<第156回国会 2003年5月29日 農林水産委員会 第13号>


平成十五年五月二十九日(木曜日)
   午後一時開会

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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○食品の安全性の確保のための農林水産省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法案(内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 それでは最初に、薬事法の改正に関連して、先ほども議論になりましたけれども、トラフグ養殖へのホルマリン不正使用問題についてお聞きしたいと思います。
 水産庁は、対策本部を作ってこれまでのホルマリン使用防止策の問題点の整理、検証を行うというふうにしています。水産庁は、何度となくこれまで通達を出して県に指導徹底を要請をしてきたわけです。漁業団体にも要請をしてきたと。しかし、長らく使用のうわさや報道というのは絶えなかったわけです。この点で、国自らも実態調査を強めるべきではなかったかと思うんです。国の機関としての養殖経営への調査というのは食糧事務所が幾らか関与をしてきたけれども、このトラフグ養殖のホルマリンは法的規制ではないということで除かれていたわけですね、その調査からも。国は結局、通達は出すんだけれども、調査については県任せではなかったのかと、この点についてまず。
○政府参考人(木下寛之君) 私ども、養殖漁場につきましては漁業法に基づきます都道府県知事の監督下にあるということもありまして、私ども、これまでも都道府県を通じまして養殖漁場の巡回指導あるいは医薬品残留検査の実施等々を行ってきたところでございます。
○紙智子君 結局、ホルマリン調査は県任せで特別力を入れてきたわけではないということだと思うんです。県は、水産試験場などがアンケートなどで全業者を調査しているというふうに言うわけですけれども、この回収率も、聞きますとトラフグは五〇%ぐらいだと。これも非常に不十分なわけですけれども、禁止されているということの中で、アンケートに私はホルマリンを使っていますよと書く人はいないわけですよね。それで、併せて行っている巡回指導、この内容がやっぱり問題になってくると思うんです。長いこと同じように調査し、巡回指導してきて、それで摘発をできなかったわけですよね。だから、調査や巡回の内容的な不十分性やあるいは問題点を掘り下げる、これが必要だというふうに思うんですけれども、その点は今どこまで検討されているんでしょうか。
○政府参考人(木下寛之君) 私ども、これまで、委員御指摘のような、都道府県を通じての医薬品の残留検査なりあるいはアンケート調査を実施をしてきたところでございます。
 私ども、今回の薬事法改正を受けまして、薬事法の規制対象を全魚種に拡大する等々、その内容を大幅に拡大をしているという点でございます。したがいまして、今回の薬事法改正を契機にいたしまして、薬事法に基づきます報告徴収なり、立入検査の権限を有しております薬事監視員でございますけれども、このような薬事監視員等による立入検査による実態調査の把握、あるいは設置予定の地方農政事務所の活用等々、いろいろのレベルを通じて、先ほど申し上げたような水産用医薬品の適正使用に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○紙智子君 これからどうしようかということはあると思うんですけれども、今、私お聞きしたのは、実際にこれまでやってきて、そのことの中身に対する、不十分な中身をどう掘り下げて、そうでなければやっぱり次に生かしていくことできないと思うんですけれども、そこら辺についてはどうなんでしょうか。
○政府参考人(木下寛之君) 例えば、委員御指摘のように、医薬品の使用状況の調査、従来は五〇%程度の回収率という点でございます。私ども、今回、このような結果でございますので、先ほど来申し上げているように、予算でも組んでいるところでございますけれども、特別対策事業七千万強の国費ベースでございますが、このような予算も活用しながら、できるだけ法律に基づく具体的な検査、立入調査を実施をしていく。そのようなことを通じて、先ほど来言っているような具体的実効性が上がるような体制を構築していきたいというふうに考えております。
○紙智子君 掘り下げ方が本当に、何というんでしょうか、はっきりしないわけですよね、お聞きしていても。
 例えば、通達を出されていますよね。それで、その通達の中で、代替薬がないなど他に代わり得る手段がない場合で、魚卵や稚魚の消毒などにやむを得ず用いる以外は使用しないことと。ということは、魚卵や稚魚についてはいいということになるわけですよね。そして、今回使用が発覚した中では、結局、稚魚に使っているという名目で成魚にも使っていたということもあるわけですよね、そういう業者もいたと。
 しかし、消毒剤ということでいえば、この魚卵消毒用の指定医薬品があるわけですし、寄生虫駆除の指定医薬品も開発をされたというふうに言っているわけですから、だからほかに代わり得る手段がないという状況ではなかったと思うんですよ。で、そういう状況であるにもかかわらず、魚卵や稚魚を含めて、じゃ、全面禁止ですというふうに言ったのかというと、こういう通達は出していないですよね。やっぱり、そういうあいまいさがあったんじゃないかということも含めて、きちっとやっぱり深めておかなければいけないというふうに思います。
 今後、法改正をしてこの指定医薬品以外は使えないということになると、魚卵だろうが稚魚だろうがフグには一切使えなくするということだと思うんですけれども、確認の意味でもう一度お願いします。
○政府参考人(木下寛之君) 今回、農林水産省令で定めます水産動物の範囲についてでございますけれども、まず第一点が、食用に供されるすべての魚種に拡大をする、これが第一点でございます。第二点といたしましては、今、委員御指摘の魚卵あるいは稚魚の観点でございますけれども、成魚への一連の生産行程の一環を占めるというふうに考えておりまして、そういう意味で、直接食用に供しない魚卵あるいは稚魚も含めて規制の対象にいたしたいというふうに考えております。
 また、具体的な取扱いにつきましては、代替薬の開発の見通し等を踏まえまして、できるだけ早く結論を出したいというふうに考えております。
○紙智子君 ホルマリンの使用問題は養殖業全体にも影響する重大な問題で、やっぱり厳しく使用者の反省が求められると思います。
 このほとんどが長崎県ということですよね。百五十一件の養殖業者のうち六割以上の九十五件の業者が不正使用していたということなんですけれども、なぜ長崎だけがこんなに広範に大規模に使われていたのか。そして、なぜ水産庁の指導が貫けなかったのか。そして、行政当局のフグ養殖業者への対応の甘さがなかったのかどうか。
 これ、大臣にですね、大臣、水産庁の指導が徹底できなかったこの水産行政の問題点、行政責任、なぜこの長崎でこれだけ広範に不正使用があったのかと。このことについて、大臣の考えと、それから、この後徹底調査をして明らかにするつもりがあるのかどうか、これについてお答えください。
○国務大臣(亀井善之君) このホルマリンの関連につきましては、平成八年、九年、十二年とホルマリンを使用しないよう都道府県に対しまして指導強化を水産庁もいたしておったところでありますし、全国魚類防疫推進会議、これを始め、機会あるごとに都道府県に指導してまいりました。また、この全国団体、全国かん水養魚協会でホルマリン使用禁止の、業界団体として決議をされておったわけでありまして、本当に今回、この長崎県、特に主産地であります長崎県でこのような過半のトラフグ養殖業者がホルマリンの不正使用を再三したと、これは大変遺憾なことと、こう思っております。早速このことにつきましては、長崎県知事に厳重に、私からも強くこのことにつきまして申入れをしたわけであります。
 今後こういうことのないように、今回、この薬事法改正によりまして未承認医薬品の使用禁止などがありまして、再発防止ということに万全を期してまいりたいと、こう思っておりまして、水産庁にもその旨、再三注意をいたしておるところであります。
○紙智子君 今後、対策本部でこういう全国調査を基にして検討を深めるということでよろしいですか。
○国務大臣(亀井善之君) 食の安全、安心と、今回この法案を御審議いただいておるわけでありますし、このことを成し遂げなければならないわけであります。そういう面で、十分、十二分に注意を喚起して対応してまいりたいと、こう思います。
○紙智子君 次に、厚生労働省にお聞きしたいんですけれども、この養殖トラフグは約一千トン中国から輸入されていると言われています。韓国からも少し入ってきていると。それで、海外でのフグ養殖でのホルマリン使用の実態というのはあるのか、規制はあるのか、その辺、つかんでおられるでしょうか。
○政府参考人(遠藤明君) 厚生労働省におきましては、養殖トラフグに寄生虫駆除の目的でホルマリンが使用されているという情報を得まして平成九年に調査をいたしましたが、天然トラフグとホルマリンを使用した養殖トラフグの可食部のホルマリン濃度に差がないということ、ともに安全性に問題のないレベルであるということから輸入時検査の対象項目とはしておらず、また輸出国における使用状況についての情報収集等も行っていないところでございます。
○紙智子君 安全性心配がないというように言われるんですけれども、いただいている資料を見ましても、「ホルマリンとは」というのがありますけれども、これを見ましても、結局、発がん性のあることが疑われる物質とされていますし、そして、ホルマリンを養殖業において薬剤として使用した場合に、魚介類が食品となった場合の残留性等は十分解明されていませんというふうに書いているわけですね。
 ですから、やっぱり、そういうことで一切この対象にしないというふうなことではなしに、消費者の立場からいいますと、やっぱり安全、安心上、このホルマリンについてはとんでもないというふうに思っているわけですから、積極的にこの情報を調べて、やっぱり今、全体を議論されてきているわけですけれども、リスクコミュニケーションの一環として公開する用意が、必要があると思うんです。そういう用意はありますか。
○政府参考人(遠藤明君) ホルマリンにつきまして、先ほども申し上げましたように、天然のフグからも数ppm程度検出をされているというふうな状況の中で、私ども、食品衛生法上での取締り対象にするというふうな観点から申し上げますと、天然と養殖での区別が付かないというふうなことで規制の対象にする考えが今のところございませんので、情報収集等も行っていないというふうな状況でございます。
○紙智子君 消費者の中でのいろんな不安、安全、安心という立場からは、やっぱりリスクコミュニケーションということで情報を公開するという立場でそこら辺のところはお答えいただきたいと思ったんですけれども。
 法改正で今度、水産医薬品の規制は全魚種を対象にして、指定医薬品以外に使えなくなるということになりますと、規制の範囲が広がって法で使えない医薬品も増えていくはずだと思うんですね。これらの規制を海外の養殖水産物にも適用させていくべきだというふうに思うんです。ホルマリンに限らず、海外の養殖において、日本で禁止され、そして安全性が証明されていないものについて、使用させないように輸入業者への指導も含めて徹底するということが必要だと思うんですけれども、そのおつもりはありますか。
○政府参考人(遠藤明君) 基準の適用につきましては、内外無差別の観点から、国内と同様、外国から輸入される食品に関しましても同じ基準を適用し、その安全性の確保については輸入業者等に指導してまいる所存でございます。
○紙智子君 食品安全基本法の修正で、わざわざ国の内外における食品供給過程における安全性の確保ということでうたっているわけです。同時に、海外でも使わせないように積極的に対処すべきだということについては、農水大臣にも要求をしておきたいと思います。
 それから次、質問ですけれども、死亡牛のBSEの全頭検査についてお聞きします。
 それで、全国で今、死亡牛の調査が始まっているわけです。先日も委員会として栃木県の検査施設を視察いたしましたが、年間の死亡牛の頭数で全体の約半分を占めるのが北海道ということで、四万頭の死亡牛を検査しなきゃならないということで、体制が間に合わないということで、十五年度は五千頭、十六年度には全頭検査できるようにというふうになっているわけです。それで、北海道では十六年度から四万頭を検査するために道内の七か所の検査施設を整備をして、これに大体十九億ぐらい掛かるということで、すごい額だと思うんですけれども、このうち道負担が十二億五千万ぐらいだと、相当な負担になるわけです。
 そもそも、このBSEというのは農水省の重大な失政から引き起こされたものです。防ぐことができていれば、これは全くやる必要のなかった対策なわけです。その意味では、国の責任でやるべきところを、言ってみれば地方自治体の皆さんにも協力を要請して進めてきているということでもあるわけです。今、非常に財政的にも地方も大変だという中で、やっぱりできる限りこの負担を軽減すべきではないかと思うんですね。
 その点で、いろいろ事業されているんだけれども、ハード事業の施設整備の補助残について地方交付税の制度などで十分な措置を取るべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 先生には、先日、死亡牛検査の現場視察をいただきまして、ありがとうございました。
 まず、その死亡牛検査、ハード面といたしまして、検査材料を採取する施設、それから死体を保管する冷蔵保管施設、それから死体を焼却いたします焼却施設、こういうものの施設整備が必要でございます。いろいろございますけれども、これ都道府県の固有業務であるという面もございますので都道府県にも負担をしていただくということで、私どもが負担すべきところは、十四年度の当初、補正、それから十五年度の当初ということで希望の額はすべて措置をしたわけでございます。
 それで、地方交付税措置ということでございます。現在、三月の特別交付税ということで約十一億円ぐらい措置する見込みだということを伺っております。そういうようなことで、できる限り都道府県の負担の軽減ということに努めていきたいというふうに思っておるところでございます。
○紙智子君 十五年度もです。話しています、十五年度。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 十五年度も、実はまだ時期が来ていないわけでございますけれども、しかるべき時期が来たら引き続き要望をしていきたいというふうに思っております。
○紙智子君 それから、ソフトの面の事業でいいますと、検査キットの購入など、言ってみれば検査する側の経費への事業が行われているわけですね。
 それで、北海道で四万頭の検査で大体掛かる費用というか、十五億から十六億ということで、これまたすごく掛かるんだなと思ったんですけれども、一頭につき大体三万五千円から四万円になると。それで、これ道と国とで折半でということで、国は交付金で見るというふうになっているわけですけれども、実際には交付金に色が付いているわけじゃないものですから、十分確保できるのかどうかというのは不明なわけです。もし不足という事態になるとまたそれも道の負担になっていくということで、ここについても国としての負担の軽減をすべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) ソフトの面、都道府県でやるべきものと、生産者ももう輸送とかそういうことで負担をするわけでございます。
 都道府県が負担すべきものへの助成ということは、先ほど先生言われました検査キット、これは伝染病予防法で一定の負担というか、決まっておるわけでございます。そのほかにも、検査材料の採取、検査材料の輸送、それからエライザ検査の実施と。先生先ほど言われた額は恐らく人件費込みの額だろうと思うわけでございますけれども、そういう人件費を除いたものについては所要の助成と、明らかになっていないと言われましたけれども地方交付税措置と。
 それから、生産者に対しましても、死亡牛の輸送、処理、検査ということで、できるだけその負担が軽減が図られるような措置ということで、十五年度は全国で十八億四千万という額を用意をさせていただいたわけでございます。
 人件費の問題が一番きついものだと思っておりますけれども、そういうようなあらゆる手段を講じて、全体として死亡牛検査が効率的に実施されるようにしていきたいというふうに考えているところでございます。
○紙智子君 生産者支援の今対策もお話しになったんですけれども、この問題も、いろいろ聞きますと、死亡牛の検査ということで一頭につき大体六千円ぐらいだと。それで、輸送料についても国の支援があるというふうに聞いているんですけれども、実際の現場の話聞きますと、検査料、それから保管料、それから輸送促進費というんですか、これは屠畜場に持っていくところと、そこから先に持っていくところと。それから、そのほかにも獣医さんが診断書を書くと、で、指示するわけですけれども、そういうのも掛かってくるとか、それから死因の解明のために解剖しなきゃいけないとかというのもあるんですね。結構これも何千円と掛かるんだそうですけれども、そういう検案料だとか、その他いろいろあるということなんですね。そうすると、やっぱり生産者には負担掛けられないということで、やっぱりそこの分もそうすると国の助成分の差額分は都道府県が担わなきゃならないかということになるとこれも非常に大変だと、これも是非、軽減策ということでお考えをいただきたいというふうに思います。
 それで、続けてちょっともう一つ。どうして北海道でなかなか進まないのかなというふうに思ったものですから、そういうことでいろいろ聞いてみたわけですけれども、やっぱり進める上では体制がどうしても必要で、獣医師の確保の問題というのがあると思うんです。
 それで、新たに獣医師の増員ということが必要とされているということを思うわけですけれども、北海道においても、今年の死亡牛のBSEの検査に当たって、その確保するためにもう相当苦労したということなんですね。それで、家畜保健所も人手不足の状況が変わっていないということですし、釧路管内なんかも聞いてみますと、新しく獣医師の資格を持って入ってくるというのは数えるだけしかいないというんですよ。
 結局、毎年の獣医師の資格取得者が限られている、そういう中で、死亡牛の検査のための獣医師の確保ということについて、やっぱり農水省としても具体的な支援策というのが必要だというふうに思うんです。例えば、獣医師の大学などがあると思うんですけれども、そこを掌握もして奨励するために何らかの働き掛けをするとか、実際就職の紹介とか含めてそういうことをやられているのかどうか、働き掛け、この辺はどうですか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 死亡牛の検査、BSEがどの程度までの広がりを見せているのかということを調べ、その防疫を行うということで、非常に重要な問題と私どもも受け止めております。
 一般的に行政の定員に対する風当たりは強いわけでございます、効率化ということで。そういう中で、やはり先生言われるように獣医師、家畜保健衛生所の獣医師職員の増員というのを図らなければこれに対応できないということでございます。全国の数字で申し上げますと、十四年度に比べて十五年度は七十五名の増員、十四年度が二千九十九名、十五年度が二千百七十四名でございました。特に、今言われた先生の地元の北海道は、十四年度が百六十二名、十五年度が百七十一名、九名の増加となっているわけでございますけれども、さらに十六年度は二十五名を増加させる予定ということで、百九十六名にする予定だというふうに聞いております。
 実は、私どもも、全国の国立、私立の獣医学部、獣医学科の先生を通じて死亡牛検査の重要性というのを説いているわけでございまして、できる限り家畜保健衛生所の獣医師への就職というんでしょうか、確保というようなことも念頭に入れてお願いをしていると。そして、給与はこれ面倒見れないんですけれども、地方交付税の交付対象ということになっておりますし、そのほか家保の負担になりますソフト面は先ほど申し上げましたような事業を中心とした支援ということで、何とかこの死亡牛の検査が十六年の四月には北海道を含めて全部できるようにしていきたいというふうに考えているところでございます。
○紙智子君 やっぱり進まないところがどこで詰まっていて、どういうところに困っているのかということを具体的に取り除いていく国としての支援というのを、対策というのを取っていただきたいというふうに思うんです。
 それからもう一つ、疑似患畜の問題です。国際基準の改正が行われて、OIEでBSEの疑似患畜の範囲を大幅に狭める国際動物衛生規約改正ということになりました。従来の基準の中で、三つの基準がありましたけれども、その中の一つに、一歳以下のときに患畜と同居していた牛のうち、患畜が一歳を超えてから同居した牛については除くということになったことで、今まで同居牛の八割程度が結局疑似患畜ということで指定をされていたわけですけれども、それが二割程度まで縮小されるというふうになるということなんですね。
 この間も本当に、BSEの発生で見ると、北海道の牛が多かった、廃用牛ですね、多く出ていて、その都度生産者の方から、もう本当に家族のようにかわいがって育ててきた牛なのに、明らかに、多分かかってはいないと思うけれども、そういう牛まで含めて殺してしまわなきゃいけないというのは本当にいたたまれないということを繰り返し言われてきたし、何とかやっぱりならないのかということで声が上がっていて、本当に切実な問題だというふうに思うんです。
 それで、この後、農水省として、この新たな国際基準を受けて日本の基準の見直しの作業を進めると思うんですけれども、どのような方針、スケジュールで進めていくのか、御回答をお願いします。
○副大臣(太田豊秋君) 紙先生今おっしゃったように、大変に自分が手塩に掛けて育てた動物、この場合には牛でありますが、これは非常にやっぱり愛情を持ちながら育てておるわけでありますから、今おっしゃったような心境、よく私も理解できるわけであります。
 そういった中で、我が国といたしましても、疑似患畜の範囲の見直しにつきましては、昨年の十一月にOIEに対しまして、範囲の見直しについては欧州での経験に基づきまして科学的に検討するよう提案してきたところでございます。こうした中、五月十八日から二十三日までの日程でOIE総会が開催されましたが、農林水産省のBSE対策本部長であります北村副大臣が自ら総会に赴きまして、科学的根拠に基づき処分する牛の範囲を縮小するように事務局長に強く訴えてきたところでございます。
 今般、BSEの疑似患畜の範囲の見直しなどについて我が国の立場も考慮されたOIE基準が承認されたことは、これまでの我が国の提案が国際的に受け入れられた結果だと、こんなふうに考えておりますし、現行のOIE基準と主な変更点といたしましては、今先生がおっしゃいましたように、患畜が一歳になった以降に同居したことのある牛は対象外になったことであり、我が国のこれまでの発生例で、生産から出荷までの患畜が同一の農場で飼養されていた場合、同居牛のうち疑似患畜となる場合が現行基準では八割程度であったものが、新たな基準に従えば、今先生のおっしゃったとおり二割程度に減少するというふうに考えられるものでございまして、今後、これを受けまして、農林水産省といたしましては、獣医学の専門家から成るBSEに関する技術検討会で検討をしていただくとともに、各方面からの意見もお伺いいたしながら、当該基準について十分に吟味し、我が国における疑似患畜の範囲の見直しの議論を早急に進めていきたいと、このように考えておるところでございます。
○紙智子君 分かりました。
 それでは次、有機農産物の振興の問題で質問いたします。
 前回の農薬取締法の改正で特定農薬という制度を作ったわけですけれども、これは有機農業や化学農業をできる限り、農薬をできる限り減らすために様々な技術を生み出して努力している農家や、それを支える消費者の中では大変混乱と批判を招いたわけです。これは、農政の中に有機農業の振興あるいは化学農薬の使用を減らしていくという方向が明確になっていないからだと思うんです。
 先日成立した食品安全基本法は、農林水産業も含む食品関連業者が食品の安全性の確保について第一義的責任を有するということで規定をしているわけです。安全の確保にとっては、より安全な農産物の生産を拡大するということが必要なわけですけれども、その点でやはり国内で有機農業や減農薬・減化学肥料などの、安全性が高く、環境に良い農業生産を拡大していけるように国としても推進しなければならないというふうに思うんです。
 有機農業などを本格的に育成する方向に足を踏み出すべきだと思いますけれども、まず大臣、この点について一言お願いします。
○国務大臣(亀井善之君) 我が国の持続的な発展を図っていくと、こういう面で環境と調和の取れた農業生産を推進していく、これは大変重要なことと、このように考えております。有機農業等の環境保全型農業に取り組む農業者、これに対しましては金融や税制上の特例措置や補助事業等によりまして積極的に支援もいたしておるわけでありまして、持続農業法に基づくエコファーマー、これが約二万八千人と、このように承知をいたしております。これからもいろいろの支援措置を講じて、この有機農業と、これの環境と調和の取れた有機農法、これが推進されるように努力をしてまいりたいと、こう思います。
○紙智子君 持続型農業促進法で明記されている支援措置ですけれども、一つは農業改良資金の償還期間の延長と、それからもう一つは認定農家の取得した機械等に対する課税の特例措置、これだけなんですね。それで、生産者にとって支援策といっても非常に弱い。やっぱりこれで有機農業や減農薬などの取組が拡大するかというふうには思えないわけです。
 それで、有機農業に関する統計は我が国は存在しないそうなんですけれども、二〇〇〇年センサスで、環境保全型農業の取組について調査をしていると思うので、特に無農薬・無化学肥料に取り組んでいる農家、それから慣行農法の二分の一以下の減農薬・減化学肥料に取り組んでいる農家の数がどうなっているのか、お答えください。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 二〇〇〇年の農林業センサスによりますと、まず無農薬・無化学肥料栽培に取り組んでいる農家数が約一万三千四百戸ということでございまして、販売農家数の〇・六%でございます。それから、慣行的な農法、慣行農法と比較をいたしまして、農薬、化学肥料の使用を二分の一以下に抑えているいわゆる減農薬・減化学肥料栽培に取り組んでいる農家数三十一万五千戸でございまして、販売農家数に占める割合が約一三・五%でございます。
○紙智子君 今、〇・六%と一一・三%ですか、一三・五%ということで、本当に少ないですよね。それで、JASの認定に至っては、生産行程管理者、つまり農家、グループというのは千七百九件しかないですよね。これはやっぱり我が国の場合、環境保全型農業に取り組んでいる農家に対しての支援措置が融資とか税制上の特例措置にとどまっていて、やっぱり国として強力に推進するんだという姿勢が示されていないということがあると思うんです。
 ヨーロッパなどで直接的な支援をして有機農業を計画的に拡大を図っているのに比べますと、我が国は逆に、この有機農産物として出荷しようというふうに思うと、有機JASに認定してもらうために高額の認定費用が必要になってくると。これではやっぱり国内の有機農業や環境保全型農業の生産、拡大していかないというふうに思うんですね。
 それで、お聞きしますけれども、この有機農産物の認定制度に基づいて国内で格付された農産物の量と外国で格付されて輸入されてくる農産物の量というのはどういうふうになっているでしょうか。
○政府参考人(西藤久三君) 私ども、JASの世界で有機JASの認定制度を行ってきているわけでございますが、先ほど先生、生産行程管理者ということであれでございましたが、その参加の農家数を整理してみますと、本年の五月十六日現在で国内で約四千三百戸の状況、外国で二千三百戸の農家が有機JASの認定を受けている状況にございます。
 そういう中で、お尋ねの生産量はどういう状況かということでございます。私ども、制度の枠組みの中で翌年の九月末までに報告をいただくという形で整理をさせていただいておりまして、現在、平成十三年、そういう点では先ほどのセンサスに近いところでございますが、平成十三年度の有機農産物として格付された数量、国内で見ますと約三万四千トン、内訳的に見ますと過半が野菜でございまして、約二万トンが野菜、お米で八千トン程度が格付されている状況にございます。
 他方、外国では、数量ベースで十五万五千トン程度ということで、特に大豆がその中の四割程度を占めまして、六万トン強が大豆、野菜で二万六千トン程度という状況にございます。
○紙智子君 有機JASの認証がされて、有機と示されている農産物、輸入が国内で生産されたものの約五倍になっていますね。生鮮野菜でも国内で約二万トンに対して、輸入でいいますと二万六千トンと上回っている。
 有機認証制度を作る際に、この我が国の認証基準が、高温多湿等の気象条件など、この条件に見合った基準や推進方向を示すのではなくて、国際基準に準拠して設定をすると。それから、各国が実施しているような助成制度もないままでこの認証を表示だけスタートさせたということになると、これはやっぱり国内の有機農業を拡大することにはならずに、輸入の拡大を招くんじゃないかというふうに元々懸念の声が上がっていたんですけれども、そのとおりになっているということじゃないんでしょうか。この状況に対する認識、ちょっと大臣に伺いたいと思います。
○国務大臣(亀井善之君) EU諸国を始め、有機農法あるいは粗放的な畜産等に対する環境直接支払、こういうことにつきましては承知をいたしております。
 今お話しのような状況と、そういう中で中山間地域の条件不利地域を対象とした直接支払の制度の実施状況もこれまた考える必要があると思いますし、いろいろこれから諸外国の施策の動向等々とも加味し、検討をいたす必要はあるんではなかろうかと、こう思います。
○紙智子君 諸外国の例も参考にということもお話ありましたけれども、この環境保全型農業で稲作、野菜とも、十アール当たりの所得でいいますと、慣行農法よりも上回っているんですけれども、労働時間も上回っていると。作付規模が小さくなって、稲作でいえば労働時間一時間当たり所得で千六百六十一円、慣行農法に比べると五・六%低くなっていると。JASの基準どおりにこの有機農業に移行するためには、その間の減収をやっぱり生産者自身が負わなければならないということがあるわけで、現場では、この有機農産物で差別化しても不況の中で消費が伸びないという話も聞いているわけです。
 それで、我が国と同じ条件というか、高温多湿で同じモンスーン地帯にある韓国、ここでは環境農業への取組を自国の農業の存続を懸けた国家戦略ということで位置付けて、気候風土等自然条件に対応して現実的に実現していこうということで、メーンは減農薬・減化学肥料を置いて、有機栽培のレベルに段階的に近付けていくと。そのために九九年から、この有機農業転換期間中には、有機農産物とそれから無農薬農産物、それから減農薬農産物、こういう栽培に取り組んでいる農家には環境農業実施に伴う所得減少分について直接支払によって補てんをするというふうなことをやっているわけです。この取組は私は我が国としても非常に参考になるというふうに思います。
 我が国でも国土や自然条件に見合った生産者の取組は蓄積されているわけですね。すごく努力がされているわけですけれども、法的な整備ややっぱりこの助成制度について後れを取っているということで、生産者に対して直接的な助成をするということが、この後、有機農業や減農薬・減化学肥料による生産拡大につながるんじゃないかというふうに思うんです。
 韓国もそうですけれども、欧州でもイギリスやスイスやアメリカなんかも見ても、やっぱりポイントになるのは直接的な支援といいますか、補償が行われているということでは、是非これを進めていただきたいというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 環境に直接払いをしている例、今、先生がおっしゃられましたEUとか韓国とかやっているわけでございます。私どももこの問題は真剣に取り組まなければいけない問題だというふうに思っています。
 ただ、いろいろな課題がございまして、技術的課題一つ取りましても、作物によって肥料だとか農薬の難易度あるわけでございます。例えば先生の地元の北海道でも、麦とかジャガイモとかタマネギはもう絶対に防除が要るわけでございます。そういうような公平感とか、いろいろありますので、そういう問題を解決しながら取り組んでいきたいというふうに思っております。
○紙智子君 時間が参りました。
 それで、国内でも宮崎県の綾町というんでしょうか、価格補償制度を七四年に導入して、野菜に保証価格を設定して、下回った場合は町が補てんして、六年間実施されて、制度をやめるころには町内で百軒ですか、超える農家が取り組んで、この綾町の有機農業が認められた結果、この補償制度が必要なくなったという状況になったわけですよね。
 ですから、やっぱり国としてそういうことを全面的に進めていくということで是非力を入れていただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わります。