<第154国会 2002年5月30日 農林水産委員会 第11号>


平成十四年五月三十日(木曜日)
   午前十時開会
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○野菜生産出荷安定法の一部を改正する法律案(
 内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。野菜生産出荷安定法の一部改正について質問させていただきます。
 二月、三月と野菜が十二年ぶりという記録的な安値を付けまして、タマネギは四月には北海道で七千五百トン、個数にしますとL玉で三千七百五十万個ということなんですけれども、それから今月、佐賀で千五百トンと、タマネギの産地廃棄がされています。ほかの野菜についても、この間、産地廃棄が続いているわけですが、二〇〇〇年以降の産地廃棄の実態がどうなっているか、まず最初にお聞きいたします。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 二〇〇〇年以降の野菜の産地廃棄でございます。総量で四万九百トンということでございます。
 品目別に申し上げますと、キャベツで一万七千四百トン、これは二〇〇〇、平成に直しますと十二、十三、十四と取り組んでいるところでございます。大根で約三千五百トン、十二、十三、十四でございます。タマネギで一万二千三百トン、うち北海道が七千三百四十八トン、白菜で約六千四百トン、十二、十三、十四でございます。レタスで約一千三百トン、十三年だけでございます。
 以上、合計で四万九百トンという状況になっているところでございます。
○紙智子君 すごい量の廃棄がされているわけですけれども、畑でタマネギをつぶすその様子がマスコミでも報道されて、だれが見てももったいないなというふうに思うわけですけれども、やっぱり一番つらいのは、丹精込めて作った作物をつぶさなければならない生産者だと思うんです。
 それで、私は、北海道の北見に参りまして、生産者団体や農家の話を伺いました。廃棄のために農協の冷蔵庫に保管してあるタマネギ、一か所で四百万個で、もうコンテナに積み上げたら天井まで届くような膨大な量のタマネギを見せていただきました。北見地区の農協の資料では、昨年、二〇〇〇年産は、三月三十一日時点で、タマネギで二十キロ、二十キロの一袋ですよね、その単位で千六百五十三円していたものが、今年、一年度産が四月十五日現在で千二百四十五円まで下がっていると。
 この原因は、最初に大臣はこれは豊作だという話をされましたけれども、現地の人にどうしてなんですかというふうに聞きますと、返ってくる回答は、確かにそういう取れているというのあるかもしれないと、しかしやっぱり主な要因は輸入の影響だと、それからこのたびはBSEの影響もあるし、経済全体が落ち込んでいるということもあるということを挙げておられました。
 それで、現地では、生産者には一方で廃棄させると、しかしもう一方で輸入は野放しにしているということに対する怒りというのは大変強いものがあります。
 それで、大臣に、このタマネギの価格下落に対しての輸入の影響についてどのように認識されているか、改めてお聞きしたいと思います。
○国務大臣(武部勤君) タマネギの十三年産は、北海道は大変天候に恵まれまして、ホクレンの取扱量は、対平年比一〇八%、対前年比一一八%という結果でありました。十三年九月以降、タマネギの卸売価格が大きく下回る状況が続いているということは、暴落と言っても過言でない状況にあるということは、私も地元ですからよく承知しております。
 一方で、今御質問のありました輸入量でありますけれども、十三年十月から十四年三月まででは、対前年同月比で六一%、本年一月から三月では対前年同期比で五三%ということでございますので、輸入の影響ということに決め付けるわけにはいかないと。いろんな影響があったということは、これだけ暴落しているということからしてそれはそのとおりだと、こう認識しておりますが。
 先ほども小川委員にもお答えの中で申し上げましたけれども、いずれにしても、十月から三月に掛けて、北海道産が約九割のシェアなんですね。こういったことを考えれば、出荷調整等の産地の関係者の主体的な取組ということも私は最も重要ではないかと、こう思いまして、今後、現地でもいろいろ、二度とこういうことがないように、真剣にどうすべきかというようなことをみんなで検討するということでありますので、私どももそういったことをしっかり支援していきたいと、こう思うのでございます。
 この制度が発動いたしますと、廃棄したものも四割までは補てんするとか、いろいろな基金からどれだけ、面積当たり幾ら出るとか、そういうようなこともございますので、そういったことも含めてできるだけの対策を講じたいと、こう思っております。
○紙智子君 でき過ぎたから生産者の人に反省してもらわなきゃならないというのはおかしな話だと思うんですね。そして、言われましたけれども、確かに最近は輸入は減っていると思います。しかし、五年間のサイドで見てください。五年間の期間で見れば輸入は一・五倍ですよ。それから、中国から入ってきている量を見ますと、この五年間で十三倍になっているんです。
 ですから、先ほど、最初のときに日中協議の話も出たわけですけれども、この日中協議の際に、いろいろ情報は提供したと言いますけれども、輸入に対して、これを規制してほしいと、止めてほしいという話はされているんでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) 五年間からすればそうですが、先生のお話だけ聞きますと、中国からの輸入は五年前はどれだけの数字だったのか、なぜ急に中国から増えてきたのかというようなことも解明してみなきゃならないと思うんですね。一説には、アメリカからの代替輸入というようなことが大きい原因だと、こう言われているわけでございます。
 私は、たくさんできたからといって生産者の責任にするなということでございますが、そんなような考えは持っておりません。そういうことにならないように、加工だとか価格形成についてもいろいろと工夫をやっていかなきゃならないことだろうと、こう思うんですね。やっぱり市場経済の中で、こういう生産というものを余儀なくされているわけで、生産出荷というものを余儀なくされているわけでございますので、そういったことを申し上げたわけでございます。
 それから、今、セーフガードのお話をされましたか。
○紙智子君 中国との関係で、輸入を減らすように話をされているんですか。
○国務大臣(武部勤君) 中国との関係については、先ほどもお話ししておりますように、日中農産物貿易協議会で我が国から国内の窮状というものも伝えております。そういったことで、先ほども申し上げましたように、需給でありますとか品質でありますとか価格でありますとか、そういったことを的確に情報を伝えておりますので、中国側と日本側の間に問題意識を共有できるといいますか、共通の問題意識を醸成するというようなことが大分作り上げられつつあるんじゃないかと、こう思いまして、今後も作付けや出荷に十分留意するよう中国側に強く要請したい、このように考えている次第でございます。
○紙智子君 昨年のタマネギの輸入量は全体で二十六万八百九十六トンです。これは生産量にしますと、全国で二番目、三番目というのが兵庫県と佐賀県なんですけれども、この二つの県を合わせた生産量に匹敵するんですね。この十年間で七・五倍になっているわけです。佐賀県と兵庫県に匹敵する大産地が言わば国内に新たにできたということと同じことになるわけです。
 そのうち、中国からは昨年一年間で十万四千三百三トン、加えて冷凍のタマネギソテーという形で一万トンが入っているという報道がされています。BSEによる消費減退も影響しているわけですけれども、消費が減っているにもかかわらず輸入は入ってきている。これによって価格が暴落し、産地が壊滅的な打撃を受けているということははっきりしていると思うんですね。これで国内生産が耐えられるわけがないというふうに私は思うんです。
 北見市はセーフガードの発動を要請しています。現地の農協の組合長も、セーフガードというのは権利だ、勇気を持って発動を大臣にもお願いしたいというふうに言っています。対中のセーフガードも創設されたわけですし、そういう意味では発動を今するべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか、大臣。
○国務大臣(武部勤君) 私も現地の組合長からも話は聞いておりますけれども、先生にどういうふうにお話しされたか知りませんが、セーフガード発動の要件にはない、それは分かっている、しかしこういう価格の暴落について何とかしてくれということは言われております。しかし、セーフガードを農協の組合長さんが、この状況で発動できる要件にないということも組合長さんはよく知っているわけでございまして、先生のお話だけ聞くとあれっと、こういうふうに、しかも私は北見出身だから先生のおっしゃっていることも多少オーバーだなと、こういうふうに感ずるわけでありますけれども。
 それから、輸入について中国が急に増えているんですけれども、日本全体として米国の輸入が減って中国に代わっているということでございまして、これは中国から輸入が急激に増えているということはそのとおりでございます。しかし、去年と比較して中国についても、中国も減っているんですね、数字的には。
 いずれにしましても、セーフガードの問題について我々は話合いで決着したわけでございます。ですから、権利は確かに権利としてございます。しかし、話合いで、日中農産物貿易協議会というものを設置して三回会合を持って、その三品目以外にこのタマネギの話も議題に上げて話し合っているわけでございますので、そういうセーフガードを発動しなければならないというようなことにならぬように、未然にそういったことを防止するためにどういう対応策を考えていくかということを真剣に検討していかなければなりません。そういった意味で、やはり野菜についての構造政策ということを進めていかなければならないのではないかと、こう思います。
 これだけの話をすると、工業と農産物とは違うという先ほどの小川先生の議論になるんですけれども、私は、農薬漬けの野菜だとか輸入品だとか、国内にあってもそうです、これからやっぱり、スローフードという言葉に象徴されますように、減農薬農産物あるいは有機農産物、そういった方向に行くのが消費者のニーズにかなった行き方なんだろうと、こう思います。そういうことであれば、多少の価格が高いとか生産コストが高くても私は、ナウいアグリファッションというようなことも言われるんだそうでございます。横文字使うと小泉総理は大変御不満なようでありますが、そういうことも視野に入れた野菜政策の展開ということも必要なんじゃないかと、このように思っております。
○紙智子君 農水省の農林水産政策研究所がお出しになっている野菜需給安定に関する経済分析、この中間報告の概要が発表されています。それで、この概要によりますと、「諸外国におけるセーフガード政策に関する調査・分析」、この中で、諸外国の発動事例には、調査対象期間中に大幅な減少がある場合や基準年より減少している場合があっても輸入増加として評価等をしている事例があるということも明らかにしているんですね。ですから、短期間輸入が減っているということだけで発動できないと、そういう要件にはならないというふうに判断すべきじゃないというふうに思うんです。
 それで、その上に立って、農水省は、このセーフガードという手段を持っていながらそれは使わないと、輸入急増に野菜の構造改革で対応するというのが方針です。
 それで、確かに今、高齢化しているという中で機械化をし、省力化をするということについては、私もこれは否定するものではありません。しかし、タマネギの大産地では既にこの機械化を進めて、機械に投資をしたけれどもその結果としてどうにもならなくなっているという事態があるんですね。北見では、コストダウンのために、平均七ヘクタールの作付けの面積でタマネギ専用の機械・施設にこの間二千万以上を投入したと。
 それで、私も、改めて、聞いて本当に認識を新たにしたんですけれども、農家の人がどれだけのものに幾ら掛けてきたのかというのを全部書き出してくれたんですね。そうしたら、例えばタマネギだけですけれども、種苗用のハウス二百万、もっとするのもあると。それから、播種機、この間この播種機を栃木で見てきましたけれども。それから、かん水機三百万。移植機が三百二十万。ハーベスター三種、これは根を切ってそれから持ち上げて、そして取ってタッパーといって葉を切る、こういうのがセットでもって八百万と。
 機械化をし、大規模化したその構造改革の先取りとも言えるこの人たちが、結局輸入によって価格がダウンするということで付いていけないと。負債を抱えて離農に追い込まれかねない事態になっているんですね。もうこれ以上の競争は農村破壊だという声まで出ています。
   〔委員長退席、理事田中直紀君着席〕
 そもそも構造改革というのは、セーフガードの本発動が前提となった対策だったと思うんです。幾らコストを削減しても輸入規制しなければ更に価格が下がっていくし、それに追い付けないと、そういう経営が維持できない状況になるんじゃないでしょうか。この点、いかがですか。
○国務大臣(武部勤君) 現状、実際には大変な投資がある上に価格が暴落しているわけでありますから、大変な実態にあるということは私も十分承知している所存でございます。
 であればこそ、これからどうしていくかということ、ピンチをチャンスにするということをこれは我々も真剣に考えていかなきゃなりませんし、系統もそのこともしっかり考えて、営農指導を含めた生産者に対する指導ということも大事でありますし、生産者自らも、私はもう、私どもは、先生も恐らく現地を歩いていて感じたんじゃないかと思うんですよ、随分過剰投資でないのかと。隣の農家へ行っても同じもの全部ある。また隣に行っても全部ある。車はもう車庫に入らないで、倉庫の前に一台あるぞと。これは、こんなことを言うと、私が農水委員会で言ったということを先生の方から言われますと、何だ、みんなで応援して農林水産大臣までしてやったのにと、こう言われるかもしれませんが、しかしそういうことの実態をやはり顧みなきゃいけないと思うんですよ。
 それで、どうしたらいいかということについて農林水産省としても真剣に対応したいと、こう思っておりますし、現にこの間、私も三時間ぐらい彼らと焼き肉食べながら議論してまいりましたけれども、先ほども言いましたけれども、皆さん方お笑いになりましたが、十年以上前から、武部さんから、法人化を考えてみたらどうだ、タマネギだけで、タマネギ一本で生きていくということがいつまでできるかよくよく考えないと駄目だぞと。どこも同じようなことで張り合っていて、隣が機械を入れたからまた入れると、おれも入れると。そういうようなことじゃなくて、もっと組織的な法人経営などを考えて、新しいビジネスチャンスということも考えていくということも必要なんじゃないかと。必ずしも息子が後継いでくれるというわけじゃないだろう、だんだん高齢化していった場合にはどうなるんだと。私のことですから、もう言いたいことを率直に言うわけです。
 いみじくもそのときは、そんなこと言ったって、おれたちはこれでこうやってやっているんだということでしたけれども、この間は向こう側から、十年以上も前に武部さんからこういう話を聞いていたわなと、いいときにちゃんと段取りをしておかなかったということについては我々も反省しなきゃならぬという声も出ていますので、私は、このピンチに立っているときに、相当彼ら若い生産者は苦しいながらも……
○紙智子君 時間がなくなりますので。
○国務大臣(武部勤君) 済みません。
 立ち向かっていくと思いますよ。その立ち向かっていくところを支援するということが大事だと、このように思うんです。
○紙智子君 その機械化をして省力化をするとか、今回その三つのタイプですか、構造改革ということで進めている方向があるからこうやって生産者の方々は努力してコストを下げようということでやっているわけですから、だから根本のところは、やっぱり輸入やるに任せて入ってきて価格が下がる、これに対してのきちんとした対応をしなければならないんじゃないかということを私は再三申し上げているわけで、やっぱりセーフガードの発動など輸入規制しなければどうにもならないわけですから、ここはきちんとやっていただきたいということを再度申し上げまして、ちょっと時間ないので次の質問に移らしていただきたいと思います。
 それで、産地廃棄に追い込まれたタマネギの産地は非常に深刻だと先ほどもお話がありましたけれども、タマネギの場合、秋に収穫をして翌年の春に掛けて出荷されるために、生産者は十一月の段階で一回概算払を受けるんですね。それが実は今農家にとっては大変な不安になっているわけです。というのは、六月になると、いつもであれば更にそれに対して追加払いを六月の精算で受けるんですけれども、ところが今回の場合、この価格暴落でもって一戸当たりについて五百万から一千万逆に返さなきゃならないという事態になっているわけです。本当に農家は、これ四%程度の利子が付く借金になるということなんですけれども、話を聞いた農協の方も、農業者の組織だから何としても助けたいと思うと。
   〔理事田中直紀君退席、委員長着席〕
しかし、農協の経営責任が追及されるという中では、回収できる債権なのかどうなのかということでは判断しなければならないときが来る、今回の暴落では支え切れない、離農勧告しなければならない農家が出てくるというのが心配されるということを深刻に話をされていました。
 北見地区の農協組合長会として先日上京して、野菜の規制の問題や価格下落の資金対策含めて緊急経営の対策を、大臣にお会いしますと言っていましたから多分来られたと思うんですけれども、この要求に対してどのようにこたえるおつもりでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) 概算払に対して精算払いをするということについては、いみじくも今、先生がおっしゃられましたように、例年ですと精算払いで追加支払というのがあったということはそのとおりでございまして、これは言ってみれば十三年度のことになるわけですね。ですから、十四年度に入って十三年度の負担について国で何とかしてくれと、こう言われてもそういうことは困難だと。したがって、やはり第一義的には農協がどう対応するかだということであり、やはり地域の問題でもあるわけでありますので、北海道がどういうことをするかということが次に、第二義的といいますか、次の段階では大事なことだと思います。
 それに対して、国が道の相談を受けて、地元等の相談を受けてどういう財政的な、あるいは金融的な支援ができるかということで、私のところにも参りましたので、また私からも、道の農政部長が農林水産省に参りました際に、そういったことについてはできるだけきめ細かく相談に乗ってほしいと、また、そのことについて相談に応じましょうというようなことを申し上げているわけでございまして、直接国が十三年度の事業についてどうこうするということは困難であるということは御理解いただきたいと思います。
○紙智子君 国内でもやはり最大のタマネギの産地が危機に瀕しているということなんですけれども、産地廃棄の交付金が廃棄の経費にもならないという実態があります。交付金がキロ当たり三十円ということですね。それで、結局、三十円なんですけれども丸々来ないと。つまり、そのうちの十五円は、半分は再度基金に積まなきゃならないと。手取りは半分ですね。だから、道の生産者団体から、しようがないから十円プラスして出さなきゃならないと。それでも廃棄の経費もままならないという状況なんですね。実際に、廃棄物そのもの、廃棄する農産物そのものには何にも付かないという状況なんです。ですから、このことについてはやっぱり国として交付金の引上げですとか、併せて廃棄農産物に対しての一定の補償をするべきではないでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) 今、委員はもう既にこの産地廃棄に対しての対応について、その仕組みを御存じの上で御発言だと、こう思いますので、重複しないようにしたいと、このように思いますが、平均価格の約四割を交付し、そのうちの二分の一を国が助成するわけでありますけれども、この交付金の単価及び補助率については緊急需給調整が、そもそも生産者が、生産者団体が、出荷団体が価格回復を図るための自主的な取組であるわけであります。そういうようなことを考慮してこういう制度を作っているわけでございまして、そういう意味では、これに更に上積みするとかというようなことにはならないと。もしそういう窮状を救うには別の手だてということが必要なんだろうと、こう思うわけでありますが、それは先ほど言いましたように、地元の皆さん方がどういうことをお考えになるか、また北海道がどういうふうな対策を講じようとしているのか、その上で相談に乗るというのが私どもの考え方ではないかと。
 私の選挙区ですから、そんな冷たいことは言えないんですよ。だけど、やはり公平の原則ということから考えますと、そういうことがやっぱり筋だろうということはあえて申し上げなきゃならぬと思います。
○紙智子君 これくらいのことはしていただきたいものだなというふうに思っていたわけですけれども、引き続き何らかの措置ということで検討していただきたいというふうに思います。
 それから次に、野菜価格安定制度の問題ですけれども、価格安定制度が大規模産地にとって最低限の命綱になっていると思います。しかし、保証基準価格は市場の価格趨勢で決まるために、輸入が増えて価格下落が続く、こういう事態の中では保証基準価格も下がる一方なんですね。その中で、算定方法を見直してほしいという要望は生産者からも強く出されてきました。
 ところが、先日、衆議院の質疑で須賀田生産局長が回答になったのは、九年間そういう価格の下で生産者の経営が続けられていたという実態の下に平均的な価格として定めていて、その価格であれば経営が継続され一定の所得水準が確保されるのではないかという考え方に基づくというふうに、つまり過去九年間その価格で農業経営が続けてこられたんだからその保証基準価格の水準で大丈夫だという答弁をされたんですね。
 大臣、これ同じ認識でしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 私申し上げましたのは、一つは、例えば生産費を償うような方式というものが一般的な価格算定方式の中にあるわけでございます。生産費を償って再生産を確保し得る水準を出すという方式があるわけでございますけれども、野菜の場合には他の作物に比べますと品種が多岐にわたっておりますし、品種ごとの栽培方法の違いに起因する生産コストの差が非常に著しい。それから、経営によって、例えば高能率の機械を導入している人とそうでない人との差が大きくて、標準的な生産費を基に何か算定するということが技術的にも困難だということを申し上げました上で、毎年変動の大きい野菜については九年間というロングのタームを取りまして、その中で輸入品のシェアが高い品目に、例えばタマネギ、里芋、ネギというような輸入品のシェアが高い品目については輸入品を除外するとか、そういう工夫を凝らしながらやっていくことが現実的ではないですかということを申し上げたわけでございます。
○国務大臣(武部勤君) いろんな品目が多種、多岐にわたっているわけでありますし、品種ごとの栽培方法の違いということに起因する生産コストの差もかなりあるんだろうと思うんですね。機械の導入状況についても地域によって個人差があるんだろうと、地域差、個人差というものはあるんだろうと。そういうようなことからいたしますと、生産費、集出荷経費等を基礎として算定して再生産を確保し得る水準にすべきという、そういう考え方は考え方としてありますが、この野菜についてはなかなか難しい問題なんだろうと思いますね。技術的にも困難という生産局長の今の話は、私もそれはそのとおりだろうと、このように思います。
 したがって、長いタームの中で、少しでも長ければ長いほど、毎年、単年で見るといろんな動きがありますけれども、長くなれば大体一つの一定の水準というものを割り出すことは割合容易になるんじゃないかと。そういうようなことから、保証基準価格についてはそういう考え方で行っているわけでございまして、もし先生でこれよりもいい案があれば教えていただきたいと思うわけでありますが、なかなかこれは、公平の原則ということからいたしますと、公平公正の原則からいたしますと難しい問題だろうと思うんです。
 したがいまして、この野菜生産の対策ということも、何か一つの対策ですべて賄い得るといいますかカバーできるということではないんだろうと、こう思うんです。国だけですべてできるものじゃないと思いますし、それはやっぱりいろんな仕組みというものといろんな政策というもの、あるいは国や地方、あるいは生産者の方々と相談しながら組み合わせていくということで対処していくことなんだろうと思います。
 私は、今年のようなことが毎年毎年続くというのであればこれは大変な話でありますので、もう少し経過を見る必要があるんじゃないかというふうに思います。
○紙智子君 私が問題にしたかったのは、結局、その保証基準の決め方ですよね。それで、輸入によって下落するようになった価格を基準にして保証基準価格を決めるやり方が時代に合っていないんじゃないかということを言いたかったわけです。
 この制度は一九六六年に創設をされて、その当時というのは野菜を一〇〇%自給していたと思うんです。七〇年代の後半まで一〇〇%近い水準で維持をして、それでこの自給率が九〇%台に下がったのが九三年と。ほとんど自給しているのであれば、国内で不作だとか豊作だとかというこの凸凹があったとしても、その平均で経営が維持できるということは成り立つと思うんです。しかし、その後、輸入が急増して事態は一変していると。
 全国約百の卸売市場で調べた輸入野菜の占有率を見ると、例えばサヤエンドウでは六七%を輸入が占めているわけですし、ニンニクは六三%、カボチャは五〇%、ブロッコリーは五〇%です。それに伴って価格が下がっていて、サヤエンドウなんかも、これは五年間で見ても七百二十七円から四百三十二円、ニンニクも半分ぐらいに下がっているということになっているわけですから、ほぼ自給していた時期と同じような考えでもって同じ制度であっていいわけがないと。だから、そういうやっぱり変化に合った算定の仕方を考えるべきだということを申し上げたかったわけです。
 それで、ちょっと時間が押してきているので次に移るんですけれども、今回、北海道でタマネギの生産組合や農協の話を聞いたわけですけれども、カバー率七〇%まで拡大しようというふうに思って、この産地では最低基準額、それ以下については補てんをしない、いわゆる足切りですよね、これを七〇%まで引き上げているわけです。まさか今回みたいに暴落すると思っていなかったと、思わなかったからそれが裏目に出たという話をしていましたけれども、衆議院の参考人の質疑を聞いていましたが、長野県でもやっぱり同様に、県の財政が厳しくて資金造成のための予算が組めないということで、対象数量を確保するために最低基準価格を六〇%に引き上げる措置を取っているというお話でした。
 最低基準価格は、指定野菜は平均価格の五五%相当というふうにされているわけですが、特例も認められていると。交付対象拡大、それから資金造成の負担軽減のために最低基準額の引上げの特例を選択しているというのが実態じゃないかと思うんです。農水省は、特例の申込みの実態についてどのように把握しているでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 最低基準価格、原則として平均価格の五五%を水準とするということを原則としているわけでございますけれども、野菜価格の低落というのは野菜の種類とか出荷時期によってかなり態様が異なるということで、登録出荷団体の選択によりまして三種類、六〇、六五、七〇%の選択ができるということになっておりまして、私ども、平成十三年度で見ますと、交付予約数量の、これ二百六十七万トンでございますけれども、うち六割がこの特例を、百六十万トンでございますけれども、六割がこの特例を選択しているという状況になっているところでございます。
○紙智子君 なぜそういうふうになっているのか、六割と今おっしゃいましたけれども、大臣の受け止めはどうでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 基本的に、過去どの程度低落したかということを見ながら自分たちの負担というものを考えていくということで、こういう行動に出ておられるというふうに認識をしております。
○紙智子君 価格が暴落をした場合に、平均価格の七割を最低基準価格に設定すると、幾ら価格が下がってもそこまでは保証されないわけで、結局泣くのは生産者だと思うんですね。
 農水省は、今回、最低基準額の特例の下限を下げる措置を取るというわけですけれども、国庫負担率の引上げなど都道府県の負担、ここを軽減する対策を取るべきだと思うんです。そこをやらないと、名目上のカバー率は上がっても実際には薄く広くなるだけで、生産者は価格が下落しても十分補てんが受けられないということになるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) まず、先ほどの特例を選択した場合、実績どうなっているかといいますと、特例を選択してそれを下回ったのは全体の一割でございますので、有効に機能しているんではないかというふうに私どもは認識をしております。
 そして、今回、先生おっしゃったように、五〇%、五五%を更に下回るというケースも見られましたので、平均価格の五〇あるいは四五といった最低基準額の特例措置を設定できるように制度の拡充を図ったわけでございますけれども、この拡充部分についての地方公共団体の負担といったものについては、地方交付税措置についても併せて措置していただくということにしているところでございます。
○紙智子君 衆議院の審議でも、今回の価格安定制度の改正が、構造改革を目指す者への経営へのセーフティーネットの構築という性格を持つというふうに生産局長、この趣旨の答弁をされています。契約栽培を対象に加えたのもその一環だと思います。
 であるならば、大臣にお聞きしますけれども、構造改革で推奨している高付加価値タイプですね、規模拡大は困難だけれども、有機栽培や産地の特産品種など、特色ある野菜栽培に取り組む産地に対してもこの価格安定制度でカバーして当然だと思うんですが、しかしこの指定産地制度というのは継続ということですし、大産地しか対象にならないわけですね。それからまた、特定野菜の制度についても、品目については国が決めている、だから都道府県の判断で地域の特産品を対象とすることができないわけですけれども、これについては見直しが是非必要じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) これまでも、見直しというものを時代とともに、また消費者のニーズ、地域のニーズ、それに合わせてやってきたわけでありますので、私は、今お話がありましたような今後見直しの検討ということは、当然この需給及び価格の状況等踏まえまして、必要に応じ検討していく必要性を感じております。
○委員長(常田享詳君) 時間が来ておりますので、まとめてください。
○紙智子君 大臣が重要だというふうにおっしゃっている地産地消、これ私も非常に大事だというふうに思っていますけれども、この地産地消というのは大規模産地だけ育成すればいいということではないと思うんですね。地産地消は、生産者と消費者の距離が近いから農産物の移動も短くて済むし、輸送コストも安い、包装コストも軽減できる、環境に対する負荷も低いと。
 ですから、そういう取組もやはり価格安定制度という形で支援すべきだということで、全体を安定制度の中に含めてもらうという見直しを求めて、質問を終わらせていただきます。