<第153国会 2001年10月25日 農林水産委員会 02号>


平成十三年十月二十五日(木曜日)   午後一時開会
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○農林水産に関する調査
 (野菜等三品目に係る一般セーフガード確定措置の発動に関する決議の件)
 (派遣委員の報告)
 (牛海綿状脳症問題に関する件)

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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。きょうは本当にお忙しい中、ありがとうございます。
 早速、ずっと続けてで申しわけないんですけれども、小沢参考人にお願いいたします。
 十月十八日に安全宣言が出されたわけなんですが、なお国民の中での不安、不信というのは払拭されていない状況だと思うんです。それで、やはりそれの信頼を回復するということでも、原因となっている問題、感染経路の解明ですね、これはやっぱり避けて通れないというふうに思うんです。
 そこでお聞きしたいんですけれども、この感染源となったと思われる肉骨粉、これがイギリスからEUへ、それからそのほかの国へということで流れていったわけですけれども、いわば直接そこからは輸入していないんだけれども、結局、第三国を経由して入るという形が、小沢さんがテレビでたしか言われていたと思うんですけれども、日常的に自由貿易の中ではそういうことはあり得るし、よくあることなんだという話もされていまして、そのあたりの実態について、やはり国際的なところで働いておられたというお立場からそのことをひとつお話しいただきたいことと、もう一つは、やっぱり各国が安全を確保するということでは検疫体制が大事だと思うんですね。迂回して入ってくるということを食いとめるということから考えた場合に、日本の今の検疫体制の中で改善しなきゃいけないことがあるのか、工夫しなきゃいけないとかいうことがあればお聞きしたいと思います。
○参考人(小沢義博君) ヨーロッパに英国から流れたものは、一たんEUの国内に入ってしまうと、国境がありませんので自由自在に動けるというのは現在も続いております。そういった意味で、ヨーロッパ内でつくられたもの、あるいは輸入されたものは、ほかの国に転送され、あるいはアジアに流れ、中近東に流れたということはあると思います。
 ただし、それにつけられているラベルといいますか、証明書みたいなものは案外信用が置けないということをこの前の国際会議でもみんなが認めたというわけで、余り信用するな、それだけに頼っていると危ないよという警告が出されました。そういった意味で、これからはラベルに余り頼らないということが一つのポイントではないかと思います。
 そのほか、いろんなルートで入ってくるので、検疫だけで今後はやっていけるかどうかという問題もあると思います。
 一つは、検疫で完全につかまるもの、例えば、動物では検疫所で調べて病気かどうかということはわかるんですが、こういう飼料の問題になってきますと、素通りするものがいっぱいあるんじゃないかという心配があります。この前の実はわらの問題、口蹄疫の場合のわらの問題、それから今度の肉骨粉の問題、そういったものは検疫で幾ら調べてみても出てくる問題じゃないんですね。素通りしている場合もあるわけです。畳の材料として入ってきたというようなわらが飼料に使われていたということもあるので、そういった盲点をついていろんなものが入ってきているという時代ですから、検疫体制もいろんな意味での検疫をやらなきゃいけない時代に来ている。それが、自分のところでやるものがよそのところでやられていたとか、そういう連携がうまくいっていないことが一つと、それから、将来の検疫のあり方というものをもう一回見直す時期に来ているんではないかと思います。それが一つ。
 それから、この機会に申し上げたいんですが、どうも去年の口蹄疫も今回のBSEも、安いものを買う、安いものは危険なんだということをもう認識する時期に来ているんじゃないかと思います。安いから買ってしまう、そういうことではだめなんで、それにどのくらいの危険があるか、危険度分析というものをきちっとやって、それをクリアした上で輸入するならいいんですけれども、それをしないでよその検疫所がやってしまったというようなことでは問題になると思います。
 そういう意味で、ぜひ将来は検疫ももう少し広い意味での検疫に変えることと、それから検疫自体をもう一回調べ上げて、検疫を素通りして入ったものはどうするかと。その場合には違う対処の仕方があると思いますね。いわばテロにやられたときと同じで、この狂牛病も、BSEもテロだと思っているんです。そういう意味で、そういったものが出たときに対処する対処の新しい方法が必要になる。いわゆる危機管理体制というのが、植物の場合、動物の場合、人間の場合、みんな必要になってくると、そういう時代に既に来ているんだと思います。
 そういった意味で、危機管理体制というものを農水も厚生省も、それからその他の機関でそれぞれ持っていて、いざというときはそれが一緒になって対処するということが将来は重要になってくるんではないかと思います。
 以上でございます。
○紙智子君 もう一つ、済みません、お聞きしたいんですけれども、肉骨粉についてはアジアにも多く入っていて、そして今回、日本での発生を通じまして、水際での対策が非常に遅かったということが指摘されているわけですけれども、肉骨粉の輸入をずっと続けてきていたという問題がありましたし、イギリスなどでは九〇年の段階から、今度、交差汚染という話もさっき説明の中にありましたけれども、牛から牛というのはストップされたんだけれども、結局、豚とか鶏というのはいいということで、そのまざり合いがあってそれが原因となったというふうに言われて、そういうことが問題になってその対策がとられてきたわけですけれども、その点でも日本はずっと使っていたわけですよね。
 その点で、一たん全面禁止ということになって、つい先日、鶏、豚については解禁ということになったわけで、そのことの是非は別としましても、混入するとやっぱり大変だということでは、しない保証ということで先ほど来もちょっと話がありましたけれども、そのあたりのところを、どういう工夫が必要なのかというところをひとつお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(小沢義博君) 先ほど来いろいろ申しましたけれども、結局、監視体制、監督ですね、実際に現場に入ってよく調べてみる。ただ、紙の上でそう書いてしまって、それを法律どおり守れと言うだけでは非常に危険なことが起こり得る。しょっちゅう行ってやっぱり調べることと、それからもう一つ、それだけではまだ心配なので、混入していないかということをきちっと科学的に検査する方法を早く打ち出す、この二つをやらないと完全に危険性は除けないというふうに考えています。これはヨーロッパではそう言われています。
○紙智子君 それでは、木下参考人にお願いいたします。
 政府が打ち出した、今回の大きな被害を受けられているということで、一つは牛の枝肉価格の安定の対策、それから肥育経営の安定対策の事業の補完とそれから子牛の対策ということで出されているんですけれども、これでもまだこの点が漏れているとか、もう少しこういう点が大事なんだということで御意見あれば伺いたいと思います。
○参考人(木下政夫君) ただいまの御意見でございますが、農家サイドといたしましては、昨年の口蹄疫あるいはことしの、今回のBSEによって大変衝撃を受けて、もう今どのような対策をしていただいたらよいかということで、大変、本当に経営が厳しくなりつつあるという、そういう思惑のもとに、新マル緊事業という肥育牛の経営安定対策事業ということが今行われておるわけでございますが、私たちは四月から六月期においては八千円の一頭当たりの積み立てをしているわけでございます。その中で、今回、四月から六月においては二万二千九百円の労働費が足りないということで出資していただいたわけでございますが、なお、今回の試算をしますと、九月から十月にかけましては非常に、今までよりは本当に二十万も三十万も足りないような状況でございます。
 今回、八千円の積み立てにおいて、最高、和牛では七万二千円の積立金が取り崩されるわけでございますが、交雑種においては三万四千円ということで、これも今、市場価格は半値に落ちている現状でございまして、非常に七万や八万の補償では労働賃金にもならない、素牛の本当に経費の段階までもならない状況でございます。
 そういうことを考えますと、これにまた特例措置として上乗せをしていただかないと、今後の畜産の継続はちょっと無理ではなかろうかなと、そんなふうに思っておる次第でございます。
 なお、最近、屠場の屠殺制限において屠畜ができない状況になっておりますが、我々はやはり三十カ月齢を目標に肥育をしている段階でありますので、それ以上になりますと、やはり病畜なり、牛でいえば脳溢血等も起こりますので、そういう焼却施設がないものですから、病畜の場合は屠場に運ぶことが今できませんので、小屋でみすみす死ぬのを待っている状況で非常に心苦しいところがあるわけでございます。
 そのために、やはり一日も早く焼却施設を充実していかないと、安くても我々は売るほかないわけでありまして、ぜひとも焼却施設の充実等をお願いしたいと思っております。
○紙智子君 やはり私も千葉やあるいは佐呂間を含めてずっと歩きまして、生産者の皆さんから寄せられた声の中で、やはり今度の問題を通じても畜産のあり方自身の見直しという問題も出されまして、コストを下げてやるということで安い飼料に頼って、輸入にほとんど頼らざるを得ないと、こういうことも含めて改善を図ってほしいという声も寄せられたんですが、この点について御意見を伺いたいと思います。
○参考人(木下政夫君) 自給自足ができれば一番よろしいわけでございますが、やはり日本の風土、気候において、大麦、小麦等は地方によってはできるところがあるわけでございますが、日本全土においてはそんなに、できる範囲は決まっているわけで、やはりトウモロコシにおいても、労賃の問題、コストの問題等で生産がなかなか伸びないというのが現状だと思っております。
 それで、やはり今何といっても日本は外国から安いものを買ってそれで生産せざるを得ない、人件費が非常に高いものですから。やはりそういうような習慣的なものが今起きまして、デフレの原因も私はそこに一番問題があるのではないかと思っております。
 やはり日本の労働力を奪って外国の労働力で賄っているわけでございますから、そういう点も含めまして、やはりこれから改善の余地が十分にあると思っておりますので、よろしくお願いしたいと思っております。
○紙智子君 それでは、次に日和佐参考人にお願いいたします。
 今回のことで、残念ながら、やはり国民の健康や食品の安全を第一にということでの行政がなされているとは言えないんじゃないかということが今度の問題を通じても出てきました。食品安全の行政の根本的な打開といいますか、改善の問題が求められているわけですけれども、これまでも食品衛生法の改正を求める声が消費者の中から高まってきたわけですけれども、いよいよ緊急になっているというふうに思うんですね。
 その点で、先ほどもちょっとお話がありましたけれども、この食品衛生法の問題でも、例えば目的の中にきちんと国民の健康のために食品の安全性を確保するんだということを明記するとか、予防の原則とか検査規定の強化とか、こういったことの改正が必要じゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○参考人(日和佐信子君) 先生のおっしゃるとおりでございます。
 つけ加えて言わせていただきますと、消費者の参加、それから情報の積極的な提供等もつけ加えられた法律への改正が必要だと思っております。
○紙智子君 もう一点お願いいたします。
 牛の個体識別システムという問題が今言われていまして、もしか病気が発生した、発見されたときにはこれはすごく大事な役割を果たすわけですけれども、政府も重視してこれを導入するということで言われているんですが、ただ、今出ているのは生産者から屠畜場までの間なんですね。実際にそれが市場に出て小売店に回った段階になると、これはわからなくなるというのが今の段階で、EUなどは小売まで出てもわかるような仕組みをつくろうということで、そこまで徹底しないと本当の意味での安心が得られないということで取り組まれているということなんですけれども、これは狂牛病だけに限らずいろんなほかの病気にも共通することだと思うんですけれども、その点についてのお考えをお聞きしたいと思います。
○参考人(日和佐信子君) ヨーロッパそれからアメリカでもトレースアビリティーという考え方でこのシステムが完備しつつあります。それは農場から食卓までの安全性を確保する、したがって、食卓のところで何か問題があった場合にはトレースする、さかのぼってどこに原因があるのかということがチェックできる仕組みですね。
   〔委員長退席、理事田中直紀君着席〕
 フランス等では、牛についてすべてナンバーが振ってありまして、履歴書がついていまして、どのような育て方をされ、どのような病歴があり、どのような治療をしたかという履歴がすべてついて回りまして、それが小売まで行くという仕組みになっています。そういう仕組みを日本でも導入する必要が出てきていると思っています。
○紙智子君 それでは、福岡参考人に最後にお聞きしたいと思います。
 それで、一番やっぱり敏感に消費者の反応があるという、あらわれるところだというふうに思うんです。焼肉店に全然人が入らないとか、軒並み本当に売り上げが下がってきているということで、先ほどのお話からもそういう実態が明らかになっていると思うんですが、今、食肉の業界全体が受けている、もっと影響を受けている中で、業者の皆さんへの対策ということで国が出した緊急融資ということで政策があるんですけれども、運転資金の融資ですとかつなぎ資金の無担保無保証ということなどを含めて出されているんですけれども、これで実際に足りるのかということを率直にちょっと御意見を伺いたいと思います。
○参考人(福岡伊三夫君) 融資の関係ですが、大小あるわけですね。末端の本当の小売店、流通業者、それを全部包含しているわけです、私たちの組織団体は。流通業者の場合には億単位ですね。結局は大きいところほど逆に大変なんですね、私たちが聞いてみると。やはり全国のデータを一週間ごとに皆さん集めているわけですよ、事務所では。その中で、やっぱり大きなところは経費も、ランニングコストがかかっているわけです。それで、家族労働の場合にはある程度は我慢できるわけですね。
   〔理事田中直紀君退席、委員長着席〕
 だから、そういうふうな点の温度差があるというふうなことで、もちろん一般小売店の場合には一千万ないし二、三千万で対応できるだろうというふうに私たちは思っておるんです。大きなところになると、やっぱり中小企業公庫の三億、四億、五億というところまで結局はフォローしてあげないとまずいだろうというふうに思って指導しておるわけですが、そういうふうなことが現状でございます。
 それから、先ほど来、こちらの方へ、消費者に対する点について啓蒙関係はどうなのかと。
 私たち食肉関係では、顔の見える販売というふうなことで、実は今、道筋がわかるように、Aというふうな畜舎でAという人が生産しましたというふうなことで、結局販売の方までそれが全部わかるような対策をやっておるんですが、まだまだこれも額が少ない、補てん額が少ないというふうなことで、全面的にフォローができかねているというのが現状でございます。
 そういうふうな点ももう少し厚くひとつお願いできればなというふうに、御指導をお願いしたいというふうに考えております。