◇パレスチナ・ガザ危機と外務省によるイスラエル・パレスチナ合同青年招へい事業について/パレスチナ・ガザ危機とODA大綱の目的について/NGO団体の支援について/岸田首相のフィリピン訪問とODA、OSAの支援について/北方隣接地域での啓発強化対策について/北方四島周辺の水域での安全操業について/世界の先住民族への謝罪の流れと外務大臣の認識について/アイヌ施策推進法の5年後の見直し規定について
○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
上川外務大臣に、まず、パレスチナ・ガザ危機についてお聞きします。
イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への攻撃は今なお深刻さを増しています。日本はパレスチナへ様々な支援を続けてきました。ガザ地区への支援には、病院への機材整備など様々あります。外務省は、イスラエル・パレスチナ合同青年招へい事業として、今年は八人招待しました。二十三回を今まで超えて、二百二十人以上が招待されています。
現在、支援してきた設備や招聘した八人を始めとした青年たちや子供たちの実情について把握しておられますか。
○政府参考人(外務省国際協力局長 遠藤和也君) お答え申し上げます。
今委員御質問のとおりでございまして、ガザ地区におきましては、一九九三年以降、学校、保健センター、難民用住宅、下水処理場等の建設、あるいは医療機材の供与等々の支援を行ってまいったというところがございます。
現下の情勢におきまして、我が国の支援によって供与された機材あるいは施設の被害状況等々につきまして直ちに調査するということにつきましてなかなか困難というところはございますですけれども、状況許すようになった段階において、しっかりとしかるべく確認をしたいというふうに考えておる次第でございます。
○紙智子君 大臣にお聞きしたんですけれども。
それで、今非常に気になるわけですよね、せっかくお呼びした人たちがどうなっているかということなんだけど、それも把握できないほど危険な状態であるということだと思うんです。テレビ報道でも凄惨な状況が報道されています。
昨日、NGO団体の方から伺ったんですけれども、やっと現地とつながって食料や物質を運び込んだ三つの教育施設のうち、無事だというふうに聞けたのは一か所だけだったという話とか、それからイスラム大学は破壊されている、北部にあるインドネシア病院は部分攻撃を受けて現在イスラエルの管理下にあると。そこにはJICAを通じて医療機器を支援していたということです。
ODAの大綱の目的は、平和で安定し、繁栄した国際社会の形成に一層積極的に貢献することを掲げています。子供や女性や市民の命が失われているということが紛れもない事実でありながら、なぜ即時停戦ということを言えないんでしょうか。(発言する者あり)
○委員長(藤川政人君) 速記を中止してください。
〔速記中止〕
○委員長(藤川政人君) 速記を起こしてください。
高橋参事官。指名でございます。(発言する者あり)上川外務大臣。
○国務大臣(外務大臣 上川陽子君) 今、ガザの情勢につきましては大変人道的に厳しい状況に置かれているということにつきましては、本当に胸の痛むというか、もう子供たちの姿、また女性たち、御高齢の皆さん、そうした姿を見るたびごとにもう本当に締め付けられる思いでいっぱいでございます。何とかこの人道的な危機を乗り越えていくにはどうしたらいいのかと、こうした現実的なアプローチを、周辺の国々を含めまして動いている状況でございます。
日本の姿勢につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、こうした状況の中で、現実的に一時的ヒューマニタリアンポーズという形で少しずつ停戦に向けての一つ一つの成果、成果を重ねていくと、こういう必要性の中で取り組んできて、主張してきているところでございまして、その意味で、人道目的の戦闘休止及び人道支援活動が可能な環境の確保、これに向けまして尽力をしてきたところでございます。
私自身、G7の外相声明におきましても、またこれは十一月の八日、また十一月の二十九日、また安保理決議につきましては十一月の十六日に、まさに子供を中心とした被害者の方々の目線という形で今の状況をどうするかということを決議したものでございますが、こうした採択に向けましても、また、イスラエルやパレスチナ、ヨルダン、訪問させていただいた機会、またその後も多くの電話会談も重ねてきているところでありますが、そうした中で外交努力を重ねてきたところでございます。
情勢は非常に予断を許さない状況でございますので、必要な外交努力を更に粘り強く積極的に続けてまいりたいと考えているところでございます。
○紙智子君 いろいろ調査するためにも、停戦がされないとできないわけですよ、危ないですから。だから、是非停戦ということを言っていただきたいんですよね。
二〇一四年の衝突の際には、外務報道官の談話というので、我が国は、無辜の市民、一般市民に痛ましい犠牲が出ないよう、早急に停戦するように強く求める、尽力するというふうに言っていたわけですよ。ですから、今は当時と比べても明らかに後退していると思うんですね。国際法違反であるジェノサイドを許さないと、即時停戦を求めるということで、確固たる姿勢が重要ではないかというふうに思うんです。
次に、危険な現地支援に当たっては、多くのNGO団体が文字どおり命懸けで支援されているんですね。政府は、緊急人道支援としてジャパン・プラットフォームへの供与を六億円決定しています。また、即効性があるのは、多くのNGO団体が申請できる日本NGO連携無償協力、N連、ここへの支援なんですね。緊急支援枠での創設を求めているんですけれども、これ、検討はされているでしょうか。
○政府参考人(外務省国際協力局長 遠藤和也君) お答え申し上げます。
まず、御指摘のジャパン・プラットフォームを通じました緊急人道支援につきましては、食料、生活物資、保健医療、水、衛生などの分野で支援を行うという予定にしておりまして、現在、各団体にて調整が行われているというところでございます。これを迅速に進めてまいりたいと考えております。
二つ目の、日本NGO連携無償資金協力、いわゆるN連でございますけれども、こちらの方の対ガザ開発支援の可能性につきましては、今年度のN連の申請は締め切っておりまして、現在、各案件の契約締結に向けた手続を進めているというところでございます。来年度の日本NGO連携無償への申請等あれば、適切に検討してまいりたいというふうに考えております。
○紙智子君 現場をよく知っているNGOの団体の要望もありますので、重ねてこれ支援求めたいと思います。
それから次に、ODAとOSAなんですけれども、十一月に岸田首相がフィリピンを訪問して、沿岸監視レーダー約六億円の供与を、OSAの枠組みそしてODAの支援と、同じ日にこれ書簡で署名してきたんですね。
以前、フィリピンの沿岸警備隊にODAの予算で警戒監視レーダーを譲渡しましたけれども、どんなレーダーなのか、その能力や入札情報を公開されるのでしょうか。
○政府参考人(外務省国際協力局長 遠藤和也君) お答え申し上げます。
供与品目がテロ対策の機材であるということもございまして、相手国との関係上、御質問の能力、入札価格といった諸点につきましてはお答えを差し控えさせていただいてきているというところでございます。
○紙智子君 つまり、相手国との関係で、意向次第で公開しないという、公開するかしないかというのは決まっていくということですよね。
ODA大綱は、軍事的用途及び国際紛争を助長するものは使ってはならないとなっていて、同時に、実施プロセスの透明性の確保が必要だとなっているんですよ。それなのに公開されないと。
じゃ、今回のOSAによる監視レーダーの情報というのはどこまで公開されるんでしょうか。
○国務大臣(外務大臣 上川陽子君) このOSAについてでありますが、OSAによる支援の適正性、公正性確保や、また説明責任履行の観点から、支援の透明性を確保するということは重要であると考えておりまして、政府として適切な情報公開に努めていく考えでございます。
その観点から、各OSA案件の実施に際しまして締結する交換公文におきまして、支援対象国に当該案件に関する情報開示への協力を義務付ける等の対応を行っているところであります。
他方、いかなる情報を開示できるかにつきましては、支援対象国の軍の運用等に関する情報等、支援対象国及び我が国の安全保障上の理由から提供、公表が困難な情報もあり、総合的な判断が必要となってくることから、個別具体的に判断していくところでございます。
いずれにいたしましても、支援対象国の協力を得つつ、政府として適切な情報公開に努めていく考えでございます。
○紙智子君 つまり、ODAかOSAの支援が、これ相手国が公開できないとすれば、全く透明性が図れないことになるんですよね。今回のように同じ日に約束してきたと、そういうことになると、客観的判断が付かないわけです。原資は税金だから、本来、国民に広く知らせるべきだと思うんですね。
イギリスのロイター通信は、国際援助の範囲を軍事関連プロジェクトにも拡大するという日本の決定は、昨年十二月に日本政府が五年間で防衛費を倍増すると発表したことにも続くものであるといって警鐘を鳴らしているんですよね。
ODAの非軍事原則をこれ形骸化するようなOSAというのはやめるべきだということを申し上げておきたいと思います。
次に、北方隣接地域での啓発強化対策についてお聞きします。
修学旅行の見学施設が老朽化で深刻な状況です。こちらは、(資料提示)ちょっと見えないと思うんですけど、これは二〇二〇年に当委員会としても現地に行ったところなんですけれども、老朽化がしていて、深刻な状況なんですね。標津町にある北方領土館ということで、グーグルマップのストリートビューで今年十月に撮影されたものなんですけれども、海沿いにあって、外壁が剥がれていて、コンクリートの塗装がむき出しになって、雨漏りがすると。
修繕や改善、改築が求められているんですけれども、この要望に応えることはやっぱり啓発活動の強化につながるというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(沖縄及び北方対策担当大臣 自見はなこ君) お答えいたします。
御指摘の標津町の北方領土館については、今年十月に私も伺った際、北方領土の隣接地域を伺った際に、老朽化についても御要望をいただいたものであり、現在、標津町と内閣府の事務レベルで具体的な相談を進めているところであります。
北方領土館は、公益社団法人北方領土復帰期成同盟の建物でございまして、こうした関係者の方々を含め、丁寧に話し合っていくことが重要だと考えてございます。
内閣府では、北方領土問題についての国民世論の啓発に取り組んでございまして、啓発の手法が多様化する中で、特に若い世代に関心と理解を深めてもらうため、デジタル技術の活用による情報発信や北方領土隣接地域への修学旅行への誘致など、幅広い取組を行っているところであります。
内閣府といたしましては、標津町や北海道など関係の方々から丁寧にお話を伺いながら、国民世論の啓発や若い世代を始めとする訪問者への訴求、また他の施策と組み合わせた多目的利用と、また財源確保の模索など、様々な観点から整理していくことが必要だと考えてございます。
内閣府としては、どのような対応が具体的に考えられるのか、引き続き関係の方々とともにスピード感を持ってしっかりと考えてまいりたいと思います。
○紙智子君 北方問題を知り、学ぶためにも整備が必要だと思うんですね。あわせて、千島歯舞居住者連盟の事務所や人員配置の支援なども必要ですので、併せて検討していただきたいと思います。
それから、ちょっと、次は時間がなくなってしまったので要望にとどめておきます。安全操業の問題です。
ロシアは、今年一月、北方四島周辺の水域での安全操業の政府間協議を凍結しました。スケソウダラ、ホッケ、タコ漁も出漁できていません。漁業者に対して、漁場転換を含めてしっかりとした支援を継続していただきたいし、操業に係る人件費などの一部を今支援されていると思うんですけれどもね、これ是非続けていただきたいということを要望しておきたいと思います。
それで、次に、アイヌの問題なんですけれども、メキシコ大統領やデンマーク首相を始め、世界では先住民族の同化政策などへの謝罪の動きが広がってきています。
世界で広がっているこうした動きについて、外務大臣の御認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(外務大臣 上川陽子君) 二〇〇七年でございますが、先住民族の権利に関する国際連合宣言、これが国連総会におきまして採択をされました。そして、翌年の二〇〇八年に、アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議が衆参両院で採択されたところでございます。
これを受けまして、政府におきましては、アイヌの方々が我が国の先住民族であるという認識の下で、内閣官房が中心となりまして、御指摘のアイヌ施策推進法、この制定を含む取組を進めてきているものと承知をしております。
アイヌの方々が民族としての名誉とまた尊厳を保持し、これを次世代に継承していくことは、多様な価値観が共生し、活力ある共生社会を実現するためにも極めて重要であると考えているところであります。今後も、アイヌの方々の誇りが尊重される社会の実現に向けて、必要な取組が行われていくべきというふうに考えているところでございます。
謝罪についてのということでの御質問でございますが、外務大臣としてお答えすることにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。
○紙智子君 ちょっと非常に残念に思っております。またこれは、この後も質疑したいと思います。
それで、もう一点だけあるんですけれども、アイヌ推進法の、今言われた、施策の推進法に関するその法律の附則で五年後の見直しとなっていまして、現在の検討状況を最後にお聞きしたいと思います。
○政府参考人(国土交通省大臣官房審議官 田村公一君) お答えいたします。
アイヌ施策推進法附則第九条におきましては、「政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」とされております。
アイヌ施策推進法は令和元年五月に施行されておりますので、それから五年経過後の令和六年五月以降に法の施行状況について検討を行う考えでございます。
○紙智子君 参議院の附帯決議の中でも差別的な言動をやっぱり解消していくという問題や具体的な措置を求めているわけで、やっぱり、国内の政策の検証と、それから世界の動きを把握して、アイヌ新法を発展させるように強く求めまして、質問を終わります。