<第154国会 2002年3月28日 農林水産委員会 4号>


平成十四年三月二十八日(木曜日)
    午後二時開会
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○農林水産に関する調査
 (畜産物等の価格安定等に関する件)
 (畜産物価格等に関する決議の件)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず初めに、大臣は加工原料乳の生産者補給金をキロ七十銭引き上げて十一円とする諮問を出されました。最初にその問題からお聞きしたいと思います。
 二〇〇〇年の三月に策定された食料・農業・農村基本計画は、十年後の二〇一〇年に牛乳・乳製品の自給率を七一%から七五%まで引き上げると、そして生産量も八百五十五万トンから九百九十三万トンに引き上げると目標を掲げました。
 しかし、乳用牛の飼養頭数が減少し、これに歯止めが掛からないと。ピークだった九二年から十年間で三十五万六千トンも減少しています。生乳の生産量も四年連続で減少し、昨年は九四年以来最大の落ち込みになりました。
 重大なのは、これまでこの生産量を支えてきた北海道で二〇〇〇年に生産量が減少に転じたということです。北海道の場合、過去も減少した年はありましたけれども、それは過剰を抑えるための生産枠があったからで、今回のように計画上も増産を期待されていたにもかかわらず減少したというのは初めてのことではないかと言われています。
 さらに、これにBSE、これが追い打ちを掛けてもう大打撃を受けている状況です。このまま放置すれば、やはり計画達成どころか日本の酪農の存亡が懸かる、そういう深刻な事態に今なっていると思うんです。
 この酪農の存続のためにも、やっぱり今回の価格決定というのは特別な対応が必要だというふうに思いますが、まず大臣の認識をお聞きします。
○国務大臣(武部勤君) 減産したところばかりじゃありませんで、北海道は昨年の夏から増産体制になっております。増産しております。
 しかし、全国的には減産しているということは事実でありまして、酪農地帯も経営の問題ということに、一口で言えばそうなるんでしょうけれども、経営者の高齢化でありますとか様々な問題が背景にあると、こう思っております。
 加えて、今般のBSEの発生ということで、廃用牛の問題、ぬれ子の問題、それから環境対策その他、労働力ももう非常に負担になっております。それ以上に、私はやっぱり精神的な負担が非常に大きいと思います。四頭目、自分のところで出たらどうしようというようなことは、これはもうお金に換算すると大変なものだろうと、こう思いまして、そういうような考え方で、しかも変動率方式を基本として算定はいたしましたけれども、今般七十銭アップの十一円ということで諮問した次第でございます。
○紙智子君 減少に転じたということなんですね。北海道、増えていると言うんですけれども、初めての事態だというふうに現地の人たち言っているんです。
   〔国務大臣武部勤君「北海道は去年の夏から増産になっていますよ」と述ぶ〕
○紙智子君 そこはちょっと……
○委員長(常田享詳君) やり取りしないでください。
○紙智子君 済みません。委員長の、無視して。
 それじゃ、委員長。
○委員長(常田享詳君) どうぞ。
○紙智子君 現場では、牛の更新ができないために乳量が低下していると。そして廃用牛、ぬれ子の価格はBSE発生時からそれぞれ、廃用牛でいいますと十万台だったのが一万台、もっとそれ以下というところも出てきたり、あるいはぬれ子の場合は七、八万円台だったのが一、二万円に下がっていると。これが農家の経営を圧迫している事態です。
 昨年、私、十月の三十日の当委員会でもこの問題について取り上げて価格下落に対する対策を求めたのに対し、当時、小林生産局長は、このぬれ子、廃用牛の価格低下については加工原料乳の生産者補給金の算定に反映されるんだというふうに答弁されました。
 ぬれ子や廃用牛の価格が今こういう事態になっている中で、当然やはりそのとき答弁されたとおり、この補給金の引上げに反映されるべきだというふうに思うわけです。七十銭で適切に反映しているというふうに言えるんでしょうか。
○政府参考人(梅津準士君) 平成十四年度の補給金単価の算定につきましては、委員御指摘の変動率方式を用いて算定しておるわけでございますが、この算定に際しまして、BSE発生以降の直近の物価動向、具体的には平成十三年の十一月から本年一月までの期間、これで修正して算定を行っております。
 具体的には、乳廃牛価格の低下につきましては物価修正によって乳牛の償却費の上昇として、それから、いわゆるぬれ子価格の低落の方は物価修正によりまして副産物価格の低下として、いずれも生産コストの上昇として補給金単価算定に盛り込まれております。
○紙智子君 BSEの発生後の農家の損害の状況を個別の農家で見ますと、北海道ではぬれ子四頭から五頭、廃用牛で二頭から三頭飼っているところの実際の損害というのが七十数万円というふうに出ています。それで、七十銭上げたとしても、一頭平均の搾乳量を大体八トンで計算しても、掛ける七十銭で考えても、例えば五十頭で約二十八万円、三十頭だと十六万円ぐらいで、とてもこれ、七十銭では見合わないという状況なんですね。
 このような事態は、やはり現行の補給金制度では想定していなかった異常事態だと思うんですよ。非常時に対応した対策がやっぱり必要であって、実際現場の生産者の方に聞きますと、最低でもやっぱりキロで五円でも上げてもらわなかったらやっていけないという話がされるんですね。
 いや、本当ですよ。だって、一番高いときだったら九十円台のときだってあったわけですし、それがだんだん下がって、今七十二円幾らですか、というところまで来ているわけですから、やっぱりそういう生産者の声というのはそうだと思うんです。再生産をやっぱり保障すると、そして経営が維持継続できるような特別な措置が必要だというふうに思います。強い要求として生産者の皆さんからもこの加工原料乳の補給金をもっと大幅に上げてほしいという声があるんですけれども、これ是非こたえていただきたいと思うんです。いかがですか、大臣。
○国務大臣(武部勤君) 総合乳価は九割は搾乳の代金ということになっているわけでありまして、先ほどちょっと委員長からおしかりを受けましたけれども、北海道は七月から増産体制になりまして、BSEが出てからも伸びているんですね。
 そういうことで、よくこの大変なときに、さすが北海道は主産地で頑張っているなということで、私はこの数字を見て心強く思ったのでありますが、しかし、酪農経営もいろんな人がいますね。借金がある人、それから借金返した人、それから借金したばかりの人、いろいろな人がいますから、やっぱりそれぞれの対策が必要なんだと思います。
 ですから、乳価には法律に基づいてやっておりますし、変動率でやるということを合意してやっておるわけですから、これで何もかも、五円も上げろ、どうしろということで、いかに共産党の紙先生といえども、それは正にカミワザというべきことなのかもしれません。
 したがいまして、諸般の対策を組み立てていくということで、やっぱり乳価は上げなくてもいいからこういうことの対策を講じてもらいたいという人にはそういうメニューを取ってもらう。それから、やっぱり基本的には今回のBSE発生というようなことで、紙先生おっしゃるような事態というのが起こっているわけでありますから、ですからそれは、七十銭といいますけれども、これは人によっては、よくぞここまでやったものだと、むしろ来年が怖いと、こういう声さえ聞こえるわけでありますので、その辺のところは我々の対策というのは総合的にやっていかなくちゃいけないんだと。いろいろなメニューを用意して、そのメニューを求めている人たちに応じた対策というものをしっかり立てていくというのが大事ではないのかなと、私はこう思っているわけでありまして、私も北海道出身で、主産地でありますから、情熱だけは先生に負けないぐらいの気持ちを持っておりますので、また問題意識も負けないぐらいの問題を持っておるわけでございますので、またこの問題は政党政派関係ありませんので、建設的な御意見に対してはもうしっかりこたえてまいりたいと思っておりますので、御理解をお願いしたいと思います。
○紙智子君 不足払い制度が廃止になりまして、市場原理が導入されて、国が決められる補給金というのは結局農家の手取りの七分の一部分でしかないんですね。あとは乳業メーカーとの交渉次第ですから、値下げの圧力がある中でこれがもし下がった場合は、七十銭なんというのは飛んでしまうんですね。
 実態はそういう事態ですから、今、大臣が言われたように、いろいろな農家がいて、借金返した農家もいると言うんですけれども、多くの農家の皆さんは返せないで、だんだん降り積もって、もう本当に押しつぶされそうな状況の中で必死で頑張っているということだと思うんです。だからこそ、今回のような言わば異常事態ですよね、これに対応しての国の責任を私は果たすべきだと思うし、同時に、現在の補給金制度では農家経営が守れないということは明らかですから、是非私は見直しをしていただきたいというふうに思います。いかがでしょうか。
○政府参考人(梅津準士君) 御指摘のように、平成十二年度から従来のいわゆる不足払いから単価固定の補給金方式に制度が変更されたわけでございます。委員御指摘のように、それ以外の価格につきましては、基本的に指定生乳生産者団体と乳業メーカーの交渉によって決まるということになっております。
 なお、これにつきましても、いわゆる生乳の価格安定制度を設けておりまして、三年の加重平均を下回った場合にその差の八割を補てんすると。国と生産者団体が拠出してその差の八割を補てんするという仕組みを用意しておりますので、市場メカニズムを通じて消費者のニーズをきちんと伝えていくという制度改正の趣旨を生かし、なおかつ経営の安定に資するような運営に努めてまいりたいと思っております。
○紙智子君 とにかくやっぱり事態は、コストを下げるということで物すごく努力をして、精一杯努力をして下げればまた下がるという状況がこれまで続いてきたわけで、そういうのに加えて、例えば今のBSEの問題で言っても、酪農家はぬれ子や廃用牛で何とかプラスを出してということで、乳が搾れない牛については売りに出してということでやってきたわけです。ところがその価格が、BSEが発生してから、発生前と発生後で言いますと、さっき紹介したようにひどく下がっていると。そういう中で、本当に対策がなされない中で、この状況が今すぐじゃ解決していくのかというと、そういう問題じゃないですね。短期に解決できないですよね、今の事態というのは。
 だから本当に、そういう中で、ぬれ子の対策なんかも肉用子牛の補給金の対象にするとか、そういう形で価格下落に対する対策もやっぱり取っていただかなければならないというふうに思うんですが、この点、どうでしょうか。
○政府参考人(梅津準士君) 御承知のように、ぬれ子は生後一週間程度のものを称するわけでございますが、肉用牛生産者補給金制度は肉用子牛の再生産を確保するために六か月齢以上の子牛に対して不足払いを実施するわけでございます。この六か月以上の子牛を不足払いを実施することによりまして、肉用子牛の前段階であるぬれ子についても間接的に価格の低落が防止されておるというふうに思います。
 なお、酪農家自らがぬれ子を哺育育成することを奨励するために、乳肉複合経営体質強化事業により、おおむね一か月哺育する場合で一頭七千円、六か月以上育成する場合で一頭一万四千円の奨励金を交付する事業を別途講じております。
 それから、ぬれ子につきましては、昨今、若干価格が戻ってきておりまして、乳用種ぬれ子で三月平均で三万八千円、F1ぬれ子で三月平均で五万三千円というふうに若干価格が戻ってきている状況にもございます。
○紙智子君 戻ってきているという話、よくされるんですけれども、本当に元に戻っているわけじゃないですよね。
 そして、一か月肥育すればという話も、これ去年もお聞きしたんですけれども、結局七千円ということで言われているんですけれども、実際に酪農家にとってはそういう余裕がないんですよね。えさを与えて、そして肥育するということが手間暇掛かるということでは、そういう余裕がない中で、やっぱり特別の手だてとして考えるべきだということをこれまでも繰り返し言ってきたわけで、ちょっと繰り返しませんけれども、そこのところをしっかり踏まえていただきたいというふうに思います。
 次に、BSEの問題に関連してですけれども、この間、農民連という農業団体がBSEで受けた被害の補償を求めて、それこそ一戸一戸の農家に回って、実際どれぐらい損害が出ているのかということでそれを書いてもらって、直接大臣にこれ、請求書として送ろうということで運動してきたんですね。それで、農水省へ提出された損害請求書、たくさん、一次、二次という形で提出されたんですけれども、これ、大臣、ごらんになっているでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) たくさんいただきました。
○紙智子君 中身はごらんになりましたか。
○国務大臣(武部勤君) 目を通しております。
○紙智子君 目を通しているということであれば、余計やはりその深刻な状況というのをお感じになるはずだと思うんですね。
 私は、その中であえて紹介したいと思うんですけれども、これ、一月末時点の岩手県の農家が出した請求書の中からなんですけれども、実例でちょっと紹介しますけれども、例えば農家Aの場合は、昨年と同じ時期と比べて肥育のF1で二頭で七十万円損失になっていると。これに対してのこの間の農水省の対策は、マル緊、BSEの特別マル緊で一月度で合わせて四十二万六千二百円出されていると。差し引きしますと、二十七万三千八百円は結局これ赤字というか、農家の負担なんですね。このほかに、この農家は廃用牛で四十四万七千円、これに対しては一月は対策がなし。ぬれ子は六十九万五百円、これも対策はなしと。合計しますと百四十一万五千八百円が被害というか負担に、赤字になって出ている部分なんですよ。だから、いろいろ対策したという話は出ているんだけれども、政府のこの間の対策ではカバーし切れていないという実情が非常にリアルに現れているんですね。
 それから、農家Bの場合は、やはり肥育でF1十三頭で損失額が三百六十四万円。これもやっぱり政府のマル緊対策、BSEの特別マル緊との差引きでもって八十二万円が損失していると。そして乳用の去勢で五頭で損失九十五万円。そうすると、対策との格差がこれまた二万六千円で、足しますと合計で八十九万六千円と。
 農家Cというのもありますけれども、こういう形で結局これだけの損害が農家にかぶさってきていると。
 この損害というのは生産者が負うべきものだと思いますか、大臣。
○国務大臣(武部勤君) 紙先生御指摘の問題については、それに類した話はたくさん私も聞かされております。それだけに、私どももこの事態を深刻に考え、事態を早く打開しなくちゃならぬと、こう思っているわけでありまして、喫緊の課題はやっぱり消費が戻ることでございます。
 先ほどぬれ子の話がありましたけれども、一月は一万五千円で、北海道でもこれは六七・七%の減少でありましたけれども、二月になりましたら、これは北海道個体販売価格等の推移によりますと二万九千円になっているんですね。三月上旬は四万二千円というような数字まで出ております。したがいまして、諸般の対策をきちっきちっとやっていく、そして平常時に戻していくということが私は一番大事だと、このように思っているわけでございます。
 しかし、BSEの発生以降、牛肉の消費が低迷しまして牛肉の価格が低下したために、畜産農家等の経営が厳しい経営状況にあるということは私どもも十分承知しておりまして、深刻な影響を受けている畜産経営に対して、先ほど申し上げましたように、BSE関連つなぎ資金等を手当てするようなこともしておりますし、これからはまた延長とか条件緩和とか、そういったこともやるわけでございます。
 それから、肥育牛経営農家の大幅な収益性の悪化に対しましては、今、お話もありましたように、BSEマル緊事業を創設しまして、二月分については一頭当たり肉専用種二十一万一千七百円、交雑種二十三万四千円、乳用種十七万七千円の補てん金の支払を三月二十六日からいたしますし、これは毎月今度は出すというようなこともやりまして、子牛生産拡大奨励金の特例措置も子牛価格の低下に対する対策としてやるわけでございまして、諸般の対策をしっかりやることが、今いろいろ、私どもも全部いろいろ見ましたよ、あの時点で見ましたけれども、これはもう根本的には正常化することだということで取り組んでいるわけでありますので、御理解をお願いしたいと思います。
 また、今回の乳価についても、そういったことも勘案して、直近の物価動向その他勘案して十一円ということで諮問したことも御理解いただきたいと思います。
○紙智子君 今質問したことに全然お答えになっていないですよ。これだけの損害が出ているのを農家が負担すべきだと思うんですかというふうに私は聞いたわけで、私は、やはり農家にとってこの四か月で数百万の損害というのは死活問題なんですよ。このままにしていたら本当につぶれてしまうと、一体どうなるのかということが問われている問題なんですね。しかも、牛肉の価格は最安値を更新し続けている。そういう中で、長期に続く可能性がある中で、小泉総理もお答えになりましたよね、生産者には責任ないんだとはっきりおっしゃいました。武部大臣もその意味ではこの間の農水省の責任という問題について認めておられるわけです。
 そういうふうに政府の責任で生み出された損害であるということで認めている以上、このBSEの影響緩和という範囲じゃなくて、本当にこの損失に対して補償するという立場で対策を打つべきだというふうに私申し上げたいんです。いかがですか。
○国務大臣(武部勤君) そういう考えがあればこそ、二千億円以上の対策費を講じて、野党の皆さん方からも厳しく批判をされているわけでございます。それは国民の血税につながるわけでございますので、この政府が対策をするということも、結果として国民皆様方の負担によってやっていくと。
 ですから、私ども農林水産省としては、国民の皆さん方の御理解と御協力を求めながら諸般の対策を講じているわけでございますので、生産者の方々を始め関連する皆さん方には大変御迷惑を掛けておりますが、その中で、今度の乳価も、これなら元気出して頑張れるぞというようなところを目安にしてやっているということで御理解を願いたいと思います。
○紙智子君 私は、繰り返しこの問題についてはこれまでも述べてまいりました。それでやはり、今野党四党が出した法案がありますけれども、これを一日も早く成立をさせていただきたいと思います。ここではしっかり国の責任による補償という問題も、助成という問題も明記されていますし、やはり一時的な対策ではなくて長期にこれから先、本当に求められるわけで、そういう意味では生産者や業者に対して確実に安定した対策が保障されるということでも法制化を行うということで、多くの点で一致しているというふうに言われるわけですから、是非一日も早くこれを成立させていただきたいということを要望しておきたいと思います。
 続きまして、廃用牛の問題です。
 屠畜頭数については改善しているという話も出ているわけですけれども、実際に滞留している廃用牛の頭数は五万八千頭と更に増加しているという状況です。北海道でも、昨年九月から今年一月までに出荷された廃用牛は前年の同期と比べると四五%、二万三千頭。だから北海道だけで、本来は出荷されていなければならなかった牛が農家に一万六千頭も残っている状態に今あるわけです。
 この廃用牛の流通緊急支援事業、これ始まって二か月たったわけですけれども、この買上げ制度の実施状況がどういうふうな状態になっているのかということでお願いします。
○政府参考人(梅津準士君) 廃用牛流通緊急推進事業につきましては、二月から事業を開始し、直ちに全国会議を開催するなどその周知徹底を図り、円滑な事業の実施に努めております。
 まず第一点、これまでに一時集約管理施設は全国二十七県で一万三千頭分が確保されておるところでございまして、準備の整った七県の施設で収容が始まっており、まだわずかでございますけれども、三月十八日現在で四百四十四頭が管理施設で確保されております。
 それから、事業実施主体において二月及び三月のこの買上げの頭数の見込みでございますけれども、まだ補助金申請書、事業計画書、取りまとめを行っている最中でございますが、二月、三月においては合計約二万五千頭の廃用牛の出荷が行われる見込みというふうに承知しております。
○紙智子君 私、やはりこれもずっと議論になってきているんですけれども、制度の不備であるというのは明確だと思うんですね。
 毎月一頭四万円で買い上げるということなんですけれども、農協が実施主体になっています。屠畜証明が必要で、屠畜場が受け入れなければこれは買い上げてもらえないと。しかし、今、半数以上、十七の県がこの屠畜場の拒否が続いている。ここでは全く、買入れ制度、買上げ制度というのは機能していないということです。
 搾乳を終えて衰弱した牛を屠場も引き取らない、へい死牛の処理施設も引き取らない、路頭に迷う牛を農家は抱えていかなければならない状況になっていると。農家では、この作られたものについても、あれではどうしようもないなと、今、農家にどれだけの廃用牛がいるのか、やっぱり一軒一軒調べて国が買い上げるべきだという声が出ているんです。廃用牛は毎月二万五千頭増える、このままでは取り返しがつかないことになるということで、感染ルートの解明や原因解明を妨げることにもなると。だから、屠畜証明なしで国の責任で買い上げる、農家が屠畜場に出すか出さないかということを関係なく国がやっぱり農家の手元から引き揚げる、ここのところを責任持ってやるということが今求められているんじゃないかと思うんですよ。
 先ほども話に出ていましたけれども、一頭四万円でということなんですけれども、実際にはいろいろな経費を除くと半分になるという話もあるわけですから、ここは是非そういう国の責任でやっていただきたいと今言いたいと思います。いかがですか。
○政府参考人(梅津準士君) 屠畜場の受入れにつきましては、御指摘のように全県でスムーズに受け入れているという状況にはなっておりませんけれども、逐次、各都道府県の受入れにつきましては、各県屠場関係者、あるいは経済連等と協議の中で受入れの拡大を厚生労働省とも連携を図りながら進めているところでございます。
 それから、直接国が買い上げてはという御提案でございますけれども、御承知のように、国が廃用牛を買い上げた場合に、これは国有物品となりますので、特別会計の設置ですとか研修手続とか売払いとか、もろもろの膨大な手続が必要になってまいりますので、現在、農協あるいは家畜商等の事業主体を通じてこの事業を推進しているところでございます。
○紙智子君 農家は廃用牛を出したいけれども出せない状況がある、出た場合は地域全体に迷惑が掛かるというような思いもあって、出さなきゃいけないと思っているけれども、やっぱりそういう三すくみの状況といいますか、屠畜場もそういう状況があると。
 こういう負の構図が続く限り、やはり国の廃用牛対策というのはいつになっても機能しないことになると思うんですよ。ここでやはり、なぜこうなったのかというところに立ち戻って、やはり国の責任を自覚してきちっとした対策をやるべきだということを最後に申し上げまして、時間になりますか、まだありますか、答弁をじゃ最後にお願いします。
国務大臣(武部勤君) 先ほどもいろいろ議論ございました。廃用牛の出荷については、現在出荷の数が増えてきております。そして、滞留する数が減ってきております。そして、この趨勢でいきますと、五月、六月ごろになるとバランスが取れてくるという状況が予測できます。
 北海道はかなり、いろいろ先生御指摘ございましたけれども、互助制度等の御理解が深まりまして、北海道はかなり円滑に出荷体制が進んできているんじゃないかと。ましてや、北海道では農業団体が止めているところありません。しかし、御案内のとおり、屠畜場がブレーキを掛けたり生産者団体がブレーキを掛けたり、そういうようなところがありまして、私ども、根気よく副大臣、政務官が全国を歩いてお願いをしております。
 大分変わってきました。これは、もう出さないところは全部今はもう情報をオープンにしますから、どこの農業団体が出しちゃ駄目だと言って抑えているか、どこの屠畜場がどうしているか、なおかつ専用の屠畜場とかそれから屠畜日を決めるとかいうことで今鋭意やっているところでして、五月、六月にバランスが取れるということを私ども期待していますので、なおかつ努力いたしますので、御理解をお願いいたしたいと思います。
○委員長(常田享詳君) 最後にしてください。
○紙智子君 とにかく国の責任でそこのところはやってもらわなければ、いつまでたっても機能しないという状況になりますので、そのことを再度最後に申し上げまして、質問を終わらせていただきます。