<第154国会 2002年4月18日 農林水産委員会 第7号>


平成十四年四月十八日(木曜日)
   
午前九時三十分開会
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
○水産業協同組合法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
○漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子です。前回に続きまして、法案について質問させていただきます。
 漁業災害補償法の問題で最初に質問いたします。
 漁業共済事業の改正についてですが、特殊法人等整理合理化計画の中で、経費の節減、共済掛金の引き上げ等、収支の抜本的改善を講じるとあります。今回の改正は、共済に加入するのを促進するということをねらったものだと思いますが、同時に、特殊法人等改革推進本部が言っている方向、特に共済掛金の引上げについては懸念するんですね。
 浜で、どうして共済に入らないのかというふうに聞きますと、返ってくる答えは、掛金が高いからだ、ただでさえやっぱり魚価が大変な状態で経営が苦しい中で、なかなか余裕がないという話が出てきます。今回の改正によって掛金の引上げにならないようにするべきではないかと思うんです。やはり収支の改善ということで言うならば、海の環境を守って、そして事故率を引き下げると。それから、収穫共済方式を取っている漁獲共済や特定養殖共済、例えばサケとかワカメですね、こういったものが輸入によって低落している。その魚価をいかに安定させて支払の共済金を減らすかというところが大事になると思うんです。こういう合理化計画が機械的に持ち込まれないように、農水省の対応が重要だというふうに思うんですが、これは後で大臣にも答えていただきたいと思います。
○政府参考人(木下寛之君) 御指摘のとおり、漁業共済組合連合会でございますけれども、特殊法人等整理合理化計画におきまして、事業に講ずべき措置といたしまして、「経費の節減、共済掛金の引き上げ等、収支の抜本的改善策を講じる。」旨の指摘をいただいております。
 ただ、私ども、現在でも漁業者の掛金負担感は強く、単純な共済掛金の引上げのみによる財務改善というのはかえって漁業者の共済離れを招く、共済事業の安定の阻害となるというふうに考えているところでございます。
 したがいまして、今回の制度改正では、掛金水準を抑えた新たなてん補方式の導入、あるいは養殖共済におきます病害不てん補特約の創設など、実際に漁業者が支払う掛金が現行よりも増えないようないろいろなメニューの充実を図ったところでございます。これによりまして、新規加入の拡大が見込まれ母集団が拡大をするというような点で、抜本的な財務改善が図られるというふうに考えております。
 もとより、このような漁業災害補償制度における対応のほかに、基本的には我が国の漁業経営の経営の体質を強化をするということが重要だろうというふうに思っておりまして、そのための各般の施策につきましては今後とも拡充強化をしていきたいというふうに考えております。
○国務大臣(武部勤君) 今、長官が答えたとおりでございますけれども、やはり、これは漁業者自らも、その事があったとき、不漁でありますとか災害でありますとかそういったことに備える心という、心掛けは大事だと、かように思います。有明海のノリ不作のときの諸般の対策を考えましたときにも、やはり共済というのは大事だなという、そういう声が生産者の間からも大変広がってまいりました。したがいまして、今回の制度改正においては、長官が申し上げましたような様々なメニューの充実を図ることによって、新規加入の拡大が見込まれ、母集団が拡大していけるような、そういう共済設計の安定を目指して農林水産省としても努力していきたいと、このように考えております。
○紙智子君 やはり実態は、共済は大事だと思っていてもやっぱり掛けられないという実態があるわけですから、私が申し上げたことは、だからこそ機械的に合理化計画というのをやらない、機械的な対応をしないということでやっていただく必要があるんじゃないかということを申し上げたんですね。
 それで、次に移らせていただくんですが、先ほども出ましたが、トドの問題です。
 北海道の日本海の沿岸を中心に、トド被害で悩まされていると。実は、これは私、去年もおととしも漁民の皆さんの声を聞いて政府交渉に参りましたけれども、これ、もし漁獲共済に入っていればこの共済金の対象になると。ところが、対象となっている地域でほとんど、加入がゼロなんですね。なぜなのかというと、掛金が高いというのもあるんですが、それだけじゃないと。
 つまり、この漁獲共済というのは、いいときもあれば悪いときもあると、そういう漁獲高の状況のときに発動されるわけですけれども、ところが、毎年毎年恒常的に被害があるということの中で、基準漁獲高がいつも低レベルになっていて、それで次の年に被害があっても事実上これが発動されないということになってしまうと。仮に加入して掛金を払ったとしても、この共済金の支払を受けられないという矛盾が生じるわけです。
 だから、毎年必ず被害に見舞われるようなこういうトドのような場合に、漁獲共済という制度は発動しないという問題があるんじゃないでしょうか。いかがですか。
○政府参考人(木下寛之君) 委員御指摘のとおり、私ども、トドの被害の共済対策として漁業共済を行っております。漁具共済は定置網の損害は補てんの対象になっておるわけでございますけれども、トド被害を原因といたします漁獲金額減少に対しまして、漁獲共済による補てんが可能というふうになっているわけでございます。
 元々、委員御指摘のとおり、漁具被害あるいはトドの被害を防止するという観点から、漁業における共済だけではなかなか対応難しいというのは御指摘のとおりだろうというふうに思っております。
 そういう観点から、私どもは、一つは定置網に対する強化網の導入、あるいはそもそもトドの駆除に対する助成、それから刺し網の強化技術の開発の調査研究。刺し網という漁業の実態からしまして、定置網ほどその網の調査研究、困難な点がございますけれども、このような調査研究も実施をしているところでございまして、各般の施策によりましてトドの漁業被害の防止に努めてきているという点でございます。
 また、一方で、被害が発生するということも当然あるわけでございますので、共済のほかに、公庫によります施設資金なり近代化資金の融通、あるいは沿岸漁業経営安定資金を融通しているというところでございます。
○紙智子君 私は、共済制度そのものも制度上問題があるんじゃないかというふうに聞いたんですけれども、そこはお認めになりますか。
○政府参考人(木下寛之君) 漁獲共済をする際には、過去の漁業の実態をベースにいたしましていろいろな設計をせざるを得ないという面は、なかなか共済の設計上やむを得ない面があるというふうに考えております。
○紙智子君 それであれば、やはり何か新しい被害補てんの対策が必要じゃないかというふうに思うんです。一定の例えば被害部分については毎年共済する仕組みを検討するとか、私たち日本共産党の立場は、自然災害についてはやはり公的な補償は必要だという立場でこれまでも取り組んできたわけですけれども、例年繰り返されて漁獲共済になじまないトド被害のような場合には、救済できる新しい仕組みを検討するべきではないかということを申し上げたいと思うんです。いかがでしょうか、もう一度。
○政府参考人(木下寛之君) 私ども、そういうものが共済になじむかどうかという点については問題意識を持っているわけでございます。基本的には、大変難しい課題でありますけれども、先ほど来申し上げておりますように、できるだけ被害が生じないよう、そのための例えばいろいろな調査研究を進めていくというのが基本的な方向でございますし、そもそもトドにつきまして、被害が出る前の駆除につきまして助成をしていくということが基本的な点だろうというふうに認識をいたしております。
○紙智子君 防止策ももちろん大事だと思うんです、被害が起きないようにすると。しかし、実際起こっていることの救済策ですね。それで、いろいろ研究がされているという話も私たち聞きました。定置網の、先ほども話にありましたけれども、強化網の助成ということもされていますし、ただ、問題は刺し網ですよね。この刺し網についても、今いろいろ試験中で、やっているんだけれども、実用化というところまではまだちょっとあるということも聞いています。
 それで、仮にこれ実用化できる、刺し網が改良された場合には、それに助成されるでしょうか、していただけるんでしょうか。
○政府参考人(木下寛之君) 現在、委員御指摘のとおり、刺し網について研究をしているところでございますけれども、私ども、このような漁具につきましての助成、どういうものが可能か、なかなか今直ちにお答えするのは非常に難しゅうございますけれども、トドの被害防止という観点から今後どういうものが可能なのかということにつきましては検討していきたいというふうに考えております。
○紙智子君 助成して、できたら助成するというふうに言っていただきたいと思っているんですけれども。
○国務大臣(武部勤君) いろんな地域に地域独特の問題というのはあると思うんですね。そういった問題に対する対策、対応というのは、第一義的には地元の都道府県になるんだろうと、こう思います。今の問題については、北海道がどういうような考え方で対応を考えているかということが非常に大事だと思います。そういった、地元の北海道がどう対応するかということについて農林水産省に相談があれば、我々は前向きに対応する必要があると、このように考えております。
○紙智子君 そういう、地元から是非ということがあれば前向きにということだというふうに答えられ……
○国務大臣(武部勤君) 北海道がやっぱり第一義的に、どういう対策、対応をするかということが第一義的に大事だと思います。それに対して、北海道の方から国にも協力要請があれば検討をするということでございます。
○紙智子君 それでは、救済策に戻りますけれども、あの地域というのは、大臣御承知のとおり、本当に漁民がいてこそ地域が初めて成り立っているというような地域でもあります。それで、先ほども、金額、どれだけの被害かということがありました。年に六、七億円と、それから間接被害も含めれば十億円を超える大変な額の被害が毎年続いているということです。ですから、その状態が続けばやっぱり漁業をやっていけなくなっちゃうんですね。やる人いなくなってしまうと。トド被害に苦しむやはり漁業者への直接的な支援の手を考えることが必要だし、今、漁業者自身もいろいろ工夫して何とか、駆除といいますか、脅かして散らすだとかいろんなこと含めて、パトロールしようとかということだとか考えて、いろいろ今努力しているんですけれども、そういう経費に対しても直接的な何か助成が考えられないでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) これらのことも、やっぱり第一義的に北海道が何をどのように考えるかということだろうと思います。いろんな災害の場合にも、あるいは私どもの地域では流氷流入でサロマ湖が大変になったことなどもあります。いろいろその地域において独特の問題、独特といいましょうか、地域が背負っている宿命的な問題というものがそれぞれの地域にあるんだろうと思います。それについてはやはり地方自治体がどうするかということが第一だと思いますね。そして、地方自治体がやるということについては、これは、私どもBSEで対応したことの一つは、特別交付税による地域の対策に対しての財源的な支援措置ということを総務省に要請したこともございます。
 そういう意味で、この問題については、私、長官ともだれとも相談しないで申し上げているわけでありますが、やはり北海道が何をするかということによると思いますね。
○紙智子君 本当に切実な状況になっているということを踏まえて積極的な対応をしていただきたいということを述べまして、次に移らせていただきます。
 それで、改正案の中で、漁獲共済や特定養殖で、加入契約に当たって、二分の一以上の加入要件及び最低契約割合以上を撤廃するというふうにしています。それで、加入しやすくなった面は確かにこれであると思います。しかし、問題は、二分の一以下の人数で加入した場合や最低契約割合以下の割合で入った場合には、結局、従来どおりその人の共済掛金の補助がないですね。これはなぜ付けていないんでしょうか。
○政府参考人(木下寛之君) 私どもは、契約割合四割とか、そういうようなものを確保するという観点から国庫助成をしているわけでございます。今回、委員御指摘のとおり、できるだけいろいろなメニューを拡大をして漁業者の皆さん方の選択の範囲を広げようという観点から、先ほど御指摘のような構成人数なり構成者の漁船規模を問わないような一括加入含めて、加入要件の緩和をしたところでございます。
○紙智子君 おかしいと思うんですけれども、その契約条件を加入しやすくするために撤廃しているんですね。撤廃しておきながら、補助要件は依然として変えていないと。そういうことになりますと、本当に加入者を増やすことになるのかな、できるのかなというふうに思うんですね。
 一人でも入れるならということで、入った人が掛金を掛けるけれども、しかしそれには補助がないということが分かったら、やっぱり二の足を踏むんじゃないでしょうか。低い契約割合で加入した人は国庫補助が出ないと。ほかの人は補助が受けられると。例えば、契約割合四割で入った人が六〇%以上の補助が出て、それで二割で入った人がそうでないとすると、これは個人の掛金の金額は低い割合で入った人の方が多くなって、かつ補償も低いというような場合も出てくると思うんです。そういう問題が起きてくるんじゃないでしょうか。
○政府参考人(木下寛之君) 私ども、共済の加入あるいは共済加入に対します国庫助成でございますけれども、基本的には先ほど来言っていますような一定の契約成立要件、これは基本的には母集団を確保し、ひいては母集団に加入をいたします契約者の負担が軽くなると、そういうような点を奨励、促進するために高率の助成をしているわけでございます。
 ただ、議員御指摘のとおり、このような要件のみではなかなか地域の実態に即さないという点がございます。そのような皆さん方の点も踏まえまして、今回いろいろな地域の皆さん方、こういう条件であればこうですよというようなメニューの拡大をする中で、できるだけいろいろな皆さん方のニーズにこたえた保険設計、共済設計にしているところでございます。
○紙智子君 結局、そういう国庫補助のところについてはどんなことがあっても増やさないというのが先にあるというのが、どうしてもこういう立場があるということが出ていると思うんですね。
 それで、これはやっぱり国の災害補償に対する姿勢の一貫した表れだというふうに思うんです。改めて、私は、この国庫補助の拡充についてちゃんとやるべきだと要求したいと思いますが、もう一度どうでしょうか。
○政府参考人(木下寛之君) 私ども、厳しい財政事情の中でできるだけ効果的に配分し、適切に助成をしたいというふうに考えております。したがいまして、私ども、基本的に共済の加入要件、加入者の範囲を促進するという観点から設けられております現行の助成方式については、なかなかその要件を緩和するのは困難だというふうに考えております。
○紙智子君 本来は、やはり自然災害に対しては国の補助拡大というのがあるべきだというふうに思います。そうでなければ、負担のできる人だけ保険方式で救済されると。だけど、本当に深刻で大変な場合にできないという状況になりますし、もしこれが今すぐ実現できないとしても、せめて国庫補助の充実は当然だというように思うんですね。
 財政状況がいろいろあるということも言われるかもしれないですけれども、先日も指摘させていただきましたけれども、水産の関係の予算全体の中でも、結局こういう価格の問題ですとかそういう補償にかかわるところというのはごくごく、一%にも満たないわずかなものでしかないわけです。
 ほかの国はどうだろうということで、EUですとかアメリカですとか含めて、水産の予算の割合を見てみましたけれども、結局日本のように予算全体の中で、水産予算だけでもう七割が公共事業で、そういう価格とか所得にかかわるところが本当に少ない、こういうところというのはないんですよね。ほかのところはそんなにたくさん公共事業に使っていないということを見ても、そのことも含めた検討をするべきではないかということを申し上げたいというふうに思います。
 それで、ちょっと時間の関係もありますので、そのことを述べた上で、次に、漁業再建整備特別措置法案の問題について質問さしていただきます。
 それで、資源回復計画のための基金造成ということなんですが、漁業者が負担する分について国庫資金が融通されると。これ、重要な事業だというふうに思います。
 それで、その基金についてなんですが、漁業者負担があればこれは全国に広く普及するというふうにできないと思うんですね。やっぱり借りたものは返さなきゃならないということですから、やっぱり漁業者負担を軽くして基金設置が進むようにどんな対策を考えているんでしょうか。
○政府参考人(木下寛之君) 水産資源の管理による資源回復の問題でございますけれども、私どもは、漁業を持続的に成り立たせるための前提でございます。その効果は漁業者にも還元されるというふうに考えているところでございます。したがいまして、本来でございますと、漁業者自らが取り組むべき課題というふうに考えております。これまでも個別の漁協単位でこうした取組に自ら努力してこられるという事例が多数あるわけでございます。
 今回の資源回復計画でございますけれども、一漁協の範囲を超え、あるいは漁業種類の範囲を超えて、一つの海域で、資源につきまして、それぞれ工夫をしながら資源回復を図ろうというような新たな試みでございます。関係する漁業者も非常に多うございますし、団体も多いということで、私ども国あるいは県が三分の一ずつ負担をし、漁業者の皆さん方にも三分の一の負担をお願いをしているという段階でございます。
 もとより、この三分の一の負担でございますけれども、先ほど申し上げましたように、資源回復計画が生きますと、基本的にはその効果は利用者に還元されるというふうに考えておりますけれども、そういう意味で、資源回復後の水揚げを償還財源といたしまして、公庫からの貸付けの道も開いたというところでございます。
○紙智子君 やっぱり資源を回復させていこうと、確保しようということにはお金が掛かると思うんですね。例えば、香川県のサワラ流し網なんかも、結局子供がどんどん網に掛かっちゃって、それで一時大変な深刻な状況になったということで、それで網目を拡大しようということで、網目拡大するだけで一億円ですか、すごい規模のお金が掛かっているわけですよね。それだけじゃなくて、その間、休漁したりとか、捕れない場合は生活の補てんなんということも含めて考えなきゃならないということですから、相当なやっぱりお金が掛かってくるということだと思うんです。
 ですから、今説明されたことももちろんあるわけですけれども、それだけだったら、本当に資源回復したくとも、資金に余裕ある漁協だったらできるけど、そうじゃないところはなかなか難しくなるんじゃないかと思うんですね。漁業者負担を義務化しない仕組みも含めて推進するような対策をもっと考えてほしいというふうに思うんです。
 それで、融資の問題は、確実に返済できるのかというところがやっぱり問題なわけで、不安なわけです。休漁して、禁漁の期間を設けて、輸入によってその間販路を奪われないだろうかという心配も出てくる。それから、何年かして資源が回復が確実にできるのかどうかというふうに言われたら、一〇〇%できるという保証があるわけじゃないですよね。それから、実際に水揚げが、資源が入って水揚げが上がったとしても、価格がそのときどうなのかということもあるわけですし、そういう意味では、計画実践前よりも確実に増えるのかどうかということは、これはやっぱり不透明な、未知数なわけです。ですから、どんな償還条件をその場合考えているのか、お聞きしたいと思います。
○政府参考人(木下寛之君) 今回の資源回復計画でございますけれども、基本的には試験研究機関によりますしっかりとした科学的な知見に基づくということでございますけれども、基本的には利用者の皆さん方の理解と納得ということを前提にして実施をするというものと理解をいたしております。
 その中で、今回お尋ねの基金造成のための条件でございますけれども、一つは金利、申し上げますと、私ども、今後財政当局とも協議をする予定でございますけれども、現在の金利水準を前提といたしますと一・七%、また償還期間につきましては十五年以内と、そのうち据置期間につきましては五年以内ということを考えております。
○紙智子君 私も提案をしたいわけですけれども、水揚げが回復し、やっぱり払えるような状況でない場合、この返済の猶予ができると、そういった弾力的な償還条件ということでお考えいただきたいというふうに思います。
 大臣、この点も答えていただければ。
○国務大臣(武部勤君) 資源が回復せず償還に困難を来すような場合は、償還期限の延長とか中間据置期間の設定等の償還条件の緩和を必要に応じて措置することは可能だと、かように思います。
○紙智子君 そういう措置を徹底していただいて、これはそういうことで。
 次に行きます。
 今年、指定漁業の一斉更新の年です。それで、更新に当たって漁船の小型化を容易にする仕組みが取られていると思うんですね。北海道では、底引き船は百二十四トン型が主力です。これは実は、七〇年代の初頭から、波の荒い千島海域ですとかそれから流氷の来る着氷海域ですね、こういうところでの操業を条件に許可されたものです。ところが、それが今、沿岸と同じ水域で操業しているんですね。小型化を是非してほしいという意見もたくさん出されているんです。
 そこで、今回の改正案で経営改善計画制度を立てて、漁船を小さくする場合に、個人でも、例えば設備資金と運転資金などの支援の措置が受けられるでしょうか、確認したいと思います。
○政府参考人(木下寛之君) 今回の法律改正によりまして、経営改善計画を作り、それを都道府県知事ないし農林水産大臣の認定が必要だというふうになるわけでございますけれども、そのような経営改善計画の認定を受けました場合には、委員御指摘のように、漁船の小型化につきましても、当然のことながら対象になるというふうに考えております。
○紙智子君 是非それを徹底していただいて、トン数や馬力の削減が進むように政府としても努力をしていただきたいと思います。
 それから、全国各地で沿岸と沖合漁業者の操業区域等をめぐっての対立があります。できれば、これ八月の更新に間に合わせて解決さしていくということが水産庁にとっても大変重要な課題ではないかと思います。
 従来、漁業調整は双方の話合いを行わせて、水産庁はその場を設定するということで来たと思いますけれども、やはり資源の持続的な利用のために、資源の適切な保存やあるいは管理を行政の柱とするということで水産基本法でも位置付けられているわけですけれども、その下で、その立場で主体的により積極的な行政の努力が必要ではないかと思いますが、この点、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) 委員御指摘のとおり、資源の適切な保存及び管理を図るということが沿岸漁業、沖合漁業ともに存続を図っていく上で非常に重要であります。
 本年八月に大臣許可漁業である指定漁業の一斉更新が行われることになっているわけでありますが、これに向けて沿岸漁業と沖合漁業の操業に関して幾つかの調整問題が提起されていることは御指摘のとおりでございます。
 このために、やはり双方の話合いと合意を基本とするということが大事だと思います。八月までに必要な調整が図られるように農林水産省として最大限の努力を行うこととしておりますが、また、それまでに調整が整わなかったものについても引き続き一層の努力を継続いたしまして、沖合漁業者と沿岸漁業者の円滑な操業が確保されるように、更に最大限努力してまいる所存でございます。
○紙智子君 やはりこの話合いの際にも、水産庁として本当に積極的な姿勢といいますか、立場はこうなんだということを、資源確保の立場からもそこのところをはっきりして臨まなければいつまでも平行線になってしまうと思うんですね。そこは改めて対応していただきたいということを最後に述べまして、私の質問を終わらせていただきます。
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○委員長(常田享詳君) これより四案について討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 私は、日本共産党を代表しまして、四案のうち水産業協同組合法等の一部を改正する法律案に対して反対討論を行います。
 反対の第一の理由は、農林中金等が定めた自主ルールが本法によって法的権限を持ち、信漁連・漁協に大きな負担を押し付けることになるからです。
 政府は、基本的に、一般銀行と同一の系統金融機関に対する検査マニュアルの見直しをしようとしていません。その指導による厳しい資産精査により、今後、一層自己資本比率の引上げ、リストラや融資の制限、不良債権の処理が徹底されることは必至です。そうした経営改善や合併等、組織再編ができないところは、業務の廃止さえ要求されています。本法が、漁業生産のための信用事業という特性を無視する施策になると強く危惧するものです。
 第二の理由は、漁協に単独で信用事業を行う資格を事実上奪い、合併や事業譲渡を強制するものだからです。
 系統内でルールや目標を決め、民主的に徹底することは当然です。しかし、信用事業担当常勤理事の必置、最低出資金の一億円への引上げ、そのほか貯金規模や職員数など、自主ルールで定める信用事業実施要件を上回っている漁協は全国で少数です。したがって、本法によって、多くの漁協は無理やり合併や信用事業譲渡を迫られます。自主性を重んずべき漁協系統機関への対応として、大きな疑義を持たざるを得ません。
 最後に、これらの施策がペイオフに備えるという理由で合理化されています。しかし、漁業者に負担を押し付け、規模拡大・体制整備によって真に信用事業の安定が図られるのでしょうか。魚価の安定や経営支援など、政府の政策の転換、漁業者本位の民主的運営こそ重要であることを指摘し、反対討論といたします。