<第155回国会 2002年12月3日 農林水産委員会 第7号>


平成十四年十二月三日(火曜日)
   午前十時二分開会

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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○農薬取締法の一部を改正する法律案(内閣提出 、衆議院送付)

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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
  まず、無登録農薬使用問題を契機に今回法改正が行われたわけですけれども、この事件の背景に、輸入に対する規制がなかったり、あるいは行政検査の甘さ、国と県との連携の不十分さなどが指摘をされて、衆議院でもそして今日も各委員会から審議をされているわけです。
 それで、この無登録農薬が使用されているという情報があって、山形県が平成二年から十三年まで七回立入検査を行ったわけですけれども、農水省がこういう無登録農薬が使われているらしいという情報を得たというのが平成十三年の八月三日ということです。それで、余りにもこれは遅いじゃないかというのは各委員が指摘しているわけですけれども、改めて私もそのことを指摘したいと思うんですね。なぜこんなに遅かったのかということで、いかがでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) この無登録農薬問題、先生言われますように、平成二年ごろから山形県下におきましては情報があり、その都度立入検査を行っていたわけでございますけれども、一つは、なかなか確実な情報がつかめなかった、それから衛生部局が発見した残留農薬に関しましては独善的判断を下してしまって報告がなかったと、こういうようなことが続いたということが県の対応でございます。それから、農林水産省も、これも先ほど来申し上げましたけれども、昨年の八月にも情報があったわけでございます。そのときの基準では、国が立入検査までは行くような規範になっていなかったわけでございます。
 やはり、かくも大きく広がった問題でございます。今から考えますのに、やはり組織、業務の在り方として、どういう場合にどういう対応をすべきかというマニュアルといいますか、の作成、いわゆる危機管理意識というものの欠如というものがあったというふうに反省せざるを得ないというふうに考えております。
○紙智子君 結局、疑惑があって県が検査をしたということが十年以上、国に報告が来ていないと。
 それで、裁判が行われていますけれども、この冒頭陳述見ますと、平成三年ごろはまだ売上帳にダイホルタンあるいはプリクトランということが失効した名称で書かれていたと、だから確認すれば分かったことなんだけれども、それを見なかったというふうにあります。平成四年の段階では、風袋の現物を示された上、情報提供を受けたけれども、その後も複数回検査したけれども、これ発見できなかったと。
 だから、県の検査のずさんさと、それから甘さということが問題ですけれども、同時に、こうした立入検査の情報がなぜ国に早期に知らされなかったのかというのは、私は非常に疑問に思います。
 それで、検査については県がやるということで、それについて国に報告する必要がなかったわけですよね、当時。そして、平成十二年までのこの法律では、国が例えば委任した検査で報告義務が、しなければならないというふうに明記されていなかったと。このこと自体がやはり問題の発覚を遅らせたんじゃないかというふうに思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 過去の山形県によります販売業者への立入検査、これ、法律上は機関委任事務ということでございまして、機関委任事務の場合、確定した事実を見付ければ国への報告義務というのが義務付けられていたわけでございます。その後、地方分権等ございまして、法定受託事務、平成十一年になったわけでございます。これも同様、確定事実を見付ければ国へ報告すべきというふうになっていたわけでございます。
 山形県としては、確定した事実が見付からなかったということで国への報告がなかったということだろうというふうに思っているわけでございます。
 ただ、このようなシステムが今回の問題につながったわけでございますので、私どもとしては、国と県の関係につきましては、情報があれば連絡をするようにという連携体制というものを急遽整えたということでございます。
○紙智子君 そうしますと、今回通達も出しているということなんだけれども、何かあったら報告しなさいということだけではやっぱり同じことが繰り返されるんだと思うんですよ。
 検査の実施、そして報告の、今おっしゃいましたけれども、システム自体に問題があったと。国への報告が行われていれば検査所による検査も発動できたし、早くに問題を発覚させてこれほど事件を拡大することを防げたんじゃないかというふうに思うんですね。その意味では、これは大臣にも是非答えていただきたいんですけれども、やっぱりこれまでのそういう制度上の不備があったんじゃないかという点についてお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(大島理森君) 山形県の場合も精査を私なりに局長にもう一度させて、そういう意味で、様々な制度的な欠点もあれば危機意識の欠如もあれば、多分、山形県の中で生産者をかばおうという意識も私、なかったとは言えないと思うんです、それまた意識の問題になるわけですが。それらを様々に私ども反省をいたしながら、新たな今の改正案を皆様方にお願いしておるところでありますし、法律を改正するだけではなくて、先ほど来御指摘いただきましたように、農水省、厚労省、環境省との一層の連携でございますとか、また自治体におけるその部局間の連携でございますとか、そういうものを徹底させながら、こういうことが起こらないようにしていくことが私どものこれから反省に立った責任と、このように考えております。
○紙智子君 今、大臣、お答えになったわけですけれども、制度上の不備という問題についてはお認めになりますよね。
○国務大臣(大島理森君) なかったとは言えないと思っております。
○紙智子君 次に、昨年の八月七日に県から報告を受けて農水省は、現物を押さえ、農家の使用したという陳述書をもらうようにということで指導をしたわけです。ところが、県からその後いろいろ何も言ってこないということで、その後の追跡をしていなかったと。
 これについては農水省としても反省をしているということですけれども、もう少し突っ込んで聞きたいんですけれども、行政のシステム改善の問題として考えた場合に、県からの検査に対する報告や相談、指導内容についてはそのときどのようにしていたのかなと。つまり、文書にして記録を残して、そしてちゃんと上まで上げて見せるということも含めて、どの段階まで報告するシステムになっていたのか。実際、農水省の内部でそういうことを受けたときにどういうふうに対処していたのかということについてもお聞きしたいと思うんです。いかがでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 事実関係について申し上げますと、昨年の八月、当時の農林水産省の担当者は、先生言われたように、山形県に対して、農家まで立入調査をして使用の事実をつかんだ上で再度販売店への立入りを行うよう指導をしたということ、その後、県から情報を得ることができなかったということでございます。
 そして、どのようにこれについて判断をしたかということでございます。当時、国による立入検査というのは、二つの場合、一つは都道府県による立入り権限のない製造業者と輸入業者に関する情報が寄せられた場合には国が立入検査をする、もう一つは、販売業者につきましては都道府県からの要請があった場合に立入検査を行うと、こういうことであるために立入検査を行わなかったということでございます。
 当担当官は、当時、担当の補佐まで報告をしたわけでございますけれども、文書の記録にとどめるというようなことはございませんでした。
○紙智子君 BSEのときも、実際の内部での責任の問題が一体どの段階で判断をしたのかということも含めていろいろ議論になったけれども、結局のところはっきりしないということだったわけですけれども、そういうところをやっぱり教訓にして、こうして文書で残す問題ですとか、やっぱりどこでそういう判断をしたのかということが、個人責任も含めてはっきりされていくということが同じことを繰り返さないことになると思うんですね。
 それで、リスク管理の意識のなさということも先ほど話が出ていましたけれども、今回の事件を機に、輸入自体にも規制を掛けるという改正が行われるわけですけれども、農水省は、この輸入に関してで言いますと、農薬については規制がないと、それから無登録で入ってしまうと。国内に来て、ただ、販売の時点になって規制されるという現行の法律がやはり問題があるということを、そういうことについて、いつそういう認識を持たれたんでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 無登録農薬の輸入に関する情報でございます。
 海外の安価な無登録農薬を農家にあっせんしている者、いわゆる輸入代行業者、この情報は平成の四年四月ごろから入手をしておりました。このために、平成四年の八月以降、情報があるたびにその輸入代行業者のところへ担当官を派遣をいたしまして、営業の自粛、農家に対して販売しないようにという指導をしてきたわけでございます。
 当時、輸入代行業そのものについて、輸入そのものについて規制の対象でなかったわけでございまして、当時の法律で、輸入代行業者を罰則の適用等その他を考えていわゆる摘発するためには、販売行為というものの事実関係の確認を取る必要があったわけでございましたけれども、調査の結果ではそこまでの確証が取れず、いわゆる摘発を行うまでには至っていなかったところでございます。
 私どもとしては、そういうような指導、自粛指導、購入しないような指導で何とか法の趣旨が守れるのではないかというふうに考えていたわけでございますけれども、今回この山形県での無登録農薬の販売が発覚したことに端を発しまして、業者による無登録農薬の大掛かりな輸入とその販売ということが全国的に広がっていたという認識を持ったのは、正直なところ今回が初めてでございまして、この法律の趣旨を完遂するためには、輸入、製造それから輸入代行業者を含めた規制が必要であるということで、急遽法律改正案をお出しをしているということでございます。
○紙智子君 平成四年ころからそういう情報を入手していたということですけれども、私も、BSEが起こったときに、北海道の現地に行ったときに、農業者の方たちが輸入肉骨粉というのは重大だと、しかしその問題もあるけれども、今にきっとこの輸入の農薬、この問題ももっともっと大きな問題になるときがあるということがそこでも言われていたんですね。ですから、そういう情報はあちこちにきっとあったんだと思うんですよ。そういうことを知りつつ、やっぱり早く対処をできなかったというのは非常に大きいと思うんですね。
 今回の事件で二つの輸入業者が逮捕をされたわけです。法務省にお聞きしますと、平成元年にダイホルタンが失効すると初めは在庫品を使っていたんだけれども、そのうちに台湾から輸入し始めたということが分かっていると。つまり、十数年も前から輸入しているということですよね。農薬企業の関係者に聞くと、我が国で失効した農薬が安く海外で造られているというのは常識なんだと、こういう話まであるわけです。そして、日本の貿易制度には農薬という分類がなくて、これ規制できないと。これらを考えれば、なぜもっと早くにこの輸入規制の必要性を検討できなかったのかというふうに思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 率直に申し上げまして、今いみじくも先生おっしゃられましたけれども、輸入の際に農薬が化学品、殺菌剤、殺虫剤という分類で入ってくると、そういう実態にあったことから、中で流通するその販売を抑えることによって無登録農薬の販売とか使用を防ごうという趣旨でこの農薬取締法ができていたわけでございます。
 今回の全国的なこの問題の広がりにかんがみまして、その輸入の水際のところで何とか捕まえなくては法の趣旨が全うできないというふうに考えまして、何とか水際で捕まえる方法はないかということを急遽検討をいたしまして、輸入についての規制ということを法改正をするということとともに、実態的に水際で捕まえる方法について、今税関当局と協議をしているということでございます。
○紙智子君 次、大臣にお聞きしたいんですけれども、今までやり取りしてきましたように、国の行政、そして検査における県との関係での連携と、それから輸入規制がなかった問題と、無登録農薬の事件の背景には、こうしたことを見ますとやっぱり国の責任というのはあると思うんですね。そして、販売業者は犯罪者です。使った農家も問題がもちろんあります。しかし、それを付け込ませた国の責任ということについてやっぱりどう受け止めるかということは大事な問題だと思うんです。
 一部の無登録農薬使用によって、多くのまじめな関係のない農家の人までが廃棄処分や検査を余儀なくされています。価格にも影響が出ているというふうに聞いています。多くの生産者がその意味では被害者にもなっていると。しかも、そのあおりで今度は使用者への罰則の禁止の規定が作られたわけです。言わば、このとばっちりが来たというふうに受け止めている生産者も少なくないと思うんです。
 私は、やっぱりこの使用規制ができるのは、全体としてはこの無登録農薬、販売禁止農薬の使用を防ぐと、消費者にも安全な食料を供給するということではより強い担保の措置だというふうに思いますし、やむを得ないというふうに思います。しかし、政府に求められることでいいますと、やはり国の側の責任について率直に認めて生産者の協力をお願いすると、それが大事ではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか、大臣。
○国務大臣(大島理森君) 今の輸入問題の議論も伺いながら、もう一つこんなことを考えました。
 つまり、IT革命がもたらした輸入代行業者的仕組みというもの、つまりもう行政が想定し得ない流通の在り方がどんどんどんどん実体経済の中で対応していったということも一つあるんだろうと思います。
 そういう中にあって、先ほど来議論もありましたが、これは自由主義経済ですから、その法のぎりぎりのところ、法と法のはざまのところで何か商売できないかと、こういうふうなことでそういうふうなものを考える人たちもいるんだろうと思うんです。一方、生産者の立場からすると、コストが高い、農薬が高いというお話もございました。やはりそういうふうなものに対して飛び付いていく、コストが高いので安い物がないか、同じような類似品がないかということの中にそういう方々が入っていくというふうな状況でもあったのかな。
 一方、その根底の中にあるのは、やはり生産者も、もちろん農薬の関係者も、そして私どもも含めて、今次の農林水産政策全体において消費者というものに対する視点が、食の安全とか信頼とかというものに対する視点、重き、こういうものが根底に足りなかったところから起きた問題であるという認識は私は一つ持っております。反省も持っております。
 したがって、そういう反省の上に立って、二度と起こらないように最善を尽くすことが責任と、このように思っているところでございまして、したがって、生産者の皆さんに御迷惑掛けましたということよりは、一緒になってこの問題を考えて、そういう新しい消費者の視点に置いた生産体制も、あるいは農業政策も我々やってまいりますからという、そういうお互いの共通の認識を持ってこの問題に対応していくことの方が私は大事なのではないだろうかと、このように思っております。
○紙智子君 二度と繰り返さないことが大事だということを言われましたけれども、改正案には不十分な点があると思うんですね。
 一つは、販売禁止農薬や無登録農薬の回収義務がないと。これでは知らないで使うということも防止できないわけです。既に、この点では、衆議院の議論でも、次期の国会で改正に向けて努力するというふうに答弁をしているわけですけれども、だれがどれだけの責任分担があるのかと。現在では、今難しくて、今回の法案には間に合わないというふうに説明をそこでされています。
 安全性、残留性などで販売禁止になった農薬の場合に、あるいは失効後に危険性が確認された農薬、これは造ったメーカーやあるいは輸入業者の責任で回収すべきだというふうに思うんですけれども、これはいかがでしょうか、大臣。
○国務大臣(大島理森君) 先ほども日笠委員からこの回収の問題が議論になりました。あるべき姿として、それは回収した方がいいと思います。
 しかし、言葉では簡単なんですが、現実問題として、どのような方法で回収をし、回収義務を課せられるか。憲法上の所有権との問題等々を考えますと、今の法律にそのことを、そういう現実の問題、憲法からくるところの法律の整合性の問題、そういう総合的な判断で、ここで今この法律にそこの点は一項立てるということには至りませんでした。
 したがって、様々なそういう問題を含めて、通常国会に向けてどう対応したらいいか考えてまいりたい、このように思っております。
○紙智子君 登録の際に、人畜に対する毒性等の試験成績書及び解毒方法などが出されます。それで審査されるわけですけれども、その後、登録された後、安全性におそれがあるというふうに判明したときに販売禁止になるということなんですけれども、そういう危険性のあるものを製造した責任とか、あるいは輸入した責任というのはあります。そして、登録する際に、そういう危険性を予測し得なかった責任というのもまたあると思うんですね。この点についてはいかがですか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) この回収の関係、大変法律的には難しい点でございまして、まず明らかなのは、無登録農薬と分かっておって販売した者、それから販売禁止になった農薬と分かっていて販売した者、これらの者に対して回収規定を掛けれるというのは、これは現時点でも私は可能だというふうに考えております。
 問題は、販売した時点では合法、登録を受けていたんだと、それから販売した、その後で見付かったりした製造業者とか輸入業者でございます。製造業者責任とかいろいろな問題がございますけれども、こういう者にまで法令上回収を命じ得るか否かということにつきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、やはり財産権の保障との関係等を踏まえながら検討する必要があろうかというふうに考えているところでございます。
○紙智子君 製造業界に対して甘いというふうに私は思います。
 今回の事件で、ダイホルタンは平成元年に失効して、その後、九年に発がん性が明らかになりました。NDと、つまり残留基準が検出されてはならない農薬ということで指定をされているわけです。プリクトラン、これは昭和六十二年に失効して、平成七年にNDというふうになりました。この時点で、どれだけこのような危険な農薬なんだということを国や都道府県が情報を提供し、指導したのかと。
 第十二条の七の条項がありますけれども、ここでも定めていますね。そこはやっぱり徹底していかなきゃいけないということになっているわけですけれども、そういうことをやっぱりやる必要がなかったという、失効していればなかったということなのか。そして今後、失効後、残留基準が検出不可になるなどの危険性が確認された場合に、失効していても販売禁止を掛けることもあり得るのか。この場合を含めて、販売禁止の場合に、そうした情報と指導を国と都道府県の「努めるものとする。」という努力規定から、メーカーも含めて、ねばならないという義務規定にすべきだというふうに思うんですけれども、今回なぜそれをやっていないんでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 情報提供の話でございます。私ども、先生言われたようなケースには、今後はホームページでございますとかそういうものを使いまして、失効農薬リスト、失効理由、そういうものをできるだけ調べまして情報提供をしたいというふうに考えております。
 現行法でなぜこうなっているのかという話でございます。やはり私は、販売に係る輸入業者も製造業者も販売業者も、そしてこれを使う農家も、特に農家は食品を供給する者でございまして、その義務の中にやはり安全な食品を供給する責務というものは、これは当然内在しておるものだと思うわけでございまして、それぞれの段階で注意をしていただく、立法の趣旨を守っていただくということがあれば今回のような事件はなかったんではないかというふうに思っておりますが。
 やはり今後は、安全でない食品が消費者に供給されないようにすることというのは重要でございますので、例えば、衛生部局が発見した場合には食品衛生法上の措置を取って速やかに農林部局へ連絡する、農林部局は直ちに農家や販売業者に立入検査を行って農林水産省に連絡をする、農林水産省は他の関係機関にも情報提供をいたしまして、必要に応じて立入検査を行うという安全性の面からの検査と、それから先ほど、消費者に無用な不安を与えず風評被害を招かないための情報の提供と、両面努めていきたいというふうに考えております。
○紙智子君 ちょっと大臣にまたお聞きしたいんですけれども、今のこととも関連するんですけれども、山形県では、結局、県の情報がずっと公開されていなかったと。そして、平成十三年に衛生研究所がダイホルタンを検出していながら、公表したり農家に注意喚起するということをしていなかったと。
 こういうことを教訓にするならば、やっぱり義務規定にすべきじゃないかと思うんですね、努力でなくて。その点、次期の改正で検討するおつもりはありますか。
○国務大臣(大島理森君) 義務規定にしないのかということでおっしゃっておられますが、義務規定まで行くべきかなという疑問をちょっと持っております。
○紙智子君 義務規定にすべきだというふうに私は思いますけれども。
 この使用禁止に輸入、製造、販売、同じレベルの罰則が、またこれ違う質問になりますけれども、罰則が付きますけれども、使用禁止違反の場合に、それが故意でやられたのか、それとも知らないで使ったのか、過失なのかと、その理由はいろいろ出てくると思うんです。販売禁止の情報が知らされていない場合もあるだろうと。機械的な罰則の適用はあり得ないというふうに思いますけれども、この点、いかがでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 法律の罰則の適用につきましては、刑法に本則がございまして、罪を犯す意思がない行為は罰しない、行為がなければ罰しないと原則が書かれているわけでございます。あわせまして、法律を知らなかったとしても、そのことによって罪を犯す意思がなかったとすることはできないということでございまして、いわゆる法律の不知というのは可罰性があるということでございます。
 私ども、今回の問題を実態上見てみますのに、やはり農家段階でも、ラベルがないとか、そういう農薬だとそれは無登録だということは分かるわけでございますので、農家の方々にも、そういう農薬は使用すべきではないという遵法精神といいますか意識を持っていただきたいというふうに思っております。
 それで、先生の御質問に対するお答えでございます。
 具体、個別の事案は司直の方で判断されるんではないかというふうに思っておりますけれども、例えば無登録農薬を、登録を受けていると誤認させるような宣伝を行って、そして登録農薬と思い込んで使ったといったような場合には、それは行為は問えないだろうというふうに思っております。
○紙智子君 次に、農薬の使用基準を定めて、その遵守規定が設けられて、違反に罰則が付くわけですけれども、したがって、この基準は使用者の理解が必要なわけです。今は安全使用基準を公表するというふうになっているわけですけれども、非常に複雑で矛盾があるというふうにも聞いています。
 例えば、DDVP剤、殺虫剤ですね、この場合は、ジャガイモについては収穫前日まで使用可能だけれども、サツマイモは十四日前、それからキュウリは前日までで、トマト、キャベツは三日前、ブロッコリーは七日前というふうになっていますね。それで、こういう複雑さというのが一体なぜなのか、ちゃんと農家に知らせて、そして理解してやってもらうべきだというふうに思うんですけれども、こういうことに対する指導はどのようにされるおつもりでしょうか。
○大臣政務官(渡辺孝男君) 使用基準についての周知に関してでありますけれども、今回の改正で、食の安全の観点に立ち、農薬を使用する者が遵守すべき基準を定めたわけでありますけれども、これに違反するような場合などに罰則規定を設けたところであります。農薬使用者が遵守すべき点や知っておかなければならない農薬情報について、分かりやすく教育、普及することが重要であると考えております。
 このため、法施行前までに、農薬使用者に対し、遵守すべき事項を各都道府県の農業振興事務所あるいは病害虫防除所、それから改良普及センター、農協等の関係機関を通じて徹底していくことができるように、必要な措置を取っていくこととしております。
 また、従来から実施している農薬使用者に対する講習会の開催等に加えまして、農薬適正使用の徹底のために、農協の営農指導員などの中から農薬適正使用アドバイザーを地域に育成することなどによりまして、関係者による生産者への農薬に関する情報提供を推進していくことにしております。
○紙智子君 徹底するための体制ももちろん必要で、アドバイザーという話ありましたけれども、それをやるのであれば、やっぱり現に今いる改良普及員とか、そういう体制がずっと今まで減ってきているわけですから、ここはやっぱり減らさないでちゃんと充実していくということをやるべきだというふうに思うんです。
 財務省がこの農業改良普及員それから農業委員などの補助金を二〇%減らすということを言っているんですけれども、これはちょっと私は逆だというふうに思うんですね。これ、ちょっと一言、大臣で結構ですけれども、コメントを。
○国務大臣(大島理森君) 太田副大臣にお答えをさせると、全く同感だと言うおそれがあるかもしれないので、私がお答えをいたします。
 私、経済財政諮問会議でも、いわゆる学者さんと言われる方々が、むしろもうそういうような必置規制なんかはやめたらどうか、こういうふうな質問を私に問い掛けます。私は、この農政の改革のときだからこそ、あるいは食の今の安全、安心のときだからこそ、その必要性は依然としてありますと。ただし、その在り方の中身について、より質を高めるとか、今の時代に合うようにしていくような改革をいたさなければなりません、このような考え方でお答えをしておりますし、今、紙委員がお話しされましたように、農薬に対する指導という一つのその大きな人的要素として、普及員の皆さんにも徹底をしてもらう、ネットワークとして活用していかなきゃならぬ、働いてもらわなきゃならぬ、このように思っておりますので、どうぞ、農業委員の在り方論等々については御支援のほどをよろしくお願い申し上げます。
○紙智子君 ちょっと時間が迫ってまいりましたので、続けさせていただきます。
 それで、関連する問題なんですけれども、埋設されている農薬についてで、ダイオキシンを含む2・4・5T除草剤、これが国有林で一九六八年から七〇年に使用されて、七一年に使用禁止をされ、林野庁はこれを土の中に埋めて、その後八〇年に掘り起こしてもう一度コンクリートで固めた中に入れた、そして保管されているというふうに聞くんですけれども、林野庁にお聞きしたいんですけれども、この安全管理がどのようにされているのか、全国で何か所でどういう形で埋設されて、安全点検の巡回や調査や結果の記帳がどのようにされているかということについてお聞きしたいと思います。短くお願いします。
○政府参考人(加藤鐵夫君) 国有林野内への2・4・5T剤を埋設した問題でございますけれども、全国で五十四か所でございまして、埋設箇所の適切な保全を図るため、原則として年に二回、現地の状況等の点検を実施するなどの指導をしておりまして、その結果につきましては、森林管理署などにおきまして点検記録簿ということに記録をして保管をしているところでございます。
○紙智子君 関係自治体にその結果を報告していますでしょうか。
○政府参考人(加藤鐵夫君) 関係自治体への報告につきましては、点検の結果につきまして、現在まで埋設箇所に異常が発生をしていないということから自治体の方に特段の連絡をしていないところでございますけれども、現地に異常があった場合には、地元自治体に速やかに情報提供するよう指導しているところでございます。
○紙智子君 非常に不安に思っているわけですね。ですから、これは相当山奥にもあるということもありまして、調べたらやっぱり結果については報告をしていただきたいというふうに思います。
 それからもう一つ、本法案に農薬の規制を強めるために規制に入らないものを特定農薬ということでやっているわけです。この中で木酢液、土壌の消毒にとっても殺虫剤を使わなきゃならないわけですけれども、有機米などをやる場合に、この木酢液を土壌に使って、そしてカメムシの発生を抑えたりということが報告されているわけです。
 これについて、自然循環機能の維持増進ということで、このこと自身が農業基本法の精神にもなると思うんですけれども、これについてその効能と、やっぱりもっと推進するべきじゃないかというふうに思うんですけれども、これについてお答えいただきたいと思います。
○政府参考人(加藤鐵夫君) 今お話ございました木酢液は、木炭の生産時の煙から生成される酢酸であるとかプロピオン酸などの二百種類以上の有機化合物を含む液体でございまして、有機農業用資材として幅広い効用を有しておるということから、近年、農業用であるとか家庭園芸用などに利用されているところでございます。
 しかしながら、原材料や炭化過程の温度等によりまして製品によって品質のばらつきがあるということから、業界団体におきましては品質規格の作成及びそれに基づく認証制度の構築に関して自主的な取組を進めているところでありまして、林野庁としましても、これらの取組に対して助成措置を講じているところでございます。
 今後とも、そういった中で安全性の確保や品質の安定に努めつつ、木酢液の使用に努めていくということではないかというふうに考えております。
○紙智子君 品質の向上、安全性はもちろん大事です。
 それで、木酢液については、現状では化学農薬に頼らない土づくりということでも大事だと思いますし、有機農業志向に使われているわけで、特定農薬に入らなかった場合に、従来の方法や用途で使用が規制されないだろうかという不安を持っている実態もあるんですね。
 ですから、是非そういう点では使用法を規制されないように配慮をしていただきたいということを最後に言いまして、質問を終わります。