<第212回国会 農林水産委員会 2023年11月9日>

農作物被害 高温で減収 支援を
紙議員が要求
参院農林水産委


 紙智子参院議員は9日の参院農林水産委員会で、高温、猛暑による農作物被害への支援を求めました。
 今年の夏は、高温による農作物被害が京都、新潟、東北地方をはじめ、30度を超える日が長期間続いた北海道でもコメや畑作物で発生しました。
 ビート(砂糖大根)はカビで葉が枯れて糖分が低下する褐斑(かっぱん)病が、ブロッコリーは高温でつぼみの成長が止まり、そこに雨が降り高温多湿によって花蕾(からい)腐敗病が広がり、つぼみができず収穫ゼロになる被害が出ました。
 紙氏は、すでに苗代、肥料代がかかっているうえ、売り物にならないために処分費用もかさむとし、支援を要求。宮下一郎農水相は「今後、耐性品種を開発したい」と繰り返したため、紙氏は来年の作付け対策だけでなく、減収分の支援を求めました。
 生産者やJAから近年の猛暑は「もはや災害だ」との声が出されています。紙氏は、高温被害には、集中豪雨や台風のようにリアルタイムに被害を把握し支援する仕組みがないと指摘。猛暑による農作物被害を迅速に把握し支援する仕組みを求めました。
 宮下農水相は「温暖化等の被害を回避、軽減するためには、新しい情報に基づいた対応策をとっていただくことが重要だ」と答弁。紙氏は農業共済や収入保険だけでは所得をカバーできない段階に入ったとし、新たな支援策の検討を求めました。(しんぶん赤旗 2023年11月14日)

◇農作物の高温障害のブロッコリーの支援について/気候変動による気象条件を把握する仕組みの必要性について/畑地化の予算確保について/水田作経営の1時間あたりの農業所得について/米価と農家の営農意欲について/国産米の相対取引価格とミニマムアクセス米の入札価格について/ミニマムアクセス米に関する政府統一見解について/食料自給率目標を達成していない理由について/食料・農業・農村基本法の検証部会における食料自給率の議論について

○農林水産に関する調査

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 農水大臣に質問いたします。
 今年も異常気象による大雨被害や高温被害が発生しています。特に、猛暑の影響というのが八月頃、京都、新潟、東北地方、北海道でも発生しました。それで、北海道でも三十度を超えて、それ以上という日も、昔はもう本当にまあせいぜい十日ぐらいかと言っていたのが、もう一か月も続くような状況が出ております。

配付資料@北海道内で発生した褐斑病のビートと花蕾腐敗病のブロッコリー

それで、配付した資料を見ていただきたいんですけれども、これ、九月下旬に北海道で高温障害の調査をやったときの写真です。農協から説明を受けたんですけれども、これ、一つはビートですね、褐斑病という形でこういうふうに枯れてしまう。ブロッコリーは、花蕾腐敗病というんですね、これが発生していると。特にブロッコリーは、高温でつぼみの成長が止まってしまって、そこに雨が降ってきて高温多湿になったためにこの花蕾腐敗病が蔓延したと聞いています。写真のように、ブロッコリーの中心のところにつぼみができて、それが大きくなるんですけど、これがもうできない。ですから、売り物にならないし、収穫はゼロということなんですね。収穫がないので、これ共済の対象にもならないということもあります。
 これに対しての支援策はあるのかということをまずお聞きしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 宮下一郎君) お話しのように、北海道では、本年四月以降、例年にない高温によりまして、ブロッコリーを始めとする野菜の生育不良、また品質の低下が発生をして、九月の東京都中央卸売市場の入荷量は前年と比べて全体で二割程度減、北海道では三割程度の減少というふうに聞いております。
 野菜の収量減少や品質の低下による収入減につきましては収入保険による対応が基本となりますけれども、このような温暖化に伴う影響が出た場合、本年のみならず今後も引き続き発生することが懸念されることから、産地において高温対応、対策を進めることが必要だと考えております。
 農林水産省としましては、現在検討中の補正予算に、都道府県やJAによります高温耐性品種、ブロッコリーについても幾つか高温耐性品種が開発されているというふうに聞いておりますし、高温対策技術の導入実証等に係る費用への支援なども補正予算の中に盛り込んで、都道府県、またJA等の皆さんによる取組を支援をしていくということであります。
 こういったことで、高温対策栽培体系への転換を進めていきたいと考えています。

○紙智子君 今の答弁だと、実際減収になって、何の対応もないということが解決されないんじゃないかと。今、高温対策の品種改良だとかそういうことの、今度の補正にそれは加えられたっていうんだけど、これは先の話であって、今現に本来収穫できるはずだったものがこんな状況になっているわけですよ。
 これ、十アール当たり三十万円くらいの収入にはなるという、ブロッコリーは高収益作物ですから、そういう形でこの間作ってきたのに、結局はもう持ち出しになると。種もそうだし、肥料代も掛かっているし、それが全部駄目になっちゃって持ち出しになるということなので、これ収入保険といっても、なかなかそれに加入していなければどうともならないということなんだけど、もうせっかくこういった努力して、水の泡になっちゃったということに対して何らかのことを考えてもらえないかと思うんですけど、いかがですか。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) 紙先生、野菜につきましてはなかなか、共済というのが設定がなかなかできずに、野菜については、価格安定制度、暴落したときの対策があるということになっていまして、最近はこの収入保険には加入できるようになったんですけれども、ブロッコリーの場合、確かに入荷量自体は東京中央卸売市場でまあ二割、三割減ってはおりますけれども、実際価格はその分今上がっておりまして、人によっては価格も実はあり、P掛けるQでいうとマイナスになっている方多いかと思いますけれども、プラスになっていないということになりますので、一年一作の地域はなかなか大変なのは事実なんですけれども、野菜については次の作、次の作、それで期間を見て出荷をしていただくということに尽きるのではないかというふうに思います。

○紙智子君 余り解決にならない話なんですよね。だから、人によっては価格が、少なくなった分価格が上がっているからいい人もいるということなのかもしれませんけど、この場合は全然収入にならないわけですから。
 それで、アブラナ科なんですよね、これ。野菜については連作障害が出るので、当面はここを使って、また来年もってならないわけですよ。そういう状況もある。それから、ビートは褐斑病になると糖分が大きく減少して品質が落ちるということで、これも収入が減るわけです。
 生産者やJAでは、今回の猛暑、高温ということでいうと、この状況というのはもはやもう災害と言ってもいいというふうに言っているんですね。
 政府は、地球温暖化影響調査レポートというのを公表しています。これは、地球温暖化の影響と考えられる高温障害の影響と適応策を取りまとめているわけで、これはこれで大事だとは思うんですけれども、調査期間が一月から十二月という期間を設けて、それで、長い期間がありますから、すぐすぐ対応というふうにならない、状況分かるということではないので、やっぱり被害状況をリアルタイムで把握する仕組みというのがない状態なので、是非この事実を把握してほしいと。事実把握しないと対策とならないと思うので、是非そのことをやっていただきたいと。
 想定を超えた豪雨とか最近よく言われますよね。すぐ想定を超えていたという話になるんだけれども、想定を超えた高温とか経験したこともない猛暑がこの間続いていて、集中豪雨や台風のようにリアルタイムで被害を把握するという仕組みがないわけなんだけど、そういう形での把握する仕組みというのは必要なんじゃないんでしょうか。
 大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 宮下一郎君) 御指摘のような観点でいいますと、農林水産省では、野菜の生育状況などの情報を毎月公表するとともに、米、麦、大豆の農産物検査の結果も月ごとに公表して、需給の情報とともに被害の状況についての報告、情報を提供しているところであります。
 お話しのように、農業は気候変動の影響を受けやすい分野でありますので、温暖化等の被害を回避、軽減するためには、御指摘のように新しい情報に基づいた対応策を取っていただくことが重要だと思います。このため、農林水産省としては、都道府県を始めとする関係機関の皆様に対して、農業技術の基本指針におきまして、例えば高温対策としての地温抑制マルチ、また遮光資材等の高温対策技術の励行を促しているところであります。また、各自治体におきましては、各地の気象情報等を踏まえて低温や高温に対しての注意喚起を必要に応じて発出されているところであります。その上で、最初にお話がありましたが、毎年、高温による影響や適応策については地球温暖化影響調査レポートとして公表しているところであります。
 御指摘も踏まえて、今後とも情報の提供に努めて、現場における対応策の検討に活用していただけるように頑張りたいと思っています。

○紙智子君 被害が出たら調査するというふうにしてほしいと思うんですよ。猛暑に備えが、技術的なサポートは必要なんですけれども、一方で、収入面ではこの共済とか収入保険だけでは十分な所得をカバーできないという話もいっぱい出ているわけで、この点でも新たな段階に入っている、そういうことを認識して支援の対策を検討するようにお願いをしておきたいと思います。
 それから次に、水田、畑作とMA米の問題なんですけれども、この稲作などの土地利用型農業は水活の見直し、そして畑地化ということで、今この不安と混乱が広がっている状態です。北海道においても、今まで何度も質問していますけれども、水田活用交付金の見直しで牧草が切られてしまったと、このことに対する憤りというのは非常に強いものがあります。
 ある町では、大変複雑な思いを持ちながらも、それでも、まあどっちかを選べって言われたら畑地化にするかということで取り組むことにしたんですけれども、約その地域でいうと三百戸の農家が応募したんですね、畑地化に。ところが、採択されたのが十戸程度だったと。一体どういうことなんだということで不満が出されているわけなんです。
 北海道全体でいうと、面積にすると約二万八千ヘクタールの要望が出ていたのに、これ国全体の採択というのは一万ヘクタールだということで、農業新聞でも書かれていました。これ、全然足りないじゃないかということなんですけれど、これ畑地化を推進していくんだという農水省の方針なのであれば、予算をちゃんと確保するべきではないかと思うんですけど、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 宮下一郎君) 御指摘のように、畑地化促進事業につきましては、令和四年度補正予算において二百五十億円を活用しまして約一万ヘクタールの取組を一次採択したところでありますけれども、御指摘のように、それを上回る畑地化に取り組む申請が見られました。これらについて、地主の同意など要件の確認を今行っているところであります。
 そして、今般閣議決定された経済対策にも畑地化促進事業が盛り込まれておりまして、農林水産省としては、この一次採択とならなかった取組、それから今後新たに畑地化する取組を含めて、補正予算の中で必要な財源が確保できるように調整していきたいと考えています。

○紙智子君 手を挙げている人がちゃんと行き渡るというふうにしていただきたいけど、そうなりますよね。確認します。

○国務大臣(農林水産大臣 宮下一郎君) 頑張って確保したいと思います。

○紙智子君 自給率の低い麦、大豆の本作化というのがこれ必要だというふうに思っているわけです。同時に、畑作であっても稲作であっても、土地利用型の農業の展望を示すことが必要ではないかというふうに思うんですね。

配付資料A水田作経営の時間あたりの農業所得など

 二枚目にお配りした資料を見てほしいんですね。この資料の@のところを見てほしいんですけれども、水田作の経営の一経営体当たりの農業所得ということです。まあ時給にするとどうなるのかということで、一時間当たり、これ今ですけれども、十一円ですよ、十一円。今、労働者全体は最賃でも時給千五百円に上げようという議論されているわけですけど、資料にあるように、二〇二〇年でも百八十一円、二一年はマイナス九四%で十一円ですよ。
 大臣、この十一円、どう思われますか。

○国務大臣(農林水産大臣 宮下一郎君) ここで示されました二〇二一年の水田作経営の一経営当たり農業所得を単純に労働時間割って算出しました一時間当たりの農業所得は、肥料費、動力光熱費といった農業経営費が前年に比べて七%程度増加したこと等によりまして、前年は百八十一円だったわけですが、それが十円に減少して低い水準となっています。
 しかしながら、この結果は自家消費が主などの小規模な経営体を含めた全ての水田作経営体の平均値でありまして、経営状態については様々な経営体の実態を踏まえて見ていく必要があると考えています。
 例えば、水田作経営のうち、農業の所得が主であります主業経営体で見ると、一時間当たり農業所得は、農業経営費の増加により前年に比べ減少はしているものの、平均で八百十九円となっておりまして、さらに、水田作付面積二十ヘクタール以上の層も、同様に前年に比べ減少はしているものの、その場合は千八百七十七円となっています。このように、水田作は経営規模の拡大に伴って生産性が向上するという特徴がありますので、収益性の向上も顕著だということです。
 農林水産省としては、農地の集約化等による経営規模の拡大、また集落営農への参加、省力栽培技術の導入等による生産コストの低減、こういったことで農業所得の向上を推進してまいりたいと考えています。

○紙智子君 まあ規模の、主業な農業のところはもうちょっと高いよと、だけど平均すると十一円と、まあしようがないという感覚なんでしょうか。
 私、それにしたって低過ぎると思うんですよね。もう平均してこうだということ自体も問題だというふうに思うし、これで意欲が出るかというふうに思うんですよ、小規模のところなんかは特にね。やっぱりそういう見方というか、もっとやっぱり、いや、それで本当に大丈夫なんだろうかということで考えなきゃいけないというふうに思うんです。
 それで、岸田総理は、三十年間、コストカット型経済とも呼べる状況が続いたという話をされているんですけれども、実は私たちも、失われた三十年という言い方ですけれども、同じ三十年なんですけれども、この三十年前の米価どうだったのかというふうに見ると、一九九三年、これ多分細川内閣のときだと思うんですけど、このときの米価は六十キログラム当たりで二万三千六百七円なんですね、平均で。しかし、去年の相対取引価格で米の値段を見ると、これが一万三千八百四十九円ですから、マイナス一万円だと。
 これで本当に農業に意欲が持てるのかと思うんですけど、大臣、どうですか。

○国務大臣(農林水産大臣 宮下一郎君) 米の価格自体、全体として下落しているということはあると思います。これは様々な要因がありますけれども、人口減少に伴う米の減少があって、需給バランスが崩れている、毎年十万トンの需要減になっていると、こういうこともあると思いますし、また、もう一つの面は、先ほど経営規模の話で大きな差があると申し上げましたけれども、お米も、一物一価ではなくて銘柄、産地によって様々な価格がありますので、一律に全部が低くなっているかというと、こういう状態でも高い価格を維持しているものもあれば、更に割り込んで価格が低い状態にある銘柄もある。そういったことも総合的に判断して、基本的にはやはり需要に沿った生産ということにシフトしていくというのが米についても望まれている状態にあるんではないかなというふうに考えています。

○紙智子君 ちょっと今の答弁だと生産者の人ががっくりするんじゃないかなと。
 やっぱり、幾ら一生懸命頑張って米作っても、米作っているので飯食えないという声が出るくらいの状況になっているわけですよ。それでなかなか見通しがこの先見えていないのに、水田は水張りをしなければ水田活用交付金の対象から外すということも言われているわけですよね。
 それで、生産者はこれまで、さっきちょっと経過も話ありましたけど、政府の減反政策に協力をしてきたわけです。地域の経済を、コミュニティーも維持してきた、必死になって維持してきたわけですね。で、畑地化の協力もしたいけれども、しかし、この畑地化の事業というのも五年が、期限がありますから、五年が限度だと。その先どうなるのかとなると、先が見えていないというふうに言われるんです。希望が見えないと言うんですね。
 政府は、毎年米の需要が十万トン減っている、今も言いましたけど、十万トン減っているんだと、米は過剰なんだということを言っているわけです。なのに、じゃ、どうしてミニマムアクセス米、輸入米は毎年減らさないで七十七万トンも入れているのですかということを生産者の皆さんから訴えられるんですよね。
 それで、資料のAの方を見てほしいんですね。
 ここには、二二年の六十キログラム当たりの生産費、これ生産費ですね、一万五千二百七十三円です。それで、相対取引価格が一万三千八百四十九円ですから、これ、差が千四百二十四円ということで赤字になっているわけです。生産費よりも売れる価格の方が安いということですね。
 この相対取引価格と同等かそれより高い価格で実際にはこれ、ミニマムアクセス米というのは入札されているということになるんですね。
 で、資料の、次、四を見てほしいんです。
 ミニマムアクセス米の、これ売買の差損、差ですね。だから赤字の実態なんですけれども、二〇二二年度の実績は出ていませんけど、二〇二〇年度、これが三百六十七億円、二〇二一年度は四百七十七億円、この二年間分だけでも八百四十四億円になっているんですね。二〇一八年度からこれ廃止された、削られた戸別所得補償、米の直接支払交付金というのは七百十四億円ですから、それを上回る金額になっているわけですよ。
 国内の相対取引価格よりも入札価格が高い実態、この赤字が膨らんでいる実態を大臣はどのように思われますか。

○委員長(滝波宏文君) 宮下大臣、よろしいですか。
 速記止めてください。
   〔速記中止〕

○委員長(滝波宏文君) 速記を起こしてください。

○国務大臣(農林水産大臣 宮下一郎君) ミニマムアクセスにおきます買入れと販売に伴う売買差益について御指摘をいただきました。
 保管料等の管理経費によりまして財政負担が生じているというのは事実でありますけれども、一方で、財政負担をできるだけ削減するために政府所有米穀の保管、運送、販売の管理業務につきましては、入札によって民間事業者、事業体に委託することなどの工夫しまして保管経費等の節減に努めた結果、過去のピーク時、平成十九年には年間二百六十億円ありました管理経費が、近年、平成二十九年以降では毎年百億円を下回る、半分以下を下回る水準になっているところでございます。
 まずは、このミニマムアクセス米の財政負担の削減に向けた努力は引き続き取り組んでいきたいと考えています。

○紙智子君 これ、表見て分かるように、ミニマムアクセス米、外国のお米を国産の米よりも高い値段で買っているわけですよ。だけど主食に回せないから、だから違うものに回すじゃないですか、だから安く売らなきゃ売れないわけですよね。だからこういうことが生まれているわけで、こんなに金額が大きくなっている中でまだ続けるのかということなんですよ。
 この赤字、米価の実態なんですけれども、政府は、九四年の米のミニマムアクセスに関する政府統一見解をもって国際約束なんだとずっと言ってきたわけですよね。でも、前回私も質問しましたけど、協定上、輸入の義務はないと、それぞれの国によっても違いが、対応の違いがあるわけですから、言ってみれば政府の統一見解だからという理由だったわけだから、それだったら、もう三十年たっているわけですよ、失われた三十年というわけですから、来年基本法見直すというのであれば、政府の統一見解を廃止したらどうかと思うんですけど、大臣、どうですか。

○国務大臣(農林水産大臣 宮下一郎君) おっしゃるとおり、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業協定に基づいてミニマムアクセス機会を設定する場合に我が国が負う法定義務の内容は、当時の米の国内消費量を基に算出された一定割合の数量につきまして輸入機会を提供することと、こういうことであります。
 我が国のミニマムアクセス米につきましては、平成五年のガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意の実施に伴う閣議了解において、米のミニマムアクセス導入に伴う転作の強化は行わないということとされました。このことによって、ミニマムアクセス米が国産米の需給に悪影響を与えないように政府が責任を持って安定的に輸入する必要があるということから、国家貿易で管理して、お話しのように、要するに、主食米市場に流れ込んで需給が崩れるということを阻止すると、そういうことを決定したわけです。
 そういう、米が国家貿易品目として国が輸入を行う立場でありますことから、平成六年に衆議院予算委員会でお示しした政府統一見解にあるとおり、ミニマムアクセス機会を設定すれば、買う、買手は国家貿易ということで国しかないわけですから、通常の場合は当該数量の輸入を行うことになると、行うべきというふうに考えています。
 今後もミニマムアクセス米が国産米の需給に悪影響を与えないように国家貿易で管理する必要は変わってない、変わりませんので、そういった意味では、この政府統一見解を変えることにはならないというふうに考えています。

○紙智子君 もう本当にこれ、財政の観点からいっても、こんな無駄なもったいないことをするのがおかしいというふうに思いますよ。
 それで、その水田の役割の重要さということもいろいろ意見が出されてきたと思うんですけど、水田は田んぼダムの役割が言われていますし、日本生活協同組合連合会が五月の食料・農業・農村基本計画の見直しに関する意見書で、日本の高温多湿な気候風土に適して、連作障害を起こさない水田稲作というのは、日本の農業において基幹的役割を担ってきたんだと、また、米は日本ならではの食生活や食文化に大事な役割を果たしてきたというふうに言っているわけで、同時に、財政支出に基づく生産者の直接支払などをやるべきだということを求めているんですよね。だから、ミニマムアクセスにこのお金掛けるよりも、土地利用型農業の予算を充実させるべきだということを申し上げておきたいと思います。
 それで、ちょっと時間がなくなってきたので、質問、これは答弁要りません。食料自給率についても聞きたいと思うんです。
 我が党の小池晃議員が十月二十六日の本会議で、今まで自給率目標を一度も達成したことがなく、その検証も分析もされていませんというふうに総理に聞いたんですけど、総理から答弁がありませんでした。食料・農業・農村基本法の第十五条では、政府が食料・農業・農村基本計画を定め、食料自給率目標を決めることになっている、この目標というのは、五年ごとに、施策の効果を評価し、五年ごとに計画を更新することになっていると。
 ですから、食料・農業・農村政策審議会の企画部会でこの食料自給率目標の検証を行って実現可能な食料自給率目標を決めているんだと思うんですけれども、しかし、小池議員が言ったように、基本法ができて以来、目標を一度も達成したことがないわけですよ。五年ごとにやって、もう二十年たっているわけですけど、一回もないわけですよ。これってなぜなんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 宮下一郎君) 食料自給率の目標設定に当たりましては、目標に到達するために必要な要因を検証した上で、食料・農業・農村基本計画に、消費面と生産面でそれぞれ克服すべき課題について品目ごとに明記しております。
 その中で、例えば小麦については、国産小麦の需要拡大に向けた品質向上、また安定供給などの課題に応じた取組を積み重ねてまいりました。このことによって、小麦の自給率は、平成十年度の九%から令和四年度には一五%に向上する成果を上げていますけれども、令和十二年度目標の一九%にはまだ達していない、こういうことで、品目によってはその自給率向上に向けた動きをしているものもあると。
 ただ、大きな動きとしては、この二十年間、国内で自給可能な米の消費が減少していることがまず大きく効いておりますし、それから輸入依存度の高い飼料を多く使用する畜産物の消費が増加している、このことが食料自給率を押し下げている主な要因となっておりまして、結果的に自給率が近年三八%前後で推移しておりますし、これまでも目標が達成できていないと、こういうふうに考えております。

○紙智子君 私聞いたのは、二十年間どうして目標を一回も達成できなかったんですかと聞いているんですよね。今のだとちょっと答えになっていないなと。品目ごとにどうこうという話なんだけど、聞いたのはそうじゃないですよ。
 それで、やっぱり昨年来、基本法の見直しを議論するために基本法の検証部会がつくられて、検証テーマを農林水産省が提案して議論してきたと思うんだけど、その提案の中に食料自給率というのを検証のテーマに入れていましたか。

○国務大臣(農林水産大臣 宮下一郎君) 令和五年四月二十八日に開催されました第十四回の基本法検証部会においては、基本計画と食料自給率をテーマとして取り扱い、議論が行われたところであります。議論の中で、委員の方からは、消費者と生産者双方の行動の観点から食料自給率は引き続き重要であると、また、食料自給率は平易で分かりやすいが、肥料、エネルギー、資源といった生産資材の安定供給等、今日の食料安全保障上の課題は食料自給率だけでは直接に捉え切れないものがあるといった旨の御意見をいただいたところであります。
 こうした議論を踏まえまして、答申においては、自給率目標を国内生産と望ましい消費の姿に関する目標の一つとしつつ、食料安全保障上の様々な課題に適した数値目標又は課題の内容に応じた目標も活用しながら、定期的に現状を検証する仕組みを設けるといった基本計画の見直しの方向性が提言されているところであります。

○紙智子君 ちょっと時間になっちゃったんで、また続きをやらなきゃいけないんですけど、やっぱりその食料自給率の問題というのが議論どれだけされたのかということでいうと、さっき言ったように、疑問がずっと解けないまんま来ているんです。何で一度もできていないのかと。目標達成できるはずの目標を掲げたはずなのに、どうしてできなかったのか、どこに問題があったのか、そういう掘り下げた議論がないでいるんですよ。やっぱりそこがちゃんとはっきりさせていかないと本当の対策は出てこないし、そういう意味ではちょっと引き続いて次の回も議論を進めたいと思うんですけれども、今日はここまでといたします。
 ありがとうございました。