<第153国会 2001年11月27日 農林水産委員会 05号>


平成十三年十一月二十七日(火曜日)   午後一時三十分開会
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○農林水産に関する調査
 (平成十四年産米の政府買入価格に関する件)
 (米政策の総合的な見直しに関する件)
 (牛海綿状脳症問題に関する件)
 (第四回WTO閣僚会議に関する件)
 (ねぎ等三品目のセーフガード措置に関する件)
 (北方四島周辺水域のさんま漁をめぐる日露・日韓協議に関する件)

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○紙智子君 最初に、BSE、いわゆる狂牛病の問題について質問いたします。
 それで、二頭目の感染牛が確認をされまして、今回発見された牛が一頭目とほぼ同時期の九六年の四月生まれということでは、WHOの勧告どおりにこの時点で肉骨粉の使用禁止ということが徹底されていたならば感染しないで済んだはずじゃないかということで、改めて私、政府の責任の重さが問われているというふうに思うんです。
 そのことの当時の政策判断を含めてどうなのかということで、衆議院で午前中もいろいろ議論になりましたけれども、その中ででも、きょうあたり新聞報道などでも、この二頭目の牛が食べていた飼料をめぐって、飼料会社、この肉骨粉の混入問題が取りざたされているわけです。
 それで、この混入の問題も考えるならば、混入防止のガイドラインの通達というのも、出したのがことしの六月ということですから、これは余りにも遅過ぎたというふうに思いませんか、どうでしょうか。
○副大臣(遠藤武彦君) 先ほども申し上げましたが、二頭目が出たことは非常に残念だと思っていますし、そのことによって佐呂間の牛や千葉県の牛との共通的なものが次第にわかってまいっておりまして、今の時点で考えますと、振り返れば、ああもしておけばよかった、こうもしておけばよかった、こうすべきであったということが多いように思います。
 ただ、九六年の時点では、早々と通達を出して、牛由来のものを反すう動物に上げちゃいけませんよと、そういう行政指導をし、かつ農家に届くように五万枚にも及ぶチラシ等を配布したりして、それなりの努力はしておったようであります。現時点から考えれば、まだまだ徹底の仕方が手ぬるかったので、五千百二十九頭もに実際に食わせてしまったと申告なさった方も出てきたんだなと、こんなふうに考えておるところでございます。
○紙智子君 いずれにしても、やっぱり徹底していなかったということの責任は免れないわけですよね。そこのところは、繰り返しになりますから、そこはそこで、次に移らせていただきますけれども、今回感染した牛も乳牛の老廃牛ということだったんですが、このことをめぐって乳牛が一層価格下落をしていると、生産者の打撃がこの後も心配されるわけですけれども、今でも引き取り手がないという状況が続いています。
 私は、前回も質問のときに、肉牛だけじゃなくて乳牛の老廃牛についても補償の措置を求めたわけですけれども、いよいよ切実になっているというふうに思うんです。前回の回答の中では、来年か再来年の乳価の算定に反映されるんだというような話がありましたけれども、そういう悠長なことを言っていられない事態なんですね、実際牛が出せないわけですから。そういう中で、本来売れていたものが売れない状況の中で手に入ってくる現金がない、そういう中では、やっぱり生活をしていく上でも、今支払いなんかも必要なときに置かれているわけで、その意味では再度の検討を求めたいと思います。
○副大臣(遠藤武彦君) おっしゃるように、農家の皆さん方は大変な苦境に立たされておりますし、と同時に、現状をこのまま手をこまねいていれば日本の畜産の大変な危機だというふうに受けとめています。
 そこで、いろいろな対策を講じてまいりまして、肉用牛安定対策あるいは調整保管等々の措置を講じてまいりました。また、老廃牛につきましても、農家のいわば副産物として大きな収入源であることだけは間違いがございません。今後とも、百七十二万頭の乳牛が存在している以上、いろいろな意味で、農家は今借りる力も失っておるという状態ですから、単なる金融支援じゃないものが求められているのだというふうに認識をし、私どもとしてもそのような方向で取り組んでまいりたいと思っております。
○紙智子君 今までと違う状況が生まれて、それも政府の責任が大きいわけですから、今の制度の中でやりくりということではなくて、やはり新しいそういう対策、救済対策を考えるべきだと思います。
 それで、いよいよ感染源、感染ルートの解明が求められているということでは、これも前回質問の中で中間報告をするべきだというふうに私申し上げましたけれども、今月中にもこれを出すというふうに聞いています。その意味では、委員長に要求しますけれども、早く公表していただいて、それに基づいての今度の国会内での審議を要求したいと思います。
○委員長(常田享詳君) お聞きしておきます。
○紙智子君 じゃ、次、米問題について伺います。
 今回、農水省が突然、稲作の構造改革と米政策の抜本見直しということで打ち出してきた内容に対して、各地で意見交換会とかやられてきたわけですけれども、多くのところで批判が出されました。その最大の的となったのは、稲作経営安定対策に象徴される副業的農家を外していくという、排除の問題です。
 大臣、稲経からの副業的農家の除外については、ことしはとりあえず先送りしたということなんでしょうか、それとも撤回なんでしょうか。そこのところをはっきりしてください。
○国務大臣(武部勤君) 副業的農家の実態というのは、先生御存じだと思うんですね。全体の収入の、いわば稲作経営安定のための補てん金は〇・七%なんですね。しかし、全体としては四百三十八億円にも及ぶという、そういう実態があるんですね。
 私どもは副業的農家の存在というのを否定するものじゃありません。やはり農村集落というものは、いろんな方々が一緒に毎日生活を営み共同の生活を営んでいるわけですから。しかし、米の問題については、先ほど来申し上げておりますように、野菜や畜産農家と比べますと主業農家が非常に力が弱い、脆弱であるというようなことがありましたり、生産調整がなかなか、面積でやってきたことが円滑に需給均衡という形になっていかないとか、さまざまな問題に今直面しているわけでございます。
 そういう意味で、抜本的な見直しを図るということと、今後やっぱり米農家も含めて農家の経営安定対策ということについて、新たなる経営安定対策、政策というものを今検討中でございます。その中で検討していこうということでありまして、切り捨てるとか切り捨てないとかという存在じゃありませんので、このことを御理解いただきたいと思うわけでございます。
○紙智子君 各地で出された生産者の皆さんの声の中では、やはり専業だけじゃなくて副業的と言われるところも含めて支えてきてくれたということが実際に生産調整も含めて成り立っていたわけで、ここをやっぱり外すというのは間違いだという声が出されています。
 そして、今検討されている農業構造改革推進のための経営政策ということで打ち出されているのは、経営所得安定対策の対象を一部の認定農家、ここに絞り込むと、そして稲経などの品目別の今までやってきた経営安定対策は、機能が重複する面も大きいからその関係を調整するというふうにしているわけです。
 この中で検討して、稲経だけがすべての農家を対象とした価格補てんを継続するなどということはあり得るんでしょうか。食料自給率の向上が本当に今最大の課題だと言われている中で、やるべきことというのは、すべての農業者の皆さんにやっぱり自給率向上のために最大の力を発揮してもらうことだし、そのために国が支援するということが今大事だと思うんです。その意味では、農家を選別する政策というのは、これ逆行するというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○副大臣(遠藤武彦君) 我が国の生産調整が始まってから既に三十年であります。この間、いわゆる副業的農家というか、これまでは兼業農家と言っておった、非常にふえてまいりました。逆に言うと、生産調整政策が副業的、兼業的農家を発生せしめたと、こういうふうに言えるかと思います。ですから、私どもは、この副業的農家を何か除外するとか、そういう考え方は毛頭ございません。いろいろな構造改革を進める中で、農地を集約をしたり、そしてそのことによって団地化をしたり、さらに集落営農といったところまで発展し得れば、いわゆる副業的農家と言われる方々も十分地域農業の担い手として貢献し得るものと、そういうふうに考えておるところでございます。
 また、経営安定政策でございますが、これも認定農家に別に絞り切っておるわけではありません。これから三年間かけて実態の調査をした上で正式に決めていくと、こういうことでございます。
○紙智子君 副業を本当に外さないということであれば、そのとおり貫いてほしいと思うんですね。言葉の上では消えているんですけれども、これまで来る過程ではそのことが心配されたからこそ各地からいろんな意見が上がってきたわけですから。そこのところを改めて言っておきたいと思います。
 そして、今、農水省が生産を集中して、育成したいと言われている担い手と言われる人たち、ここのところも実際に今、瀬戸際に立たされているというふうに思うんですね。構造政策の、北海道はその優等生というふうにも言われてきたわけですけれども、北海道農業の実態を見ますと、改めて言うまでもなく大臣自身がよく御存じだと思いますけれども、規模拡大を進めてきた農家が今本当に大変なところにあると思うんです。
 私、先日、最大の米どころと言われる上川に行ってきました。それで、そこで、本当に米の価格がだんだん下がり続けていると。そういう中で、規模を拡大したその農地代、土地改良の負担金が払えないということで、負債を抱えてみずから命を絶ってしまった稲作の農家の方の話を先々で聞きました。五十代の篤農家と言われる人、みんなのいわば手本ですよね、そういう篤農家と言われる人が亡くなっているんですね。それで連鎖反応が出なければいいと、農協の座談会や議会の中でもこのことが問題になっているんです。耕作すればするほど赤字になると、そういう事態の中で命と引きかえにして負債整理に走るという状況が現実にあるんです。
 今、米の生産者は、価格や助成水準などの国の政策、政府の政策が一歩でも後退したならばもう持ちこたえられない状態だということでは、本当に担い手の最大の支援策というのはやはり米の価格の引き上げではないかと。これが本当に待ったなしの課題なんだということについて、大臣、どういうふうに認識されているでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) 私も北海道ですから、紙先生の言わんとするところもわかるんです。
 今、専業農家、主業農家の方が大変だというのは、今の米の問題にしましても、五年間で一兆円収入が減っていると、一年間で二千億。その中でも主業農家が九十万円も所得減になっているわけですね。主業農家の農家所得が七百二十六万円ですが、補てん金六十二万円ですけれども、もう非常に大変なんです。
 だから、そういうことを考えたときに、やはり農林水産業の構造改革、とりわけ水田農業の構造改革ということを進めていかなきゃならないわけなんです。また、集落とか農村をどう発展させていくかということについては、ここには、副業農家の皆さん方に限らず、私は、都市居住者にも、おいしい水、きれいな空気、美しい自然、そういったものを提供する場として新たなる可能性を求めていきたいとも考えているわけです。
 そういうふうなことを考えますと、紙先生の考えであれば、もう予算が幾らでもあってあり余っているというときであれば、それはもう米価引き上げだとかいろんなことができるでしょう。あるいはWTOに日本も加盟している、その中で、国際ルールの中で日本の農業をどうしていくかというようなことなども考えていかなければならない。その中で、実際に農業にいそしむ専業農家、主業農家の皆さん方が意欲を持ってやっていただくための経営所得安定対策というようなことを今、遠藤副大臣も一部お話しいたしましたが、そういう専業的農家をいかにしてつくり上げていくか、育てていくか、支援していくかということに重点を置かなきゃいけないと思うんです。
 同時に、農村の景観だとか農村環境を守っていくという意味で、副業農家の皆さん方にも一緒に、ともに頑張っていただくような、ともに営みをやっていただけるような、そういう政策展開が必要だというふうに考えて、それに向けて努力しようということでございます。
○紙智子君 結局、経営安定対策という形で言われるんですけれども、価格がどんどん下がってきていることに歯どめをかけることができない状態で来ているわけですよ。だから、確かに副業農家も専業農家も一緒にやってほしいんだと言うけれども、現実の問題としてやりくりいかない事態にあるということがあるわけですから、だからやっぱり価格に手をつけなければいけないんじゃないかということを私言ったわけですね。
 それで、本当に空知の認定農家ということでは、この四年間、規模を拡大してきた認定農家が四年間の経営の実態調査をしていますよ。その中で、平均の総収入で千九百二十三万円なんです。にもかかわらず、借金を償還した後、六十万三千円しか残らないと。だから、空知の農民の集会の中では、このまま行けば空知管内の平地でも半数以上が離農しなきゃいけなくなるんだという話が訴えられたんです。
 どうやったら、じゃやっていけると思うかという話をしたときに、生産者の皆さんから出た声は、いろいろな補助金だとかなんとかというよりは、やっぱり米価で一万八千円あればやれるんだと、これがやっぱり生産者の皆さんから出された声なんです。その意味で、私は、自主流通米の価格にやはり下限の価格を設けて価格の下支えをするということや、稲作経営安定対策の補てんの基準価格を生産費を考慮して定めて差額を補てんするとか、あるいは最低限の政府の買い入れ価格の引き上げと、それから稲経の補てん基準価格の固定の継続と、こういった中身を含めて、全体としてやっぱり農家の人たちの手取りの保証を検討すべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○副大臣(遠藤武彦君) まさしくおっしゃるように、主業的農業を営む者が比較的多い認定農家と副業的農業を営むいわゆる兼業農家というのでは、経営の内容がまるっきり違うわけであります。かかるコストも違います。さらに、農業所得への依存度合いも違ってくるわけであります。そうすることによって、言ってみればコストや流通経費等についてもそれぞれに違ってくるわけでありまして、一律に認定農家のみというふうなわけには今絞り切ることはできぬ。
 ただし、先ほど私が申し上げたように、ある程度いわゆる副業的農家の足腰の強さが図れるような施策があれば比較的米価に反映していくのではなかろうかと、このように考えておりますし、一方において、副業農家を切り捨てるようなことはだめ、認定農家をどうするかというと、なかなかそこに生ずる段差を埋めることは難しい問題があるのかなと承知しておるところであります。
○紙智子君 副業農家と言われる方は好んでなったわけじゃないと思うんですよね。やっぱりそうしなければ食べていけないからですよ。ですから、その意味では、本当に意欲を持っているすべての農業者を本当に育てていくという立場でやるべきだというふうに思います。
 次に、備蓄問題に移りたいと思います。
 政府は、備蓄の水準を今回百万トンまで引き下げるということを言われています。農水省の試算をいただいたんですけれども、この試算で見ても、まず一つは、十年に一度の不作で必要となる量が百万トンから百十五万トン、通常程度の不作が二年続いた場合に必要になる数量が八十六万トンから百一万トン、端境期に必要な量が百二十六万トンから百三十一万トンというふうになっていますけれども、政府の備蓄が百万トンというのは、この試算からいっても少ないんじゃないでしょうか。
○政府参考人(中川坦君) 最近の備蓄の運営の状況を見ますと、これまで百五十万トンプラスマイナス五十万トンという形で運用してまいりましたけれども、実態を見ますと、近年、豊作が連続して続いたというようなこともありまして、適正水準を非常に超えたところで、その結果、備蓄の経費が非常にかさむというようなこともありますし、また政府に在庫がたまっているということ自体が自主流通米の価格を押し下げる効果も出てきているところでございます。
 こういったさまざまな問題があるということで、備蓄運営研究会、これは食糧庁長官の私的な研究会でございますが、昨年の暮れから開いておりまして、その中で今、先生が例に挙げられましたような幾つかの考えられる事態を想定をいたしまして、何万トン程度あれば国民に対する安定供給という点から見ても大丈夫なのかというふうな、そういう検討もしていただいたわけでございます。
 想定される幾つかの試算を踏まえ総合的に勘案をいたしますと、備蓄水準としては百万トン程度あれば事態に対応できるのではないかというふうに考えているところでございます。
○紙智子君 百万トンということで何とかなるんじゃないかということなんですけれども、例えば作況が九二の場合に一回で底をついてしまう量だと思うんですよ。
 まだ記憶にあるわけですけれども、九三年のときに大凶作になりました。あのときの作況が七四です。その同じような水準の凶作が襲ってきた場合に、即、国内産米というのは百万トン以上不足することになるんじゃないでしょうか。通常の不作が二年続いた場合の試算も、これは復田が計画どおりに行われることが前提になっていますよね。でも、実際のところは、九三年のあの凶作の後も復田は計画の半分しかできなかったと。そんなに右から左に行くものじゃないというのが現場の声ですけれども、これではやっぱり絵にかいたもちになるんじゃないかと。国産米の不足という事態を招かない保障は全くないわけで、もしもの場合、そういうことで、なくなったときは輸入で補えばいいというような発想があるんじゃないでしょうか。
○政府参考人(中川坦君) 先生が今、例に挙げられました通常程度の不作が二年連続して起こるというのは、確率的にいいますと三十年ないし四十年に一度の事態というふうに考えております。そういう場合でも八十六万トンから百一万トン程度を持っていれば対応できるというふうに試算できるわけでございます。
 平成五年のとき、作況七四、確かにそういうことは過去にもございました。そのときには二百五十九万トンの緊急輸入というようなことも行ったわけでありますけれども、非常に確率が低い事態を想定をして相当の大量の在庫を持つというふうにいたしますと、そのためにかかる経費というものが大変膨大になるということもございます。そこは、通常考えられ得る合理的な水準としてどれだけ持つか、そのことによって財政負担がどれだけかかるかといった、そういったところを、消費者の方々にもそういった具体的な数字をお示しをして、そして議論をいただいて、それで妥当な水準というのを考えていくのがアプローチとして適当ではないかということでございます。
 先ほど申し上げました三つの事例につきましても、備蓄運営研究会でこういった具体的な試算をお示しをして御意見をお伺いし、百万トン程度が妥当ではないかという御意見もいただいたところでございます。
○紙智子君 お金の、財政の問題ということも言われるんですけれども、安定して、やっぱり安心できる体制をつくっておかなきゃいけないということで考えるならば、やはり九三年、実際に私たちが体験したわけで、そのときの状況を振り返ってみても、百万トンというのがいかに危うい水準かということがはっきりすると思うんですね。
 九三年のときの米不足がどういうふうに起こったのかということを見ますと、九一年の十月の末には百八万トンの在庫があったわけです。それが、冷害と台風による被害で作況が九五となって、そのときに在庫は二十六万トンまで減少しました。それで、慌てて復田を求めたんだけれども、それが進まずに、翌年の九二年は作況一〇一でしたけれども、それでもなかなかやっぱり穴埋めするというまではない中で、次の九三年の凶作で、今言われたように二百五十九万トンですか、緊急の輸入をしなければならない事態になったと。ですから、適正在庫百万トンと言うんですけれども、今のこの言われている数字というのは一年の災害で吹き飛んでしまうんじゃないか、そうなったときに回復不可能な事態になるんじゃないかということでは、やはり教訓をしっかりと見てとる必要があるというふうに思います。
 そして、やはりことしの政府米の買い入れ量がたった十一万トンですよね。この十一万トンというのも、備蓄の問題も言われていましたけれども、その備蓄方式そのものもやっぱり見直しが必要なんじゃないかと思うんです。今、古米を主食用として市場に放出する回転備蓄方式ですね。それで、このやり方でいくと自主流通米の価格に引き下げに作用すると。それから、現在も政府米の在庫というのは九六年のお米からずっと残っているわけですよね。そうなりますと、もし今、凶作になったということで備蓄米を放出しなきゃいけないといったときに、この五年前のお米、古々米どころじゃないですね、五つ古がつくわけですけれども、そういう古いお米を国民の皆さんに食べてもらわなきゃならないということだと思うんですね。
 私は、北海道の農協の米対策本部の意見集約の中でも提案しているんですけれども、その中でも、政府が毎年四十万トンから五十万トンの買い入れを行って、そして過剰となった古米については、四十万、五十万トンは、自主流通米の価格に影響を与えないように、そこと離して飼料用として処理する、市場に出さずに飼料用として処理すると、そういうやり方、確かにお金はかかりますけれども、そうやってやれば生産者の立場からも消費者の立場からも備蓄のこの方式がやっぱりいいんじゃないかということが提案されているわけで、そういった意味ではやっぱり検討も必要じゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(中川坦君) 現在、備蓄の運営でとっておりますこの回転備蓄方式によります政府の備蓄運営、これは通常の状態を考えますと、政府が買い入れる数量とそれから政府が売り渡していく数量が毎年毎年およそ同じような数字で運営されていくと。ですから、適切に運営されていると。そういう状況を考えますと、政府が在庫を放出するということによりまして日本の国内の市場の供給オーバーをもたらすような、そういう供給オーバーを引き起こすというふうな状況にはなりません。したがいまして、直ちに自主流通米価格の引き下げにつながると、そういうものではないというふうに考えております。
 また、備蓄運営の一環としまして、恒常的に主食用以外の用途に供給するということをあらかじめ想定した運営を行うということは、先ほども申し上げましたように、財政負担が多額となってなかなか効率的な備蓄運営の観点からは問題が多いというふうに思うわけでございます。
 先ほど、平成八年の米は現在でも数十万トン残っているということを例に挙げられましたけれども、こういった事態がなぜ起こったかといいますと、これはやはりある時期に政府が百万トンあるいは二百万トンというような政府買い入れを行って、基調としまして供給オーバーの状態が続いたということで、自主流通米の価格のことなども考えまして政府の方の売却を控えてきたと、そういう結果起こったことでございます。
 そういうことからいたしますと、百万トン程度持っていると、今おっしゃいましたように、五十万トンずつ二年ぐらいかけて売っていく、そういう備蓄の操作ができるような、そういう水準に持っていくということが余り古いお米を主食に回さないということのためにも大事な点ではないかというふうに考えているところでございます。
○委員長(常田享詳君) 紙智子君、時間が迫っております。
○紙智子君 ちょっと時間がないので、あと一点だけ、セーフガードの問題で大臣に伺います。
 最初の質問の中で国井委員からも質問ありましたけれども、セーフガードの発動をめぐって、結局十二月の二十一日でしょうか、そこまで待って、それでもつかない場合はやるということなのでしょうか。
 私は、やっぱり手続のことを考えましても、結局そこから、仮に十二月の下旬に本発動の手続をとったとしても、実際には輸出国との間で三十日間話し合いをしなければならないことになっていますから、その意味では一月下旬になりかねないんですね。そうしますと、十二月、一月と、それで二月近くまでということになりますと、この三品目についても本当に大事な時期であって、このときに輸入のピークということになりますと大変な打撃を生産者が受けることになるので、これは本当に委員会の決議どおりやっていただきたいということを最後に申し上げて、質問とさせていただきたいと思います。
○委員長(常田享詳君) 答弁はよろしいですか。
○紙智子君 答弁、お願いします。
○国務大臣(武部勤君) 時間がありませんから簡単に申し上げますが、二十一日まで待ってなどという考えは毛頭ございません。私どもは、両国首脳による話し合いで解決しようという合意を重く受けとめなきゃなりませんし、両院の農林水産委員会の決議も、これも重く受けとめているんです。そして、ドーハで平沼大臣とともに石対外貿易経済合作部長とも会ってさまざまな議論をいたしました。そこで、さらに話し合いで解決すべく努力しようということで合意をしたわけでありますので、それに基づいて今、政府間の協議が行われているわけでありますし、さらにこの頻度を上げていこうということでございますので、一日も早く話し合い解決に全力を尽くすということがもう大前提であります。そして、どうしてもそれがうまくいかなかった場合には本格発動という腹を固めてこの話し合いに臨んでいるということでございまして、このことをぜひ御理解いただきたいと思います。