<第156回国会 2003年4月17日 農林水産委員会 第7号>


平成十五年四月十七日(木曜日)
   午後四時二分開会
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○農林水産に関する調査
 (食料の安定供給に関する件)
 (農村の振興に関する件)
 (WTO農業交渉に関する件)
 (中山間地域の役割に関する件)
 (有明海ノリ被害と諫早湾干拓事業に関する件)
○種苗法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。私は、WTOの交渉をめぐって、農業交渉をめぐってお聞きしたいと思います。
 それで、大島前大臣のときにも質問したんですけれども、日本としてはEUの提案、関税率ですね、最低で一五%、それで平均で三六%、この引下げについては支持するというふうに述べました。日本農業に影響がないとは言わないけれども、しかし維持できる範囲だということをお答えになりました。それで、私は、そのときに、北海道の畑作、それから畜産、これの具体的な指標も示しながら、それでも厳しいという話をいたしました。
 それで、日本の農産物にどういう影響があるのか。EUの関税率支持と言ったわけですけれども、その前に、そういう、どういう影響があるのかということを一つ一つの農産物に対して検討し分析をされていたのかどうか。まずそのことをお聞きしたいと思います。
○政府参考人(西藤久三君) 先生、今、お話がありましたように、私ども、EU提案を支持するという形で表明をいたしております。EU提案、御案内のとおり、国内支持、あるいは関税につきまして、関税、平均三六%、品目別で最低一五%の数値ということで提案されている状況にございます。正に品目ごとの柔軟性が発揮されるという提案でございます。
 具体的に品目でどうかという御指摘のあれでございますが、最低一五%の削減、これは品目別に当然行う必要がありますが、私ども、この水準であれば各作物とも国内生産に特段の悪影響を及ぼすものはない、ものではないというふうに考えております。
 また、平均三六%という水準は正に平均でございまして、ウルグアイ・ラウンド合意により関税化し、現在、先生この間御指摘があったような、高い水準の関税を設定している品目も含めたあらゆる農産物についての削減率を単純平均して算出されるものであることでございますので、各品目についてそのまま適用されるものではないという状況でございます。
 いずれにしましても、私ども、我が国にとって重要品目について見た場合、輸入に、輸入が大幅に増加する可能性は現行同様、現行でも高い関税を引いているものについて二次税率で輸入が大きく出るというような状況ございませんが、現行と同様、ほとんどないものというふうに考えております。
○紙智子君 ほとんどその影響がないという話されるんですけれども、前回も私申し上げましたけれども、関税率で三六%削減の場合、でん粉、それから小豆ですね、これは輸入品とほぼ同じ価格か安くなるということですね。それで、一五%削減という場合でも、その価格差というのは一〇%から二〇%、まだ、国産の方がまだ少しは下回っているということなんですけれども、その差がそういう、狭まっているわけですよね。もしこれが、関税が従価税になって、為替変動や価格安で見た場合に、この程度の一〇%から二〇%という差というのは簡単にこれはひっくり返ってしまうということがあるわけですけれども、そういうことなんかも検討されているのかということもあるんですね。
 そして、もう一つ更に言いますと、平均で三六%という話されているんですね。平均で三六%にするためには、それ以上の引下げをやらなきゃならない品目が出てくると。その産品を何に割り当てるのかということもあるわけです。その場合にどういう影響が出てくるのかということを分析検討しているのかということですね。これ前回も、全部で千七百七十二品目あって、それで既に一五%以下で今までやってきている品目というのは六割なんですよね。だから、それ以外のところでどこでそれを調整して、平均にするために、もちろん六〇%だとかもっと高いところもあるかもしれないですけれども、そういうことで調整しようというわけですけれども、それをどこで割り当ててやるのか、その場合に出てくる影響というのは一体どうなのかということは分析や検討はされているんでしょうか。
○政府参考人(西藤久三君) 関税水準について、ウルグアイ・ラウンド方式で平均で三六%、品目別最低で一五%。先生御指摘のとおり、一五%という数字は正に品目別に行う必要があるわけでございますが、三六%という数字は言わば各品目の削減率を単純平均したものでございます。
 そういう点で、具体的な品目をどれをどうという形で私申し上げる準備はいたしておりませんが、先生御指摘のとおり、一方で一五%未満の既に低い関税のものが相当程度ございます。仮にの話でございますが、現在三%の関税を適用している品目について、仮にその関税率を一・五%にするということになれば正にこれは五〇%の縮減でございまして、そういう五〇%の縮減というものと最低の一五%というものを単純に平均することによって三六%の水準を確保する、そういう性格のものでございますので、私ども、先ほど申しましたように、我が国にとって重要品目について見た場合、正にその最低一五%という水準の必要性はありますが、現行とほぼ、大きな影響はないものというふうに見ているわけでございます。
○紙智子君 従価税になって、為替の変動なんかも含めて検討されたんですか。
○政府参考人(西藤久三君) 関税化品目のかなりのものは従量税の状況にございます。
○紙智子君 今も。
○政府参考人(西藤久三君) 現状において。
 私ども、議長の一次案及びその改訂案そのものについてが交渉のベースとしてなり得ないというふうに考えておりますが、議長案においてもそこのところについては今後の検討課題という形で整理をしているというふうに理解をいたしております。
○紙智子君 あと、前回、九五年のときに、結局ウルグアイ・ラウンドの合意をやって、九五年から二〇〇〇年、その引下げをやったわけですけれども、それで一体どうだったのかというのも見なくちゃいけないと思うんですね。
 それで、平均以上引き下げたものの輸入がどうだったのかということを検証して、その上で三六%以上下げた場合の影響を検討するというふうに見たときに、例えば野菜ですと、野菜は平均三六%下げたわけです。それで、この十年間に約、野菜は二倍に輸入が増えました。背景に関税率の引下げが一つの要因になっているということも否定できないと思うんですね。それから、酪農に関係しますけれども、ナチュラルチーズですね、ナチュラルチーズ、これも平均三六%下げたわけですけれども、平成七年の約十五万三千トンから十九万六千トンに輸入が増えていると。それからココア調製品、これも同じようなことがあるわけですけれども、こういう輸入の増加の要因になっているということは否定できないというふうに思うんですね。
 だから、こういう影響がどうなるかということをそれこそ検討した上で、まあEU提案の関税率支持すると言ったわけですけれども、こういうことを検討した上で、いや大したことないというふうに言われているのか、そこはどうなんですか。
○政府参考人(西藤久三君) 正に、現在の私ども支持をいたしておりますEU提案、平均三六%、最低一五%という水準は、ウルグアイ・ラウンド農業合意の実施過程で私ども六年を掛けて実行してきた状況のものでございます。
 その中で、先生例示的に御指摘がありました野菜の輸入量、野菜の輸入という点で見ますと、この間の野菜の輸入の増加を示している状況というのはそのとおりだと、一部そういう状況のあるのはそのとおりだと思いますが、一方、この野菜の関税水準そのものは、先生御案内のとおり、ほとんどが一割台という状況でございます。むしろ、その輸入増加の要因という状況では、私ども、この間の品質管理技術なり輸送技術なり情報技術の進歩、対外的なものにはそういうこと、国内の需要に対応した供給対応という点での問題点だったかというふうに思っております。そういう点で、昨年来、そういう多様な野菜需要に対しても変化が見られる中で、いかに国内供給を対応していくかということで制度も見直しをさせていただきましたし、支援措置についても充実強化してきている。
 国際化の方向ということは、私どもそのこと自体を否定できる状況ではないと、そういう中で私ども、いかに国内の供給力を高めていくかということが課題であるというふうに思っております。
○紙智子君 国内の供給を高める対策という話されるわけですけれども、しかし実際には輸入が増えて物が入ってきて、それによって価格も下がって頭打ちになるという事態があるわけですし、それからやっぱり入ってくると余ったりして売れないという状況が出てくるわけですよね。やっぱり大きなダメージを受けているわけですよ。
 国内対策ということで、ウルグアイ・ラウンドを受け入れて、ウルグアイ・ラウンド対策ということで六兆一千億円ですか、という対策費盛ったわけですけれども、これなんかも私、生産現場歩きますと、結局一体役に立ったのかどうかと。そうすると、本当に箱物といいますか、米の施設だとかそういうのを造ったというのはありますけれども、しかし生産者といいますか農家の方にとっては、この対策でもって六兆円も超えるようなお金使っているけれども、もう農家にとっては何の実入りもなかったという話がされるわけですよね。
 政府は盛んに、そういうふうに受入れをして、国際社会の中ではそれを受け入れなきゃならないという話をするわけだけれども、一方で構造改革というふうに言うわけですけれどもね。
 それで、じゃ改革をして関税が引き下がったらそれに対応できるようになるのかと、見合うようなコストの軽減ができるのかということになれば、これ一五%だ、三六%だということで関税率が引き下げられたとして、並行して経費がそうなればいいですよ。だけれども、実態はどうかというと、その農家の生産費で見ますと、これはそんな下げられているわけじゃないわけですから、だから、いつも出てくる声というのは、じゃ機械の、資材というんですかね、資材費はもっと安くなるのかと、じゃ機械はもっと安くなるのかと。それは安くなるどころかむしろ高くなるような状況がある中で、経費そのものは節減できないということですから、こういうやっぱり実際に国際競争で勝てるような状況を作っていくということでコスト削減というわけですけれども、現場ではそれがなかなかならないということがあるわけですよ。
 だから私は、この一五%、三六%に、引下げに合わせて、それがやっぱり影響がないという形でもって、これ以上のやっぱり生産者に対しての負担を掛けていくというのは、本当に非常に十分な検討がされない中でやられているんじゃないかというふうに言わざるを得ないんですね。こういう十分な考慮をせずにEU案を支持するというのは、性急だったんじゃないかというふうに思うわけです。幾らフレンズ国ということで、対抗しなきゃいけないということでそういう経過ということがあるかもしれないですけれども、それにしても、その中身について支持するというふうに言ったのは性急ではなかったかというふうに思うんですね。
 元々、日本提案でも、昨年の十一月にこのモダリティー案、数字は出せなかったわけですよね、日本提案そのものが。それから、EUもそうだったと思うんですよ。それで、一月になって初めて出てきたわけですけれども、なぜその数字出せないで来ていたかといえば、やっぱり関税の引下げをどういう方式でやるのかと、どういう方式でやるのかということをまず決めてからでなければ数字の話はできないということだったと思うんですね。つまり、数字ではなくて方式、ルールを優先するということで来たと思うんですよ。当然のことだと思うんですね。
 そこがやっぱり食い違ってきたわけですから、だから、やっぱり今回合意できなかったということを、むしろ日本の側のこの主張だとか理解を広げていく上で、この後、まあ九月ということも言われているわけですけれども、それを本当に好機ととらえて、やっぱりEU案の関税率の支持にこだわらず、市場アクセスの在り方の基本的なルール、ここのところをやり直していくということが私は筋じゃないかというふうに思うんですけれども、大臣、この点についていかがでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) 三月末のジュネーブでの特別会合でモダリティーが確立できなかった。その後、これはそれぞれ、今局長からもお話がありましたとおり、いろいろの交渉をしてきたわけであります。しかし、アメリカやケアンズ諸国の大幅、画一的な要求と、この溝が、我が国あるいはEUと、いろいろ今説明をいたしましたが、大変溝が深かったわけでありまして、今日このような状況にあるわけであります。
 これから、それぞれ加盟国とも、モダリティーを確立すると、こういうことについては共通の認識を持っておるわけでありますが、技術的な検討等々、いろいろ各国ともこういう状況にあるわけでありますし、各国ともいろいろ連携を取りながら九月に向かって頑張ってまいりたいと、こう思っております。
 御指摘のように、いろいろ難しい課題があるわけでありますから、十分この機会に、私どもとしても、我が国としても更にいろいろ考えていくことは必要なことではなかろうかと、こう思います。
○紙智子君 やっぱり食い違いというのは哲学の違いもあるわけじゃないですか。日本みたいに農業というのは多面的ないろんな機能を持っているんだと、そういうことを主張する一方で、逆の見方というのは、結局、工業製品であろうと農業製品であろうと、もう関係なく一律に関税を上げていくということですから、掛けていくということですから、そういうやっぱり違いがある中で、本当にそこの主張を理解を得るということでの努力を真剣にやっぱりやっていく必要があるんだと思いますし、私は、WTO協定において、日本のように特に自給率が、食料自給率が低い国にあってはその引上げができるように、食料自給率の引上げができるように、国境措置や国内の農業施策についての国の裁量権がやっぱり保障されると、国際的にも保障されて、食料主権が本当に確立されるということが大事だと思うんです。
 そのことについては、例えばNGOだとか農業団体の中でも主張されている中身だと思うんですけれども、この点、どうですか。
○政府参考人(西藤久三君) 現在のWTO農業交渉、農業協定二十条及びドーハの閣僚宣言に基づいているわけでございますが、正に位置付けは改革過程の継続という中での位置付けだというふうに私ども理解をいたしますし、加盟国全体の共通認識だというふうに思っております。
 先ほど来、非貿易的関心事項への対応あるいは関税引下げ方式についての連携という御指摘もございます。私ども、非貿易的関心事項に関心を有するフレンズ国六か国が核になりながら、昨年ローマでは私どもが主催して閣僚会議を開催する、あるいは今回の、今次のモダリティー確立に当たっても、関税引下げ方式についてウルグアイ・ラウンド方式、品目ごとの柔軟性を確保できるウルグアイ・ラウンド方式を支持をする国の連携に努めております。これも六十か国、EUを含めますと七十五か国という支持を得る努力をいたしてきております。
 今後も、交渉事でございます、我々と連携できる国々と連携を強化し、そういう強化の中で、連携を強化する中で、輸出国について現実的な対応を求めていくという粘り強い取組をしていくべきだろうというふうに思っております。
○紙智子君 食料主権という問題は私は非常に大事だというふうに思うんですけれども、我が国は食料自給率を、今四〇%ですけれども、四五%まで引き上げていくという計画なわけですけれども、そのためには国内生産を拡大できる施策というのをやらなきゃいけない。そして、輸入が増え過ぎればそれを抑えられるような、そういう国の判断で、我が国の判断で取り組めるようにしなきゃいけないというふうに思うんです。正に食料主権の確立ということが不可欠だと思いますし、交渉の中でもそのことをきちっと位置付けるべきだというふうに思うんですね。
 米について言えば、我が党は以前からこれは自由化の対象から外すように主張してきました。それは、やっぱり日本の場合でいうと、国土が狭いし、そして小規模な耕地が多いし、そしてその一方では資材の物価が高いと、それから人件費も高いと。だから、とても、国際競争力ということでいえば、これはもう初めから勝負が見えているということがあちこち歩いたときには必ず出てくるわけで、スタートからだから違うと。そんな広い耕地を持って人件費も安いところと勝負しても、これはもう本当に大変だという話が出たわけですけれども、しかしそういう中でも、お米について言えば、日本の国民の主食ですよね、主食であり、そして農業の基幹作物だというふうに思うんです、米の位置付けというのは。やはり国土環境の保全に掛け替えのない役割も果たしているということもあるわけで、政府がやっぱり、今、各国それぞれの持っている特有の条件や歴史的な文化的な背景に基づいて多様な農業を共存させていくということであれば、本当に今からでも、私は、米の自由化をこれ対象から外す、それからミニマムアクセスについてはこれを廃止するということを堂々として主張していいんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか、大臣。
○国務大臣(亀井善之君) このミニマムアクセス米の廃止の問題につきましても、これ、ウルグアイ・ラウンド交渉全体のパッケージの一つとして、従来輸入がほとんどなかった品目について最小限の市場参入機会を与える観点から、全加盟国の合意の下に導入されたことでもあります。今次の交渉は、農業協定上、改革過程の継続のための交渉と、こう位置付けられていることから、加盟国の合意を得ることは極めて残念なことではなかろうかと。
 WTO交渉における米の取扱いにつきましては、米や水田農業の重要性を踏まえて、米の需給と価格の安定に支障の及ぼさないような従来の総合的な国境措置、輸入管理体制を維持することを基本として、米の輸出入国間の権利義務のバランスの保持や、あるいは品目ごとの柔軟性の確保、あるいは最新の消費量を勘案した基準の見直し、あるいは特例を関税化した場合の加重アクセス数量の解消を主張しているわけでもありまして、我が国の主張がモダリティーに反映されるよう引き続き努力をしてまいらなければならないと、こう思っております。
○紙智子君 アメリカの研究者の方でジェームズ・シンプソンさんという龍谷大学の教授の方、この方も、日本のやるべきことということで幾つか挙げているんですけれども、その中で、関税の大幅削減が行われないことと併せて、米と酪農製品は例外産品とする、それから食料自給率が低い国には例外を認めるようにルールを変更するということを挙げて、世界に日本はその支持を訴えるということをやるべきだと。それで、東南アジアの諸国の農業と日本の農業というのは類似性があるというふうにも言っているんですね。だから、実際に表面上でいえば、農業をそういう同じような、ほかと同じような扱いでやるということから外して、外せということを言えば、これはすごい長い苦戦のように見えるかもしれないけれども、しかし表面に現れないところで、実はそういう日本の主張に対しても支持するところが広がっていく可能性はあるんだということを言っているわけですよね。だから、むしろ日本の国がそういうことを積極的にやっていくべきだということを主張されているんですよ。
 それで、やはり今回モダリティー確立ならずという事態になった、こういう今の新しい局面で、こういうふうな識者の方や、それから世界の世論を受けて、このWTOを食料主権の立場から見直し、改正していくというふうに粘り強く働き掛けを行っていただきたいということを言いたいと思うんです。
 ちょっと時間が押してきているので、国際的には多様な農業の共存ということを言っているんだけれども、じゃ国内でどうかということについてお聞きしたいと思うんです。
 大臣は、米政策の改革、農業の構造改革を強調し、担い手が大宗を占める生産構造の確立、それから効率的、安定的な農業経営が農業生産の大宗を担う農業構造実現を目指すというふうに言っているんですね。しかし、我が国の農村社会の伝統や歴史を反映して様々な規模や形態の農業が存立していると。国際的に多様な農業の存立、存続ということを言うのであれば、国内的にもそういうことがやらなければ説得力がないというふうに思うんですよ。
 それで、大規模化や企業的経営に集中していく、施策を集中するという話があるんですけれども、担い手にとってもそのことが本当に期待が持てるのかどうかということについても、私はこれまでも委員会の中で度々紹介してきているんですけれども、生産性の高い、規模の大きな農業ということでいいますと、私の出身地でもあります北海道なんかはその見本みたいな形でずっとやってきたわけです。
 それで、酪農でいうと、規模で既にEUの参加している多くの国を上回っている状況があると。しかし、規模拡大、それから機械化でコスト削減ということをやってきたけれども、価格はどんどん下がって、費用も拡大して、借金が増えていると。
 前回も紹介したんですけれども、北海道の調査で、平成十年、元利金の返済ができる農家というのは、これはA階層というふうに位置付けられているんですけれども、こういう階層が六一・五%なんです。あと四割近くというのは十分に返済できないで借金だけ増えるというようになっている。それから、生活費も出ない、借金の返済どころか生活費も出ないという農家というのはD階層となっているんですけれども、ここが七・三%なんですよ。北海道の調査ですよ。
 それで、十年前と比較しても本当にこのD階層というのは、当時は一%ぐらいでしたから、本当に増えてきているという状況になっているわけです。コスト軽減というのはぎりぎりまで機械を入れて今までやってきているわけで、こういう経営に対して、構造改革で具体的に収入、所得が増える見通しがあるのかということなんですね。
 この点、いかがでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) いろいろの厳しい状況、現実に担い手が少なくなってきている。しかし、是非、いろいろの施策、今度、米政策の改革に際しましていわゆる経営安定対策あるいは面積の問題等々もいろいろ検討していくわけであります。
 そういう中で、厳しい状況下にあるわけでありますが、是非いろいろの施策を活用していただき、そして規模の拡大と生産性の上がる経営と、こういう努力をしていただくような努力を私どもしてまいりたいと、こう思っております。
○紙智子君 いろいろなことを対策取るということで経営安定対策とかということも言われているんですけれども、やっぱり保険方式でやる場合に、農家が結局負担をしなきゃならないですね。もうただでさえ厳しいわけですけれども、負担をしなきゃいけない部分もあると。しかし、補償は八割というようなことがあるわけです。
 それから一方では、米政策改革の経営安定対策ということで今回出されている中身でいっても、北海道で十ヘクタール、府県で四ヘクタール以上と。対象の集落経営ということでも、これは幾つか要件を設けていますよね。
 大臣は、二日の日に日本農業新聞のインタビューに答えられていますけれども、稲作農家から担い手経営安定対策の面積要件を緩和してほしいという要望が出されているわけです。それに対して大臣は、議論を積み重ねてきた今回の改革を一歩でも実行するのが基本だ、その上でまた問題があれば考えていくというふうに言われているんですけれども、問題があるからこういう要望が出てきているわけで、やっぱり実行に移す今の段階でこそ、中小の農家を排除するんじゃなくて、そういうこと自身を見直すべきではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) その面積の問題等々、是非、意欲のある担い手と、そういう方々がいろいろ生産がしっかりできるような施策を我々進めるわけであります。
 そこで、これからいろいろ来年度の予算要求へ向けて検討するわけでございまして、そういう面で、いろいろの関連施策の総合性あるいは整合性を取りながら具体的な仕組みの問題につきましては引き続き検討もしていかなければならない問題ではなかろうかなと、このようにも思います。
○紙智子君 国際的にというか、外に向かって多様な農業の共存ということを言われるわけですけれども、そうすればやっぱり国内でもそのことをきちっと保障するというふうにしなければ本当に説得力を持たないというふうに思うんですよ。だから、私は、大きくやりたい、規模を大きくやりたいというのも結構だけれども、中規模や小規模でも、意欲を持って本当に農業を頑張ってやりたい、食料を頑張って作っていきたいと、そういうところについては大事な多様な農業の担い手として支援の対策を取るべきだということを申し上げて、最後の質問に移らせていただきたいと思います。
 農林に比べて水産の多面的機能ということの、この水産の多面的機能の支援ということについて質問をします。
 農業の分野では中山間地の直接助成、それから林業でも森林整備の支援金と、その対策をやって多面的な機能に光を当てた制度が確立されたわけですけれども、漁業の分野ではこれ調査研究段階で、まだこれからということになっていると思うんですよ。水産基本法の審議のときにも、漁業や漁村の多面的機能が一つのポイントということで、単に情報提供だけじゃ駄目だ、やっぱりその機能が発揮できるような施策を講ずることが重要だということで、修正をされました。
 それで、平成十三年から十四年、これは多面的機能の調査の事業、十六年、十五年から十六年というのは支援事業ということなんですけれども、いずれも調査検討、啓発という段階なんですね。
 実際にいつごろをめどにしてこれを支援、具体的な支援策を確立するつもりなのかということについてお聞きしたいと思います。
○政府参考人(木下寛之君) 水産業の多面的機能でございますけれども、委員御指摘のとおりの状況でございます。
 私ども、十三、十四年度にそれについての調査をし、その中で具体的な多面的機能が明らかになった段階でございます。私ども、十五、十六年に掛けまして、多面的機能に基づいた支援につきまして、国民のコンセンサスを得ることが大事だというふうに思っております。
 そのような観点から、国民のコンセンサス作りの推進だとか、あるいは機能発揮のための支援方策について幅広く検討するという段階でございます。これらの段階でございますけれども、一方で幅広い漁場環境の保全なり、また藻場の造成等多面的機能の発揮に資する施策につきまして積極的な推進に努めている、そういう段階でございます。
○紙智子君 時間ということなんですけれども、関連対策というのはそれはもう当然やっていただかなきゃいけないんですけれども、国民のコンセンサスを得るというのもそれも大事だと思うんですけれども、しかし、もう十三年度からやってきて、アンケートもやってきたと。それから、前回審議になっている中でも大臣の当時の答弁としても積極的な答弁されていますよ。
 それで、十年後には漁業者は半数になるというふうに予測されているわけです。だから、漁村に漁業者がいなくなれば多面的な本当に重要な役割を、国民の利益に貢献する多面的な機能の役割を発揮することができなくなってしまう事態になるんじゃないかと。
 だから、ここは、やっぱりせめて十七年度にはそういう目標なんかもちゃんと示せるような、そういう方向で検討していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(木下寛之君) 私ども、水産業の多面的機能についての調査研究について正に十五、十六でやっているわけでございますけれども、このような調査研究あるいはコンセンサス作りをやりながら、正にどういうようなやり方で水産業にとってふさわしいのかにつきましても現在検討している段階でございます。
 私どもとしては、できるだけ早くそのような方向について努力していきたいというふうに考えております。
○紙智子君 終わります。