<第212回国会 農林水産委員会 2023年12月5日>


◇酪農に対する現状認識について/1頭あたりの赤字分10万円の補填について/酪農経営改善緊急事業の申請数と予算の執行状況について/予算の組み替えと酪農家への直接支援について/加工原料乳生産者補給金単価の計算式について/補給金単価の算定方式の見直しについて/現在の加工原料乳生産者補給金制度とチーズ振興について/生乳の需給調整と国の責任ついて

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、二十分ってあるようで時間がないので、ちょっと御答弁は極力簡潔にお願いをしておきたいと思います。
 コロナ感染症による需要の減少、円安、ウクライナ危機などによる輸入資材、餌の高騰で畜産、酪農は歴史的な危機にあると言われ、昨年来、畜産の灯を消すなという運動が広がりました。酪農家の窮状を直接お聞きになった、当時は野村農水大臣だったわけですけれども、三月に畜産・酪農緊急対策パッケージを出されました。一頭当たり北海道で七千二百円、都府県で一万円の直接支援をされました。飲用向けの乳価も加工向けの乳価も上がったというのは、不十分とはいえ、生産者からは、いや、声を上げてよかったなというふうに歓迎をされました。しかし一方で、離農に歯止めが掛からない現実があるわけです。
 先日、十一月に北海道の道東地域に行きました。ある地域では、十二月に二戸、来年四月にも一戸離農するんだと、クラスター事業で設備投資した人は、収支が合わずに更に融資を受けて借金が膨らんでいると、このままでは地域も農協ももたなくなると強い危機感を語られました。北海道では、乳価が上がっても借金の返済額を含めると一千万以上の赤字が続いていて、酪農家の戸数も五千戸を切りました。この一年では最も離農が進んでいると聞いています。
 大臣にお聞きしますけれども、酪農の危機は脱したと言えるのか、まだ脱していないのか、その認識、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 宮下一郎君) 酪農経営については、飼料その他の生産コストが高止まりしていること、また脱脂粉乳需要の低迷が続いていることなどを考えますと、依然として厳しい環境が続いているというふうに認識しています。一方で、昨年十一月以来、乳価は累次引き上げられておりますし、改善の方向も、兆しも見えているというふうに思います。
 ですから、危機を脱したという、手放しで脱したということではないけれども、いい方向に向かいつつある、これを後押しして国際情勢の変化を受けにくい生産構成に転換すること、また国産飼料の生産、利用の拡大を進めて、国内飼料の生産基盤に立脚した酪農経営に向かっていく今一番大切なときだというふうに考えています。

○紙智子君 改善はしつつあるけれども、脱したというふうには言えないということですよね。
 それで、三月にパッケージを出された後の六月一日に、この参議院の農水委員会で畜産・酪農に関する参考人質疑をやりましたよね。それで、そのとき金谷雅史参考人が、既に一頭当たりでいうと十万円以上の赤字を被っているんだと、同額の赤字補填を求めたいというふうに言われました。
 それから、六月の二日には、帯広で北海道農業法人協会や十勝酪農法人会と農林水産省との意見交換会が行われて、そこでも酪農家に対して経産牛一頭当たり十万円の支援というのを求める要望が出されたというふうに聞いているんですけれども、この要望に応えることできませんか、大臣。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) 酪農経営の収益性は飼料生産基盤の規模や輸入飼料への依存度により異なっておりまして、国産飼料に立脚した酪農経営では経営状況が改善の兆しをしてきている方もおられると。一方、飼料生産基盤を持たずに輸入飼料に依拠しながら規模拡大をしているような方が、やはり、どうしても輸入が高くなった結果、経営状況が苦しくなっているというようなことを承知をしております。そういう中から、一頭当たり十万円の支援の要請というのが聞いているところでございますが。
 農水省といたしましては、乳用牛に対して一頭十万円というような支援をすることは難しいと考えてございますが、これまでも配合飼料価格の高騰に対しまして緊急補填などやらせていただいてきましたし、各種の経営安定対策やらせてきていただいております。また、大臣からもございましたとおり、国産飼料の生産、利用の拡大をしっかり進めるというようなことで、安定した、酪農経営の安定に努めていきたいというふうに考えてございます。

○紙智子君 乳価が上がっても経営は好転していないんですね。離農にも歯止めが掛かっていないという現状です。
 三月のパッケージに対して生産者は、これで首の皮一枚つながったと言いつつも、一息つける状況ではないというふうに言っているんですね。新たな支援策が必要じゃないかと思うんです。
 農林水産省は、乳牛一頭を淘汰すると十五万円支援するという酪農経営改善緊急事業を行いました。処分する目標は四万頭だったと思うんです。現在の申請数と、この予算の執行状況について教えてください。

○政府参考人(農林水産省畜産局長  渡邉洋一君) 酪農経営改善緊急支援事業、いわゆる早期リタイア事業ですが、本年十月末の時点で約六千頭の申請でございます。事業継続中でございますので執行額がまだ決まっているわけではございませんが、この申請に所定の所要金が支払われた場合には、約八億円の実績の見込みとなります。

○紙智子君 まあ四万頭の目標ということなんだけれども、今の話だと六千頭の申請があり、大体、これからの支払の見通しとしては八億円ぐらいということなんですよね。予算額が五十億円なんですよ。執行額がだから八億円だとすると、使っていないのが四十億円以上あるわけですよね。
 現在、北海道では、生産抑制をし過ぎてしまって生乳生産に影響が出ると、このままでは生産基盤が崩壊しかねないというふうに言っているんです。乳牛の淘汰はこれ以上進まないんじゃないかと思うんですね。
 予算は、やっぱり牛を殺すためではなくて生かすために使うべきではないかと思うんですよ。乳牛を淘汰する予算が四十億円前後余っているということであれば、だったら三月にやったように生産者を直接支援する事業に組み替えてはどうかと、これ大臣の判断で、政治判断で是非やっていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 宮下一郎君) 基本的に、一定の言わば所得補償的な支援になると思うんですけれども、こうしたことを実施しますと、需要に応じた生産が行われなくなって、逆に過剰生産の懸念が生じるとか、また、所得を補償することによって乳価が低くゆがめられるおそれもあるなど様々な懸念も予想されておりますので、そうしたやり方は望ましくないんではないかというふうに考えております。
 むしろ、農林水産省としましては、現下の酪農情勢を踏まえて、酪農支援のための必要な事業として、例えば、脱脂粉乳の在庫低減対策であるとか、国産チーズの競争力強化対策でありますとか、耕畜連携などによる国産飼料に立脚した経営の推進、こうしたことで構造自体を前向きなものに転換していく、そうした支援をやっていこうと考えているところであります。

○紙智子君 だから、やっぱりその考え方自身のところをもうちょっと変えないといけないんじゃないかなと思うんですよ。需要に応じたことをやらないと過剰になるとか、所得補償的なことをやるといろいろ狂ってくるんじゃないかと言うんだけど、問題はやっぱり、今緊急の状況で、このまま放置すると離農がどんどん続いちゃうよってことなんですよ。
 生産者は一頭十万円の支援を求めていると。報道によると、北海道が一頭五千円の交付を決めているんですね。やっぱりそうやって直接やるということが必要だと思っているからこういう対策だと思うんですよ。酪農に詳しい学者も、直接的な所得補填が効果的なんだということも言われているわけです。酪農危機を打開するための緊急支援を是非求めたいというふうに思います。要望しておきます。
 それから次に、加工原料乳生産者補給金についてなんですけれども、これ、計算方式の見直しは、生産規模の大小を問わず、多くの生産者から出されています。
 北海道の道東地域を中心にマイペース酪農というのが行われていて、今年十月に、毎日新聞社と朝鮮日報社が主催して、優れた環境保全活動を行っている個人や団体を表彰する日韓国際環境賞というのを受賞しているんですよね。小規模ですよ、頭数減らしてやっていますから。そういう小規模な家族経営の皆さんからも補給金を見直してほしいという要望が出ています。
 なぜ、これ、規模の大小を問わずこの見直し要望が出ているのかということですけども、お配りした資料見てほしいんですよね。

資料 「加工原料乳生産者補給金単価」などの上昇額と「最低賃金(全国加重平均)」の上昇額

 この資料を見ますと、補給金単価の上昇額というのと、それから最低賃金の上昇額ということで並べて書いております。
 二〇〇一年の脱脂粉乳、バターの補給金の単価は十円三十銭です。その後、制度変更があったので単純ではないんですけれども、注目してほしいのは水色を掛けている上昇額です。補給金は二〇〇一年から二〇一一年の十年間で上がっているのは一円六十五銭だけですよね、一円六十五銭。一方で、右側の最低賃金はということで見てみると、少ないとはいえ七十三円上がっているんですね。補給金の毎年の上昇額ということで見ると、これ、何銭、何銭の単位で、一円にもなっていないわけです。マイナスの、赤で書いているマイナスの年もありましたし、近年を見ても、次の欄のところですけども、二〇二〇年は五銭、その後はずっと上がらずに、今年は四十九銭しか上がっていないんですね。最低賃金は今年ようやっと千円を超えて、労働者の所得を上げようという議論になっているのに、再生産を確保する仕組みである補給金の上昇額というのは毎年一円にも届かないと。
 現在の計算式で生産者の理解が得られると思われますか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 宮下一郎君) 加工原料乳生産者補給金制度につきましては、酪農経営の安定や加工原料乳の生産地域における再生産を確保するための基礎的な役割を果たしており、また、その単価等についても客観的な指標を基にした算定ルールにのっとっておりますので、その機能や適切な実施状況については多くの酪農家の皆様の理解を得られているものと考えています。
 その上で、今般のように酪農経営が厳しい環境にある中で、加工原料乳生産者補給金制度の適切な実施に加えて、酪農経営や生乳需給の安定のための各種施策を講じてきております。こうした施策の実施によって酪農関係者の皆様のより一層の理解を得ることが重要であるというふうに考えています。

○紙智子君 この補給金単価の算定の考え方というのがありますけど、その中には、補給金単価は、経済状況が著しく変化した際に見直すとあるわけですよね。酪農、畜産はコロナ感染症や輸入資材の高騰で再生産が困難になっているわけです。まさにこの経済状況が著しく変化したという規定に当てはまるんじゃないんでしょうか。
 この補給金の算定方式を見直すべきではないかと。元々は不足払い制度だったんだけど、いろいろ議論があってこういうふうに変えたんだけど、それからまたもう随分たつわけですよね。状況も変わってきている中で、やっぱりいろいろ現場から言えば、これだけ大変だって要求するんだけど、出てくる回答はいつも何銭ということで、回答が出てくるたびにがくっとなったりするわけですよ。
 ここをもっとやっぱり見直すべきじゃないかというふうに思うんですけど、いかがですか。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) お答えをいたします。
 委員から加工原料乳生産者補給金単価と、あとそれから最低賃金の比較の御説明をいただきました。
 委員からまた、その後ございましたとおり、かつて暫定措置法、古い時代は単価方式ではなくて不足払い方式でございました。そのときは、加工原料乳の基準取引価格を定めて、かつ、その基準取引価格は乳業の人がちゃんと払ってもらうというような制度的な仕組みにしておって、さらにそれで足らない部分を不足払いとして補填をしていたと。
 それは暫定措置法の下でしたけれども、改正をいたしまして、乳代は、もう基本的に政府は関与せずに、乳業、生乳団体と乳業メーカーが相対で交渉して決めるということにされているわけでございまして、加工、この加工原料乳の補給金単価、現在の仕組みではこの単価は乳代ではございません。これはあくまでも加工原料乳の価格の不利を、飲用についてはもちろん払わないわけですけれども、加工原料乳が不利であるということに着目して、その不利を補正するために支払う加工原料乳の言ってみれば単価になるわけで、加工原料乳についても基本は乳業メーカーからの、はい、大変失礼しました、でございます。
 そういった算定方式ですので、単価の水準が安定的なものとなるように、生産に要する直近のコストの変動や物価動向を考慮して、移動三年平均を用いて算定しています。単年度のみで算定しますと、生産コストの影響を大きく受けて、あるときは大きく上がったり、あるときは大きく下がるというようなことになりますと、生産者が先を見通した安定的な経営が困難となるということでございますので現行のルールのようなものになっているわけでございまして、現時点でこのルールを見直すことは考えてございません。

○紙智子君 JA北海道は、子牛の価格や副産物価格が乱高下するので、この分を外した形でキロ当たり二十円以上の所得目標を目指しているということなんです。ですから、現在の副産物価格を含んだ算定方式は検証する必要があるんじゃないのかなということも考える必要があるんじゃないかと思います。
 それから、チーズ振興を考えても、現在の制度を検証して見直しが必要じゃないかと。乳牛が過剰、あっ、生乳が過剰になってバター用に仕向けると、今度脱脂粉乳も一緒に増えるわけですよね。こういう心配がないのがチーズの生産だと思うんですよ。
 それで、配付資料の青い枠の中を見てください。くくったところを見てほしいんですけれども、二〇一六年、十五円二十八銭ありました。脱脂粉乳とバターとチーズ向けを合わせると、これ二十七円九十七銭なんですね。二〇一五年にTPPを受け入れて、制度改正が行われて、二〇一七年からは新たに生クリームを対象にした上で単価を一本化したんですよね。結果どうなったかというと、十五円二十八銭あったチーズ向けが一本化によって十円五十六銭に減ったと。
 これでチーズ振興のインセンティブというのは働くのかというふうに思うんですけれども、これ、政府参考人、いかがですか。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) 加工原料乳生産者補給金制度におきましては、平成二十九年度以降、御指摘のとおり、乳製品の高い生クリーム等の液状乳製品を対象品目に追加することと併せまして、乳価の低いチーズも含めて補給金単価を一本化したわけでございます。
 これによりまして、乳価の高い生クリームの生産が促されること、それから生クリーム、バター、チーズ、それぞれの用途の需要に応じて仕向け先の変更が柔軟に行えるようなことになったということで、生産者、生産サイドにメリットが生まれているものというふうに理解をしてございます。

○紙智子君 乳牛、乳製品の市場規模というのは、生乳換算で約千二百万トンです。輸入乳製品は四百四十五万トン。全体の三分の一を占めるわけですよね。生乳は常に過剰感が生まれるということがあるわけです。輸入チーズを国産に置き換えることが必要だと思うんです。
 同時に、過剰になってもこれ需給調整は専ら生産者の自己責任にされていて、この構造をどうするのかというところにも課題があるんじゃないかと思うんですね。国が需給調整にどう責任を持つのかという議論も必要ではないかと思うんですけれども、この点についても一言お願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 宮下一郎君) 生乳需給の安定のためには、基本的には、酪農家の皆様自らが市場ニーズを捉えて需要に応じた計画的な生産に取り組むことが重要であると考えておりまして、国としてはそうした取組を支えていきたいと考えているところであります。
 牛乳、生乳需給は、現在、ヨーグルト需要の低迷や製品価格の値上げの影響もありまして、特に脱脂粉乳が緩和傾向で推移しているところです。このため、本年度も、生産者団体と乳業が協調して行います脱脂粉乳の在庫低減対策を国としても支援しておりまして、着実に成果が出ております。
 一方で、もしこうした対策を講じなければ在庫が積み上がってしまう状況は変わっていないということでありまして、農林水産省としましては、今後もこのような取組を引き続き支援をして、需要に応じた生乳の生産を支えていきたいと考えているところであります。

○紙智子君 もちろん在庫対策はもっともっとやらなきゃいけない大事なことだと思いますし、価格転嫁の議論もあると思うんですけれども、やっぱりそれだけで生産者の所得が保障されるという問題もあるわけですよね、保障されるのかという問題もあるわけです。
 酪農は、やっぱり規模拡大をし過ぎて借金を返済するために、やめるにやめられないという状況もあったり、それから、住民が減ってきてコミュニティーの維持ができなくなっているという状況もあるわけです。畜産の危機の中で、規模を拡大した生産者が離農した跡地の問題なんかもあるわけですよね。
 是非、生乳の需給調整に私はやっぱり国がちゃんと責任を持つと、生産者の下支えするという仕組みを検討することを強く求めまして、質問を終わります。
(略)

○横沢高徳君 私は、自由民主党、立憲民主・社民、公明党、日本維新の会、国民民主党・新緑風会及び日本共産党の各派並びに各派に属しない議員須藤元気君及び寺田静君の共同提案による畜産物価格等に関する決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    畜産物価格等に関する決議(案)

  我が国の畜産・酪農経営は、依然として担い手の高齢化、後継者不足が進行しており、畜産物の生産基盤は弱体化している。また、飼料等の資材価格の高騰により生産コストが上昇している一方で、畜産物への価格転嫁は十分とは言えず、さらには家畜伝染病の発生・まん延の脅威に常に晒されているなど、畜産・酪農経営を取り巻く環境は厳しいものとなっている。これらに対応し、畜産・酪農経営の安定と営農意欲の維持・向上を実現するとともに、畜産物の安定供給を確立することが重要である。
  よって政府は、こうした情勢を踏まえ、令和六年度の畜産物価格及び関連対策の決定に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。

 一 加工原料乳生産者補給金については、飼料等の資材価格の高騰等により酪農経営が危機的な状況であることを踏まえ、中小・家族経営を含む酪農経営が再生産可能なものとなるよう単価を決定すること。集送乳調整金については、物流の二〇二四年問題を始めとする輸送環境の悪化を踏まえ、条件不利地域を含めて確実にあまねく集乳を行えるよう単価を決定すること。総交付対象数量については、乳製品向け生乳消費量を適切に把握し数量を決定すること。
   また、酪農家の努力が報われるよう畜産経営の安定に関する法律の趣旨に即して生乳の需給の安定を図り、酪農経営の継続、所得の安定、将来的な消費及び生産力の回復のための支援策を早急に講ずること。加えて、需要の減少により高水準で在庫が推移する脱脂粉乳については、需給状況を慎重に検証した上で国家貿易による輸入枠数量を決定するとともに、在庫低減対策等の取組を支援すること。さらに、国産チーズの競争力強化に取り組むこと。
 二 肉用子牛生産者補給金制度における保証基準価格等については、中小・家族経営を中心とする繁殖農家の努力が報われ、営農意欲が喚起されるよう、生産コストの上昇を踏まえ、再生産を可能とすることを旨として適切に決定すること。また、子牛価格が低迷する中、経営環境が悪化している肉用子牛生産者の経営改善を支援するとともに、肉用牛の生産基盤の維持・強化を図るため、優良な繁殖雌牛への更新等を支援すること。さらに、物価上昇により需要が減退した和牛肉の需給の改善を図るため、和牛肉の消費拡大を支援すること。
 三 高病原性鳥インフルエンザ、豚熱の発生予防及びまん延防止については、農場における飼養衛生管理基準の遵守の徹底を図るとともに、農場の分割管理の導入等の取組を支援すること。また、アフリカ豚熱等の家畜伝染病の侵入防止のため、水際での防疫措置を徹底すること。さらに、これらを着実に進めるため、地域の家畜衛生を支える家畜防疫員及び産業動物獣医師並びに輸入検査を担う家畜防疫官の確保・育成及び処遇の改善を図ること。あわせて、農場の経営再建及び鶏卵の安定供給を図るための支援策を拡充すること。
 四 配合飼料価格の高止まりによる畜産・酪農経営への影響を緩和するため、配合飼料価格安定制度を安定的に運営するとともに、生産現場における負担の実態や離農・廃業の更なる進行が懸念される危機的な状況を踏まえ、これを回避するために必要な対策を行うこと。また、国産濃厚飼料の生産・利用拡大や、耕畜連携及び飼料生産組織の強化、国産粗飼料の広域流通体制の構築等により、国産飼料基盤に立脚した持続的な畜産・酪農への転換を強力に推進し、飼料自給率の向上を図ること。さらに、飼料穀物の備蓄や飼料流通の合理化による飼料の安定供給のための取組を支援すること。
 五 畜産・酪農経営を再生産可能なものとするため、生産から消費に至る食料システム全体において畜産物の適正な価格形成が推進される仕組みの構築を図るとともに、消費者の理解醸成に努めること。
 六 畜産・酪農経営の省力化を図るため、スマート技術の導入やデータの活用を支援するとともに、飼養管理方式の改善等の取組を支援すること。また、中小・家族経営の酪農家の労働負担軽減のために不可欠な存在である酪農ヘルパーについては、人材の育成や確保のための支援のほか、酪農家が利用しやすくするための負担軽減策を講ずること。
 七 中小・家族経営の畜産農家・酪農家を始めとした地域の関係者が連携し、地域一体となって収益性の向上を図る畜産クラスターについて、引き続き、現場の声を踏まえつつ、生産基盤強化や経営継承の推進に資する施設整備等を支援すること。また、大規模化の効果やリスクを十分に分析した上で、飼養規模の在り方について検証し、現場と情報の共有を図るとともに、構成員の既往債務については、返済負担の軽減に向けた金融支援措置等の周知徹底を図ること。
 八 畜産物の輸出拡大に向けて、畜産農家・食肉処理施設・食肉流通事業者等で組織するコンソーシアムが取り組む食肉処理施設の再編、コンソーシアムと品目団体との連携による販売力の強化等を支援するとともに、輸出対応型の畜産物処理加工施設の整備を支援すること。
 九 SDGsにおいて気候変動を軽減するための対策が求められ、我が国においても二〇五〇年カーボンニュートラルの実現を目指していることを踏まえ、家畜ふん堆肥の利用推進や高品質化、家畜排せつ物処理施設の機能強化等の温室効果ガス排出量の削減に資する取組を支援すること。
 十 畜産GAPの普及・推進体制を強化するとともに、家畜伝染病予防法の定める飼養衛生管理基準や新たに策定された飼養管理指針に基づき、アニマルウェルフェアに対応した家畜の飼養管理の普及・推進を図ること。
 十一 東日本大震災からの復興支援のため、原発事故に伴う放射性物質の吸収抑制対策及び放射性物質に汚染された稲わら、牧草等の処理を強力に推進すること。また、原発事故に係る風評被害対策に徹底して取り組むこと。

   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(滝波宏文君) ただいまの横沢君提出の決議案の採決を行います。
 本決議案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(滝波宏文君) 全会一致と認めます。よって、本決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。