<第156回国会 2003年3月27日 農林水産委員会 第5号>


平成十五年三月二十七日(木曜日)
   午前十時一分開会
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   本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○水産加工業施設改良資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○漁業協同組合合併促進法の一部を改正する法律案(衆議院提出)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 水産加工資金を延長する本案は、従来の施設導入に伴う研修や、また市場開拓などのソフト面もこの融資の対象にした点で評価できると思います。
 しかし、現在、水産加工業者は経済不況の影響を受けて非常に大変な状況にある。経済対策の抜本的な転換が必要なわけですけれども、同時に、加工業者への国、行政への支援強化が求められていると思います。
 で、業者にお聞きしますと、この原料を共同して仕入れるとか、それからまとめて新しいところに出荷するとか、直接販売できる店を出店するとかPRするとか、いろいろ苦労をされている。工夫すればするほど、こういうことでのコストが掛かるわけです。それで、業者は行政に対して、こうしたところに対する支援の強化を求めているわけです。
 まず、加工業者に対するこうした支援の事業は何があるのか。事業名で結構ですけれども、それと国の予算額、それから、想定の箇所数についてお聞きしたいと思います。
 ちょっと十五分なので、できるだけ簡潔にお願いします。
○政府参考人(木下寛之君) まず、事業名でございますけれども、一つが平成十四年度から実施をいたしております、みなとまち水産加工振興事業でございます。箇所数が十三か所でございまして、予算額が七千万でございます。
 また、次に、十五年度予算案の中で水産加工地域再生強化推進事業というのを考えております。予算額でございますけれども──失礼いたしました。冒頭申し上げました、みなとまち水産加工事業が二千万でございます。それから、二つ目に申し上げました事業が五千万円ということでございます。
○紙智子君 事業は、予算が足りなくなるぐらい要望があるというふうに聞いています。それで、ブランド品の販売促進それからPRなど、このみなとまち水産振興事業などは要望が多いというふうに聞いています。全国でこの水産加工業、一万三千事業所あるというふうに、いうことなんですけれども、こういう事業の予算額ということでは余りにも少ないんじゃないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(木下寛之君) 私ども、全体の予算の中で漁業と水産加工業、正に車の両輪でございます。水産加工業の体制強化のためのいろいろな施策の方向について今後とも努力をし、皆さん方の期待にこたえるべく工夫をしていきたいというふうに考えております。
○紙智子君 水産基本法の中で水産加工業の位置付けについて、その健全な発展をうたっております。日本型食生活の一端を担う水産加工に光を当てたというのは意義深いと思います。
 しかし、その一方で、せっかく平成十年にできた水産加工課が、基本法を制定した十三年にわずか三年で廃止統合されて現在のこの水産加工流通課になっているわけです。もっと水産加工業に対する施策の拡充があってもよいのではないかというふうに思います。
 水産基本法では、漁業と加工業との連携と、連携の推進をうたっているわけです。しかし、加工業者は輸入の原料を使っていると。国内のものは資源が減っているということもありまして生鮮物に流れて、これまたその連携が薄いと、このような傾向も少なくないというふうに感じられるわけです。
 この基本法の立場を政策としてどう発展させるおつもりなのか、お伺いします。
○大臣政務官(渡辺孝男君) 漁業と水産加工業は車の両輪であり、連携の確保が重要ということは委員の御指摘のとおりでございます。
 我が国漁業と水産加工業の連携を確保するためには、我が国の周辺水域の水産資源の回復を図るということと同時に、水産加工施設として国産の原料魚を使用する加工業者の基盤、事業基盤の強化を図るとともに、漁業者と加工業者の安定的な取引関係の構築を推進することも大変重要でございます。
 そのために新たに、水産加工地域におきまして、水産加工業者が共同で行う原料調達方法の改善の取組や地域特産加工物のブランド化の取組等を支援していくこととしております。そのほかに、国産加工原材料の供給の安定を図るため、漁業者と加工業者が情報交換を行い、そして、長期安定供給契約の締結による安定した取引を推進していく、そのようなことも推進をしていきたいと、そのように思っております。
○紙智子君 全国水産加工業協同組合連合会の常務さんが公庫月報の中でこういうふうに述べられているんですね。
 水産加工業者は、可能であれば国内産の原料を使いたいと強く望んでいる。それが困難であるため輸入原魚に依存しているのである。加工業の多くは漁業者との密接な連携を望んでいる。例えば、漁業者との間で漁期ごとに契約を結び、加工業者が必要とする最小限度の原料魚を優先的に加工業者に回す仕組みを作る。価格が上昇し鮮魚で売った方がもうかる場合に、加工業者に回すことの差額分を国などが補てんすれば、漁業者ももうけが確保できるというふうに提案をされているんですね。
 それで、これ検討に値する提案ではないかというふうに思うんですけれども、感想いかがでしょうか。
○政府参考人(木下寛之君) 水産加工業者の経営安定を図る意味で、原料魚の確保というのは非常に重要だというふうに私ども思っております。
 そういう観点から、私どもも、予算の補助事業でございますけれども、水産物安定供給推進事業ということを推進しておりまして、この中で、生産者団体が加工業者との長期安定供給契約を通じまして、水産加工原魚等の安定供給を行うための必要な買取り代金の金利あるいは保管経費等につきまして助成を行っているという段階でございます。
 今後とも、水産加工業者と漁業者との長期安定取引というのは推進していく必要があるだろうというふうに考えております。
○紙智子君 基本法というのは、やっぱり定めるだけではなくて、実際に連携ということになるのであれば、その具体化をどうするのかというのは国の責任でもあると思うんです。それで、是非、この後も、今、努力をしていくということなんですけれども、検討していただきたいというふうに思います。
 次に、輸入との関係なんですけれども、加工品の輸入は拡大の一途をたどっています。今やこの金額も量もトップになっていると、急増しているわけです。水産庁の出している水産加工業経営調査、ここでも、当面する課題に、多くの企業が輸入製品との競合激化という問題を挙げています。このまま輸入が増えていったならば、加工者は、加工業者はますます大変になるというふうに思いますけれども、輸入対策というのはどのように考えられているんでしょうか。
○政府参考人(木下寛之君) 委員御指摘のとおり、水産加工業界、輸入加工品との競合がだんだん大きくなってきているという状況でございます。
 したがいまして、私ども、輸入加工品との差別化を通じて国内水産加工業の競争力の強化が必要だというふうに思っております。そのためには、一つは地域加工品のブランド化を通じて差別化を図っていくと、また一方で、都道府県あるいは研究機関とも連携をしながら水産加工品の高品質化あるいは技術の、高付加価値化技術の開発を促進する必要があるだろうというふうに思っております。
○紙智子君 水産物についてはIQ制度があります。この目的は、水産資源の保護とそれから国内生産者の対策という両面があると思うんですけれども、加工品の中の調製品はその対象にはなっておりませんね。
 それで、同じ魚ででも、味付けしたもの、それから火を通したもの、それから衣を付けたもの、これは調製品ということでIQからは、その対象からは外れると。しかし、同じ海で、海域で取れる魚は、原魚であっても調製品であっても、資源は同じなわけですよね。ですから、水産資源保護という見地からすれば全く同じであって、そして、国内生産者保護という面でも、漁業者でも加工業者でも同じく当てはまるわけです。
 そこで、IQ指定のこの魚種について、原魚だろうが調製品だろうが対象にすべきではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(木下寛之君) IQ制度でございますけれども、現在、IQ制度を保持しているのは我が国だけでございます。
 現在のWTO交渉の中で、本制度の撤廃そのものが議論をされているという段階でございます。したがいまして、先生御指摘のように、その対象品目を拡大をするというのは極めて困難だというふうに認識をいたしております。
○紙智子君 WTOの水産交渉の重要な課題にもなっている問題なわけです。
 この十年間のIQ水産物のこの輸入量の数字をこの間もらいましたけれども、これは、同じ水準か、むしろ減っているものが、見ますと多いんですね。これに比べて、水産調製品の輸入量は約二倍以上になっています。つまり、同じ魚種でもIQの原魚形態から調製品に移行しているというふうに言えると思うんですね。
 それであれば、そういう調製品にもIQをかぶせる必要があるんじゃないかというふうに思うんですが、どうでしょうか。
○政府参考人(木下寛之君) 私ども、水産加工業をめぐる状況の中で、先ほど御指摘の点も含めて、輸入品との競合激化が大きくなってきているというふうに思っております。
 このような点から見て、基本的には、我が国水産加工業の体質強化なり水産加工品のブランド化、あるいは高付加価値化というような点での対策が基本的な対策だろうというふうに考えております。
○紙智子君 最後になりますけれども、大臣にお聞きします。
 大臣の地元、八戸ですね。ここは水産の盛んな町で、加工業者も多いので実態はよく御存じだと思います。
 それで、加工、水産加工業者の実態は非常に大変で、先日も、これは宮城県ですけれども、塩竈市、市内の最大大手の一つの会社が経営破綻で法的手続に入って、地域で今大きな問題になっています。原材料が二割も高くなっている一方で、製品にそれが転嫁できないと。逆に安く抑えられているということですね。銀行の貸し渋りもあると。
 食の供給で重要な役割を果たしているこういう水産加工業者が倒産をしないような施策というのは基本、基本施策といいますか、そういう点で、大臣としてのお考えをお聞きしたいと思います。
○国務大臣(大島理森君) 倒産しないような施策はあるかと言われますと、これはなかなか難しいことだと思いますが、ただ、今、紙先生とうちの長官と議論していまして、我々はこの現実を、逃げちゃいけない現実というものを見据えなきゃならぬ点は、私はやっぱり国際化だと思うんです。
 これはWTOの世界で、ある一定の私どもは防波堤を造る最大の努力をいたします。しかし、このような状況になりましたときに、やはりもっと現実的、そして具体的に言いますと中国です。中国という国の、この水産だけではございませんが、特に最近例が多くなっているのは水産加工品、調製品です。この存在をどのように我々は明確に意識して日本の国内の水産加工業の皆さんに頑張っていただくか。二つあると思います。
 一つは、先ほど長官が言いましたように、我が国のその地場で頑張っている人たちの徹底的な中国の産品との差別化。その差別化の中には、品質と安全性、安心性があると思います。
 もう一つは、確かに、中国というその国の存在というものを私どもは全く敵なんだと考えるのか、逆にそういうところに進出していく企業もあるわけです。だから、そういう方々とある意味じゃ活用して生き延びていくという人たちもいると思うんです。
 両方ともしっかりと私どもは視野に入れなければならない時代に入ったのではないかなと思いますが、言わば、先ほど来長官がお話ししましたように、この中小、特に小の方々が歯を食いしばって見ている現状の中で、先ほど、この法律もそうでございますが、私は研究体制、こういうものをもっと使いやすいようにしなさいとか、あるいは農林水産省が全体として食品総合産業としてこれから生きていかないとこの役所の価値がなくなるよと言うぐらいのことを申し上げておるわけです。一次産品のところだけ力を入れたって、それが付加価値を生まれて総合的な食料産業政策官庁に生まれ変わっていかなきゃいかぬと。
 そういう意味で、その一環として、水産加工業政策に対しましても、今長官にお願いして、先ほど来議論がありましたが、その安心・安全体制の徹底的なシステム作り、あるいは差別化作り、あるいはまた国際社会の中でどう生きていくかという、そういうふうな点、総合的なものをもう一回しっかり勉強しよう、こういうことで今長官のところで勉強して、元気よくやっぱりやっていただくことが、そのための施策を持つことがつぶれないようにするその原因だと思います。全力を尽くしたいと、こう思っております。