◇東京電力福島第一原発事故による農産物への損害賠償について/東京電力福島第一原発事故による汚染水・ALPS処理水の海洋放出について
○東日本大震災復興の総合的対策に関する調査
○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
今日、福島第一原発事故による農産物の損害賠償について質問いたします。
お配りした資料の一枚目、東京電力による営業損害賠償の取扱いについてというのがありますが、見ていただきたいと思います。
配布資料@ 東京電力による営業損害賠償の取り扱いについて
これは、二〇一六年までの賠償方法が二〇一七年の一月以降どう変わったのかを示しているものです。
福島であんぽ柿としみ餅を製造、販売している方は、二〇一六年までは品目別に賠償金が支払われていたんですね。ところが、二〇一七年一月以降の損害について東電が示した方針というのは、三倍一括支払をやって、その後は損害と利益を相殺して、この黄色の部分と緑の部分の三年間分の賠償額の合計額でこの赤いラインを超えないと支払はしないということになったんです。
資料の二枚目をちょっと見ていただきたいと思います。
これは、原発事故前のあんぽ柿の写真です。
配布資料A 原発事故前の福島県のあんぽ柿
農家の方は、これ、大ぶりの柿を使って、大きな柿を使って食べ応えのあるあんぽ柿を自慢して製造、販売していました。ところが、柿が大玉ということや、あんぽ柿が、干して連なっているものを箱に入れて販売していたんですけれども、これが放射性セシウムの検査機器が通らないということで、出荷できない状況が続いているんですね。
賠償方法が変わらなければ賠償金は支払われていたんですね。二〇二〇年以降も損害は続いているわけですけど、賠償方法の変更で賠償金が支払われていないと。
これ、東京電力にお聞きしますけれども、おかしいんじゃないですか。
○参考人(東京電力ホールディングス株式会社代表執行役副社長 山口裕之君) 東京電力ホールディングスの山口でございます。
福島第一原子力発電所の事故から十二年が経過してございますけれども、今もなお広く社会の皆様に大変な御迷惑と御心配をお掛けしましたこと、この場をお借りしまして深くおわびを申し上げます。
お答えをいたします。
当社、事故直後は可能な限り早期に被害者様への賠償を進めることが急務というふうに考えまして、当社事故により事業者様に生じた損害のうち、二〇一六年までの出荷制限に関わる損害につきましては、品目ごとに事故前の収益と事故後の収益を比較して賠償させていただいておりました。
二〇一七年以降は、事故からの時間の経過に伴う農林業者様の取り巻く環境の変化などを考慮いたしまして、一般的な損害賠償の算定方法に即し、事業者様全体の事故前後の収益を比較しまして、事故と相当因果関係のある収益の減少分を事故による損害として賠償させていただいておりまして、事業者様における将来分の賠償として、年間の逸失利益の三倍相当額をお支払をさせていただいているということでございます。
○紙智子君 これ発表された当時、受け止めとして何て言ったかといったら、これで手切れ金にするつもりじゃないんじゃないのかと、三倍相当と言うんだけどという声もありました。生産者の皆さんは、すごく分かりづらくなって、今でも納得していないんですね。
それで、大臣にお聞きするんですけれども、これ、東電が賠償方法を変えたことで賠償金が支払われなくなっているわけです。生産者も分かりづらいやり方じゃなくて、前のように分かりやすい品目ごとの賠償方法に戻してほしいというふうに言っているわけなんですけど、大臣、これ二〇一六年までの賠償方法に戻すべきじゃないかと私は思うんですけど、いかがですか。
○国務大臣(復興大臣 渡辺博道君) 今、東京電力の方からお話もございましたけれども、東京電力が賠償を実施するに当たっては、個別の事情をよく伺って、丁寧に対応することが重要であるというふうに思っております。
復興庁といたしましては、必要に応じて東京電力に対し適切に指導を行うよう、経済産業省に求めてまいりたいと思います。
○紙智子君 今ちゃんと寄り添ってという話があったと思うんですけど、本当にそうしてほしいんですよね。
ちょっと、次、資料の三を見ていただきたいんです。三枚目です。
配布資料B 福島の伝統食 凍みもち
これ、福島県の伝統食のしみ餅というものなんですね。しみ餅の原材料というのはヤマゴボウの葉で、地元ではごんぼっぱと言っているんです、ごんぼっぱですね、呼ばれているんですね。正式名称はオヤマボクチと言うんです。
お話を伺った農家の方は、飯舘村の長泥地区の、このオヤマボクチの品質や土もあるんですけど、土にもこだわっていて、しみ餅を製造販売してきました。しかしながら、この原発事故以降、オヤマボクチを仕入れていた直売所が、もう採れないものですから、取扱いがなくなったと。しみ餅が製造できなくなったわけです。しみ餅への賠償も、これ三倍一括賠償以降は支払われていません。
東京電力はほかの地域の原材料で代替できんじゃないのかというふうに言われたそうなんですけど、宮城県の、例えば七ケ宿町のオヤマボクチも使ってやってみたそうです。だけど、餅が割れてしまったと。微妙に違うわけなんですね、その土が違うというか。お客さんに原発事故前の味や品質を保証するためには、どこの材料でもいいということにはならないんだということなんですよ。
渡辺大臣、こういうふうにこだわりを持っている生産者ほどつらい目に遭っているという、この原発事故の被害を受け続けているこの農家の実情をどう思われますか。
○国務大臣(復興大臣 渡辺博道君) 農家の方々の今実情をお伺いしました。しみ餅というものがもう作れなくなっているということでございます。
原子力災害によって被災された方々におかれましては、本当に大変な御苦労をされているものというふうに思っております。復興創生の基本方針においても、事業者、農林水産漁業者の再建をまずは掲げてまずおります。被災地の復興に向け、なりわいや農林水産業の再生を着実に進めることが重要であり、事業再開や事業内容の改善のための相談を現在も行っているところでございます。
引き続き、被災地に寄り添いながら、国が前面に立って福島の復興再生に取り組んでまいりたいというふうに思っております。この問題についても復興の再生の中でどのように対応していくか、検討をしていきたいというふうに思います。
○紙智子君 是非ですね、こういう実際の姿、実情をよくつかんでいただきたいと思うんです。
それで、東電が二〇一六年十二月に出した賠償方針には、農林業固有の特性によるやむを得ない特段の事情により損害の継続を余儀なくされている場合、損害を算定し支払うというふうに書かれているわけですよね。今お話ししたような農家の方のように、代替が利かない原材料にこだわりを持っている事業者はほかにもいるんじゃないかと思うんですよ。こういうケースの場合、賠償金の支払について東京電力はどのような対応を行っているんでしょうか。
○参考人(東京電力ホールディングス株式会社代表執行役副社長 山口裕之君) お答えいたします。
損害の発生状況は事業者様ごとに異なるということで、事業の特殊性、それから代替性、同業者様の事業再開状況など個別の御事情を御確認させていただきまして、当社事故と相当因果関係のある損害につきましては適切に賠償させていただきたい、そのように考えてございます。
○紙智子君 あのね、この材料でなかったら駄目なんだということがこれ確認できれば賠償金払うってことでいいんですよね。それ確認したいと思います。
○参考人(東京電力ホールディングス株式会社代表執行役副社長 山口裕之君) それぞれの個別の御事情をお伺いしまして、相当因果関係の関係を確認させていただいた上で賠償させていただきたいというふうに思います。
○紙智子君 今聞いたのは、この材料でなかったら駄目なんだということが分かった場合はそれは賠償するってことでいいんですよね。そういうふうに文書上も書いてあるんじゃないですか。特殊の、格段の事情とかと書いてあるんですから。そこはちょっと確認していただきたいと思います。
○参考人(東京電力ホールディングス株式会社代表執行役副社長 山口裕之君) 申し訳ありません、個別の御事情を、それぞれやっぱり被災者様ごとに違う点もございますので、その辺りを御確認をさせていただきながら、相当因果関係について御確認をさせていただいて、適切に賠償させていただきたいというふうに思います。
○紙智子君 何度も話聞かれていると思うんですよ。それで、いろいろ試してみたけど、ほかじゃ駄目だったから作れない状況なわけですから、それはちゃんと確認をしていただきたいと思いますよ。もう一言言ってください、それ。
○参考人(東京電力ホールディングス株式会社代表執行役副社長 山口裕之君) はい。しっかり確認をさせていただいた上で、その上で賠償すべきは賠償させていただきたいと思います。
○紙智子君 しっかりやっていただきたいと思います。もう十二年たっているわけですからね。
最後に、ALPS処理水、私から見ると汚染水なんですけど、海洋放出についてお聞きします。
渡辺大臣は、二〇二一年に自民党内の東京電力福島第一原発、発電所処理水等政策勉強会の代表世話人を務めておられましたよね。それで、勉強会の案内文に、風評被害を拡大させない方法は海洋放出せず貯留を継続する政治判断をすることだというふうに記載をされていたことが報道されているんです。渡辺大臣、私、これ本当に実は拍手も打ったし、被災地の皆さんも多分激励されたと思うんですけれども、この汚染水の貯留を継続する政治判断が必要だというふうにおっしゃっていたんですよね。確認します。
○国務大臣(復興大臣 渡辺博道君) 福島の復興を実現するためには、東京電力第一原子力発電所の廃炉をまず着実に行うことが大前提だというふうに思っております。処理水のタンクで同発電所内の敷地が逼迫する中、ALPS処理水の処分は先送りできない課題だというふうに認識をしております。ALPS処理水の処分方法の検討に当たっては、様々な検討がなされたものと承知をしております。私も当時、復興大臣経験者として、どのような方法が適切であるか、いろいろと勉強してきたところでございます。御指摘のように、与党の有志の勉強会において処理水を貯留すべきとの方針を打ち出したとは私自身は認識をしておりません。
そうした議論を経て、処理水の海洋放出について、二〇二一年四月に安全性の確保と風評対策の徹底を前提に海洋放出する方針を関係閣僚等会議において決定したものであります。その後、現在まで専門的かつ客観的な立場から、国際原子力機関、IAEAにもレビューや確認をしていただくことが明確になっており、これらによって徹底した安全性と透明性が確保されることが重要であるというふうに思っております。
本年四月に、IAEAから第二回安全性レビューミッションの報告書が公表されましたが、第一回レビューの指摘が適切に反映されていることが明記されているところであります。
政府一丸となって、決して風評影響を生じさせないという強い決意の下、科学的根拠に基づいた情報発信等の風評対策に引き続きしっかりと取り組んでまいります。
○紙智子君 ちょっと外務省にお聞きします。
ALPS処理水の海洋放出をめぐっては、第四回国連人権理事会から勧告を受けていると思うんですね。
この勧告の件数と海洋放出の停止を求めている国々の名前と勧告内容について、簡潔に説明してください。
○政府参考人(外務省大臣官房参事官 今福孝男君) お答え申し上げます。
ただいま委員御質問の本年一月に開催された国連人権理事会の普遍的・定期的レビューの我が国に対する第四回審査におきましては、我が国の人権状況について、百十五の国、地域からの指摘や質問に対し、我が国政府の立場や取組について説明を行ってまいりました。
その中で、福島第一原子力発電所のALPS処理水については、明示的には福島第一原子力発電所やALPS処理水と言及していませんが、文脈上判断し得るものも含め、六か国から十二の勧告を受けました。
勧告の概要につきましては、まず、マーシャル諸島から、処理水の放出は太平洋諸島フォーラムの独自評価の結果を待つこと、また太平洋の人々と生態系を守るよう代替案を策定すること、太平洋諸国の、あっ、済みません、サモアからは、太平洋諸国の懸念に対処するまで処理水の放出は行わないこと、あとまた、バヌアツからは、安全性について満足がいく科学的根拠を更に示すことなく処理水の放出は行わないことといったことが勧告されております。
○紙智子君 今紹介があったように、やっぱり太平洋の島嶼諸国から勧告が出されているわけですよ。流す方の話ばっかりされるんだけど、この流される方の、かつては大変な被害を受けた国々なんかは非常に心配して勧告を出しているわけですよ。こういうことを政府として重く受け止めるべきだと思いますし、私は海洋放出はやめるべきだというように思うんです。
渡辺大臣、先ほどのその返答ありましたけども、ALPS処理水、これ汚染水の海洋放出はすべきでないと最初言っていたのが、今もう大臣の立場になったら変わってしまうのかと。いや、これではやっぱり本当に期待をしていた人たちはがっかりしますし、私はやっぱり今の国連人権理事会の審査で勧告も出ている処理水についてはこれ決して放出するべきでないということを強く求めまして、質問を終わります。