと振り向けるべきではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(井出道雄君) 先ほど酪農対策に使うお金と肉牛対策に使うお金は財布が違うのですというお話をいたしましたが、牛肉関税による財源は食肉対策に使うということが法定されておりまして、こういった酪農関係に使うお金は、別途、自由化以前に旧畜産振興事業団が一元輸入していたときのたまり金を使っておりますので、そこは御了解をいただきたいと思います。
 土地利用型酪農推進事業については、先ほども申し上げましたように畜産環境問題と草地基盤の整備ということを掲げておりますが、委員も今御指摘がありましたように所得の一部化しているという点で、実際に草地基盤を整備したり、そういったことに行動が伴わなくてもお金がもらえるということになっておりまして、ちょっと趣旨と実際が違うのではないかということも指摘されております。
 我々としては、草地基盤は非常に大切でございまして、今回の対策におきましても、いわゆる草地更新、草地は七年か八年かに天地返しして更新しませんといい草取れませんが、それが北海道でも非常に遅れているということでございまして、この予算は倍額にして、現実に体を動かして、地面を動かして草地更新をしていただくというようなことについてはちゃんと助成をしたというところでございます。
○紙智子君 いずれにしましても、やっぱり本当に自給率を上げていこうというためには欠かせない対策としてもこれは強化していただきたいというふうに思います。
 それで、農林中金総研の蔦谷栄一さんという方が、北海道のマイペース酪農や集約放牧、それから山地畜産、飼料稲や食物残渣による地域条件を生かした飼料原料による自由化を図り、家畜の健康と経済性の確保をバランスさせていく経営が今後の我が国の畜産の柱だと、自然に立脚した本来の第一次産業として再編していくことをこれからの畜産経営の基本方向として設定すべきだというふうに指摘しています。そのような日本型畜産は、直接支払によって維持確保していくだけの十分な意味、価値を有していると、国民の理解も得ることができるというふうにしているわけです。やっぱりBSEなどのことから反省をするならば、このような基本方向への転換が必要だというふうに思います。
 続いて、ふん尿処理の問題です。
 家畜ふん尿処理の問題は、河川、地下水汚染などの問題だけではありません。本来は国産で、国内で作られた飼料を家畜に与えて、排出されるふん尿が国内の土に還元されていくと、こういう循環していく形、循環型というのが望ましいわけですけれども、現在、飼料が結局ほとんど海外から輸入に依存しているということで、家畜から排出されるふん尿というのは我が国に一方的に蓄積していくと、循環していないわけですよね。外国から来たものが日本の中で行くと。一方通行なわけです。そういう中で地質、窒素過剰というか、土の質が窒素過剰という問題も起こしていて、要するに循環型ではなくて非循環型というような問題が大きな問題になっているというように思うんですね。
 これもやっぱり輸入飼料に依存してきた規模拡大の政策の帰結だと思うんですけれども、北海道の酪農家の方々に話聞きますと、やっぱり三百頭も飼えばとても農地に還元できないのは当たり前だと、循環できる規模の飼養管理に変えていかなければやっぱり根本的な解決にならないんじゃないかという声が出されているんですけれども、これに対する御認識はいかがでしょう。大臣にお聞きしたいと思います。
○政府参考人(井出道雄君) 家畜排せつ物の処理につきましては、基本はやはり堆肥化を行った上で、可能な限り肥料や土壌改良資材として経営体内の農地や経営体外の農地に有効に利用していくことが重要ではないかと考えております。
 ただ、堆肥を農地に還元利用できる量につきましては、周辺の農地の分布や耕種農家における作付け体系などによりまして、地域によって大きく異なっております。農地への適正な窒素投入量といった観点から見た場合、生産された堆肥が地域における農地の受入れ可能量に比べて過剰となる場合もあると見られております。全国の主要畜産県では数県でそういう悩みを抱えていると承知しております。しかしながら、一方で堆肥の供給が需要を下回っていたり、新たなエネルギー資源として地域活性化の観点から期待が大きい地域もございます。
 今後とも、堆肥化によりまして経営体内あるいは地域内での農地利用を基本としながらも、広域的な堆肥利用やエネルギー利用の促進などを含めて家畜排せつ物の適正な処理を推進していきたいと考えております。
○紙智子君 今年十月で家畜ふん尿処理法の猶予期間が終わって完全実施となるわけです。しかし、四割近い農家でふん尿処理施設の設備が終わっていないと。で、違反すれば罰則が伴うということで、生産現場では非常に危機感を強めているわけです。
 JA北海道中央会がこの間まとめました全道酪農経営意向調査によりますと、経営を中止したいという理由として、二割の農家が家畜ふん尿処理施設の整備、対応が困難だということを挙げているんです。畜産・酪農家は、畜産物の価格の低下に加えてBSE問題で大きな打撃を受けてきたわけです。堆肥舎の建設というのは大体数百万から一千万といいますね。一千万以上というふうに言われているわけですけれども、多額の負債を抱えた農家にとっては、これは死活問題なんですね。
 この設備整備のために農家個人が使える助成というのは、二分の一の補助付きリース事業だけです。現場では、このリース事業は順番待ちの状況で、ずっと待たなきゃならないという状況になっていると。先ほど紹介しましたJA北海道の調査でも、ふん尿処理に係る要望については、施設設備に掛ける予算の増額が、増額してほしいというのが二三・九%で一番多くなっているんですね。
 遅れている個人処理の施設を早期に整備するためには、この補助率を引き上げると、これがやっぱりどうしても必要だというふうに思うんですけれども、その予算の思い切った増額をすべきではないでしょうか。
○政府参考人(井出道雄君) 施設整備に当たりましては、十六年度予算案におきましても、公共事業、非公共事業とも前年を上回る額を確保したところでございますし、補助付きリース事業についても、先ほど来申し上げておりますように、三百一億円と大幅に増額をいたしました。
 この補助付きリース事業というのは、二分の一を補助金で出まして、残りの二分の一を長期間掛けてリース料を払うということでございますんで、今考えられる中では、非常に農家にとってこれ以上有利な制度というのは考えにくいというくらい有利な制度でございまして、そういった面で助成率の引上げというのは困難ではないかと承知いたしております。
○紙智子君 四割近い農家ができないで来ているという事態なわけですから、そして心配しているわけですから、ちょっと余りにも今の答弁は簡単過ぎるというふうに思うんですよね。
 それで、続けますけれども、リース事業に対するこの予算額は、この四年間、二百十億円に据え置かれたままです。そのために年間利用者は二〇〇二年で千五百二十一件しかないわけですし、三年、四年、個人施設で整備を要する農家は八千三百戸あるわけです。この枠では間に合うわけがないんですね。期限までに整備が進まないのは農家個人の責任ではないんですね、これ。やはり法律では、都道府県知事が指導、助言して、従わなければ勧告、命令を出すんだと。命令に反した者は五十万円以下の罰金が科せられるんだと。
 罰金の適用、これについては、私は延期すべきだと思うんですけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(井出道雄君) 管理基準の適用猶予期限を延長をすることにつきましては、既に努力をされて整備を行った農家に対して不利益を与えるもので、不公平ではないかという意見もございます。
 また、この法律が緊急に制定され、五年間でやろうということになった背景には、今委員も御指摘がありましたように、この家畜排せつ物の不適切な処理を野放しにいたしますと、深刻な水質汚濁の原因の一つにもなり、また人の健康にも影響を与える可能性があるということで、その是正を社会的に厳しく求められたからでございます。
 そういう観点からしますと、この限られた国土で畜産業を営んでいく限り、社会に向けてその存在を主張するには、この猶予期限を延長すべきではない、しっかり守って環境対策をしっかりやったということにしていかなければならないのではないかと思っております。
○紙智子君 みんなやらなきゃいけないと思っているんですよ、それは、今のこういう状況の中なんですから。やらなきゃいけないと思っているけれども、できないで来たわけですよ。そこのところをちゃんと受け止めていただかなければ、やっぱりまず国が主導してやって、そしてどうするかと悩みながら、いろいろ工夫しながら努力してきているわけですから。前に向けて何とかしようと思っているわけですからね。
 そういうときに、罰則も、もうすぐ、はい掛かりますよということでなくて、やっぱり一律に掛けるのは理不尽だと思うんです。そこのところをちょっと柔軟に対応するなり、やっていただけないでしょうか。いかがでしょう。
○政府参考人(井出道雄君) 家畜排せつ物法は、十一月になりまして、例えば素掘りの、余り好ましくないですが、素掘りの野積みが放置されていたといたしましても、即座に罰則が掛かるシステムにはなっておりません。まず、指導、助言、勧告、罰則という四段階になっておりまして、その点では逆に、逆の立場の方からは、非常に生ぬるいというおしかりも受けておりますが、ある日突然罰則を掛けるというような運用もするような法律ではございませんので、今の法律で十分対応できると考えております。
 それから、私どもはそういう非常に難しい人たちには簡易対応をお勧めしてまいりました。簡易対応は、お金も、規模にもよりますが、百万程度でできます。一部には、その耐用年数に疑いがあるとか、作業の操作性が悪いとか、いろいろ酪農家から不安の声もございましたので、実証展示ということで、かなりな地区に実際にやっていただきまして、農家にも見ていただくと。あるいは、いろんなタイプがございますので、そういったものをパンフレットその他にして御紹介をし、あるいはメーカーも紹介するというような地道なこともやってきております。ですから、どうしても短期間に大きなお金を動かして施設整備ができないという方であっても、そういう対応は可能であると考えております。
○紙智子君 それじゃ……
○委員長(岩永浩美君) 紙智子君、時間が参りました。
○紙智子君 はい、分かりました。じゃ、最後です。
 今日、畜産物の価格をめぐって、加工原料乳の生産者補給金の単価、この引下げの諮問をやったと。私、これには断固として抗議をしておきたいと思うんです。
 酪農家が現在のような効率を優先した大規模経営に向かざるを得なかったのはなぜかといえば、最大の要因は、この間政府のやってきた低価格政策があるわけです。加工原料乳の価格を毎年引き下げられて、生産者は、コストを減らして収入を確保するためには、やっぱり飼養頭数を増やさなければいけないと。牛の生理を無視して無理に搾乳を、搾乳量を増やすということに追われることになってきたわけです。そして、生産者が必死の努力でコストを下げるとまた価格が下がると。もう、下げるとまた、努力するとまた下がると。こういうことの悪循環の繰り返しだったわけで、やっぱりこの抜本的な転換が必要だというふうに思うんです。
 そのためには、まずは再生産が保障される加工原料乳価への引上げが必要です。そして、加工原料乳の限度数量は、過去三年間、連続引き下げられてきているわけですから、これ以上引下げがあってはならないということを最後に申し上げまして、質問を終わらしていただきます。