<第211回国会 農林水産委員会 2023年5月25日>

質問日:2023年5月25日 農林水産委員会

遊漁船の安全強化へ 紙氏「水産庁が調整役を」
改正適正化法が全会一致で可決


 改正遊漁船業適正化法が5月26日、参院本会議で全会一致で可決、成立しました。北海道知床沖で昨年4月に起きた観光船「カズワン」沈没事故を受けて、遊漁船業者の安全管理体制を強化するものです。
 日本共産党の紙智子議員は5月25日の参院農林水産委員会で質問し、昨年5月に北海道斜里町のウトロ港で行方不明者の捜索活動に参加した漁業者と懇談した際、漁業者が「あの日はしけるとわかっていた」と述べていたと紹介。国土交通省運輸安全委員会の「船舶事故調査の経過報告」でも、事故の要因の一つに「発航の可否判断及び運航継続の判断に問題があった」と明記されていると指摘しました。
 野村哲郎農水相は、国交省の報告を受け、出航や運航継続を判断する船長等の義務を明確化し、業務規定にも出航の判断基準を記載し、都道府県知事が確認する仕組みをつくったと答弁。重大事故の報告や安全情報の公開も義務づけたと述べました。
 紙氏は「遊漁船業に関する協議会」を創設できるが、遊漁船と漁業者の間で水産資源や操業を巡るトラブルなどが発生した場合の対応を質問。安東隆水産庁次長は「(協議会は)漁場の利用調整などを話し合う。構成員は知事、遊漁船業者、漁協、関係地方自治体としているが、漁業者も知事が認めれば構成員になれる」と答えました。紙氏は、水産庁が調整役を果たすよう求めました。(しんぶん赤旗 2023年6月7日)

納得の資源管理必要 改正漁業法 紙氏が漁業者を代弁 参院農水委

 日本共産党の紙智子議員は5月25日の参院農林水産委員会で、改正漁業法(2018年)に伴う資源管理に、漁業者の不満や不信が絶えないと指摘し、漁業者が納得できる対応を求めました。
 紙氏は、北海道日本海沿岸漁業振興会議と北海道漁業協同組合連合会が3月上旬に国に「新たな資源管理の導入」などを要請した際、「ホッケやマダラなどは、具体的な対策が国から示されなければ、TAC(漁獲可能量)管理の導入を決して認めるわけにはいかない」「北海道総合研究機構と漁業者が共同で推進する自主的資源管理を基本とした『北海道スタイル』を認めよ」などの意見が出たとの報道があるとして、不信や不満が絶えない理由を質問。神谷崇水産庁長官は「TACの仕方や説明で多々、問題があった。昨年4月以降10回、説明会を実施している」と答えました。
 紙氏は、3月末の説明会でも、「現状の議論では目標管理基準値を設定するのは無理だ」「漁業者の実感とは乖離(かいり)がある。現状の資源管理を変えるメリットはあるのか」等の意見が出されたとして、現場の理解を得ることなく漁業法を改正したことに無理があったと指摘。野村哲郎農水相は、「積極的に職員を派遣し、丁寧な説明を心掛けたい」と述べました。
 紙氏は、多くの漁業者は自ら資源管理を行っており、丁寧な説明ではなく漁業者が納得する資源管理が必要だと主張しました。(しんぶん赤旗 2023年6月4日)

◇遊覧船KAZUTの事故と遊漁船法改正案について/遊漁船と資源管理について/資源管理を目指す水産フォーラムの提言について

○遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律案

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 法案についてまず質問いたします。
 この法改正の背景に、昨年の二〇二二年四月に北海道知床半島の海域で発生した遊覧船KAZUTの事故があるということが説明されています。
 私は、昨年の五月に、この北海道の斜里町で漁業者や町長と懇談いたしました。ウトロ港で行方不明者の捜索活動を行われた漁業者の方にもお会いしたんですけれども、おっしゃっていたのが、まずおっしゃっていたのは、あの日、というのは四月二十三日ですけど、あの日はしけると分かっていたというふうにおっしゃっていて、安全管理の甘さについて指摘を受けました。
 それで、やっぱり、KAZUTの事故を受けて十二月の十五日に国土交通省の運輸安全委員会がまとめたこの船舶事故調査の経過報告、ここには、事故の要因の一つとして、この出航の可否の判断及び運航継続の判断に問題があったということが言われているわけです。
 この改正案がこの指摘をどういうふうに生かしたのかということをまず最初にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) お答え申し上げます。
 今、紙委員から指摘がございましたように、今回の法改正につきましては、近年の事故が非常に増えているというのが長官の方からも御報告あったとおりでありますが、特に知床沖の観光船の重大事故もあったことを踏まえ、安全対策を強化していく観点から、先ほどおっしゃいました国交省の知床遊覧船事故対策検討委員会におきまして、今年の四月でありますが、決定したわけでありますが、この報告書の内容との整合性を図りながら本改正案を整理したところでございます。
 この改正案の中で、出航や運航継続の判断に関しては、遊漁船業務主任者の知見が適切に生かされるように遊漁業者がその意見を尊重しなければならないこととするということと、もう一つは、業務規程を登録の際の審査書類に追加すると、今までは発行後に、この登録の発行後に提出をしていたものを審査書類に追加して一緒に出してもらうということで、出航判断基準等に関する事項を都道府県知事に確認できるようにしたところでございまして、これによりまして、知床の事故を踏まえて改正された海上運送法と同等の安全対策は措置されていると考えているところでございます。

○紙智子君 今おっしゃったこと、十三条の二のところに法案上は書かれていると思うんですね。
 それで、遊漁船業者が重大事故を起こした場合に報告を義務化したり、利用者の安全や利益に関する情報の公開を義務化した、その理由についても教えていただきたいと思います。これ、水産庁、お願いします。

○政府参考人(水産庁次長 安東隆君) お答え申し上げます。
 本法案において、遊漁船業者は重大事故を引き起こしたときは速やかに都道府県知事に報告することを義務付けたところですが、これは、都道府県知事が重大事故の情報を速やかに把握し、再発防止に向けた指導や対策を講じられるようにするためのものです。
 また、遊漁船業者に対し、利用者の安全確保及び利益保護を図るために講じた措置として、利用者の安全確保のために船長及び遊漁船業務主任者が遵守すべき事項、出航中止の判断基準や海難発生時など緊急時の対処方法といった情報の公表を義務付けています。これは、遊漁船の利用者が遊漁船業者が講じている安全対策等の情報に基づき事業者を選択できるようにするとともに、利用者の目を通じて業界全体の安全意識の向上等を図ることを目的としたものです。

○紙智子君 それともう一つ、今回、遊漁船業に関する協議会が創設をされました。それで、遊漁船と漁業が相まって発展していくのは、これはもちろん必要なことだと思うんですね。しかしながら、現実には、この水産資源や操業をめぐるトラブルというのは発生しているわけです。
 そういうトラブルが発生した場合に協議会はどういう役割を果たすのか、また、協議会の構成員になりたいというふうに例えば漁師が希望した場合に構成員になることができるのかという、この二点、お答え願いたいと思います。

○政府参考人(水産庁次長 安東隆君) お答え申し上げます。
 今回の改正案で設ける協議会では、地域ごとに遊漁船業における利用者の安全確保及び利益の保護、漁場の安定的な利用関係の確保に資する取組を推進するために必要な協議を行うこととしており、漁業と遊漁船業との間で必要になっている漁場の利用調整についても話し合われることになると考えています。
 また、本協議会は、都道府県知事、遊漁船業者、漁協、関係地方公共団体、その他の知事が必要と認める者で構成することとしており、個人の漁業者であっても、知事が必要と認める場合には構成員となることが可能となっております。

○紙智子君 都道府県が行司役となって調整を図るというのは、これは必要だというふうに思うんですね。ただ、都道府県任せにしないで、是非水産庁が調整に当たるということも必要だと思いますので、そこはしっかりやっていただきたいと思います。
 それから、もう一つ、資源管理についてなんですけど、漁業者は資源管理しているのに遊漁船業は資源管理しないのかという意見が、さっきもありましたけど、度々出されてきます。遊漁といえども、漁業者以上の漁具を使用したり、それから釣り具もかなり進化してきているということ、それから、産卵期に、漁師は禁漁しているのに遊漁船は捕っているという話も聞くわけです。
 遊漁船であっても、クロマグロ以外においても何らかの資源管理のルール、これ規制が必要ではないのかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) お答えいたします。
 委員も御指摘されましたように、クロマグロ以外の魚種については、確かに今、地域的な取組にとどまっておりますので、改正漁業法に基づく新たな魚種に対するTAC管理の導入をいろいろ議論している中でも、我々自身、遊漁による採捕量の把握と資源管理の取組が必要であるという意見を多々いただいております。
 こういったこともありますので、遊漁の資源管理につきましては、昨年三月に閣議決定されました水産基本計画におきまして、資源管理の高度化に際して、今後、遊漁についても漁業と一貫性のある管理を目指していくというところははっきり書いておるところでございます。
 一方で、何するかというところでございますが、今はアプリや遊漁関係団体の自主的な取組を活用した遊漁における採捕量の情報収集の強化に努め、漁業者が資源管理の枠組み、あっ、済みません、遊漁者が資源管理の枠組みに参加しやすい環境を整備するとしておりまして、今これに基づいて取組を進めておるところでございます。

○紙智子君 釣りを通じてやっぱりこの資源管理の重要性の理解が広がっていくということは、漁業の発展にもつながるというふうには思います。
 それから、次にちょっと質問するのはまた法案とは別なんですけれども、資源管理の問題です。
 昨年の四月五日の農林水産委員会のときに、私、改正漁業法に伴うホッケやスケソウダラなどの資源管理について、北海道の漁業、水産業者から強い疑問や怒りの声が出ているということを紹介しました。
 神谷水産庁長官は、現場に行って、説明に行って、水産業の成長産業化の基礎になる資源の増大に努めたいんだということを答弁されていたんですけど、やっぱり依然としてこの現場からの不信や不満というのは絶えない状況が続いているんですね。
 今年三月八日に、北海道日本海沿岸漁業振興会議と道漁連が、国に対して新たな資源管理の導入等について要請を行っていると思うんです。ホッケやマダラなどは、具体的な対策が国から示されなければこのTAC管理の導入を決して認めるわけにはいかないんだという声です。
 それで、道総研と漁業者が共同で推進している自主的な資源管理、これを基本とした北海道スタイルを是非認めてほしいんだという要請があったと思うんです。これ、なぜこういう声、まあ不信や不満なんかも絶えなくあるんでしょうか。水産庁長官、お願いします。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) お答えいたします。
 なぜ不安が、不満とか疑念があるのかというのは、それは多分、過去のいろんなTACの設定の仕方とか説明の仕方に多々問題があったんだというふうに認識しております。ですから、新しい資源管理においては、そういった問題を解消するためにかなり丁寧に説明をさせていただいております。昨年四月以降、北海道におきましては、新たな資源管理に関する現地説明会とか、資源評価の説明会とか、全部で十回ほど説明会を実施しておりますが、そのうち七回は資源管理のヘッドである資源管理部長が現地に赴いて丁寧に説明しておるところでございます。
 いずれにいたしましても、水産庁としては、やはり漁業の成長産業化を図っていかねばならず、その際に、北海道の漁獲というのは日本の漁獲の約三分の一を占めておりますので、北海道の資源管理をどう成功させるかというのは非常に重要だと認識しておりますので、新たな資源管理については、引き続き丁寧に説明を行って漁業関係者の理解を求めつつ推進させていただきたいと考えております。

○紙智子君 丁寧に説明をされているという話なんですけど、水産庁、三月二十八日に札幌市で説明会を行ったと聞いています。しかし、現状の議論では、目標管理基準値を設定するのは無理だと、漁業者の実感と乖離があるんだと、現状の資源管理を変えるメリットはあるのかなどの意見が出ています。
 現場の理解を得ることなく、これ、漁業法を改正したというところにそもそも無理があったんじゃないのかと思うんですけど、大臣いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) 農水省といたしましては、ただいま長官の方から御答弁申し上げましたように、担当の部長が五回ほど現地説明会をしたり、あるいはまた資源評価結果説明会を三回ほど開いたりしながら丁寧な説明に心掛けてきているというふうに思っております。
 今後とも、積極的に現地に職員を派遣するなどして関係者の意見を伺いながら、TAC魚種の拡大など、新たな資源管理措置の推進に取り組んでまいりたいと思っております。

○紙智子君 改正漁業法に伴うこの資源管理について理解を得る努力をするというふうに言われるんですけど、多くの漁業者は、そもそも、元々自ら資源管理ってやってきているんですよね、長年にわたって。ですから、理解だけじゃなくて、やっぱり漁業者が納得する、そういう資源管理にするように求めておきたいと思うんです。
 次に、資源管理を目指す水産フォーラムの提言についてもお聞きします。
 今年の四月五日に、現在農林水産省の顧問を務める宮原正典氏を始めとしたグループが、水産資源の回復と適切な管理に向けた五つの提言を神谷水産庁長官に要請をしました。宮原氏は、これ、水産庁次長とか国立水産研究・教育機構の理事長を務められた方なんですよね。現職の水研のセンター長も、オブザーバーとして参加をしているんです。
 こういう顧問や現職の職員は、これどういう資格で参加しているんでしょうか。ちょっと事実確認をします。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) お答えいたします。
 宮原氏につきましては、国際関係、特にWCPFCの交渉に関する顧問を発令しておりますので、それ以外に関しては農林省との関係というのはございません。そういう意味で、今回のフォーラムには、宮原氏は個人の資格で参加していると認識しております。
 また、水研の、研究機構のセンター長の参加につきましても、これは水研機構に確認しましたところ、同フォーラムには、当人は休暇を取得して、個人としての立場で参加したものと聞いております。
 いずれにいたしましても、資源管理とか資源評価というのはかなり専門的なものを、知識を求められますので、そういった際に、どうなっているんだという現状を求められますと、しっかり関係者に理解していただくために、センター長は個人の資格で参加したんだというふうに伺っております。

○紙智子君 個人としてと言うんだけど、業務として参加したというふうにもちょっと聞いていたりもするんですけど、この現職の顧問で、しかも元水産庁次長、国立水産機構の理事長が水産庁長官に要請しているというのは、ちょっとおかしくないのかなというふうに思うんですけど、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) ただいまも水産長官からも答弁がありましたとおり、宮原氏につきましては、現在、水産に関する国際問題について農林水産省顧問を務めていただいております。御指摘の資源回復を目指す水産フォーラムへの参加については、顧問としての立場ではなくて、まさしく個人という形での立場でと承知をいたしております。
 また、西田さんにつきましては、水産研究・教育機構水産資源研究センター長ということで今現在なっておりますが、水産長官の答弁にもありましたとおり、オブザーバー的だと私どもは認識をしておりまして、フォーラムの意思決定には関与していないというふうに思っております。

○紙智子君 大臣は、事前に例えばお話聞いていたとかあるんですか。(発言する者あり)ないですか。
 提言という形は取っていたとしても、現職の顧問で、そして水産庁に対して要請するということなんだけど、やっぱり圧力を掛けているんじゃないかというふうに受け止められても仕方がないんじゃないかという気がするんですよ。
 それで、提言づくりというのは一年掛けて議論したということが報道されています。しかし、そのメンバーには誰一人漁業者や漁業、漁協関係者というのは入っていません。それなのに、提言内容を見ますと、資源調査等の予算と人員は増やすように求めながらも、その一方で、積立ぷらすの収入安定対策と漁船リース事業などはもう見直しを求めているということなんですよね。
 漁業者に身近で役立っている補助金を減らすというのが果たしてこれ沿岸漁業者のなりわいや漁村地域の維持や発展につながるのかというふうに思うんですけど、水産庁長官、どうですか。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) 圧力を感じたかという点でございますが、そこは一切圧力を感じていないというところは私がこの場で断言させていただきたいと思っております。
 また、この提言の内容につきましては、今水産庁では、いろんな立場の方々がいろんな提言を水産庁に持ってまいります。漁業者の方もいれば、消費者の方もいれば、流通団体の方もおられれば、こういった研究者の方もおられるということで、提言を持ってこられること自体は、我々としては、ある意味いろんな参考にさせていただく意味でウエルカムなんじゃないかと思っております。
 個々の内容につきましては、私どもとしては特に言及する立場にはございませんので控えさせていただきますが、いずれにしても、水産庁としては、昨年三月に閣議決定いたしました水産基本計画に即しまして、海洋環境の変化も踏まえた水産資源の着実な実施と、増大するリスクも踏まえた水産業の成長産業化の実現、地域を支える漁村の活性化の推進を柱として、各般の施策を総合的に実施することとしており、それに必要な予算の確保をしてまいる所存でございます。

○紙智子君 まあ圧力は受けていないというふうにおっしゃるんですけど、やっぱり心配なんですよね。
 というのは、これまでも、日経調から規制緩和を求める圧力がある中でやっぱり様々な動きがありました。そして、漁業権の一斉更新なんかもあるわけですけれども、大震災、東日本大震災のときに、宮城県で、水産特区でもって養殖業の企業の参入を一方的に認めたということで地元では混乱が生まれたりもしたわけですよ。一斉更新に際して混乱を生じさせないためにも、対策を取る必要があるというふうに思いますし、やっぱり混乱を生むような無理な規制緩和じゃなくて、多くの皆さんが認識を一致しているテーマで議論していくということが必要だと思うんです。
 今、例えば海水の温度が上がっているとか、地球環境の大きな変化の中で持続的な漁業の発展が必要になっていると思いますので、そういうやっぱりところにしっかり焦点当てて議論を進める必要があるということを申し上げまして、質問を終わります。

(略)

○委員長(山下雄平君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

○委員長(山下雄平君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。