<第159回国会 2004年3月15日 予算委員会 第10号>


平成十六年三月十五日(月曜日)
   午前十時開会

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本日の会議に付した案件
○平成十六年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)
○平成十六年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)
○平成十六年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初にこれをちょっと見ていただきたいと思うんですね。(資料提示)これは新聞の一面全面を使っての日本医師会の広告です。
 それで、二月二十五日そして三月九日、二回にわたって「立川談志の健康高座」ということでやっていまして、立川談志氏と西島英利氏の全身を写して、うつ病と痴呆症についての対談をしています。これだけの広告を出すというのは、相当のやっぱり資金も必要だというふうに思うわけですね。それで、西島英利氏は精神科医で医師会の常任理事というふうに紹介されているんですけれども、この七月の、行われる参議院選挙の自民党の比例代表の候補者でもあるんですね。
 それで、問題は、参議院選挙の候補者である西島氏を、多額の資金を使って選挙を数か月後に控えたこの時期に掲載していると。しかも、談志氏の高座の相手に西島氏をなぜ二回も続けて出しているのかと。これはやっぱり売名のための、公職選挙法で禁止されている事前運動になるんじゃないかというふうに疑問を持たざるを得ないわけです。
 厚生労働大臣、大臣は先日この委員会で、公益法人である医師会と政治連盟の活動について明確に区分されるように、誤解を生まないようにと常々言っているというふうにおっしゃいました。このような選挙の事前運動まがいの広告を出すということは誤解を生み、好ましくないのではありませんか。
○国務大臣(坂口力君) 公職選挙法につきましては、これは担当大臣からまたお話あろうかというふうに思いますが、そこに書かれております内容につきましてはこれはもう立派な内容でございまして、何ら問題はないというふうに思っておりますが。
 そこに出ている人がそうだということが、まあ私は、私もそれ実は見たんですね。見たんですけれども、そこに立っている人がだれかということまで私も気付かなかったわけで、今回御質問をいただくということで、あ、そうか、あの人がそうだったのかというふうに初めて知ったようなことでございますから、まあたくさんのお金は使っているかもしれませんけれども、多くの人はそれはだれかということは分からないんではないかと思っております。
○紙智子君 ちょっと非常にあいまいな答弁だと思うんですね。先週言われたばかりですから。そこに立って、大した問題じゃないかのように言うんですけれども、決してそうじゃないんだということを私は言いたいと思うんですよ。
 それで、自民党のホームページ開きますと、まずこの政策、党役員などとともに、選挙情報という欄がありますね。それで、そこをクリックしますと、第二十回参議院通常選挙公認候補者の項が出て、こういうふうになって出てくるわけですよ。(資料提示)それで、その中身をクリックしていきますと、比例代表公認候補者の中に西島英利の名前が出てくると。その名前をまたクリックしますと、今度はこの西島氏のホームページにつながって「西島英利VS立川談志の「健康高座」」という対談が出てくるわけですよ。だから、正にこの広告が選挙と一体になって出ているわけですね。
 それで、我が党の議員が、医師会は公益法人だから自民党の党費を負担するとか特定候補の選挙活動というのはできないのではないかと、これ二〇〇一年の六月に質問しているんですけれども、この質問に対して、厚生労働、当時の伊藤雅治医政局長はかつて、本来であれば政治連盟の行うような支出はしてはいけないと考えているというふうに答えているわけです。医師会が選挙の事前運動まがいの支出などはすべきではないということだと思うんですね。
 先週、我が党の同僚議員が指摘しました医師会と政治連盟の一体化の問題に続いて、この医師会と選挙の事前運動まがい問題というふうに思うんです。厚生労働省として改めて調査すべきではありませんか。
○国務大臣(坂口力君) 公職選挙法上の問題につきましては、これは担当大臣からひとつお答えをいただきたいというふうに思いますが、私の方もそういう御質問があるということでお聞きをいたしておりますが、公職の候補者となろうとする者について選挙区内の者に対する新聞広告が禁止されているというのは事実でございます。主としてあいさつを目的とする場合であって、今回の意見広告はこれに該当しないというのがその御答弁でございますので、ここはまた正式にひとつ専門的なところからお聞きをいただきたいというふうに思います。
 ただし、私の方といたしましても、これは医師会なり歯科医師会なり薬剤師会なりというその辺のところは、医療問題等につきましては私たちの範疇でございますから、そうした点でもしも行き過ぎた点があるということであれば御注意を申し上げるということだと思います。
○紙智子君 候補者でなければ確かに何の問題もないわけですけれども、しかし候補者であると。そうすると、やっぱりこれは売名行為じゃないかというふうに疑惑を持つわけで、今おっしゃいましたけれども、きちっと調べて注意をするところはするということではありますから、そこはしっかりやっていただきたいということを申しまして、次の質問に移らせていただきます。
 次は、高病原性鳥インフルエンザの問題です。
 我が党は二月にこの高病原性鳥インフルエンザの対策会議を立ち上げまして、山口そして大分、京都と、中心に発生した地域の調査をやりました。同時に、やっぱりこれ全国的な取組にしなくちゃいけないということで、地方議員とも連携をしまして各地の調査や申入れの実態調査などに取り組んできました。その中で、採卵農家や養鶏業者からも、国の対策は遅過ぎる、すべて後手じゃないかという非常にいら立ちの声も寄せられました。京都で封じ込めに失敗をして深刻な事態を迎えているわけです。一段階危険度が高まったというふうに指摘する専門家の方もおられます。
 そこでなんですけれども、明日、政府の総合対策を発表するというふうに報道をされていますね。それで小泉総理は、済みません、間違えました、八日の決算委員会で我が党の畑野議員も質問をして、小泉総理自身も、反省踏まえて防止対策をするんだというふうに答えたわけです。それで明日、政府の総合対策発表というふうに報道されているわけですが、亀井大臣は十二日のこの当委員会で、移動制限に伴う補償を制度化する家畜伝染病予防法の改正、これについて今国会中行うということを明言されましたよね。それで、これは改正後直ちに施行するということで受け止めてよろしいんでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) お答えいたします。
 今回、このインフルエンザ対策として、移動制限命令下にありまして協力した養鶏業者に対しましての助成措置を行う、この制度化の問題と、またさらには通報義務違反に関するペナルティーの強化の問題と、このことを今いろいろどうするかと協議をしておるわけでありまして、今国会にこの改正案を提案、提出すると、こういう予定で今進めております。
 これ、いつ国会に提出できるかと、その問題がありますけれども、その辺の日程と、いつと、できる限り早くそれを実施をすると、このように考えております。
○紙智子君 いつやってくれるのかと、これはやっぱり関係者の皆さんにとっては一番聞きたいことなんですよね。
 それで、そもそもこの移動制限にかかわっての補償問題というのは今始まった議論じゃないんですね。二〇〇〇年のときに北海道で口蹄疫が出て、そのときも大問題になっていたわけです。それで、やはり何で今回山口で出たときにすぐやらなかったのかと、こういう声も出ているんです。私のところに、BSEで発生農家になられて、それでその後離農せざるを得なくなった猿払の御夫婦の方から電話が来たんですね。それで、自分たちのようなつらい人たちをもう繰り返させるわけにいかないんだと、だから本当に何で早くやらないのかという電話が寄せられたんですよ。ですから、是非早くこれをやらせていただきたい、やる必要があるというふうに思います。
 問題はこの法改正の内容なんですけれども、移動制限を受けた周辺農家の補償について、畜産物、それから卵などの評価額の減少分、輸送・保管経費などに対して国が責任を持って補てんをするということなんでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) 今その検討をしておるわけでありまして、一つは、山口県での、いたしました、それを制度的にどうするか、この検討を今最後の詰めをいたしておるわけでありまして、できる限りその対応ができるようにいたしたいと、こう思っております。
○紙智子君 山口県のを参考にという話なんですけれども、これは私は山口県の例も決して十分じゃないというふうに思うんですね。それで、山口の県知事自身が記者会見で何とおっしゃっているかといいますと、鶏卵の価値減少分の二分の一と補てん率が極めて低いことや算定の基礎となる単位、単価が地域の実態を反映していないことなど、甚だ不十分なものと言わざるを得ないと。さらに、国としての支援策を是非もっと充実してほしい、そうでなければ周辺の農家の安心した協力を得られないと思うので、国で全額とか五分の四といいますか、それくらいの支援措置は是非必要だというふうに言っているんですね。やはり、国の責任で本当に必要なことはやるというふうにしていただきたいんです。
 それで、ちょっと続けて聞いていきますけれども、この話については後ほど西山登紀子さんの関連発言で具体的な中身述べますので、これはここまでにしておきます。
 それで、次に厚生労働大臣になんですけれども、WHOはこの間、高病原性鳥インフルエンザについて様々な勧告、提言を行っていますけれども、これはアジアでの拡大がやっぱり人の健康を脅かす問題として非常に大きな危機感を持っているからだと思うんです。
 それで、WHOはこの高病原性鳥インフルエンザに感染した鳥の処分に従事する者についての感染防御に関する勧告というのを出しています。厚生労働省はこれを受けて一月二十九日に都道府県に通知を出しましたよね。それで、抗インフルエンザの薬であるタミフルを備蓄医薬品リストに入れるように求めているわけです。ところが、三月十日現在で聞きますと、備蓄されているのは二十五県の七千四百人分と、一か月以上たっていて結局二十二県がいまだに備蓄していないということなんですね。
 それで、全国どこで発生してもおかしくないという事態の中でこういう状況を放置しておいて万全な対処ができると思われるのかどうか、そこのところをよろしくお願いします。
○国務大臣(坂口力君) WPROが発表しましたのは、それはタイですとかベトナムですとか、そうした鳥と人間がもう本当に共存をしているようなところを中心にしたこととして発表しているというふうに思います。日本はそうしたところと若干違いますから、それほどの問題はないというふうに思っておりますけれども、しかし鳥を飼育をしておみえになるところで、そして発生をするということになれば、それは同じような状況が生まれないとも限らないわけでございますから、皆さん方に御注意すべきところは御注意を申し上げているところでございます。
 タミフルの話がございましたが、これはかなりな量もう日本の国内に入っておりまして、医療機関にはかなり蓄えがあるというふうに我々は思っている次第でございます。大体日本に入ってまいります約半分はもう既に販売をされて、医療機関に渡っているところでございます。しかも、今年は人の方のインフルエンザが思ったほどはやらなかったと、これはもう大変幸いでございましたけれども、はやらなかったために手持ちはかなりあるというふうに思っておりますし、全国レベルでもそれが全国に行き渡るようにしたいというふうに思っております。
○紙智子君 今のお答えは国民全体に対しての話で、ここで言っているのは鳥の処分に従事する人たちのところなんです。だから、急がれているわけですよね。そこはしっかり行き渡るようにしていただきたいということを指摘して、ちょっと時間がありませんので次の問題へ行きます。
 家畜衛生保健所の体制なんですけれども、初動の体制が大事だと言われていて、そのためにも家畜保健衛生所の役割が決定的に大事なんですが、この二十年間でこの家畜保健衛生所の箇所数、人数がどうなっているかということをちょっと教えてください。
○国務大臣(亀井善之君) 家畜保健所の設置数及び獣医師職員の推移でありますけれども、昭和五十九年、二十年前には二百二か所、二千二百五十四名、十年前、平成六年には二百一か所、二千百二十四名、平成十四年には、二年前になりますけれども、百八十一か所、二千八十二名となっておりまして、なお十五年十一月の時点では獣医師の職員数は二千百六十五名と、このようになっておりまして、これは死亡牛の検査等、家畜保健衛生所の業務の増大に対応するために、近年、都道府県におきまして家畜保健衛生所の職員の増員を図ってきているところでもあります。一部の県におきましては十六年度におきましても増員を予定している県もありまして、各都道府県の実情に即した形で人員の確保に努めておるわけであります。
 これは、今回の問題、あるいはまた家畜保健衛生所の職員を対象に全国の病状鑑定機能を一定水準以上に維持し、家畜衛生技術の普及また向上に寄与するために講習会等をいたしまして、監視体制の強化あるいはまた迅速診断機器等を整備するための事業を実施するなど、環境整備等を含めて家畜保健衛生所の家畜防疫体制の強化を図っておるところであります。
○紙智子君 全国で二十一か所この二十年間減ってきて、そして獣医さんも減ってきていると。一方では、BSEなども含めてやる仕事というのは増えていて、私も知っている家保の人に聞いてみましたけれども、やっぱり今だけでも精一杯なんですね。そこに突発的に今回のようなことになるとそれこそ回らなくなるということなんで、是非、体制強化をしていただきたいというふうに思いますが。