<第211回国会 農林水産委員会 2023年6月1日>

質問日:2023年6月1日 農林水産委員会

未来ある酪農政策を 紙氏の質問に参考人 参院農水委

 参院農林水産委員会は1日、離農に歯止めがかからない酪農危機を受けて参考人質疑をおこないました。
 千葉県で酪農を営む金谷雅史さんは、「酪農家収入の基礎である乳代の30円引き上げを求めているが、まだ10円にとどまっている」「酪農危機の底を脱していない」などと述べ、「酪農家の社会的地位が低いと感じている酪農家が多い。人並みに生活できて、もうけがでる。未来を見据えた酪農政策の議論をお願いしたい」と要望しました。
 紙氏は、酪農のやりがい、現在の危機を打開するための即効性のある対策について質問。金谷氏は、涙ぐみながら「消費者の方にありがとうと言われたときにやりがいを感じる。酪農家が表に出てありがとうと伝えたい」「赤字補てんのために1頭10万円の支援があれば借金を返せる」と答えました。
 紙氏は、約400万トン(生乳換算)もの乳製品が輸入されているとして、需給調整システムのあり方を質問。静岡県立農林環境専門職大学の小林信一教授は、「生産者が安心して後継者を持てる経営環境をつくることが国の役割で、それがあって初めて需給安定になる。欧州連合やアメリカのように、したたかに国を守る施策にしてほしい」と述べ、JA全農の齋藤良樹常務は「輸入の大半はチーズだ、(全農として)国産の品質をあげる取り組みをしたい」と述べました。(しんぶん赤旗 2023年6月5日)

◇参考人質疑/酪農家としてのやりがいについて/現場が希望が持てる政策について/酪農家への所得補償について/国産チーズの商品化について

○農林水産に関する調査 畜産・酪農に関する件

参考人
全国農業協同組合連合会常務理事 齊藤良樹君
静岡県立農林環境専門職大学短期大学部教授 小林信一君
酪農家 金谷雅史君
東京農工大学大学院農学研究院教授 新村毅君

○参考人(全国農業協同組合連合会常務理事 齊藤良樹君) それでは、ただいま御紹介にあずかりました全農常務理事の齊藤でございます。
 この度は、このような陳述の機会を賜り、誠にありがとうございます。
 私から、畜産・酪農情勢を踏まえたJAグループの取組について御説明をさせていただきます。
 お手元の資料を一ページおめくりください。
 まずは、ここ三年程度の飼料原料情勢についてであります。トウモロコシシカゴ定期は、南米産地で高温乾燥や中国の輸出需要の高まりなどの影響を受けて、令和三年四月にはブッシェル当たり七百セントを超えて上昇をしております。
 その後、米国でトウモロコシの生育に適した天候が続いたことなどから下落しましたが、令和四年四月にかけて、南米産地の乾燥した天候やウクライナ情勢の緊迫化から急騰しました。さらに、米国における作付け遅延などにより、四月には八百セントを超えて上昇しております。これを図一で示してございます。
 (三)にありますとおり、現在は、ブラジル産の豊作見通し、米国の作付けが順調に進んでいることなどにより下落し、シカゴ定期は六百セント前後で推移しております。一時期の高値からは下落しているものの、いまだ高値であることに加えて、図二にありますとおり、外国為替の円安が継続していることから、トウモロコシの輸入価格は高値が続いております。
 中国のトウモロコシの輸入が大幅に増加しておりまして、トウモロコシ相場に大きな影響を需要面では与えるようになっております。これを図の三で示してございます。
 (五)にありますとおり、令和五年四―六月期からは高止まりに対応した国費と民間基金財源を併用する緊急補填を予定をしているという状況にございます。
 二にありますとおり、配合飼料安定基金の発動状況についてであります。
 (一)として、令和四年七月に配合飼料価格は史上最高となりました。このときの価格を令和二年四月を基準に比較をしますと、配合飼料トン当たり三万一千八百五十円の上昇となっております。これは、発表しております全農のみの基準でございます。
 (二)にありますとおり、令和四年七―九月期には安定基金の補填単価が過去最高の飼料トン当たり一万六千八百円となりました本会は、国とともに通常補填の財源の借入れと異常補填の財源の積立てに取り組み、補填財源を確保しております。
 (三)のとおり、全額国費の配合飼料価格高騰緊急特別対策によりまして、令和四年十―十二月期には六千七百五十円、令和五年一―三月期には八千五百円の特別交付が行われております。
 (四)としまして、令和二年四月を基準として、令和五年一月の生産者負担の増加は二万一千四百円まで抑えられております。
 国の方から、令和三年から令和四年にかけて異常積立金七百六十八億円が措置されました。民間が同額を積み立てるわけですが、全農といたしましては二百十五億円をこの機に積立てを実施をすることを決めております。
 また、積み立てるタイミングにつきましても、金額を分割していただいたり、タイミングをずらしていただいたり、より柔軟な対応を実施していただいております。
 めくっていただきまして、鳥インフルエンザについてでございます。
 この鳥インフルエンザは、御案内のとおり、発生すると生産者経営さらには養鶏産業に甚大な影響を及ぼすことから、法定伝染病に指定をされておりまして、発生しました農場は家禽全羽を殺処分するということになっております。
 (一)にありますとおり、本会は生産農家の防疫対策支援として、令和四年に改正された飼養衛生管理基準の周知徹底のため、農水省や関係団体とともに農場の防疫に関するガイドブックを作成し配布をいたしました。
 また、令和四年度、本会の獣医師が農場の衛生指導を約二千五百回行い、全国で二千六百名を対象に研修を行いました。集合研修がコロナ禍で難しい場合に備えて、本会のウェブサイトで実践的な家畜防疫の研修動画の配信も行っております。
 三にありますとおり、消毒用石灰は自治体の配布もあり広く普及をしています。ただ、石灰は時間とともに効果が落ちるため、本会はその効果を調べる新しい検査液を生産者に配布する取組を開始し、衛生意識の啓発を行いました。
 (四)にありますとおり、業界紙である日本農業新聞や鶏鳴新聞に、全中と共同で衛生意識の向上を目指した意見広告を三回にわたって掲載をしております。
 四ページでありますが、(一)にありますとおり、令和四年十月から五年四月に発生した鳥インフルエンザの影響により、全国の採卵鶏羽数一億三千七百二十九万羽の約一二%に当たる一千六百五十万羽が殺処分をされ、生産量は大幅に減少しております。
 生産量の減少に伴いまして、鶏卵相場は高騰が続き、令和五年三月末にはキロ当たり三百五十円に達してございます。
 鳥インフルエンザ発生後、採卵場への大雛導入には清浄性確認が必要となり、さらに、採卵開始には、ひなの育成に四か月、採卵場移動後に一か月の計五か月を要します。
 殺処分された一千六百五十万羽の産卵回復に向けて、発生農場への大雛導入は一斉に行うことはできず、生産量の完全回復には更に時間を要する状況にございます。
 五ページを御覧ください。生乳・乳製品の消費拡大と理解醸成についてでございます。
 まず、生乳の需給構造について御説明をいたします。
 令和三年度の国内の生乳生産量は七百六十五万トンでありました。そのうち乳価が最も高い飲用牛乳等向け処理量は四百万トンを占めております。酪農家の収益は、生乳が約七六%とかなりの部分を占めてございます。(三)にありますとおり、酪農経営を維持し生産基盤を守っていくためには、乳価が最も高い飲用向け処理を、処理量を拡大することが重要となります。この図にありますとおり、乳価を縦の長さで表してございます。この最も乳価が高い飲用向けである牛乳の消費拡大に加えて、業務用牛乳の拡大や乳飲料等の、等向けでの使用拡大が必要となってまいります。
 六ページであります。消費拡大と理解醸成に向けたJAグループの取組であります。
 (一)にありますとおり、Jミルクが実施します酪農乳業乳製品在庫調整特別対策事業、脱脂粉乳の過剰在庫対策事業に協力し、くみあい飼料の製品である牛代用乳について、原料を全て国産脱脂粉乳に置き換えをいたしました。左下の図一にありますとおり、本日の日本農業新聞の別紙にこの記事を掲載させていただいております。需要が減少した脱脂粉乳の販路を確保し、需給改善にこれでもって幾分寄与したと考えております。
 (二)、酪農を取り巻く厳しい現状を改善すべく、引き続き国産牛乳、乳製品の需要拡大に取り組み、生産者が安心して搾乳できる環境を確保してまいりたいと考えております。生乳生産を増加させる場合には、乳牛を増やす場合には、図二にありますとおり、種付けをして搾乳開始までの期間が約三年、期間を要するため、生乳が足りないという状況の中で生産量を短期間で増やすことはできません。そのため、できるだけ生産基盤を維持しつつ、需要拡大を図る必要があります。
 我々JA全農は、生産者団体であります。この今生産者は歯を食いしばって生産抑制に取り組んでおりますが、でき得れば、輸入乳製品が生乳換算で四百六十九万トンございます、こちらを調整弁としてお使いいただければ、生乳生産基盤は毀損しないものというふうに考えているところでございます。
 四ページ、あっ、失礼しました、七ページを御覧いただきたいと思います。生乳・乳製品の消費拡大と理解醸成のJAグループの取組の二つ目でございます。
 酪農の理解醸成や牛乳・乳製品の消費拡大のため、関係部署や協力会社と連携して、商品開発を始め様々なことに取り組んでおります。コロナ禍の影響などから生乳・乳製品の需給が緩和する中、消費者の皆様に現状の酪農家のことを知ってもらい、応援消費をいただけるよう、日本の酪農を応援シリーズ、牛乳を五〇%以上使用したミルクティー、カフェオレ、抹茶ミルクの三種類の商品を開発し、順次販売をしております。令和三年十二月販売、発売の以降のシリーズ累計で百二十万本でございます。これをどう評価するかでありますが、百二十万回、目に触れていただき、この酪農の事情について理解を深めていただいたというふうに考えております。
 手前どもの営業開発部と連携をし、ニッポンエールブランドの商品として大手飲料社ともコラボをし、牛乳・乳製品を使用した商品を開発し、全国販売をしております。これが図二に示された商品でございます。
 (六)にありますとおり、子会社である協同乳業を通じまして、五十周年を迎えた農協牛乳の販売を中心に農協シリーズ商品を販売するほか、ファミリーマートと協業した農協ミルクについてもシリーズ化し、販売をしております。
 八ページが、JAグループの取組Bでございます。
 協同乳業と連携し、酪農と牛乳・乳製品の魅力を発信する酪農の輪プロジェクトの一環として、本会のアグベンチャーラボを中継して酪農家と消費者をリアルタイムでつなぐオンライン牧場体験を図四のとおり開催をしております。これは、コロナ禍の中で、いかに酪農に親しんでいただくかということで企画したものでございます。
 令和三年夏、四年春並びに四年の夏、五年の春にそれぞれ六十組、四回を抽せん招待、応募総数は五千六百を超える家庭となりました。また令和四年春は、子供食堂、十二か所四百名を無料招待し、オンラインで同じプログラムを実施しております。
 八にありますとおり、牛乳の消費促進を後押しするため、協同乳業を始めとした本会出資の農系乳業及び関係県本部と連携し、令和四年十二月十一日に牛乳無償配布を開催。全国的な牛乳無償配布や酪農などの理解醸成の取組を図五のとおり強化をしております。
 (九)として、酪農家のつぶやきと題して、実際のスーパーにある農協牛乳の販売スペースにPOPを展示して、酪農家の思いや豆知識について発信をしてございます。図の六にありますとおりでございます。
 九ページは、今後の取組というものであります。
 農林水産省のあふ食堂を始め、厚生労働省、財務省、法務省の食堂で国産の牛乳・乳製品を使ったフェアメニューの提供、あるいは牛乳の飲み比べ、四十七都道府県の給食牛乳パックの展示などを行う牛乳月間フェアを実施しているところであります。
 また、大人気の絵本とのコラボレーションによりましてスペシャルパッケージの農協牛乳を発売するなど、取組を強化しております。
 (十二)のとおり、六月十八日の父の日にも同様にJミルク、土日ミルクコンテンツと連携した理解醸成を実施する予定でございます。
 最後に、国産農畜産物の理解醸成の広告を載せてございます。この@からCの広告について、三月二十七日と二十八日の両日、日経新聞を始め、地方紙も含め全国二十四紙にこの記事を掲載をいたしました。内容は、御覧のとおり、SDGs版、生産者の声、消費者の声、そのコンビネーションというものでありますが、反響でありますが、ヤフーニュースや全国紙にとどまらず、地方紙に一部掲載されたこともあって、ツイッターでは、好意的なものとして、悲しく苦しい気持ちになりました、日本の農家を守りたいです、農家の悲鳴が聞こえるようだ、一方、批判的なものとして、コスト反映した日本産に勝ち目はないのではないかという御意見ありましたが、おおむね、好意的なものと批判的なものでは七対三であったというふうに認識をしてございます。
 また、四月二十七日に日本新聞協会の広告委員会が十八歳から六十九歳以下の男女三百人を対象に毎日のメディアに接しているか調査しており……

○委員長(山下雄平君) 齊藤参考人、時間ですので、御意見をおまとめいただければと思います。

○参考人(全国農業協同組合連合会常務理事 齊藤良樹君) はい。
 今後、全農グループは、このような理解醸成の取組を更に徹底していきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

○委員長(山下雄平君) ありがとうございました。
 次に、小林参考人、お願いいたします。小林参考人。

○参考人(静岡県立農林環境専門職大学短期大学部教授 小林信一君) ただいま御紹介いただきました静岡県立農専大学の小林と申します。よろしくお願いいたします。
 私は、一枚のこのレジュメを基にお話ししたいと思うんですが、既にこの日本経済新聞の五月二日号に今日お話ししたい内容、書いてあります。これは、今日はお持ちじゃないかもしれませんが、既に配付されていると思います。
 それでは、このレジュメに従ってお話ししたいと思います。
 まず、一番の酪農、畜産の現状ということについては、ここに書いてあるとおりですが、次の金谷参考人から具体的なかなり厳しいお話というものがあると思いますので、そちらに譲りたいというふうに思います。
 まず、御確認いただきたいのは、酪農、畜産の存在意義ということで、食料供給以外に、農地や環境の守り手ですとか、酪農教育ファームに代表されるような命の教育、もちろん雇用創出といったような様々な役割を持っているということ、これが前提だと思います。
 そして、これちょっと三番ですけれども、現在、酪農、畜産に起きていることというのは、地域の集中化、そして大規模少数化ということです。
 例えば北海道では、酪農の約、生乳生産の四割というのが、北海道のしかも東半分、道東、道北が担っているということで、このことはすばらしいことではあるんですが、一面非常にリスクを持っているというふうに考えております。
 例えば、首都圏周辺の生乳生産が減少している中で、北海道からのフェリーによる生乳移送が今恒常化しております。ところが、二〇一八年に地震があって全道ブラックアウトがありました、九月の五日でしたけれども。その結果、特にまた台風シーズンであったということで、フェリーが欠航するとか運べないということで、あわやスーパーで、首都圏のスーパーで牛乳が欠配されるという、そういうリスクがあったということで、それは全農さんを始めとして様々な生産団体の御苦労で、全国から牛乳を集めるということで何とか欠配は免れたというふうに聞いております。
 もう一つ、例えば肉牛繁殖経営、これも今、子牛価格が下落しておりまして多くの経営者がやめていくということがあるんですけれども、その繁殖経営というのは、中山間地域で高齢者の方が、もう八十、九十の方がやっていらっしゃるという、それが今、価格下落に伴ってやめていかれるということが非常に多くなっているということで、これは中山間地域の農村の維持ということに非常に大きな問題になるんではないかと思います。
 それから三番目としましては、今問題になっております感染症の蔓延ですね。口蹄疫、先ほど、先日、韓国で再び出ましたけれども、二〇一〇年の宮崎では三十万頭以上の牛、豚を殺処分にしたということがありますし、鳥インフルエンザは、御案内のように、卵の価格が高騰する、供給が足らないというような状況がある。そして、豚熱が蔓延して、これも供給にかなり影を差しているということで、こういった地域集中あるいは大規模経営が、行うということが非常にリスクがあるんだということをやはり知らしめているんではないかというふうに思います。
 四番目は、特定地域においてふん尿問題で環境負荷への増大が高まっているということ。これは、例えば、道東なんかでは以前から水産業者とのあつれきということがありますし、九州地域では地下水汚染ということがやはり取り沙汰されているということで、畜産、酪農というのは、実は全国に散在する多くの方たちが畜産、酪農を行うということが正しい姿ではないかというふうに私見しております。
 四番目としましては、こうした畜産、酪農を支える現行の政策というのが、この三十年、四十年の間にどう変化してきたかということを私なりに考えました。残念ながら、そういう経営を支えるセーフティーネットの機能というのが徐々に失われているんではないかというふうに考えます。
 例えば、酪農について言うと、一九六六年に不足払い制が成立しました。これは、乳価紛争で大変なときに、生産者団体と乳業メーカーと、そして国、農林省が一生懸命話し合って、その着地点として不足払い制度というものをつくったと。これによってそれ以後の酪農が非常に発展していたというふうに考えております。
 それが、二〇〇一年の酪農・乳業対策大綱を受けて固定支払に変わってしまいました。この結果、所得補填機能というのは大幅に低下しまして、二〇〇八年、九年でやはり同じように餌高があって酪農家が非常に苦境に陥ったんですが、あのとき不足払い制度があったならば、当時の八倍ぐらいの補填を受けられたということで、あれほどひどい経営的なダメージはなかったんではないかというふうに思います。
 そしてもう一つは、先ほどの首都圏での生乳の需給調整といいましょうか、台風でなかなか、首都圏のスーパーで牛乳がなくなるんじゃないかという問題があるんですけれども、こういうものを調整していた指定生乳生産者団体の機能というものが弱まっているんではないかと。
 実は、私は、二〇一八年の改定畜安法のときも参考人として意見を述べさせていただきました。そのとき、法案に対して危惧の念を表したんですけれども、結果的にはそのときのおそれが現実のものになっているんではないかというふうに思います。生産者団体の力が弱まってしまったということによって、過剰基調にある中で生産者による需給調整機能が失われるということで、更に経営が混乱していくということがあり得るというふうに思います。
 そして、資材や餌の高騰あるいは負債問題が繰り返し行われております。一九八〇年代にも負債固定化の問題で、北海道の酪農の、酪農家の三分の一が実質的に倒産したというふうに言われていました。そして、二〇〇〇年の、二〇〇七、八、九年ぐらいの餌高のときもそうです。
 こういったことが繰り返し行われているということに対してセーフティーネットというのがやはり機能していないんではないかと。これは是非、肉牛ですとか養豚にはマルキンというのがあります。これ、まあいろいろ課題はあるというふうに思いますけれども、しかし酪農はマルキンさえもないと。是非、酪農マルキンというものを実現していただきたいというふうに思います。酪農は収入保険がありますけれども、これほとんど入っていませんし、酪農経営の悪化の要因というのはやはり餌ですとかそういう資材ですので、それをカバーするようなものに是非していただきたいということです。
 五番目は、畜産の持続的発展に必要な政策ということで、今、基本法農政の、基本法の見直しが行われていて、みどりの食料戦略システムとの合体というふうなことも言われているようですけれども、それに対しては全く賛成でございますが、どういうふうにみどり化していくかということであります。
 以下述べる提案といいましょうか提言は、実は二〇一三年に、今日資料でお付けしましたけれども、全国酪農協会等から提言ということで、これが三回目の提言だったんですけれども、行っておるものとほとんど変わらないものです。十年前に提案したものが依然として現実化されていないということに本当に残念で無力感を感じるんですけれども、是非今回それを実現、先生方のお力で実現させていただきたいというふうに思います。
 内容的には、先ほど申しましたように、所得を補填するような、補償するような制度で、これは諸外国、例えば米国においては乳価と飼料費の間の所得を補填する、補償するような保険制度があります。EUにおいてはもう三十年以上直接支払ということで、価格支持政策と切り離した直接的な所得を補償するというような制度があります。日本も直接支払、部分的にはあるんですが、それを全面的に展開していただきたいというふうに思います。
 もう一つ、みどり化との関係でいうと、自給飼料に基づいた畜産生産ということで、農地利用を基準にした直接支払制度、EUでは品目横断的な直接支払というふうにもう既に変わっておりますが、すぐには無理かもしれませんが、日本においても農地を利用するということに対して、農地を確保するというのは今の基本法の見直しの中で入ると思いますけれども、平時における食料安全保障というものの要でございますね、その農地を確保するためには、私は畜産的な利用というのが最もあるいは唯一の手段ではないかというふうに思っております。
 で、濃厚飼料依存からの脱却ということで、大変恐縮ですけれども、餌基金というものをやはり見直すということも場合によっては必要であろうと思いますし、あるいは自給飼料生産の振興ということで、畜産的な活用というのは飼料生産だけではなくして耕作放棄地や林地を活用した放牧というものも当然考えられますし、あるいは、今問題になっているのは、例えば飼料米ですとか飼料用のホールクロップサイレージを作っても家畜の口に入るまで非常にだんだんと遠くなってしまっていると、輸送費だけでもう販売額がですね、販売費がなくなってしまうというふうなばかげたことが起こっているんですね。
 やはり、生産したところで使うということが一番であるということでいうと、集落営農で家畜を導入して耕畜連携を図るという方向が一つの方向ではないかと。具体的にもう既に、例えば鳥取県の八頭船岡農場、これは旧村が一つの法人経営として行っておるんですけれども、余り条件の良くないところは耕作放棄地を放牧にして和牛を取り入れる、あるいはほかのところでも耕種生産を取り入れて多くの新規就農者を迎え入れているということがあります。
 事例の二としては、山口県の杵崎の里というところですが、ここは、耕作放棄地、今は二十五ヘクタールになっておりますけれども、そこを放牧によって再生して、しかも、ここでは地域の焼き肉店と連携して、放牧肥育、濃厚飼料をほとんどあげない肥育を行って、それを焼き肉店で提供して、非常に消費者の好評を得ているというふうに言われております。
 つまり、農地政策というのは、我々の目から見ますと、やはり米政策中心であると。例えば、飼料用稲ですとか、飼料用米ですとか、青刈りトウモロコシを水田で作った場合、飼料用稲の場合は、まあ収量によって違いますが、十万五千円、ホールクロップサイレージの、飼料、飼料用米は十万五千円、ホールクロップサイレージの場合は八万円、ところが、青刈りトウモロコシの場合は三万五千円というふうに大きな差があります。
 例えば、中山間地域直接支払においても、地目別の交付単価が、水田の場合は二万一千円に対して、畑は半分、採草放牧地は僅か千円というふうに大きな差がありまして、水田のあぜを切ったらこれ半分になってしまうんじゃないかというふうに現場の危惧する声も聞こえております。
 これは、段々畑を、水田を例えばオーナー制度で利用するというのが一つの手かもしれませんが、やはり畜産的に放牧するとか、そういう形で農地として利用していくというのが合理的な方法ではないかというふうに思います。
 それから、Bとしましては、先ほどの山口の例のように、これまでは輸入牛肉との差別化ということで霜降り重視ということで一生懸命やってきたんですが、そろそろそれを見直すような契機になっているんではないかと。いわゆるみどり化というものの内実としまして、霜降りをそれほど重視しないような肉牛生産の在り方というものも誘導するということも必要だと思います。それには、格付制度の見直しということもあるんではないかと。
 それから、四番目としましては、クラスター事業で今一生懸命生産を拡大してきたんですが、それが残念ながらややもすると箱物行政になって、今は多額の借金を負って、この収益性が悪い中で再び負債問題が顕在化するということになりつつあるということを非常に恐れております。
 このクラスター事業というのは、本来は地域で畜産経営を支えるという言わばソフト事業だったはずなんですね。そこに立ち返っていただきたいと。そして、特に、経営を見守るようなコンサル事業というものをやはりもう一回充実していただきたいと。
 それから、五番目には、余り畜産では言われていないんですけれども、種鶏、種畜ですね、国産化。これ、種苗法の改正の問題、改悪というか廃止の問題というのは様々問題になって、県が頑張っていらっしゃるわけですけれども、例えば養鶏は国産は数%しかありません。海外から輸入し続けなきゃいけないんですね。これはまさに食料安保にとってゆゆしき問題で、その海外の種畜会社も世界で数社しかないわけですね。独占状態です。ここを何とかメスを入れていただきたいと思います。
 最後に、担い手育成。これは新規就農者。やはり平時における食料安全保障の問題としましては、農地の確保と技術を持った担い手、若い人の確保ということで、これが充実、重要です。我田引水ですけれども、我が静岡県立農林環境専門職大学は、我が国初めての専門職大学であります。
 そして、最後に一点だけ。私たち……

○委員長(山下雄平君) 小林参考人、時間が来ておりますので、御意見をおまとめください。

○参考人(静岡県立農林環境専門職大学短期大学部教授 小林信一君) はい。最後です。
 馬頭農村塾というNPOをつくって、耕作放棄地を耕して、今、新規就農者の夫婦を受け入れて、そこを農地として活用するということをやっています。民間ができることを是非国がやっていただきたいと。国は農業者大学校を潰しました、残念ながらですね。それを今、農協ですとか生協、メーカーが一緒になってつくっておりますけれども、再度、国がそういう学校をつくっていくというようなこともやっていただきたいなと思います。
 以上です。失礼しました。

○委員長(山下雄平君) ありがとうございました。
 次に、金谷参考人、お願いいたします。金谷参考人。

○参考人(酪農家 金谷雅史君) こんにちは。千葉県の酪農家の金谷と申します。ありがとうございます。
 私は酪農家で、今日も搾乳してきたんで、何でしょう、こういった資料を基にプレゼンテーションするというのは苦手ですので、文章を書いてきましたので、読み上げますので聞いていただければと思います。
 最初にお伝えしたいことは、私の意見は、千葉県のみならず、SNSなどを通じて広く酪農家から聞き取りを行っての意見です。集めた意見は全て別紙に配っておりますので、折を見て拝読いただければ幸いです。
 加えて、金谷牧場の青色申告決算書を過去から遡って六年分添付いたしました。生の数字を是非御覧になってみてください。加えて、過去三年間の乳価の推移と輸入飼料の推移も添付いたしました。全て私の経営の数字です。牛飼いがまとめた数字ですので、見づらい部分も多々あるかと思いますが、見てみてください。
 あと、ネット中継などもございますので、読み上げての説明は割愛させていただきます。御質問いただく際もお気遣いいただくよう、お願い申し上げます。
 先に一点だけお願いがあります。
 先月十日にお隣韓国で口蹄疫が発生したとの報道を見ました。既に注意喚起はされていることと思いますが、先生方も襟を正す気持ちで、周りにも注意喚起をしっかりお願いします。
 参考までに、当時、宮崎口蹄疫を経験した方の声を御紹介します。薬殺するときの牛のもがき苦しむ姿が頭から離れない、牛を売ることもできず、ただただ借金だけが膨れ上がり、牛との自死を考えた、口蹄疫終息と言われるまでの約五か月、人間の行き来も制限され、周りの牛も殺され、ぼろぼろなのに、その後の風評被害で牛も売れなくて、口蹄疫から免れた人たちも離農や自死をしていったということでコメントをいただきました。
 私自身も、ニュースしか聞いておりませんでしたが、生の声を聞いて大変心苦しく思いました。厳格に対応いただきたいです。特に、韓国からの渡航客には全員消毒槽を踏んでもらう、手荷物検査で肉類を没収するくらいの気持ちで対応いただきたいです。よろしくお願いします。
 さて、まず、今現状の酪農情勢について振り返りたいと思います。我々酪農家の収入の基礎となる乳代ですが、昨年十一月、飲用乳価十円値上げ以来、再度の飲用乳価十円の値上げが本年八月に控えています。時間は掛かっておりますが、乳価へのコスト反映は着々と進んでいます。当初求めた三十円の乳価値上げも残り十円ですので、八月以降は来年の四月の値上げを目指して指定団体には交渉を進めてもらいたいと思っております。
 しかし、またも為替が百四十円台の円安で、不穏な動きを見せています。もうこの酪農危機の底は脱したと思っていましたが、また悪化するのではないか、そんな不安が拭えない状況です。輸入乾草や配合飼料の価格もこれから落ち着いていくと思っておりましたが、為替の浮き沈みによってまた値上げ基調になっていく可能性は否定できません。ですが、子牛、成牛の販売価格は一時期より良くなったので、そこだけが救いだと感じています。いつになったら終わりが来るんだろうかとほとんどの酪農家が思っています。早くしっかりもうけが出るようにしてほしい、そこに尽きると思います。
 つきましては、今現在、国の農政に関して御意見を述べさせていただきます。
 最初に、世界情勢や為替の影響を多大に受けている我々酪農家ですが、更に厳しいのは消費者ではないかと思います。我々がコスト転嫁を乳価に求めますと、必ず市場価格が上がります。幾らコストを転嫁したところで、消費が落ちてしまっては意味がありません。最近では、牛乳類よりも価格の安い低脂肪乳などが販売を伸ばしていると聞いております。ならば、消費者支援ももっと力を入れていただきたいと思います。北海道では、子育て世代に牛乳券、お米券が配られているそうです。そういった支援はできないでしょうか。消費者の皆様が国産農産品を消費したくなるような農政を是非ともお願いいたします。
 また、理解醸成活動ももっと力を入れるべきかと思います。農水省もユーチューブにて発信しておりますが、まだまだ日本の国産農産品を選んでいただけるには足りないと感じています。国として行うのは難しいかもしれませんが、国産農産品をもっと食べていただきたいと思ってもらえるテレビCMなど打てないでしょうか。その際は、是非とも現場の人間を出演させて、同じ日本人が頑張っている姿を見てもらうことでより農業者の立場も向上すると思いますので、一層創出にもつながると思いますので、需要の創出につながると思いますので、御検討ください。
 次に、酪農経営改善緊急支援事業、いわゆる早期リタイア事業についてです。
 こちらの事業は、低能力牛を一頭屠畜すると国庫から十五万の補助金をいただける事業です。この事業は、農水省にも先生方にも、後ろ向きな評判と耳に入っているのではないでしょうか。減産の一助になればということは分かりますが、要件にしている廃業者が使えないことと二年間減産目標を達成することの二点と、一頭十五万という額が問題だと感じています。
 まず、廃業者がもらえないのはなぜなんでしょうか。当然ながら、廃業者も減産に一役買っています。営農を続けてほしいという意味での廃業者は使えないという要件だと思いますが、この要件はない方がよかったのではと思っております。恐らく廃業補助金というのは認められないだろうと思いますが、業界全体で減産を推進しているのなら、廃業希望者も辞めやすい環境づくりは必要かと思います。
 加えて、二年間の減産目標ですが、これも厳しいです。低能力牛の牛を一頭屠畜したら二年間は牛の補充ができないのがこの要件だと思います。二年間一頭分の枠を空けて減産するならば、二十万円ではとても足りません。私が思うに、四十万くらいであれば検討に値するといったところでしょうか。若しくは、二年ではなく一年にしていただくことも有効かと思います。
 今からでもこの事業の要件緩和をしてみてはいかがかと思います。せっかく付けてくれた予算が未達で終わってしまうようでは、納税者の方らに申し訳が立ちません。辞めたい人が辞められる、続けたい人が続けられるような補助金要件を期待します。
 蛇足ですが、北海道で生乳廃棄が行われていることがテレビで流され、大変話題になりました。このことについて、特にどこの団体からも調査報告などがありません。世間が注目したのに、このまま何もなく過ぎ去ってしまっていいのでしょうか。関係団体に、このことを調査して報告するよう、先生方から御進言いただけないでしょうか。でないと、心配されている消費者の方も留飲も下がらないと思います。
 今後もこういった減産のための補助金が必要なことが、幾ら需要の創出をしようとも、また来ると思います。酪農危機は必ず需給ギャップと飼料高騰のセットで起こっております。そのときのために、しっかり業界全体で効率よく減産に取り組めるシステムづくりが必要ではないかと感じています。
 また、北海道にばかり需給の調整弁をさせているのが忍びないと思っている全国の酪農家がたくさんいます。だからといって、全国的に一律に減産をすると、地域に根差した都府県の乳業メーカーなどは販売量が落ちてしまうので収益が落ちてしまいますし、元々生乳が足りない地域は更に足りなくなります。ですからどうしても北海道にそのしわ寄せが行ってしまうわけですが、ここに強力に支援するべきだと思っています。可能かは分かりませんが、北海道のみに向けられた減産支援政策があってもいいと思いますし、生産者が協力して拠出金を集めて北海道に向けるといいのではないかと思います。これについては全国的な協議が必要かと思います。私一人の意見ではそう思っているんですけれども。
 ひとまず需給ギャップと、あっ、ごめんなさい、一たび需給ギャップと飼料高騰が起これば速やかに減産して、いち早く乳価を上げやすい状況をつくることが最も酪農危機に対して効率的な防御策なのではないかと私は考えます。ですが、併せて需要の創出も強力に進めていくような政策を期待します。
 次に、酪農家の離農が加速度的に進んでいる問題についてです。
 もう中酪のアンケート結果などから御存じかと思いますが、毎日赤字を積み上げているような現状では、離農を選ぶのも無理はないと思います。ただし、離農の中身に関しては、高齢を理由に離農された方が多いというのを目にしました。この点についてですが、私は決して高齢だから離農したわけじゃないのではと思います。つまりは、自分の子供に酪農を継がせられないと思ってのことで、結局、後継者問題なのではないでしょうか。働いたら働いた分だけもうけが出るならば、皆一様に後継者に継がせたことと思います。
 せっかくつくり上げてきた生産基盤が日に日に失われています。地域によっては、牧場がなくなれば町、村の消滅につながるという地域があります。特に小規模牧場でもうけが出づらい状態が長く続いていたと思います。頭数飼って何ぼ、スケールメリットといった、大規模化したなら利益が出やすくなるのが酪農業界だと思います。ならばこそ、小規模牧場若しくは新規就農者こそ手厚い支援をするべきではないでしょうか。
 酪農業界は、昨今のクラスターによる大規模化が進んでまいりました。ですが、この大規模牧場も永遠ではないと思います。次の大規模牧場がどこから生まれるのか、それは中規模牧場から。中規模牧場はどこから生まれるのかは、小規模牧場からといった具合に、裾野産業であることを御理解いただきたいです。今、その裾野の麓も麓、足下の家族経営の小規模牧場がどんどん減っています。これは、二十年、三十年たったときに大きなデメリットになると思います。
 若者の業界参入を強力に後押しできるような体制になっていなければ、酪農の未来は衰退すると思います。形としては戸別所得補償のような形がいいのではないかと思いますが、先ほど不足払いとか酪農マルキンの話がありましたが、私としては戸別所得補償のような形がいいと思いますが、先生方の深い考えにお任せいたしますので、御検討いただければと思います。
 最後に、以前から酪農家の社会的地位がとても低いと感じている酪農家が大変多いです。三百六十五日休みのないこの仕事をボランティアでやっているわけではありません。生活があります。ですから、人並みに休みたいし、その上でもうけが欲しいです。しかしながら、現状はその逆。休みはなく、もうけが出ない。今、営農している私たちがしっかり休みを取れる、その上で、人よりも多く働くのだから、その分のもうけが確保できないと、胸を張って若い人らに勧められません。今、新規就農希望者がいても、掛ける言葉は、今はやめておけという人がほとんどです。
 百年後の日本酪農のありようを想像しても、ネガティブな想像しかできません。遠い未来では、日本人の手で搾った牛乳はほんの一握りになってしまい、日本は酪農業が盛んだったと昔話にならないでしょうか。
 ですから、明るい日本酪農の未来を見据えて今の酪農業界をどう進めていくべきか、先生方の深い議論と更なる御支援をお願いいたします。そのためならば、私自身、骨身を削って協力することを惜しみませんので、どうぞお声掛けください。
 最後の最後でもう一つだけお願い申し上げます。短期的な支援がいまだ必要な酪農家が多いので、是非とも一頭十万円の補助金を御検討いただけるよう、お願い申し上げます。
 百年後も日本酪農が存続し、子孫らが酪して生き抜いている明るい未来を期待します。先生方、本日は世界牛乳の日です。今日は是非牛乳で乾杯をしていただければと思います。よろしくお願いします。
 御清聴ありがとうございました。

○委員長(山下雄平君) ありがとうございました。
 次に、新村参考人、お願いいたします。新村参考人。

○参考人(東京農工大学大学院農学研究院教授 新村毅君) ありがとうございます。東京農工大学の新村と申します。
 私の方からは、アニマルウエルフェアの現状と課題について説明させていただきます。
 ページめくっていただきまして、スライド少し多いですので、前半飛ばしぎみで説明させていただきます。
 まず、アニマルウエルフェアとは何かというところなんですけれども、基本的な、いろんな考え方があるんですけれども、アニマルウエルフェアは基本的には人が動物を利用するということは許容しますということで、お肉も食べますし、ペットも飼うというのは許容します。だけれども、最終的に殺されるからといって何をしてもいいかというわけではなくて、生きている間は生活の質を高めてあげようというのが動物福祉の基本的な考え方になるということになります。
 主体は動物です。人ではないということで。ですので、人が動物をかわいそうだと思うというのは動物福祉ではなくて、動物の側から客観的に動物の状態を評価して、動物の状態を向上させていくというのがアニマルウエルフェアになります。ですので、客観的で科学によって動物の状態を理解していくということが非常に大事になってきます。科学ですので、やはりぶれにくい、基準になりやすい、ですのでグローバルスタンダードにもなりやすいという性質もあるかと思います。
 その下にありますスライド、右上に番号が振ってありますけれども、三枚目の鶏の、動物の状態と書いてある写真ですけれども、図ですけれども、動物福祉というのは定義としては動物の状態という定義になります。ここに書いてあるマイナスの例えばストレスですとか、プラス、喜びですとか、そういったものをひっくるめて足し算した例えば二十点、四十点という点数を動物の状態、すなわち動物の福祉だという定義がすることができるというような定義になっております。
 ページめくっていただきまして、スライド番号四番目になりますけれども、じゃ、その動物の状態をどうやって理解するか。一つの動物の状態を五つに切り分けて考えるというのが五つの自由という考え方になります。
 五つの項目がありまして、例えば、餌をあげましょうですとか、痛みをなくしましょう、それから動物が持っている正常行動を発現させましょう、こういった五つを満たすことが、動物の状態、すなわちアニマルウエルフェアにとって大事だということになります。
 その下の鶏の写真は、その動物の正常行動をやはりしっかり理解していくということが大事になってきます。これは行動学的な、オーソドックスな写真、行動学的な実験なんですけれども、こういった、例えば二十四時間おなかをすかせた鶏を右側に置いて、左側に餌をあげますと、この鶏はこの写真のように透明な扉をかなり重くてもぐいっと持ち上げることができますと。こういった形で行動欲求を調べることができると。
 今度は、例えば満腹な状態の鶏を右側に置いて、左側に止まり木を置いたとすると、例えば止まり木の場合ですと、先ほどの空腹の状態が百点だとすると、七十五点ぐらいの扉の重さを鶏は持ち上げて止まり木に止まろうとすると。つまり、鶏にとって、そういった止まり木に止まりたいという動機付けというのは、非常に行動欲求が強いということが言えるかと思います。
 ページめくっていただきまして、スライドナンバー六になりますけれども、こういった観点で、アニマルウエルフェア、家畜ごとにもうたくさんの課題があります。
 今日は、採卵鶏の中でも特に批判の的となっているケージについて中心に説明させていただきますけれども、このケージがまずなぜ問題かというと、先ほど申し上げたとおり、鶏が例えば巣箱で卵を産むとか止まり木に止まって休む、そういった行動欲求が満たされない環境だから批判の的となっているという状況になります。
 じゃ、ほかに代替になる飼い方、飼育システムとは何かというところで、まとめて、写真でまとめてありますけれども、大きく分けますとケージとケージフリーということになります。ケージは、バタリーケージ、それからケージに止まり木などを入れたエンリッチドケージ。それから、ケージフリーは、いわゆる平飼いですとか放牧、そういったものがケージフリーになるということになります。
 スライドめくっていただきまして、ナンバー八になります。
 こちらは世界地図なんですけれども、家畜の福祉という観点から世界を評価した世界地図になります。緑になれば評価が高くなるわけですけれども、やはり一見してヨーロッパ、EUは評価が高い。一方で、アジア、それから南米、アフリカというものは評価が低くなっているという現状になっています。これはいろいろな見方ができると思うんですけれども、どちらかといえば、世界が一枚岩になって放し飼いに向かっているというよりかは、どちらかというと二分化しているような感じさえ見受けられると思っています。
 その下の同じく世界地図なんですけれども、これは鶏のケージなのかケージフリーなのかという世界地図になりますが、これもやはり同様で、ヨーロッパはケージフリーが、たくさんオレンジ色のケージフリーが増えていますけれども、やはり、アジア、南米、アフリカというものはまだまだケージだというような状況になっています。
 めくっていただきまして、スライド十になります。
 こちらは、各飼育システムの長所、短所を端的に示したものです。福祉は五つの自由の観点から評価しておりまして、これ信号機をイメージしていただきまして、青は安全、赤はリスキーだということで理解していただきたいんですけれども、例えば、ケージを見てみますと、やはり病気のリスクというのは、ふんが全て下に落ちますので、衛生的な環境、それから物理環境も空気の質が高いような環境は維持できるということです。ただ、やはり正常行動の自由というところだけが非常にリスクだということになります。
 ケージフリーは、正常行動の発現の自由というものは十分満たされるわけなんですけれども、やはり自分のふんの上を歩くリスクも増えますし、たくさんの鶏がいるところに管理されるわけですので、病気のリスク、それから痛みのリスクというものは必然的に高くなってしまうというデメリットがあるということがあります。もちろん、リスクですので、こういったリスクが、病気のリスク、痛みのリスクが除くことがもしできれば、ケージフリーは全体として福祉レベルが高いということも言えると思います。
 ここで申し上げておきたいのは、もうとにかく完璧な飼育システムというのはないということですね。ですので、ケージフリーイコール動物福祉ということでもないということをここでお示ししたいと思っております。
 それから、生産性につきましては、やはりケージは一番生産性が高いです。ケージフリーはどうしてもその活動量が増えます。行動の自由も増えますので、同じ餌を食べてもどうしても卵、出てくる卵の、生産される卵の量というものは少なくなってしまう。ですので、卵の価格というものが必然的に高くなってしまう。これはそうかなと思います。下の例でも、今、卵の価格がかなり高くなっておりますので、これはちょっと前の話になるかもしれませんけれども、一年前の研究ですと二倍の価格に、ケージから放し飼いにすることで二倍の価格差になってしまいますということで、こういったときに、じゃ、アニマルウエルフェアいいけれども、じゃ、価格が二倍になっちゃいますっていったときに、やはりなかなか消費者に買ってもらえないという状況もあるのかなと思っております。
 スライドめくっていただきまして、国際基準になりますけれども、国際基準があります。OIEが制定しておりまして、日本も加盟しております。国際基準は基本的にはあらゆる飼育システムを認めているということで、日本は賛成の立場にありますと。
 その下のスライドはEUとアメリカの状況を端的に示したものですけれども、EUはもう五十年ほど前からファイブフリーダム、五つの自由というものを考え始めていまして、バタリーケージというものはもう十年前ほどから法律で禁止になっております。今後は完全に放し飼いに移行すると。ケージフリーに対する高い消費者ニーズというものも存在して、まあ高くても買いますよという消費者がほとんどです。
 アメリカは、州の法律もあるんですけれども、特徴的なのは、やはり投資というものを背景としまして、企業がケージフリーの卵を一〇〇%扱うという宣言をして、アニマルウエルフェアが進んでいるというのがアメリカの特徴になります。基本的にバタリーケージからケージフリーに、およそあと数年後で五〇%になるということが予想されております。
 めくっていただきまして、スライド十四枚目、これが非常にギャップに苦しむところなんですけれども、日本の現状になります。
 消費者アンケートの結果としまして、アニマルウエルフェア知っていますかという質問で、知らないと答える消費者が八二%、名前は聞いたことあるけど内容は知らないというのが一二%、合わせて九四%の日本の消費者というのはやはりアニマルウエルフェア知りませんと、これがやはり現状かなと思います。それから、生産者アンケート、これも採卵鶏ですけれども、ケージ飼いというものが今現状九四%になっております。ですので、ここもいろいろな見方ができるんですけれども、アニマルウエルフェアを知らない、安くて質のいい卵を求める消費者ニーズと供給のニーズというのがある意味でバランスが取れている現状だとも捉えることができるかもしれません。
 その下行きまして、まとめに少し入っていきますけれども、先ほど申し上げましたとおり、EU、アメリカ、オーストラリアはもうケージフリーに移行しているという一方で、やはり国によってはケージが主体でいるということで、世界が一枚岩になってケージフリーになって、向かっているということではないということになります。
 日本の現状としましては、アニマルウエルフェアの問題は、これまで説明させていただきましたとおり、もう間違いなく不可避であります。対応をもう絶対にこれはこれからやっていかなければいけないという現状にあるということだと思います。
 ただ、一方で、やはり消費者意識が低いということですとか、日本の生食文化ですね、非常に独特な、生卵を食べるという文化がありますので、本当に、衛生的に少しリスキーなケージフリーというものが本当に日本の食文化に適合したものなのかというのは、やはりまだまだ検討の余地があるだろうと考えております。
 めくっていただきまして、スライド十六枚目です。
 こちらは、じゃ、どこを目指していけばいいのかというところで、私も答えは持ち合わせていないんですけれども、一つのポイントとしましては、ケージフリーイコール動物福祉ではありませんので、どの飼育システムで飼うのかというよりかは、その飼育システムの中でどうやったら動物の状態を向上させるかというところが重要だということで、それぞれの飼育システムの管理の最適化、これが一つ目指すべきポイントの一つじゃないかなと考えております。
 この下の、何か二次関数のようなグラフがあるんですけれども、こちらでちょっと説明させていただきますと、これは横軸が生産性で縦軸が福祉レベルになっております。生産性と福祉のレベルの関係性を表しますと、およそラージ点AからB、C、ラージ点Dの曲線になると考えられます。
 重要なのは、まず、ラージ点Aで、ラージ点Bのところはバタリーケージ、ラージ点C、ラージ点Dはケージフリーと理解していただきまして、重要なのは、まず、そのケージの中でも福祉も生産性も向上させることができるポイントというのがあると。それがラージ点Aからラージ点Bだということで、例えばラージ点Aは、やはりまだケージの中でも非常に過密な飼い方をしている生産者はやはり一定数います、二割、三割いますので、ラージ点Aからラージ点B、最適な密度、最適な羽数、そういったものを完全に最適化することによって、生産性も福祉もその両方が上がるポイントというのがあると。なので、ケージの中ではまたラージ点Bをまず目指していくというのが一つのポイントかなと思っています。
 同様にケージフリーも、ずさんな管理をしている農家さんもいらっしゃいますけれども、やはりラージ点Dではなくてラージ点C、ここは生産性と福祉レベルが両方上がるポイントですので、まず目指していただくというところかなと思います。
 それから、ラージ点Bからラージ点Cのところにつきましては、なかなか、右上にありますやはり需要と供給のバランスを見ながら、ラージ点Bからラージ点Cを少しずつ微増させながら目指していくというところが重要になってくるかなと考えております。
 めくっていただきまして、これは課題になりますけれども、まず重要なのは、EUは五十年にわたるいろいろな研究、教育の上に今の現状がありますので、日本は、やはり今のその畜産体系の基盤として、きめ細やかな管理の上に日本版の動物福祉というものを少しずつ確実に導入していく必要があると考えています。
 で、五つ、少し書いたんですけれども、まず一つは研究ですね。科学的なエビデンスというものがないに等しいですので、当然、そのヨーロッパの研究を見てこの研究がこうなんだけどと言われても、温暖湿潤な気候の日本で本当にそれが本当にそのとおり起こるんですかと言われても、やはり分からないですね。現状も把握し切れていないということで、やはり、じゃ、どういう方向に進むべきかという、そもそものそのエビデンスがないんですね。やはり議論になかなか進みにくいというところがありますので、研究費を確保をしていただきたいというのが、できれば研究センターをつくりながら、研究費を継続的に額も増やしながらやっていただくというのが重要かなと思います。
 めくっていただきまして、対話の場ですね。これは、やはりこういった場も本当に非常に重要で、農水省の方でもいろいろなステークホルダー間の対話の場を設けておりますので、これは非常に画期的で是非継続して分科会なども検討していただきたい。
 その上で、やはり重要なのはガイドラインの制定になります。こういった国際基準を満たすようなガイドラインの制定をしていくということです。具体的に、何年後に例えば過密な生産農場を何%減らすですとか、具体性も示していただく。
 それから、四番の認証制度は、統一的な認証制度をつくって、で、ヨーロッパ、写真のように、韓国のように一つ一つの卵に印字するような方法によって消費者への理解を増やしていく。
 それから最後に、食育ですね。そもそも、子供たちがどうやって自分たちが食べている動物が飼われているかって知らないですね。なので、やはり動物福祉の重要性に気付けない。EUはもうほとんどの人が知っている。ですので、こういった中長期的に見て重要になる食育というものを推進していただく場を提供していくことが重要と考えます。
 以上です。ありがとうございました。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 四人の参考人の皆さん、それぞれの本当に貴重な御意見を聞いているというように思っております。
 それで、二〇一七年のときにこの畜産経営安定法、畜安法の改正の審議がありまして、小林参考人はそのときに来てくださっているんですけれども、そのときに私質問で、農水大臣、当時は山本農水大臣だったんですけど、畜産物の需給の安定を通じて畜産経営の安定を図ることを明記しているんだというふうに言われました。そして、無秩序な輸入は防止させていただくんだということも言われていたんですね。
 ところが、あれから僅かまだ五年なんですけれども、実際にはこの国内の酪農家がずっと減ってきている状況で、日経新聞の最近の記事を見ても、二〇二二年度末に前年度対比で七%減の、この戸数ですね、一万九百六十二戸と過去最少を更新していると、調査を始めたのが二〇〇八年で、それ以降でいうと最大の減少率なんだということが書いてあって、そこには、ずっとお話あったように、飼料高などで多くの農家の採算が悪化しているということなわけですけれども。
 で、生産者の皆さんから、今日来られている金谷さんも、酪農やばいですという話がずっと出されてくるということで、それで、どうして有効なこの対策が取れないのかというふうに思うわけです。現状というのは、まさにこれ、本当に歴史に残るような令和の大失政と言われても仕方がない状況じゃないのかなというふうに、ちょっと厳しい言い方すればね、私はそんなふうにも思うわけなんです。
 それで、最初に金谷参考人にお聞きしたいんですけれども、今日は大変リアルな資料を出していただいて、まさに自分自身の経営の、平成三十年からですか、令和一年、二年、三年、四年までの収支っていうか決算ということで出されているので、物すごくリアルに、どのぐらいお金が掛かってきているのかという採算の状況がすごくリアルに分かって、それで、やっぱりどんなふうに、まあ赤字になっているわけですけど、当初は大体四百万ぐらい黒だったわけだけど、それが四百万ぐらい赤になっているという過程で、やっぱり非常に経営やっている本人としてはすごく不安になっていたと思うんですよ。
 当初もらってたこの資料の中にも書いてあるんだけども、毎月毎月追って書いてあって、で、やばくないかというのを周りの人に声掛けて、みんながそうだっていうふうに話してて、何とかしなきゃいけないんじゃないかという気持ちになって、声掛けながら、やっぱり署名集めたりとかして、いろいろ打開しようという取組があるリアルな状況がすごくかいま見えて、胸が苦しくなってしまうんですけれども。
 そこで、二つお聞きしたいんですけど、一つは、金谷さん自身が、お話もありましたけど、二〇一三年に実家の酪農に就農されて、今、十一年目だと。実際に酪農をやってこられて良かったなと思うことだとか、それからやりがいだとか、それからやってみて十一年の中で実感していることということについて一つはお聞きしたいのと、その上に立って、やっぱり、やばいというふうに訴えてこられているその今の危機というか、酪農の危機ということがどういうことなのかということを話をしていただきたいんです。入ってきたお金が、九月ですかね、振り込みが、金額がゼロ円だったということだとか、それから、やっぱりそういう中でこれから希望を持てるっていうふうに思う政策というのが、端的に言うとどういうことなのかということ。
 ちょっといっぱい聞いちゃいましたけど、大きく分けて二つのことでお答え願いたいと思います。

○参考人(酪農家 金谷雅史君) 御質問ありがとうございます。
 まず、最初御質問ありました、就農から、良かったこと、やりがいだとか実感としてということですけども、まず、良かったことは、私、それまでは会社員でしたので、建築系の会社勤めということで、実家からでも、アパート、借家からでも会社に通っておりました。それが、実家に就農することになって、家の目の前の牛舎が職場になるということですけど、職場が起きて一分で行けるというところが最高だなと思ったところです。
 あと、やりがいというところでは、個人事業主ですから、誰に文句を言われることもなく、ずっと働けるんですね。なので、例えば機械が壊れてしまった、直さなければいけないと、あしたの朝の搾乳までに直さなければいけないというときに、夜の三時まで機械をいじってみたりとか、それに関して誰も文句を言わないで、ずっと働けるんですね。ある意味ではかなりブラックな仕事ですけども、やりたいようにできるという自由さがやっぱりいいのかなと、それが個人事業主であるというふうに実感しております。
 やばいということで訴えてきましたけども、酪農危機の真相というか、今そういう窮状を訴えることをずっとやり続けておりますが、何よりも、SNSとかネットでやばいですということを訴えていますと、消費者の方がありがとうと言ってくれるんですよね。いつも、あっ、ごめんなさい、ちょっと済みません、いつも牛乳を搾ってくれてありがとうというところで、ごめんなさい、何でしょうね、やりがいがあったのをそういうありがとうで感じたというのがすごく思います。それぐらいそのやりがいが、やりがいしかなかったというのがすごい今までですね。ありがとうという言葉を実際にいただいたのが非常に最近の話なので、そこでやっと実感が得れたという感じですかね。
 だから、みんな多分そういうふうになっていると思います。だから、そういう意味でも、理解醸成とかそういうところで酪農家自身が表に出ていってありがとうと伝えると、で、逆に返ってくるありがとうがすごい今みたいにうれしいので、そういうふうにやっていけば、まあおごりおごられじゃないですけど、消費に一定の寄与するのかなというふうに思っております。
 政策ですね、希望が持てる政策ということでお伺いがありましたけども、さっきの意見発表のときも最後にお伝えしたことがまず大事かなと。それは、全国的にみんなが困っていることではないんですけども、かなり多くの人がもう一頭当たり十万円以上の赤字を被っているというのが事実かと思います。それは、はっきりした数字は私持ち合わせてはいないんですけども、そういったところで、もう既に被ってしまっている赤字の補填という意味で一頭十万円というのは、いい数字なのかなというところです。
 それがなければ、それをこれから自身で稼いでいかなければいけないというところですので、まず需給ギャップが埋まって乳価が上げやすくなって、乳価が上がって、そこからさらにその一頭十万円分の借金を返していくというすごい厳しい道のりですので、だから、予算規模的に非常に大きなものになると思いますので、実質的に可か不可かと言われると、自分でも結果としては難しいというのは分かってはおりますが、それをお伝えしないと、今現状困っている酪農家みんな下を向いてしまいますので、今日はそれをお伝えしたいと思って来ました。
 済みません、お時間いただいて、ありがとうございます。

○紙智子君 そうしたら、次、小林参考人にお聞きします。
 二〇一七年の畜安法のときも来ていただいたんですけれども、やっぱり酪農政策について今必要なことって希望の持てる政策を出すということなんだと思うんですけれども、一時的な対応じゃなくて、やっぱり長期的な見通しのある政策が示されることだというように思うんです。
 それで、例えば、畜産経営安定法が畜産物の需給の安定を図るということを目的にしているということなんだけど、だとすると、需給調整のシステムをどうするかというのは、これは問われているというように思うんですよね、需給調整どうするかと。その際、今のように、やっぱり常に生産者の負担を伴うやり方ってなっているんですけど、それがいいのかなというふうに思ったりもするんです。
 それから、国内の需給動向に関係なく入ってくるこの生乳換算で約四百五十万トンもの乳製品、これをどうするのかということについてどう思われるかなと。以前にも提案されていて、なかなかそれが、すごく、私としてはすごい同感して見ていたんですけれども、なかなか実行されていないという中で、その辺りについてどうかということをお聞きしたいと思います。

○参考人(静岡県立農林環境専門職大学短期大学部教授 小林信一君) ありがとうございます。
 畜安法の目的として需給安定ということはあると思うんですけれども、不足払い法からいわゆる再生産を保障するようなというようなこともあったと思うんですね。だから、生産を確保できる、つまりは生産者が安心して後継者も持てるような、そういうような経営環境をつくるというのが国の役割だというふうに思います。それがあって初めて需給安定というのがあるんじゃないかというふうに思うんですね。
 それは、ですから、私一言一句覚えてはいないんですけど、目的の中で、それだけじゃなくて、たしか再生産ということもあるのかなというふうに私は思っているんですけれども、ですから、長期的な形での、私が申し上げたような所得補償をするようなものが必要であろうと。
 で、その中で、輸入をどう考えるか。先ほど十三万七千トンの輸入義務のお話があったんですけれども、日本は非常に真面目で、何でも律儀に守ってきて、結果的には不足払い制度をなくしたというのも国際的に約束だというふうに言って固定支払にしたということがあるんですが、ほかの国を見ると、EUとかあるいはアメリカなんかは、ある意味では、何というんですか、政策的に真っ赤に近いようなものをやり続けているということで、構わないという、そういうことであれば、もっと日本も、何というんでしょうか、したたかにというんですかね、したたかに国を守る、したたかに国、国内の生産者を守るような施策を是非していただきたいと。
 ですから、輸入を全くやめるとかあるいはこれからまた輸入障壁を高くするというのは多分無理だと思うんですけれども、そうでなければ、やっぱり国産をきちんと生産し、それが、消費者がきちんと価値を見出して、国産はいいということで食べるというような方向に持っていっていただくということで、価格的にも、今実は日本は非常に貧乏になっていますけれども、価格的には競争できるような状況に逆になっているというところもあるわけで、そういう苦境をメリットにする、武器にするという、そういう戦略もあるのではないかというふうに思います。
 なかなかこれという回答はないんですけれども、今考えていることはそういうことです。
 ありがとうございました。

○紙智子君 ありがとうございました。
 じゃ、ちょっと時間も迫ってきたので、齊藤参考人にお聞きします。
 先ほどのこの資料での説明の中でありましたけれども、齊藤参考人の主張の中でも、今までやってこられた中でも、畜産、酪農の販売事業を担当されたり、酪農の理解醸成、牛乳や乳製品の消費拡大の取組もやってこられたと思うし、それから脱脂粉乳の在庫対策とか出口対策なんかも取り組んでこられたと思うんですよね。
 それで、このさっきの資料の中で、こちらを調整弁に使ってほしいといって輸入乳製品のところを言われていて、実は私も全く同感で、この前質問したときには、国内の生産者を調整弁に使っちゃ駄目だということで、むしろこっちを調整弁に使うべきだという話をしたんですけど、そうすると、例えば、さっきもチーズの話あって、チーズの消費というのはすごく高いと。私もチーズ大好きなのでいろんな種類のチーズを買っている方なんですけれども、例えば、ピザって大体外国のチーズ使ってやっているんじゃないのかなと思うんですけど、もっと国産でそういう商品化していくというか、商品開発なんかも含めていろいろやられているとは思うんですけど、そういう更に消費を拡大していく上での、みんなが好んで買っていくような、そういうアイデアとか開発の面での提案みたいなことがあれば教えていただきたいなと思います。

○参考人(全国農業協同組合連合会常務理事 齊藤良樹君) この輸入されているものの中で、かなりチーズが大宗であるということなんですね。
 その中でも、やはり問題は、特にナチュラルチーズの場合の品質ですね。やはり、その技術的な問題とそれからコストの問題。例えば、それに日本産を使った場合に、どれぐらいそのお金を使わなきゃいけないのか、同じ、同等のものができるのか、そういうところを、これからしっかりやはり追求していく中で、ここの部分をしっかりと置き換えていくことが大事かなというふうに思っています。
 実は、私どものことで恐縮なんですけど、昨年の六月に、協同乳業という会社をグループ会社化しました。
 この目的は、先ほどの説明の中にもあるとおり、いわゆる乳価、農家にとって一番手取りの高いのは牛乳等の飲用向けなんですね。その飲用向けの市場、四百万トンをしっかりと守り、しっかり拡大していくことが酪農家の所得向上につながるということで、そこを核に農系乳業、いわゆる我々なりJAグループが出資をしている農系乳業、中小が多いんですけれども、しっかり合理化、効率化をしながら、その牛乳の市場を拡大していこうという取組をしていくために子会社化したわけなんですけれども、その中に実はフランスのチーズを扱っている会社も入っているんです。その中の子会社のグループ会社みたいな感じで。
 で、そういったところの技術というものをしっかりと、我々としても手に入れる中で、国産のやはり品質をしっかり上げていく取組をこれからやっていきたいなというふうに思っているところです。

○紙智子君 ありがとうございました。
 ちょっと時間になってしまって、済みません、新村さんにも用意していたんですけど、時間なくなって申し訳ありません。
 終わります。