<第159回国会 2004年3月16日 農林水産委員会 第3号>


平成十六年三月十六日(火曜日)
   午前十時開会

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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○農林水産に関する調査 (平成十六年度の農林水産行政の基本施策に関する件)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今、食の安全、安心という問題は大変大きな国民の要求になっています。
 農水省が二月四日に発表しました食料自給率に関する意識・意向調査、ここでは我が国の食料供給に不安を感じる人が、非常に感じるというのとある程度感じるを合わせますと、消費者、農業者とも九割を超えているんですね。そして、自給率については大幅に引き上げるべきだというのが、それぞれ消費者、農業者、八四・九%と九〇・四%ということですから、圧倒的な声になっているというふうに思うんです。
 四年前に旧総理府が行った世論調査では、当時、不安があるということでは七八・四%、自給率が低いというふうな意見が五二・八%だった。この四年間で更にやっぱり食料供給への不安が増大したというふうに言えると思うんです。
 加えて、この四年間はBSEがあり、そして産地偽装表示事件があり、今度の鳥インフルエンザの問題と、消費者に大変大きな不安を与えた一方で、生産者にとっても輸入拡大や価格補償制度の後退など、厳しい条件が強まった。そういう中で、こういう自給率の向上を求める意見が強まったというふうに思うんですね。
 そこで、この示された結果に対する感想と、それから、私、やっぱり自給率向上の課題というのは農政の最重要課題であるというふうに思うわけですけれども、その点での大臣の御認識をまずお聞きしたいと思います。
○国務大臣(亀井善之君) 今、委員御指摘の調査、一つは昨年十一月中旬から十二月中旬にかけましての調査であります。これはいわゆる農林水産情報交流ネットワーク事業の農業者モニター三千二百二十四名、あるいは消費者情報提供協力者千四百八十名を対象にした調査であります。
 それによりますれば、やはり食料供給に対する不安があるわけであります。食料自給率の向上の必要性に関する意識が高いという結果が得られております。これは、国土や自然環境の保全、世界的な食料供給の制約に関する各種の報道、我が国の食料自給率が先進国中最低の水準にあると、この認識の高まり、これらを受けたものであると、このように考えております。
 なお、この調査の後、米国でのBSEの発生や鳥インフルエンザの発生があったわけでありまして、現時点では食料の供給に対する不安や自給率の向上の要請は更に強まっているのではないかと私は考えております。
 このようなことからも、食料の安全、食の安全と信頼を確保しつつ、食料・農業・農村基本法に基づく国民に対する食料の安定供給と食料の自給率の向上を図っていく考えでおります。
 なお、平成十二年に行われました総理府の農産物貿易に関する世論調査における同じような設問に対する回答結果と比べますと、将来の食料供給に不安があると答えた者の割合が、食料自給率の水準が低いと考えていると思われる者の割合は今回の調査の方が高くなっておるわけでもございます。
 しかし、若干、この両調査とも、やはり調査の趣旨、世論調査は食料、農業の多面的機能や農産物貿易政策についての幅広く調査をされているわけでありまして、今回の調査は食料自給率に特化をした調査、こういうことでありますし、調査対象が今回の、世論調査は国民一般でありますけれども、今回の調査は、先ほども申し上げましたとおり、農林水産行政に意識が高い農業者や消費者モニター、こういうことで大きく異なっておるわけでありまして、調査結果を単に比較するということによって国民の意識の変化を判断することは適当ではないと、このようにも考えますが、前段申し上げましたとおり、この食料の安定供給とそして食料の自給率の向上を図っていくという考え方、これは十分認識して対応しなければならないと、こう思っております。
○紙智子君 それで、現在の自給率目標なんですけれども、二〇一〇年に四五%というふうになっていたわけですけれども、この間はずっと四〇%で横ばいで来ているわけです。基本計画の見直しでは、期中の見直しではなく、今後十年程度を見通した新たな計画を策定することとし、目標年度を二十七年度とする方向で検討というふうにありますね。
 それで、そうしますと、この四五%という目標は棚上げになってしまうのかと。我が党はこれまでせめて食料自給率を五〇%、更に六〇%へと引き上げていかなきゃいけないということをずっと主張してきたわけです。そして、新基本法のときの質疑の中でも、野党は当時五〇%はという話をやっていたわけで、そういう中で四五%というふうになったわけですけれども、大臣はこの控え目の四五%すらできないということであきらめてしまったのかなと思うんですけれども、この点いかがでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) 食料の自給率につきましては、食料・農業・農村基本計画の見直しに当たりまして、消費、生産、両面にわたりましてその動向に係る徹底的な検証と、そして幅広い論議を行っていく考えであります。
 自給率問題は、農業政策の面でどのような見直しを行うか、あるいは食生活の見直しに関しましてどのような取組をするかと。これらの成果をどのように見直すかと、こういうことと密接な関係を、関連をするわけでありまして、これらとの関係を踏まえまして具体的な目標等について検討をされるべきものと、このように考えております。
 その目標水準につきましては、やっぱりいたずらに高いと、高ければ高いと、これはよろしいことでございますけれども、高い目標を掲げるのでなく、私は、やはり地に足の着いた、到達可能な現実的な目標と、このことが重要なことではなかろうかと、このように考えております。
○紙智子君 地に足の着いた現実的な目標ということで四五%を閣議で決定したものだと思うんですね。決して軽いものではないと思うんです。安易にやはり棚上げするべきものでもないというふうに思うんですね。これができなかったということになりますと、やっぱり政府全体の責任も問われる問題だというふうに私は思うんですが、この点はいかがでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) この二十二年度の数字につきましてはどうするか、もうこれは今後審議会で議論をするということになるわけでありまして、決してこの数字を避けて通るというわけではないわけであります。
 やはり、食料の自給率の目標につきましては、消費者や生産者等関係者の取組の指針とする必要があることから、やはり食料・農業・農村基本計画におきまして何の前提もなく何%という目標を掲げるのではなく、先ほど来申し上げましたとおり、消費、生産における取り組むべき課題を明示するとともに、これらの課題が解決される場合の姿として、栄養バランスの改善等、いわゆる食生活の見直しを前提とした消費量の目標値、いわゆる望ましい食料消費の姿、あるいはまた米、麦、大豆などの品目ごとに生産性や品質の向上、この課題の解決を前提として生産量の目標値である生産努力目標、こういうことを掲げることが適当と、このように思います。
 そのようなことで、実現可能な水準と、もうそういうことから品目ごとの自給率目標を設定するとともに、それを積み上げたカロリーベースの食料の自給率、これを四五%と、こう設定してきておるわけでありまして、これら十分今後の審議会での議論をしていただきたいと、またその御議論に基づきまして対応してまいりたいと、こう思っております。
○紙智子君 これ、最初に決める、設定する際の議論というのが、やっぱり五〇パー、五割以上を適当だという議論の中で、しかし実現の可能性だとか、それからやっぱり今言われたことを含めて、それでやっぱり控え目な目標として設定してきたわけで、その意味でやっぱりできていないということについては責任が問われる問題だというふうに私は思うんです。
 我が党は自給率引上げにはやっぱり二つのことが大事だというふうに主張してまいりました。その一つは輸入の問題で、輸入のやっぱり規制を行うという問題と、それから価格制度の拡充が必要だということを言ってきたわけです。
 ところが、この四年間の短期間で見ても輸入は増えているわけですね。二〇〇〇年の農産物の輸入額でいいますと三兆九千七百十三億円と、そういう規模だったわけですけれども、二〇〇三年には四兆三千六百数十億円と。EUのようにこの価格・所得関係のところで六割から七割というように農業予算の中心にするべきだと、それだけのスペースを取ってやるべきだと主張してきたわけですけれども、これも抜本的な対策がこの間なされてきていないわけです。
 こういう状況では、やはりどだい食料自給率は絵にかいたもちになってしまうと。改めてこの二つの問題、施策に全力を挙げるように、そして農政の転換をしていくように、そのことを要求したいと思います。いかがでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) なかなか、米の消費、そして我が国の食料自給率がこのように低下をしていると。これはもうかつては、七〇%、八〇%のころは米をもう百二十キロ消費をしておったわけでありますが、今日、六十二・七キロと、こういうようなことで、四〇%に下がってきていると、こういうような状況と。
 そういうことから考えますと、やはりその部分、米の消費の減少、こういうことが低下の一つの大きな要因になっておりますし、それ以外の品目につきましては、麦ですとか、あるいは大豆や砂糖、こういう生産は拡大して、その他の品目は生産量が減少していると、こういうことで今四〇%という状況にあるわけでありまして、今後、やはり何といっても食生活の変化、これが主要な要因になっておるわけでありまして、消費、そして生産、両面にわたりましての努力が必要ではなかろうかと。
 そういう点から、食生活の変化に対応しては、やはり食育の推進ですとか、あるいは米を中心とする日本型食生活、こういうことの復権と、これらを積極的に進める、こういうことが必要なことではなかろうかと。そういう点で、消費、生産、あるいはまた食品産業関連事業者等と一体になった形で自給率の向上に努めてまいりたいと、こう思っております。
○紙智子君 どうも、どういうふうに聞いても、何かやっぱり消費者の消費の仕方の問題ですとか、そこに責任が行っているような感じに聞こえてしまって、実際に政府自身がどういうふうに努力をやってきたのかということの反省がやっぱり足りないように感じるんです。
 それで、次に、輸入が増えて自給率が下がる懸念がある問題では差し当たってのFTAの問題があります。我が党は、FTAについては、平等互恵、そして経済主権の尊重と、そういう立場をもって臨むべきだというふうに考えます、当たり前のことですけれども。その点で、自給率向上という問題は我が国の基本的な国のありようの問題だというふうに思うんですね。工業製品の輸出をやりやすくするために、その引換えとして農産物の自由化をやるべきではないというふうに思います。
 そこで、今回、メキシコとの合意についてなんですけれども、この取扱いによって関連農業への影響が実際にどうなるのか、それを分析した上での合意なんでしょうか。いかがでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) メキシコとの農林水産物の関税交渉、これに当たりましては、多面的な機能への配慮、あるいは我が国の食料の安全保障、この確保、また農林水産業における構造改革の努力に悪影響を与えないような十分留意をいたしまして交渉に取り組んできたところでもございます。
 農林水産品約一千百品目につきましての関税譲許、これを行うものの、豚肉につきましては、昨年十月の閣僚折衝の合意を基本に、差額関税制度の根幹を維持したほか、その他の品目につきましては、品目ごとの国内農業における重要性を勘案し、必要に応じて例外品目、関税割当て、あるいは経過期間を設定すると、こういうことで、又は二国間セーフガード、これを導入することを確保した上で合意、大筋合意をしたものであります。
 そういう面でいろいろ、我が農水省としてもいろいろ考慮し、また団体の皆さんの御意向も承る、今日まで産学官での共同研究と、こういうようなことも経過を経てきておるわけでありまして、そういう面で今回のFTAのメキシコとの問題につきましては我が国の農業に支障を生じない、こういう範囲の中で対応したと、このように考えております。
○紙智子君 支障を余り生じないということで判断したということなんですけれども、養豚協会は豚肉を関税撤廃品目から除外するようにということでこれまで要望してきていますよね。それから、日本園芸農協はオレンジジュースなどで現時点の自由化以上の譲歩はしないようにと、これは参議院の視察のときにもやっぱり現場の方から要望をされていたわけですけれども、こういうふうに要求してきたわけです。
 それで、やっぱり数値的、シミュレーション的に実際にこうなるよという分析を分かりやすく示すべきではないかと思うんですね。農水省の「自由貿易協定を巡る各国との議論の状況と今後の対応」ということで、これ、こういうのが出ていますよね。この中でも、締結に当たってはどのような利益と損失が生じるか十分に検証するというふうにあるわけです。この中でも言っているわけです。
 そこで、影響を客観的に明らかにする用意があるかどうかということを、まず。
○政府参考人(村上秀徳君) メキシコとの農産物についての交渉に当たりましては、それぞれの品目の関税率の水準とか国内需給の状況、国内関係農家の構造改革の状況、あるいはメキシコ産品の輸出競争力や輸出余力といったことを十分勘案いたしまして、先ほど大臣が申し上げましたような適切な経過期間を設定するとか関税割当て枠の設定などを行いまして、国内農業への影響を極力回避するというように努めたところでございます。
 農産物の関税撤廃は、国内農業に及ぼす影響のみを為替レートの動向やあるいは他の輸出国の動向等と切り離して分析することは非常に困難でございますので、個別品目の一つ一つについて定量的な影響分析は行っていないところでございますけれども、今申し上げましたようなことを総合的に判断しながら、国内農業への影響を極力回避するという形で努めてきたところでございます。
○紙智子君 損失が出た場合にはどう対応するというのはございますか。
○政府参考人(白須敏朗君) ただいまの委員の御指摘でございますが、いずれにいたしましても、例えば豚肉につきましても安価な豚肉の輸入を極力抑制するという差額関税制度、これの根幹を堅持するということを大前提ということで今回の交渉にも臨んだわけでございます。したがいまして、そこのところは、根幹はもちろん堅持できたわけでございまして、そういった意味で、国内養豚経営への影響は極力回避できるというふうに考えているところでございます。
 また、委員の御指摘ございました、例えばオレンジジュースということにつきましても、いずれにしても、この関税率につきましては半減の水準でございまして、無税ということじゃございません。しかも、そういった意味での現行の輸入量相当がスタートでございまして、それを五年掛けて徐々に、その低関税率の枠は増加していくわけでございますが、これは義務輸入でもございませんし、そういった意味で、私どもといいますか、今想定されておりますのは、メキシコ産の果汁の過半が例えば現在入っておりますブラジル産などと代替するというふうに見込まれているわけでございます。
 したがいまして、そういうことをるる勘案をいたしますと、国内かんきつ系への影響というものは極力回避できるのではないかというふうに考えている次第でございます。
○紙智子君 FTA交渉において、WTO上、実質上すべての貿易の自由化が条件とされています。しかし、確立された定義はあるのかということなんですね。
 それで、貿易額の九〇%以上を対象にするということは、これ、あくまでもEUの事務局の解釈にすぎないと思うんですね。その点では自給率の向上に逆行して、この農業の多面的な機能を損なうような農林水産品は交渉の除外品目にするという姿勢で臨むべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(村上秀徳君) 先生御指摘のように、ガット二十四条で、自由貿易協定は、協定参加国間において、実質上すべての貿易について、関税その他の制限的通商規則を廃止するということが求められておりますが、この実質上すべての貿易について、現在のところ明確な国際基準はございません。委員御指摘のとおり、EUの内部では貿易額の九割相当というような議論がされているということでございます。
 交渉に当たりましては、当然、国内農業に与える影響などを勘案いたしまして、FTA交渉は原則は関税撤廃でございますけれども、関税の撤廃に当たりましても経過期間を十分取るということ、それから、関税を撤廃しない、関税割当てという形で一定の低税率の輸入機会を提供するというようなこと、あるいは、相手国の関心の度合いにもよりますが、我が国の重要な品目については再協議というような特別扱いをしていったりする、いろんな工夫を品目の需要に応じてやっていきたいというふうに思っているところでございます。
○紙智子君 次は米問題です。
 今、農村では、米政策改革で水田農業のビジョン作り、この作成に追われています。その中で、産地づくり交付金がこれまでの転作助成金の水準に比べて大幅に削減するということが大きな問題になっているんですね。
 それで、皆さんのお手元にお配りしましたこの資料、一覧表にしていますけれども、これは来年度、十六年度の産地づくり交付金と、今年度、十五年度のこの水田農業経営確立対策額の比較ということで、資料として出させていただきました。
 二〇〇三年度の水田農業経営確立対策のこの予算の交付予定額というのは千八百五十九億八千九百万円となっています。これが、来年度の水田農業構造改革交付金の交付予定額が千四百四十五億八百万円と。だから、二二・三%減ると、削減ということになるんですね。
 この削減はやはり農村経済にとっては大きな打撃になることは明らかだと思うんです。影響がないというふうに言えるのかどうなのか、このところの、この辺の認識について、大臣、お伺いします。
○国務大臣(亀井善之君) 現行の米の生産調整対策をめぐって、稲作における構造改革の著しい後れ、あるいは品質の劣る麦、大豆の生産による需要とのミスマッチによります産地づくりの遅延と、また、生産調整以外の生産対策や構造改革施策の予算の圧迫等の課題が見られるところでありまして、このため、米施策の改革の一環として、十六年度から開始する産地づくり対策につきましては、このような状況を踏まえまして、農家の生産意欲の喚起という点にも配慮しつつ、担い手の育成と、麦、大豆の品質向上や耕畜連携の推進等に重点を置きまして政府として予算を決定したところでありまして、産地づくり対策のうち、水田農業構造改革交付金、これ千四百四十五億円でありますけれども、これまでの助成実績と比較をいたしまして減額されたと解されているのではないかと考えられますが、水田農業構造改革交付金には生産調整の取組実績に応じて支払われる助成金が含まれていないこと等から単純な比較はできないわけでありまして、仮に、生産調整の取組実績に応じて支払われる部分、いわゆる重点作物特別対策を含めた額で比較してみれば、十六年度の予算額は、平成十四年度の助成実績と比較をして、おおむね九割というようなことになると思います。
 いずれにいたしましても、新しい対策の予算につきましては、厳しい財政状況の中で、平成十五年度当初予算や十四年度の助成実績と比較して遜色のないものではなかろうかと、所要の額を確保しておると、このように考えております。
 産地づくりの推進交付金の使い方につきましては、地域の創意工夫と、こういう中で決める仕組みにもなっておりますところでありまして、活力ある地域水田農業の実現に向けて産地づくり推進交付金を御活用をいただきたいと、このように考えております。
○紙智子君 実際、目で見ると、これだけ減るんだなというふうに思うわけで、影響がないということはないんですよね。
 問題は、確かに、いろいろその分埋め合わせするんだみたいなことを言っているわけですけれども、実際には、問題は、生産調整にかかわって農家が直接受け取る、支払われるような転作助成金に当たる部分が、これが新制度でどうなるかというところが一番みんな関心持っていますしね、現場では。知りたいところだし、そして減るということが言われているわけです。政府は農業団体に対して現行水準を確保したというふうに言っているようなんですけれども、これとんでもないなと私は思うんですね。
 私の地元の北海道の農業者に聞きますと、例えば鵡川町というところでは、平成十五年度と比べて四〇%も減少するんですよ。農家経済に大変なこれ影響が懸念されているわけです。
 それから、空知の方の妹背牛町というところがあるんですけれども、ここは助成金でいうと一戸当たり二百十万円だったのが三割減ると。規模拡大ということでやって、投資をして土地を買ってと。ところが、米の価格が下がってきて、それで赤字になってと。で、借金抱えて、その借金の何とか穴埋めをしながら、続けて頑張ろうと思っている、そういうやっぱり穴埋めにも一定使われてきたということを考えますと、この削減というのはもうストレートに響いてくるんですよね。
 それから、今までこの助成金が──それで、当別町、札幌のすぐ隣にあります当別町というところがあるんですけれども、ここは十アール当たり六万八千円という金額だったんですけれども、町全体の交付金の総額が七四%に減っちゃったんですよ。そうしたら、今まで六万八千円だったのが三万八千円なんだと。三万円減るんですね。そういうふうになりますから、大規模でやっている大型の経営の人でも、三百万円は減収になるのははっきりしているという話なんです。
 ですから、これ三年間は一定額ということですから、この状態が三年間続くわけです。これでは、担い手育成というんですけれども、この間にも担い手がつぶれてしまうというふうに、本当に胸が痛いんですけれども、この辺のところはいかがでしょうか。
○政府参考人(白須敏朗君) ただいまの委員の御指摘でございますが、大臣から申し上げましたとおり、いずれにしても、今回、私どもとしましては、産地づくり交付金につきましては必要な額を確保したというふうに考えているところでございます。ただ、個々の農家を見ますれば、委員御指摘のように、いろんな経営状況の、経営状態の農家もあるというのは御指摘のとおりかと思います。
 また一方、助成単価の話も今おっしゃったわけでございます。例えば、助成単価につきましても、確かに、現行対策におきますれば、最高額の単価は七万三千円というふうな、十アール当たりでございますが、なっているわけでございます。
 ただ、委員も御指摘のとおり、今回、十六年度から実施をされますこの産地づくり対策、特にこの水田農業構造改革交付金というものは、もう御案内のとおりでございますが、地域でそれぞれ人なり単価というものが設定できる仕組みであるわけでございます。また、従来の、従来といいますか、現行の対策の七万三千円のうちの例えば一万円は農家自らの拠出金の分であったというふうなこともございまして、実際の国の助成単価は六万三千円だったというふうなこともあるわけでございます。
 またさらに、先ほどの委員が御指摘になった差額の分とも関連をするわけでございますが、水田農業構造改革交付金とは別に、飼料作物に対して実績払いによりまして一万三千円、十アール当たり一万三千円というものの上乗せ助成を行う、そういう耕畜連携推進対策というものもまたあるわけでございます。
 したがいまして、一つ申し上げさせていただきたいのは、そこのところを、単純な現行対策とそれから産地づくりの、ただいま委員の御指摘になった新たな対策との金目というものは、なかなかそこのところは比較をするのは、単純に比較するのは必ずしも適当ではないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
 また、負債の問題あるいは農家経済の問題も委員御指摘になったわけでございます。ただ、あくまで現行の生産調整の助成金というものは、やはり農家の負債の返済、あるいはまたそういったものではございませんで、もう御案内のとおり、米の生産調整というものがやはり麦、大豆、飼料作物と、そういった作物の本作化ということに取り組んだ際の助成措置であるというところはひとつ御理解を賜りたいわけでございます。
 いずれにいたしましても、十六年度から開始をいたします産地づくり交付金というものは、地域がそれぞれの地域の独自の発想、あるいはまたそれぞれの戦略、あるいは地域の皆さん方の合意ということに基づきまして、地域の水田農業ビジョンに基づいて実施される取組に対しまして助成をするものでございまして、そういった意味で、足腰の強い水田農業の産地の形成ということに私どももこの産地づくり交付金が十分活用されるというところを期待しているところでございます。
○紙智子君 これからやるところについては、それは必要なことはどんどんやっていかなくちゃいけないと思うんですけれども、しかし今、農業、農村の現状というのは本当に瀕死の状態というふうに言えると思うんです。やっぱり今一滴の水を受けなければ本当にやっていけないという状況のときに、農家の手取りを削減するようなことをやっていいのかということなんですね。せめて今年度と同じ産地づくりの交付金を保障すべきだというふうに思います。
 ちょっとあと時間があるので続けてやらせていただきますが、しかも、この新交付金ですね、これ担い手を明確にすると、その担い手と一般耕作者との間で差を付けるようにする仕組みになっているわけです。水田ビジョンの作成の遅れの一因に担い手の名前が挙がらないということがあるんですね。そうすると、そういうところは交付金の水準が大幅に下がるんですよ。そういうところは農業生産から脱落すると。
 また一方、担い手がいるところでは、大規模な面積要件が押し付けられていますから、その人だけ担い手にしているところでは集落で険悪な雰囲気になってしまうわけです。それで、元々あった農村集落のまとまり、お互いに協力し合いながらやっていく、そういう集落のまとまりを壊している状況になっているんですね、現場は。
 こういうやり方をやっぱりやめるべきだと。それぞれの条件に応じてすべてのやる気のある者に対する支援を差し伸べるべきだというふうに思いますけれども、前段で聞いた産地づくりの交付金、今年度と同じ保障すべきだというのを含めてちょっとお答え願います。
○政府参考人(白須敏朗君) 一つには、ただいまの、まず一つ算定のお話が委員からも御指摘あったわけでございます。
 私ども、今回の産地づくり推進交付金の算定に当たりましては、転作田におけますやはり認定農業者なり農家以外の法人経営、そういったシェアをスタート台といたしまして、平成二十二年度において構造展望が実現されることを前提といたしまして、担い手の育成が進展するということを織り込みまして十八年度の担い手率を設定したわけでございます。
 これはやはり全体としての水田農業の構造改革という観点から、転作麦なり大豆、あるいは飼料作物と、そういった生産の相当部分を担っております生産組織が効率的かつ安定的な形態に発展するということを期待をいたしまして、そういう意味で意欲的に見込んだものでございますが、ただ、配分を受けましたこの産地づくり交付金につきましては、申し上げましたとおり、要するに算定はただいまの委員からも御指摘のあった作物ごとの生産調整規模の見通しに基づきます本体部分と、それから意欲的な担い手の、ただいま私申し上げました育成の見通しに基づく担い手部分、そういうふうに分けて算定をいたしたわけでございますが、ただ、実際の交付金の使い方につきましては地域でそれぞれ、ただいま申し上げましたとおり、地域でそれぞれビジョンの中でお決めをいただく、そういう仕組みでございまして、担い手部分の額を担い手に限定して活用すると、そういったようなことが義務付けられているということでは決してございませんので、その点は御理解をいただきたいと思います。
 また、金額面につきましては、私どもとしては大変、全体として予算の中でしっかりとした水田農業の構造改革というふうな見地から算定をしたわけでございますが、そこのところは、申し上げましたとおり望ましいやはり水田農業の実現に向けて全体としてやはり地域の創意と工夫、いかに活用するか、その結果として、どういう形で効率的な、あるいは安定的な農業経営が育成されていくかという観点から、米の生産調整の推進でありますとか、あるいは作物の産地づくりの推進でありますとか、あるいは先ほど申し上げました構造改革、担い手の育成、これに助成できるという観点から必要な額を確保した次第でございまして、そこの点は御理解を賜りたいと考える次第でございます。
○紙智子君 時間の関係で一つ削りますけれども、もう一つ聞きたいのは、米政策改革の地方での説明会で、農水省の幹部がメキシコのFTA交渉に関連して、決裂して四千億円の工業製品が売れなくなったとして、構造改革は待ったなしなんだと言ってハッパを掛けているということなんですね。こういう外圧を利用したようなやり方で説明会でやるということ自体いかがなものかと思うんですけれども、この点いかがでしょうか。
○政府参考人(白須敏朗君) お話しのとおり、産地づくりの交付金の交付に当たりましては、それぞれ地域水田農業ビジョンというものをやはり産地でそれぞれ市町村単位で作っていただくということがやはり必要なわけでございます。
 そういうことで、年度内に可能な限りきちっとビジョンを作っていただこうというふうなことで、ただいま委員からもお話ございましたが、大臣からも御下命を受けまして、それぞれ、私も含めまして担当局長がそれぞれ農政局単位で各地域に参りまして、それぞれ農協なり市町村あるいはまた普及所等々、あるいは農業者の皆さん方にもお集まりをいただきまして説明会をさせていただいたわけでございます。
 正にそういう中で、先ほどの申し上げております水田農業の構造改革の必要性なりこれからの将来の在り方といったようなことも含めまして、正に米政策改革の一環として十六年度から開始しますその産地づくり対策ということの趣旨をお話しさせていただいたということでございまして、決して外圧を利用して云々ということは私どもは承知をいたしておりません。
○紙智子君 現場では、やっぱり脅しとも取れるというか、そういう言い方はないだろうと、一体農水省なのかということで強い怒りが広がっているんですよね。私もやっぱり、農水省のさっき紹介したこの中でもいたずらにそういう対立するようなことをやってはいけないということをちゃんと書いているわけですから、そういうことはやっぱり改めていただきたいというふうに思います。
 それで、この米改革は、結局農家に渡る予算を削減すると。そして、担い手と言われる一定の人にしか支援をしないと。農村の集落のまとまりも困難にしていくと。その上、米の流通において市場原理を徹底する。そして、米の余るところは翌年生産を削減させる、そうやって淘汰していくんだと。そして、競争で残るところしか米を作れなくしようとするというようなこういう政策が、本当に私は目標に書いてあるような農業の持つ多面的機能をどうやって発揮することできるだろうかと、こういう方向で。むしろこれを破壊して、農村の環境や集落を守れなくしていく道だと思うんです。ひいては、自給率の向上どころか本当に輸入依存を進めて国民の期待の道にも反していく道だというふうに思いますから、私はやっぱり今の米改革の進行については見直しをすべきということを強く求めて、質問を終わらせていただきます。