<第211回国会 本会議 2023年6月21日>

質問日:2023年6月21日 本会議

マイナ運用停止を 紙議員 全容解明 総務相に迫る 参院本会議

 日本共産党の紙智子議員は21日の参院本会議で、政策評価などの報告について質疑を行い、国民の声に耳を傾けない岸田政権の姿勢をただしました。
 紙氏は、マイナンバーカードに別人の情報がひも付けられていた問題で、国民の懸念を無視し改定マイナンバー法を強行成立させたと批判。松本剛明総務相に対し、マイナンバーカードの運用停止と問題の全容解明を求めました。
 また、マイナ保険証は、医療・投薬情報の誤登録が続いています。命にもかかわる問題を一方的にマイナ保険証に『一本化』してはならないとし、「来年秋の健康保険証廃止は中止すべきだ」と迫りました。加藤勝信厚労相は、「一本化」のメリットだけを強弁し、「来年秋に円滑に実施できるよう取り組んでいく」と国民の声に背を向けました。
 紙氏は、10月に実施が狙われるインボイスについて、免税事業者への増税が、倒産、廃業に追い込むことにつながると指摘。中小業者や農家、文化人らが反対し、オンライン署名は20万人を超えたとし、生業(なりわい)、くらし、文化を壊す増税の中止を求めました。
 また、東京電力福島第1原発事故による汚染水の海洋放出について、福島と茨城の漁連会長が改めて「反対」の意思を示したことや、政府が「関係者の理解なくしていかなる処分もおこなわない」と約束したことを守るよう求めた、いわき市議会の意見書を示し、海洋放出方針は撤回すべきとただしました。西村康稔経産相は、海洋放出ありきの風評被害対応を列挙するだけで、方針撤回に言及しませんでした。(しんぶん赤旗 2023年6月22日)

◇マイナンバーカードをめぐるトラブルについて/マイナ保険証をめぐるトラブルについて/消費税のインボイス制度について/福島第一原発事故による汚染水、ALPS処理水の海洋放出について/「先住民族の権利宣言」とアイヌ民族への日本政府の対応について/巨額の予備費計上と軍拡財源について

○令和四年度政策評価等の実施状況及びこれらの結果の政策への反映状況に関する報告について

○国務大臣(総務大臣 松本剛明君) 令和四年度政策評価等の実施状況及びこれらの結果の政策への反映状況に関する報告の概要について御説明申し上げます。
 政策評価制度は、各行政機関が、自らの政策の効果を把握し、評価することを通じて、政策の企画立案、実施に役立てることにより、効率的で質の高い行政や成果重視の行政を実現していくとともに、国民に対する行政の説明責任を果たしていくことを目的としております。
 令和四年度は、政府全体で二千三百五十五件の評価が実施され、その結果が政策の改善、見直しに反映されるとともに、総務省において、複数の行政機関にまたがる政策の評価や各行政機関が行った政策評価の点検等を行っております。
 また、本年三月には政策評価に関する基本方針の変更を行っております。
 社会経済情勢の変化に対応できる行政の実現には、政策の効果と現状を把握の上、機動的かつ柔軟に軌道修正を行いながら前進する政策展開が必要です。
 このため、政策の特性に応じた政策効果の把握、分析を行い、政策形成過程において必要となる情報を適切に活用できるよう、政策評価制度の運用を見直しました。
 総務省としては、本基本方針の下で行われる各府省の新たな取組を実効性のあるものとするため、各府省の取組事例を把握し共有するとともに、政策評価審議会における議論も踏まえて技術的なガイドラインを策定するほか、政策効果の把握、分析のための統計の整備、データ利活用の技術的支援、職員向け研修の充実などの取組を進めてまいります。
 こうした取組を通じて、新たな挑戦や前向きな軌道修正を積極的に行うことが、行政の無謬性にとらわれない望ましい行動として高く評価されることを目指し、しっかり取り組んでまいります。
 以上が、令和四年度の報告の概要でございます。
 なお、総務省では、政策評価法に基づく政策の評価のほかに、総務省設置法に基づき、各行政機関とは異なる立場から、業務の実施状況を評価及び監視する機能を担っております。
 政府の行政評価・監視機能等と立法府の行政監視機能が相まって行政運営の改善が図られることは、国民の行政に対する信頼を確保する上で重要であり、引き続き、行政評価・監視機能等を適切に発揮し、行政の運営の改善に努めてまいります。(拍手)

○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 会派を代表して、政策評価等年次報告について質問いたします。
 行政監視機能を発揮する上で、国民の苦情や声を受け止めることは極めて重要です。その点から看過できないのは、聞く力などと言いながら、国民の声に耳を傾けようともしない岸田政権の姿勢です。
 その典型がマイナンバーカードの問題です。
 別人の情報が誤ってひも付けされるなどの重大なトラブルが相次ぎ、国民の懸念が急速に広がったにもかかわらず、岸田政権はこれを無視し、マイナンバー法を強行成立させました。しかし、成立後も強引な姿勢への批判はやまず、大手新聞の各紙、多くの地方紙が社説で、保険証の廃止、見直しは今からでも遅くない、一旦立ち止まり、徹底的に洗い直すのが先決と主張を掲げています。
 総務大臣は、先ほどの報告で、柔軟に軌道修正を行いながら前進する政策展開が必要と強調しました。であるなら、総務大臣、柔軟な軌道修正を行い、マイナンバーカードの運用は停止すべきではありませんか。
 全国知事会のデジタル社会推進本部は、先週、提言案をまとめました。そこで、マイナンバーのトラブルに関し、個々の事業者や地方自治体による対応には限界があるとし、国としてチェック体制や誤った情報ひも付けの防止を担保する制度の構築を求めています。
 国として、トラブルの全容を検証し、それらを防ぐ対策の構築こそ優先すべきではありませんか。総点検本部を設置するというなら、なおさらです。総務大臣、お答えください。
 とりわけ、マイナ保険証問題は重大です。政府は、医療や投薬の情報などを直ちに共有できるとマイナ保険証のメリットを強調するばかりです。しかし、誤登録された医療、投薬情報が共有されたら命を危険にさらすことになります。
 誤登録問題だけではありません。高齢者、障害者施設ではマイナ保険証管理のこの困難に直面し、マイナ保険証のない人は一年ごとに資格確認書を申請しなければなりません。
 今は黙っていても送られてきて安心して使える現行の保険証を廃止するのですか。様々な問題を抱えたマイナ保険証に一本化することなど、国民の理解は到底得られません。
 共同通信の直近の世論調査では、来年の秋の現行の保険証廃止について、七二%の人が撤回又は延期すべきとしています。圧倒的な国民の声を無視してはなりません。来年秋の保険証廃止は中止、凍結すべきです。厚労大臣の明確な答弁を求めます。
 十月に実施されようとしているインボイスも大問題です。
 元静岡大学教授で税理士の湖東京至氏の試算では、インボイス制度の実施で免税事業者の消費税の負担はおよそ一兆円にも上るとされています。免税事業者を倒産、廃業に追い込む増税はやめるべきです。
 中小業者、農家、ライター、声優、漫画家、税理士などの皆さんがインボイスは増税だと大きな反対の声を上げています。このオンライン署名は二十万人を突破しました。なりわい、暮らし、文化を壊すインボイス制度の十月実施は中止すべきです。財務大臣の答弁を求めます。
 次に、福島第一原発事故による汚染水処理問題で質問します。
 西村大臣は、六月十日、宮城、福島、茨城の漁業関係者と面会しました。福島県漁連の野崎哲会長も茨城沿海地区漁連の飛田正美会長も、改めて海洋放出は反対だとの意思を示しました。政府は、関係者の理解なくしていかなる処分も行わないと約束しています。今月十五日には、いわき市議会で、この約束を履行するよう岸田首相と西村経産大臣宛てに意見書を送付することを全会一致で可決しました。約束を踏みにじることは許されません。
 六月十九日付けの福島民報は、最新の県民世論調査の結果を報じました。風評被害が起きるとの回答は、八七・八%にも上ります。海洋放出方針は撤回すると、それが一番の風評被害対策ではありませんか。以上、経産大臣の答弁を求めます。
 今国会ほど人権問題が焦点となったことはありません。外国人難民の人権、LGBT、性的少数者の人権など、当事者が納得していないのに入管法やLGBT法が採択されました。我が国の人権感覚の乏しさが指摘されています。
 先住民族政策についてもお聞きします。
 二〇〇七年に先住民族の権利に関する国連宣言が採択されてから、先住民族への謝罪が各国で行われています。昨年だけでも、メキシコ大統領やデンマーク首相が謝罪し、フランシスコ・ローマ教皇もカナダを訪問して謝罪しました。
 ところが、日本政府は、アイヌ民族への謝罪もなく、同化政策の実態把握も不十分です。先住民族と認めるなら、国際的な先住民族権利宣言の水準には程遠い状況を打開することが必要です。昨年九月に、新冠御料牧場の開墾のためアイヌ民族が強制移住をさせられた事実を示す資料が新冠家畜改良センターに存在していることが分かり、国立公文書館に移管されました。
 アメリカでは、ハーランド内務長官が、先住民族への侵略の事実を踏まえ、この史実は米国の一部であり、それを伝えることは私たちの責務だと語りました。
 我が国においても、アイヌ民族が受けた略奪や迫害を含め、歴史の事実を把握し、今後のアイヌ民族の権利を前進させるために生かす必要があると考えますが、アイヌ施策担当大臣の見解を伺います。
 最後に、予備費の問題について財務大臣に質問いたします。
 この間、巨額の予備費計上が常態化し、緊急とは言えない経済対策にまで予備費を充ててきました。憲法八十三条は、国の財政は国会の議決に基づき処理するとしています。巨額の予備費の計上で政府への白紙委任を求めることは財政民主主義の否定であり、やめるべきです。
 使い残した分の扱いも問題です。二〇二二年度の残額は三・八兆円に上りますが、減額補正しなかったのはなぜですか。初めから軍事費に回すつもりだったんじゃありませんか。
 五年で四十三兆円に上る大軍拡計画では、財源の一つに決算余剰金が充てられ、使われなくなった予備費の一部も軍事費に転用されます。今後も巨額の予備費計上を続け、軍拡財源を確保するつもりですか。
 政府は、軍拡増税の時期を二〇二五年以降も可能としました。先送りにしたのはなぜなんですか。答弁を求めます。結局、大軍拡を進めるため、他の予算を削り、国債発行に頼ることになるのではありませんか。
 財政法の四条で公債発行が原則禁止とされたのは、戦前の日本が戦費調達のために大量の国債を発行して侵略戦争に突き進んだ反省によるものです。歴史の教訓を忘れて、敵基地攻撃能力保有など専守防衛を投げ捨てる大軍拡に突き進み、平和も暮らしも脅かすことは絶対に許されません。
 私たちは、あの戦争の過ちを二度と繰り返してはなりません。平和な国際環境をつくるために、外交努力にこそ力を尽くすべきだということを申し上げて、質問を終わります。(拍手)

   〔国務大臣松本剛明君登壇、拍手〕

○国務大臣(総務大臣 松本剛明君) 紙議員からの御質問にお答えいたします。
 まず、マイナンバーカードの運用について御質問いただきました。
 マイナンバーカードは地方のDXの基盤となるツールであり、住民の方々の利便性向上や地域の活性化に資するものであるとともに自治体職員の事務負担の軽減につながるものであることから、カードの普及促進に取り組み、利活用を進めてきたところです。
 マイナンバーカード関連の一連の誤り事案につきましては、誠に遺憾であり、重く受け止めております。
 総務省としては、御迷惑を掛けた方への対応を行い、再発防止策を徹底するなど必要な対応を行うとともに、マイナンバーカードについて国民の皆様が安心して利用できるよう、信頼性確保や安全性の向上にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、トラブルの検証と再発防止策について御質問いただきました。
 マイナンバーカード関連の一連の誤り事案を受け、現在、総理の指示の下、誤り事案に関連するデータやシステムの総点検、今後新たな誤り事案が生じないようにするための仕組みづくり、国民の不安払拭のための丁寧な対応について、関係省庁と連携して対策を進めております。
 マイナンバーカードの信頼回復に向けて、政府一丸となって取り組んでまいります。(拍手)

   〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕

○国務大臣(厚生労働大臣 加藤勝信君) 紙智子議員より、健康保険証の廃止についてお尋ねがありました。
 マイナンバーカードによる受診により、御自身の健康、医療に関するデータに基づいたより良い医療を受けられるようになるなど、カードと健康保険証の一体化には多くのメリットがあります。
 こうしたメリットを実感していただくためにも、登録データの正確性確保のための取組を進めているほか、医療現場における実務上の課題への対応、施設入所者のカードの管理に関する留意点などの整理や周知を進め、さらに、表示された情報に疑義がある場合の対応の明確化を行うなど、システムに対する信頼を確保するための措置を講じ、マイナンバーカードと健康保険証の一体化を進め、来年秋の健康保険証の廃止を円滑に実施できるよう取り組んでまいります。(拍手)

   〔国務大臣鈴木俊一君登壇、拍手〕

○国務大臣(財務大臣 鈴木俊一君) 紙智子議員の御質問にお答えいたします。
 まず、インボイス制度についてお尋ねがありました。
 インボイス制度は、複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものであると考えておりますが、インボイス制度への移行に対して中小・小規模事業者の方々が御心配されていることも承知をしております。
 このため、政府としては、政府を挙げた取引環境の整備、課税事業者に転換した場合の負担軽減措置、各種補助金による支援措置など、事業者の皆様に寄り添った各種の対応を行っているところであり、引き続き、関係省庁と連携しつつ、適切に対応してまいります。
 次に、予備費と防衛力強化の関係についてお尋ねがありました。
 予備費については、新型コロナや物価高騰といった予測困難な事態に機動的、弾力的に対応するための万全の備えとして、憲法の規定に基づき、国会の議決を受けた上で適切と考えられる規模等を予算計上し、その支出についても、憲法の規定に従って事後に国会の承諾を得ることとされており、財政民主主義に反するものではないと考えております。
 また、予備費の使用に当たっては、必要性や緊急性等について検討を行った上で適切に使用を判断してきたところですが、歳出の性質上、予備費使用の可能性は年度末まであり得たことから、減額補正は行わなかったものです。
 したがって、使い残した分は初めから防衛費に回すつもりだったとの御指摘は当たりません。
 その上で、予備費を含めた歳出に不用が生じることが見込まれる場合には、税収等の動向も見極めながら、特例公債法の規定に基づき、特例公債の発行額の抑制に努めることとしており、予備費の不使用額が増えたからといって決算剰余金の増額につながるものではありません。
 したがって、御指摘のように、巨額の予備費計上を続けることで防衛力強化の財源を確保するつもりはありません。
 最後に、防衛力強化のための財源確保についてお尋ねがありました。
 防衛力の抜本的強化のための税制措置の開始時期につきましては、昨年末に閣議決定した枠組みの下、行財政改革を含めた財源調達の見通し、景気や賃上げの動向及びこれらに対する政府の対応を踏まえて、今後、与党税制調査会において判断していくこととしていることは、これまでも御説明しているとおりであり、先送りしたとは考えておりません。
 引き続き、政府・与党で緊密に連携し、柔軟に判断してまいりたいと考えております。
 また、政府としては、今後も歳出改革などの行財政改革を徹底することにより、赤字国債に頼ることなく、防衛力の強化、維持を安定的に支えるための財源をしっかり確保できると考えておりますが、同時に、現下の政策課題に対応し、国民生活を支えるために必要な予算額はしっかりと措置してまいりたいと考えております。(拍手)

   〔国務大臣西村康稔君登壇、拍手〕

○国務大臣(経済産業大臣 西村康稔君) 紙議員からの御質問にお答えいたします。
 ALPS処理水の海洋放出についてお尋ねがありました。
 廃炉を着実に進め、福島の復興を実現するためには、ALPS処理水の処分は決して先送りできない課題であります。このため、二〇二一年四月に海洋放出する方針を決定しております。
 そうした中で、関係者の理解なしにはいかなる処分も行わないとの方針は遵守し、安全性の確保と風評対策の徹底に取り組んでおります。
 安全性の確保については、IAEAの専門家が複数回来日し、レビューを受けております。今後、包括報告書が公表される予定であり、その内容も丁寧に発信をしてまいります。
 また、三陸・常磐ものの消費拡大を図るために、魅力発見!三陸・常磐ものネットワークを立ち上げ、千者を超える企業などが参加をし、社内食堂やお弁当で消費いただいております。さらに、風評影響による水産物の需要減少のときの買取り、保管支援のための三百億円の基金、また漁業者の事業継続のための五百億円の基金を措置しているところであります。それでもなお風評による損害が発生した場合、被害の実態に見合った適切な賠償を行うよう、東京電力をしっかりと指導してまいります。
 今後も、漁業者の方々などとの意思疎通を密にして、繰り返し説明を重ねるとともに、政府を挙げて安全性の確保と風評対策、なりわい継続支援にしっかりと取り組んでまいります。(拍手)

   〔国務大臣岡田直樹君登壇、拍手〕

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(アイヌ施策) 岡田直樹君) 紙智子議員にお答えいたします。
 アイヌ民族の歴史についてお尋ねがありました。
 平成二十年に衆参両院で決議されたアイヌ民族を先住民族とすることを求める決議において、「我が国が近代化する過程において、多数のアイヌの人々が、法的には等しく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされた」と述べられていることを政府として厳粛に受け止めております。
 また、平成二十一年に取りまとめられたアイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会報告書においても同様の指摘がなされており、このことについても厳粛に受け止めております。
 平成二十年の国会決議に基づき、政府としては、アイヌの方々が我が国の先住民族であるという認識の下、令和元年五月のアイヌ施策推進法の制定、また、同法に基づくアイヌ政策推進交付金の創設、また、令和二年七月の民族共生象徴空間、ウポポイの開業など、アイヌ施策の充実に取り組んできたところであります。
 引き続き、アイヌの方々が民族としての誇りを持って生活することができ、その誇りが尊重される社会の実現を図り、総合的なアイヌ施策の推進に取り組んでまいります。(拍手)

○議長(尾辻秀久君) これにて質疑は終了いたしました。