<第154国会 2002年5月21日 農林水産委員会 第9号>


平成十四年五月二十一日(火曜日)
   午前十時開会
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○農業経営の改善に必要な資金の融通の円滑化のための農業近代化資金助成法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法案(内閣提出、衆議院送付)
○農林水産に関する調査 (牛海綿状脳症問題に関する件)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 私も、金融二法の質問に先立って、まず初めにBSEの問題について質問させていただきます。
 五月の十四日に四頭目のBSEが確認されました北海道の音別町に私参りまして、町長さんや農協の組合長さんの話を伺いました。このところ、ようやっと市場の価格も元に戻りつつあって落ち着いてきていただけに非常に残念だというお話でした。
 一番心配しているのはやはり発生農家のことだと。発生農家は非常にやはり大きなショックを受けています。世間では四頭目ということですけれども、発生農家にとっては初めて当事者となって、それで、そういう中でもやっぱり酪農を続けたいというふうにおっしゃっていると。しかし、発生農家への補償や支援に時間が掛かれば、猿払の農家のように離農に追い込まれるということにもなりかねないと。できるだけ空白期間を置かずに代わりの代替牛を入れて経営再開ができるように強い援助をしてほしいと、そういう要望が出されました。
 疑似患畜の認定とその殺処分ですか、こういう補償までに、これまで三回の例で見ても大体二か月から三か月掛かっているわけです。数か月経営できないと、将来に対する不安もあるわけですけれども、実際に生活についても困窮をすると。ただでさえ精神的なショックもあるわけで、それにマスコミなんかも報道されると、それから周りに対するいろいろなやっぱり気遣いもあるということで、その苦痛を考えますと、本当にお金で償えないといいますか、そういう計り知れないものがあるわけですが、できる限りやはり支払までの期間短縮をやって、そして同時に、概算払とか仮払とかいう形で早く経営が再開できるように国としても最善策をやる必要があるんじゃないかというふうに思うんですが、まずこの点について伺います。
○国務大臣(武部勤君) 誠に痛ましい出来事でございますし、生産者の方も精神的にショックを受けておりまして、精神的に少し落ち着きを取り戻していただいた段階で、疑似患畜について認定をしてBSE検査を行うという運びになるわけでございます。
 しかし、私ども、今、委員御指摘のように、一日も早く経営再開ができるようにということで、既に地域協議会において代替牛の導入の準備しております。これはもう予算措置は既にしておりますので、私は、今、委員御指摘のような三頭目までのようなこととは違って、一月以内に経営が再開できるようにと、五分の四の家伝法に基づく評価額の手当金の交付以外に、国と生産者の互助システム、これは大体その必要な額は全額出すわけですから、それに、経営再開維持資金は一頭につき十万ということもありますので、もう予算措置はしておりますし、今もう段取りに既に入っておりますので、一日も早く元気に経営再開ができるような最善の努力、準備をしたいと、このように思います。おおよそ一月以内ということをめどにやれるようにということを事務当局に申しております。道とも、地元ともそういったことで相談いたしております。
○紙智子君 近所の酪農家の方々にもお話を聞いたんですけれども、あそこは本当に頑張ってきたところだというお話と、それから、この辺の農家は、酪農家はみんなやっぱり家畜と一緒に生活をしているので、人ごとじゃないというふうにおっしゃっております。
 それで、やはり、とにかく原因の究明と感染経路の究明を急いでほしいというのが、回った中で出されてきた共通の声でした。そのためにも重要になるのが、やはり廃用牛の検査の問題があります。音別町では、もう本当にこれは正直な声だと思うんですけれども、九六年の牛に集中しているということでは、九六年の牛は国が買い上げてほしいというふうにもおっしゃっています。心配されるのは、このことでますます廃用牛を屠畜場に出さなくなってしまうんじゃないかと。廃用牛の流通円滑化事業で乳用牛については四万ということになっているわけですけれども、市場の相場が四万ということでもって、それ以上の値が付かないというか、頭打ちになっちゃうという状況になっているんですね。
 それで、生産者の方が、我々この牛飼いが忍びないのは、本当に屠畜場に出していったんBSEが出ると、子供のようにかわいがって育ててきた牛が全部持っていかれちゃうと。そして、もうそういう意味では酪農家は恐怖と背中合わせだという話をされていて、本当にそうだと思うんですね。それで、今やはり農家が牛を抱えられる限界のところにあると。一方では、やっぱり怖くてなかなか出せないということの中で、抱えて、えさを食べさせてという状況で来ていたわけですけれども、牛をやっぱり屠場に出して検査を受けられるようにすると、そこが大事なんですけれども、ここをやるためにもやっぱり国が廃用牛を発生前の価格で買い上げるというふうにできないものかということを、私はこれまでも言っていたわけですけれども、そこのところを検討できないのかということを再度お聞きしたいと思います。
○国務大臣(武部勤君) 一九九六年の三月、四月に四頭が集中しているということでございまして、全頭検査という一つのサーベイランスをやっておりますから、廃用牛が円滑に出荷できる、その体制さえきちっと整えば、順次、高齢の経産牛というものがどういう状況かというのは分かってくるわけですけれども、私はやはりサーベイランスの方法も、先ほど厚生省からもお話しありましたけれども、共済の獣医さんが見てもだれが見ても、これはサーベイランスとして適当な個体だと分かるように、原因がよく分からないで起立不能、起立困難というようなものはもうサーベイランスの対象にしましょうと。これは当然、家保でやるわけです。当然、共済金の支払の対象になることも言うまでもありません。
 同時に、そういったふうにサーベイランスを分かりやすく、幅を広げていくということと同時に、九六年三月、四月ということについて、私、早くやりたいんですね、この検査を。しかし、これは今、一生懸命酪農家は搾っているわけですし、これを強制するわけにはいきません。強制するわけにいきませんが、何とか協力していただけませんかということと、もう一つはやっぱり、何といいますか、やはりプライバシーの問題もあるんだろうと思うんです。
 そういうことも考慮をしながら、今どういう順番でこの検査を進めていくかと。私は、九六年三月、四月のはやっぱり優先して早くやるべきだと。それには、生産者の協力ももらわなくちゃいけない。協力してもらうためには、今までの廃用牛の買上げだけではなくて、やっぱり協力してもらうときには協力をお願いする対策、対応策というものが必要じゃないかということで事務当局に指示をしているところでありますし、また、これの進め方についても、今、専門家の意見もよく聞きなさいということでやっているわけでございまして、今、委員御指摘のことについては私どもも大変大事な問題意識として持っておりますので、今、早急に検討させて、進めていきたいと思っております。
○紙智子君 国として、やっぱり屠場に出すために四万円ということで、肉用は五万ということなんですけれども、それで促進を図ろうということだったわけですけれども、しかし、やっぱりなかなかそこのところが重いわけですよ、現実は。
 そして、実際に今度のようにまた発生すると、そのことによって受ける打撃ということがあるものですから、ですから私は、非常に酪農家の方はそういう意味では大変悩みながらやっている状況の中で、本当に促進をしていくということのためにも、やっぱりほかの抜け道に行かないようにするためにも、そこのところはもう一歩思い切って、せめて発生前の価格になるくらいまで補償する必要があるんじゃないかなというふうに思うんです。
 それで、感染ルートの解明に重要なのは、先ほど来話も出ていますけれども、やはりへい死牛の検査の問題も非常に大事だと思うんですね。現在、このへい死牛の全頭検査が義務付けられていないですよね、やらなきゃいけないということは言われているけれども。それが抜け道になっているということも報道されていて、御存じだと思うんですけれどもね。
 ですから、厚生労働省のBSEの専門家会議でも、二十四か月齢以上の死亡牛の全頭検査の早期実施が汚染度や感染ルートの解明にも欠かせないということで、とにかく急いでやる必要があるんだということで申入れされたというふうに思うんですけれども、私、去年以来、どうしてこの全頭検査、死亡牛のところの全頭検査ということがなかなかやれないのかなと、時間が掛かるのかなと、これもいろいろやり取り、午前中からありますけれども、再度そこのところをお聞きしたいと思います。
○国務大臣(武部勤君) 早くやりたいんです。ですが、離島でありますとか地理的状況でありますとか、死亡牛の発生頭数というのも地域によってかなり偏っていると思いますね。北海道辺りは相当、廃用牛だけ見ましても十五万頭以上、一九九六年で十五万頭以上、全国でありました。それで、北海道十万頭ぐらいあるんですね。
 そういうふうなことになりますと、屠体を冷蔵庫に入れるとか焼却する施設だとかもろもろ考えますと、やっぱり地域によってすぐ対応できないところもあると。それから、人の問題もあります。それから、どこにどう集めるかということもありますね。
 そういうことを考えますと、なかなか一遍にはいかないということは御理解いただきたいと思うんですが、しかし、私どもの今日の発言で現場は相当負担が掛かっていると思いますが、私どもとしては、十四年度中にすべての準備ができないかと、そして、十五年度中には実際に全頭検査、二十四か月齢以上、全頭検査できないかということを投げ掛けているわけでございます。
 是非、そういう一つの目標を明示しまして、これはもう大変だと思いますけれども、そういう方向でやりたいと思っております。
 それから、地域的に、今度のように、今、感染源の究明の話ありましたけれども、私は、一九九六年に、一、二頭、三頭、四頭まで三月、四月に集中しているから絶対その辺が危ないと的を絞りたくありません。予断を持って考えたくありませんが、やっぱりこの四頭目、どう対応していくかということで、例えば代用乳がどこの工場か、いつの時期か、ロットはどうだと、具体的に分かってきますと、絶対とは言えませんけれども、ある程度、この地域を先に検査する必要があるのではないかというような方向性も出てくるんじゃないかと、そんな気がしているわけです、これは素人考えですけれども。また、専門家に言わせればそんなものじゃないと言われるかもしれませんが。
 いずれにしましても、死亡牛の全頭検査についても、優先順位の問題でありますとかそういったことも考慮に入れながら、できるだけ早く始められるように努力したいと思っております。
○紙智子君 今、できるだけ早くというお話がありまして、先ほども、郡司先生ですか、やり取りの中でも、整えながらできるところからやるという話をされていたと思うんですけれども、非常にやはり急がれるというふうに思うんですね。やはり国民の信頼を一日も早く回復するということからも、これは本当に急いでやらなきゃいけないというふうに思います。
 それと、農水省がBSEの対策で酪農互助システム支援事業というのをやって、地域での影響、これに対しての、価格補てんも含めて発生地域に支援するということを対策として出されました。これは評価できるというふうに思いますし、私も本委員会で地域対策ということで求めてきたわけですけれども、いろんな影響の、何というんでしょうか、地域によっては、一つの地域もあるでしょうし、あるいは都道府県段階全体にかかわる影響もあるというふうに思うんですけれども、そういう意味では、発生地域の実情に合わせた、地域の裁量が生きるようにすべきだと思いますけれども、この点、いかがでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) 地域対策については、これもう予算措置もしておりますし、支援措置もいろいろ政策的な枠組みはできているわけでございますが、実際、今回の場合に、ぬれ子、子牛の取引価格の動向を見ますと、いずれも発生前の五月九日の実績を上回っておりまして、四頭目の発生による影響は特段出ていないと。それから、牛肉の卸売価格の動向も、ゴールデンウイーク明けの在庫手当ても終わりまして、五月第二週から弱含みで推移しておりますが、BSE四頭目の発生の影響も特段なく、安定していると。それから廃用牛も、受入れを行っている屠畜場で受入れ制限等を行ったところもこれまたございません。
 それで、道畜産公社の釧路事業所における屠畜状況でございますけれども、これも五月に入りまして、全体では八十頭ペースでございますが、十三日が八十八頭、十四日が八十六頭、十五日八十六頭、十六日七十八頭と。十七日は、何か十六日が家畜市場が開催される関係で配車手配ができないために三十八頭に減ったと言いますが、二十日になりますと七十三頭と戻っておりまして、今のところ大きな影響がありませんが、しかし、現地の皆さん方からすれば非常に不安が走っておるんだろうと、こう思いますので、北海道や地元ともよく連携を取って対応していきたいと思っております。
○紙智子君 私は、それに加えて、畜産だけじゃなくて野菜も含めて、ジャガイモやタマネギの価格も暴落していて、輸入の影響もあるんですけれども、確実にBSEの発生、三頭発生したそのときに価格が下がってなかなか元に戻らないということなんかもありまして、それ以外、畜産以外のものも、やはりそういう影響を受けたものを対象に入れるべきではないか、そういう対策を取る必要があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、これは、例えば地域が独自にそういうことをやるといった場合に国が支援するというようなことでやれないんでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) 野菜は野菜の対策がございますので、BSEの発生と直接絡めてどうこうするという性格のものではないとは思いますが、特に北海道の場合、私どもの地元北見ではタマネギがキロ一円だというような話があるぐらいでありますけれども、しかし、これも制度によりましてかなり補てんされるというようなことも現地の皆さん方はまだ知らないことなどもありますので、情報交換しっかりやりながら対応していきたいと思っております。
○紙智子君 地域の裁量という範囲の中にこれも入れていただきたいということを、改めて検討いただきたいということを再度お願いします。
 それから、音別町では、年間にすると百四十頭から百五十頭の初妊牛を販売しているんですけれども、酪農地域ですけれども、乳価が下がる中で酪農家の重要な収入源にこれもなっていまして、今回の発生でやはり初妊牛の価格が下がると。そうなりますと、やはり酪農家の経営が大きな打撃を受けるというふうに懸念をしているわけです。
 それで、これまでも本当に農水省の「重大な失政」ということで指摘もされながら、実際に生産者や業者の方が受けた損害が補償されていないということでは、ここに対してのやはり損害の補償も行うべきじゃないかというふうに思うんですが、いかがですか。
○国務大臣(武部勤君) 今のところ、価格は下がっておりません。ぬれ子・子牛価格、それから廃用牛の出荷、それから初妊牛も含めまして、特段の影響がないというのが私どもの報告を受けた実態でございまして、これは非常に有り難いな、冷静に対応をしていただいているんだなと、このように思うわけでございますが、いずれにいたしましても、地域の方々や北海道とよく連携を取ってやっていかなきゃならぬと、このように思っております。
○紙智子君 初妊牛は下がっているということを聞きましたものですから、私、このようにお話ししたわけですけれども、いずれにしても、この間やはり受けている被害というのは大きいわけで、そういう意味では、やはり受けていないということではなしに、そういった影響が出た場合にちゃんとした国としての責任ある対応をしてほしいということで、このことをあえて言わせていただきました。
 それで、次に移らせていただきますが、農業経営の改善に必要な資金の融通のための農業近代化資金助成法等の一部改正案について質問いたします。
 この法案で、農林漁業金融公庫法が改正をされて、農地等取得資金と農業構造改善事業推進資金が廃止をされ、そして経営体育成強化資金に一本化することになります。この経営体育成強化資金は、そもそも負債整理資金を規模拡大のための前向きの投資資金と抱き合わせで貸し出すというもので、今回廃止する二つの資金との関係で言いますと、趣旨も要件も違うというふうに思うんですね。経営体育成資金は基準が厳しくてなかなか借りられないという声も聞いています。この二つ廃止に当たって、現行の経営体育成資金の要件を変更するということは考えていないんでしょうか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 農林公庫資金の見直しでございます。
 今、先生御指摘のとおり、農地等取得資金、それから農業構造改善事業推進資金、この二つにつきましては、廃止をしまして経営体育成強化資金に吸収一体化するということにしておるところでございます。経営体育成資金の中に吸収をいたしますが、こういった農業種目を拡大するということでございますので、まず資金使途につきましては、土地利用型農業だけではなくて全農業種目に融資対象を拡大する、そういうことで、果樹の植栽でありますとか家畜の購入等に必要な資金というものがこの経営体育成強化資金のメニューとして入るわけでございます。
 それから、償還期間につきましても、果樹の場合は長期間を要するということで据置期間の特例がございますが、この点は経営体育成強化資金の中で引き継ぐということで、その特例が同様に設けられます。
 また、金利水準につきましても、従来の農業構造改善事業推進資金よりも低い水準になるといったようなことで、経営体育成強化資金に統合されることに伴う、今申し上げたような内容変更はあるわけでございます。
○紙智子君 この経営体育成強化資金は、借入れできる農業者の資格も厳しくて、融資の審査も、経営改善計画をまず作成して、そして融資機関や経営診断機関の二重の審査を受けなければならないわけですね。要件をそのまま適用すると、今まで借りられたのに必要な資金を借りられない人も出てくるということで、いろいろ心配も出ているわけですが。
 例えば、今まで農地取得資金で言えば、小規模な投資、規模を拡大するわけじゃないけれども、飛び地なんかをやっぱり使いづらいということで条件の良い農地に集約するために買い換えるとか、こういったこともありますし、急遽必要になってくる場合とか、様々なケースにこれが活用できたといいますか、要件もクリアしやすくて使い勝手が良かったという使い手の話があるんですね。借り手の話があるんです。こういう部分が今回の改正で失われることにならないのだろうかということではどうですか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 経営体育成強化資金でございますので、担い手の育成という意味でのもちろん計画なりそういうものはやるわけでございますが、それは当然の内容でございます。そういう運用面で厳しくなるということではなくて、そういうクリアを当然していただくということは必要かと思います。もちろん、負債資金等々絡みますとその経営診断等も必要になるわけでございますが、そういうものとセットでない場合は経営診断等は課さないということになりますので、その点では変わりはないと思います。
○紙智子君 それからもう一つ、一番困るというのが新規就農者なんですけれども、無利子の就農支援資金は農地取得には使えないわけですね。それで、農地取得資金は新規の就農者でも農地取得のために低利で借りられる唯一の公的な融資だったわけです。今回、経営体育成資金に一本化したら、新規就農者にまで同じ要件でやはり経営診断や融資審査の条件を付けると新規就農者は締め出されることになるんじゃないか。この点はどうですか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 従来、農地等の取得資金につきましては、新規就農者のうち認定就農者につきましては、都道府県知事の認定を受けた認定就農計画に従って農地等の取得を行う場合にあっては、これを貸付けの対象としておりました。
 今般、この農地等取得資金を吸収する形で経営体育成強化資金を拡充することにしているわけでございますが、もちろんこの資金を受けるには経営改善資金計画を作成する必要があるわけでございますけれども、認定就農者が農地等の取得を行う場合については、実際上、これまでどおり認定就農計画をもって対応できるようにしたいというふうに考えております。
 ただ、先ほども言いましたとおり、融資機関が経営診断を行うということはあるわけですが、これは負債整理を伴わないで前向きな投資のみを行う場合はこれまでも経営診断は不要としておりましたので、新規就農者の場合は通常前向きのものだけでございますので経営診断は不要と、こういうことでございます。
 いずれにいたしましても、この農地等取得資金の廃止に伴いまして、新規就農者の農地取得が従来に比べて困難となることのないように配慮はしてまいりたいと思っております。
○紙智子君 先ほどちょっとお答えいただいたのかと思うんですけれども、農地取得資金で、認定就農者については、経営開始時の経済的な負担軽減のために据置期間を三年から五年に延長するという特例措置が取られていた。これは今度のあれで引き継ぐというふうにさっきおっしゃったんでしょうか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 認定就農者の据置期間の特例がございますが、これは新しい資金制度でも引き継ぐことにしております。
○紙智子君 分かりました。
 では、もう一つ心配な問題ですけれども、法改正後の資金の窓口が一本化されるということですけれども、今、窓口になる農協の実態というのはやはり非常に厳しい状態で、貸し渋りせざるを得ないような状況もある。
 実は、私、五月の連休のときに北海道の農協を訪問していろいろ話を聞いたんですけれども、口々に出てきたのは、農業者の組織だからやっぱり頑張っている組合員を何とかして助けたい、しかし国際取引をやる金融機関と同じ検査マニュアルを使って指導されて、不良債権の処理とか経営責任を追及されるということになると、助けたいけれどもこれは判断しなきゃならないという話が出されました。負債整理のために経営体育成強化資金を申請しても門前払いされるということも話としては出ているわけですけれども、多くの農家に農協が離農勧告するような事態になっているわけですね。
 窓口一本化になりますと、単に資金の整理ということにとどまらずに、融資対象が経営の拡大が可能な一部の担い手だけに限られて、それ以外の多くの農業者が借りたくても借りられないということになるんじゃないでしょうか。この点、いかがでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) そういう話は我々もよく地元では聞くんですが、しかし今大きな転換期だと思うんです。農協自体もそうですし、組合員一人一人もそうだろうと、こう思います。我々自身も、改革か解体か、それを迫られるような現状認識の下に今回の法案を提出しているわけでございます。
 特に、農林水産省の系統金融検査マニュアルは、我が国系統金融システムの安定化を図り、預金者を保護する上で、他の金融機関と同様の基準により検査を実施することがやはり重要だと、このように考えまして、金融庁が作成した金融検査マニュアルとほぼ同一の内容のものとしているところでございます。
 仮に、農協系統についてのみ独自のマニュアル、例えば銀行等、他業態と比べて緩やかな基準を作成、適用するということになれば、かえって農協系統の経営の健全性について疑義が生ずるのではないか、信頼性にかかわってくるのではないか、農協系統信用事業全体の信用にも悪影響を及ぼすことも懸念されるわけでありまして、適当ではないと、こう考えております。
 しかし、その適用に当たりまして、農協等の各系統金融機関の規模や特性を踏まえまして、機械的、画一的な運用に陥らないよう配意をするということも大変必要でありますので、そういったことも明記しているわけでございまして、実態に即した検査を実施するということにしているわけでございます。
○紙智子君 今お話しされた点は先ほども議論になったことではありますけれども、やはり負債額が本当に大きくなってきている、そういう中で本当に実態は深刻な実態にあるというふうに思うんです。
 先日、私は水産四法の問題のときにもこの問題についてやはり検討を求めたわけですけれども、農水省としても、やっぱり実態をよく調べていただいて、そして金融機関と同じ基準で、中身ですね、中身が同じ基準で一般の企業と同じような、そういうことではなくて、やはり本当に実情に合って、一戸一戸の構成している組合員といいますか、農家一戸一戸がやはり元気になってこそ全体が安定していくわけですから、そこに立って検討をするべきだというふうに思いますし、その立場で、今、画一的でなくというふうにおっしゃいましたけれども、その道を作っていただきたいというふうに申し上げたいと思います。
 それから次に、農業法人の投資の円滑化に関する特別措置法案について質問いたします。
 農業法人の経営が米や野菜など農産物価格の下落によって大変困難を窮めていると、これは多くの方が認めるところですけれども、経営体質強化のために対策が必要だと、これは言うまでもないと思います。しかし、今回の法案が本当にその発展に寄与するものなのかどうかということについては、これは懸念せざるを得ないというふうに思うんですね。
 今回の法案は、農水大臣に事業計画の承認を得て農協系統と地方自治体が議決権の過半を有する投資育成株式会社、これは農業生産法人に農地法の出資規制を受けずに出資することができるというふうにしているわけですが、農水省は、当面、JAグループが中心となってこの投資育成株式会社を作って農業法人への出資を行うというふうに説明しているわけですけれども、農協や地方自治体ならば現行法でも、今のこの現行法でも農業生産法人への出資というのは出資制限に縛られることなくできるというふうに思うんですね。ですから、なぜ現行法でもできるのにわざわざこの新たな投資育成株式会社の枠組みが必要になるのかということについてお聞きします。
○国務大臣(武部勤君) 委員御指摘のとおり、現行制度においても農協や地方自治体が農業法人に対して出資を行うことは可能でありますが、日本農業法人協会の実態調査によれば、農協、地方自治体の農業法人に対する出資比率は二%程度なんですね。農協、農協連合会が構成員となっている農業生産法人数も三十三法人、これは平成十二年一月現在でありますが、このように極めて低い状況にあるわけです。
 一方で、農業法人の現在の自己資本比率の水準は、認定農業者となっている農業法人の場合でも約一六%でありまして、中小企業の四割程度に比べまして極めて低い状況にあるというようなことから、農業法人の約三分の二が増資の必要性を感じているわけでありまして、資本増強のための本格的な制度の創設についての要望がかねてからございました。
 このため、農業法人に対する投資を本格的に推進するために、JAグループが中心になりまして投資育成会社を設立するとともに、農林公庫等が有する農業法人についてのノウハウというものも活用しまして、より効果的かつ積極的な農業法人への出資ができるように考慮をして今回の法案提出に相なったわけでございます。
○紙智子君 この法案では、投資育成株式会社の株式の過半を農協や地方自治体が持てばあとは制限がなく一般企業にも門戸が開放となると、外資であってもこれは可能だということで、最大株主がその法人とは何の関係もない企業ということもあり得るわけですね。
 結局、農地法に縛られないで農業生産法人への一般企業の出資を拡大できるようにするということが目的になっているんじゃないでしょうか。違いますか。
○国務大臣(武部勤君) そういうことを積極的に、私は前向きに考えていいのではないかと思いますが、そういうことが目的になっているとは考えておりません、全く。
 何度も申し上げますけれども、今非常に大きな転換期にあるわけでありまして、私は農業の分野においても例外ではないと、このように思っておりまして、私もいろんな方々の話を聞きましても、株式会社にしましても三月から四月の間に二十四法人設立されたり、非常に大きな転換期と言うべき兆候もあるわけでございまして、今、委員御指摘のような、他から農業に参入させる、そういうためのものではありませんで、どんどん一千四百兆円の個人金融資産を農村に、農業の分野に、あるいは農業に関するビジネスの分野に私は導入することは結構なことではないかと思いますが、そういうような考えを持っておりません。
 力のある、いや、そういうような考えというのは、今、委員が指摘したような、何かこれは民間に農業の分野を開く、門戸を開く、そういうような下心があるんではないのかというようなふうに受け止めましたけれども、全くそうではありません。本当に意欲ある担い手を育てていこうと、意欲と能力のある経営体が躍進できる、そういう農業経営体というものを育てていかなければと、そういう思いでありますことを御理解いただきたいと思います。
○紙智子君 今、そういうのはないというお話をされたんですけれども、これまでの経過の中で、農地法の議論がされたときに、企業による農業生産法人への出資は、その法人と継続的な取引関係にある法人に限って、一法人の出資は議決権の十分の一と、全体で四分の一に制限をしていますよね。これは、法人として唯一農地取得が許される農業生産法人が農外企業によって支配されることを防ぐということがあったと思うんです。
 今回の法案によって投資育成株式会社という形を取れば、結局それが抜け道になって農地法の制限なしでどんな企業でも出資が可能になるわけで、農地法を空洞化するものになるんじゃないかと。このような形で適用除外を拡大していけば、農地法は意味を成さなくなってしまうんじゃないかというふうに思うんです。これ以上やはり緩和すべきではないというふうに思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 投資育成会社はどんな形でもできるわけでございますが、今回、農業生産法人への投資を認めております投資育成会社というのは農協系統が過半を占めるということの要件を課しておりまして、先生が御心配するような関係にはならないというふうに法制度上担保しているところでございます。
○紙智子君 これまでの議論の過程でも、例えば平成十二年のときの農地法改正の審議のときにも、歯止めがあるから大丈夫だということの繰り返しをされてきたわけで、今回のものというのはそれをやっぱり更に、何というんでしょうか、規制していた歯止めを外していくことになるんじゃないかというふうに思うんですね。
 それで、今回の法案は、企業参入を拡大することで農業法人の資本力を強化しようという中身があるわけですが、そういう方法が法人経営を不安定にすることにならないかという懸念ももう一つ持つんです。
 それで、投資育成株式会社に出資した企業が経営不振などを理由にして例えば出資金を引き揚げるというようなことが出てきた場合、農業経営に対する影響というのが出てくるわけで、これをどうやって回避するのか、回避できるのかということも思うわけですけれども、この点、どうですか。
○委員長(常田享詳君) 時間が来ていますので、簡潔にやってください。
○政府参考人(川村秀三郎君) この円滑化法案は、地域農業の担い手となります農業法人の健全な発展を支援するということが目的でございます。そのため、この投資事業を営もうとする投資育成会社は、適正な事業運営を確保するために投資事業に関する事業計画を作成しまして、農林水産大臣の承認を要するということにしております。
 この事業計画の中には、出資持分の保有期間、それから持分の処分方法も記載するということになっておりまして、この投資会社が一方的に出資を引き揚げたり、法人経営に深刻な影響が出ることのないように事業計画の的確な審査を行うということにしております。
 基本的に、その出資に際しまして、投資育成会社と農業法人が契約を締結しますけれども、自己資本比率が一定割合以上となるとか、あるいは投資から十年程度を経過した場合に、原則としてその地域内の他の農業者あるいは他の法人の構成員に譲渡するということを了解していくという形での運営になろうかと思っております。
○委員長(常田享詳君) 締めくくってください。
○紙智子君 時間がなくなりましたので、あと簡潔に言いますけれども、実際に企業が農業に参入しているという例が幾つかありますよね。そういう中でも、やっぱり必ずしもうまくいっていなくて、実際に北海道の千歳にできた、おさつフロンティアファームというところがあって、非常に、元々は電気機器のメーカーですけれども、実験的な取組で二十億円を積んで、そして大々的にガラスの温室を造ってトマトの、高糖質の生産をするということで、七億ですか、を目指してやったわけだけれども、最初は非常に注目されたわけですけれども、これがうまくいかなかったと。
 そうした場合に、例えばこの、これはこの後引き継ぐところが出てきたから良かったんですけれども、しかし、そういう事態が必ずしもやっぱりうまくいかないといったときに、今経営の基盤を体質強化するといったときに、本当に企業の参入ということでもってそれを拡大するということだけに任せていいのかと。もっとやっぱり根本的には、大きくても小さくてもやはり価格が下がってきているということがあるわけで、そういった根本的なところにきちんと的を定めて対策が必要ではないかということを思うものですからこういう質問をさせていただいたわけですけれども、引き続きこれは必要な議論もさせていただきたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。