<第211回国会 行政監視委員会 2023年5月15日>

質問日:2023年5月15日 行政監視委員会

五輪汚職 全容解明を 紙氏、テスト大会談合をも追及 参院行政監視委

 日本共産党の紙智子議員は15日の参院行政監視委員会で、東京五輪の大会スポンサー選定を巡る贈収賄事件やテスト大会の談合事件の全容解明を要求しました。
 紙氏は、スポンサー選定で、AOKIホールディングス前会長が組織委員会の高橋治之元理事に賄賂を贈ったとして有罪が確定した事件への見解を質問。スポーツ庁の星野芳隆審議官は「スポーツの価値をおとしめるもので誠に遺憾であり、オリンピックをはじめ大規模スポーツ大会において組織委員会のガバナンスを強化し運営を図っていかなければならない」と答えました。
 テスト大会の談合事件では、組織委の大会準備運営第一局元次長が逮捕、起訴されています。報道では、元次長がテスト大会関連業務の入札前に、企業の応札意向をまとめた一覧表を組織委上層部に見せたと供述していることが明らかになっています。
 紙氏は、元次長の上司の第一局長は政府の出向者だと指摘。星野氏は、文部科学省が派遣した井上恵嗣氏だと認めながら、再発防止のためのプロジェクトチームが行った同氏への聞き取りについては、個人の特定につながるとして明らかにしませんでした。
 紙氏は井上氏の国会招致を要求。事件の全容解明に向け、踏み込んで責任を果たすよう政府に求め、それぬきに札幌五輪の招致は論外だと強調しました。(しんぶん赤旗 2023年5月19日)

アイヌ迫害 歴史伝えよ 紙氏「新冠で2度の強制移住」 参院行政監視委
 日本共産党の紙智子議員は15日の参院行政監視委員会で、独立行政法人・家畜改良センター新冠(ニイカップ)牧場(北海道新ひだか町)で発見されたアイヌに関する新資料を踏まえ、同化政策の歴史を伝える仕組みづくりを求めました。
 明治時代、新冠牧場ではアイヌが強制移住させられた事件がありました。祖先が当事者の狩野義美氏が同牧場と交渉し資料の存在を突き止めたのをきっかけに、紙議員が昨年、新冠牧場を訪れて資料の永久保存を提案し、国立公文書館への移管が決まりました。
 同委で国立公文書館の山谷英之理事は紙氏に、「文書が101冊、(今年)夏ごろにはデジタルアーカイブで検索できる見込みだ」と答えました。
 紙氏は「御料牧場の開墾のために強制労働で酷使されたあげく、牧場ができると土地を奪われ逆らうものは家を焼くと脅された」との証言を紹介し、新冠町史では御料牧場から姉去(アネサル)、さらには上貫別(カミヌキベツ)へとアイヌは2度も強制移住を強いられたと指摘。内閣官房の田村公一アイヌ総合政策室次長は「強制移住は承知している。厳粛に受け止める」と答えました。
 紙氏は、アイヌ施策推進法ができても同化政策の検証は進んでいないと指摘し、彼らがどのような略奪、迫害を受けたのか、事実をつかみ伝える仕組みづくりを要求。政策評価担当の松本剛明総務相は「関係府省の取り組み状況(アイヌ政策推進会議等)を注視したい」と答弁するにとどまりました。(しんぶん赤旗 2023年5月25日)

◇東京五輪のスポンサー企業の選定をめぐる贈収賄事件について/テスト大会の談合事件について/先住民の政策について

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 東京オリンピックに関する贈収賄事件についてお聞きします。
 大会のスポンサー契約の選定をめぐって、組織委員会の高橋元理事に賄賂を贈った罪に問われたAOKIホールディングス前会長らの有罪判決が五月九日に確定しました。世界のアスリートが集まって競い合うオリンピックが不正と汚職によって金もうけの舞台にされていたということは重大な問題だと思います。
 スポーツ庁の受け止めについて、まずお聞きしたいと思います。

○政府参考人(スポーツ庁審議官 星野芳隆君) このような事案が発生したことは、スポーツの価値をおとしめるもので誠に遺憾であり、オリンピック競技大会を始め大規模なスポーツ大会について組織委員会等のガバナンスを強化し、適切な運営を図っていかなければならないと考えております。
 スポーツ庁といたしましては、今回の東京大会の事案を受けて設置したプロジェクトチームにおいて、利益相反の管理、情報公開の在り方、マーケティング事業の在り方など、適切な組織運営に関する指針を本年三月に策定したところであり、スポーツ団体や地方自治体に対して周知徹底を図っているところでございます。
 今後とも、継続的に本指針の周知等を行い、本指針の実効性確保に向けた取組をスポーツ界が一致団結してしっかりと行ってまいりたいと考えております。

○紙智子君 東京オリンピックをめぐっては、このほかにも、組織委員会大会準備運営第一局次長が逮捕、起訴されたテスト大会の談合事件もあります。
 テスト大会の談合について、組織委員会の運営第一局元次長の森泰夫被告は、テスト大会関連業務の入札実施前に、電通グループを始め各社の応札意向をまとめた一覧表を組織委員会の上層部に見せたと供述していることが毎日新聞の取材で明らかになっています。
 一覧表を見せたとされる局長は、運営第二局長だとされています。で、森元次長は、なぜ直接の上司である第一局長に見せなかったのかと、これ不自然だと思うんですけれども、これについていかがですか。

○政府参考人(スポーツ庁審議官 星野芳隆君) お答え申し上げます。
 組織委員会に確認いたしましたところ、そのような報道があったことは承知しておりますが、事実は分かりかねるということでございました。

○紙智子君 森泰夫元次長の直接の上司というのは、これ大会準備運営第一局長なんですよね。で、第一局長というのは国からの出向の職員だとされているんですけど、これはどなたですか。

○政府参考人(スポーツ庁審議官 星野芳隆君) 報道で指摘されております平成三十年一月から三月当時、大会準備運営第一局長に配置されておりましたのは、文部科学省から派遣されておりました井上惠嗣氏でございます。

○紙智子君 井上惠嗣氏だということが報道でされているわけですけれども、その人には、当事者には聞き取りをしたんですか。

○政府参考人(スポーツ庁審議官 星野芳隆君) プロジェクトチームのヒアリングでございますけれども、個人の特定につながることは避けるという前提で受けていただきましたので、お答えは差し控えさせていただきます。

○紙智子君 それでは解明にならないわけですよね。大事なそのところに、部署にいて、出向して、いろいろな事態を聞いているわけですから、それを出せないということになったら、これ解明できないというふうになるんじゃないですか。
 やっぱり、国会の調査権あるわけですから、やっぱりちゃんと国会に来てもらって、これ、ちゃんと質問に応じてもらう必要があると思うんです。
 そこで、委員長にお願いしますけれども、これ、是非、捜査ということにもなるんですけれども、捜査じゃないな、国会に招致していただいて発言してもらいたいということで、それを協議していただきたいと思います。

○委員長(青木愛君) 理事会で協議をさせていただきます。

○紙智子君 公正取引委員会が今年の二月二十八日に出した告発文書によりますと、この大会、テスト大会の談合というのは、東京都内の組織委員会の事務所などで面談などの方法によって行われたとしているんですね。
 原因究明に向けて、この森元次長の上司であった井上氏からの当時の状況を聞くということで今求めたわけなんですけれども、是非、この問題をめぐっては国自身がもっと乗り出してやる必要があるんだと思うんです。
 それで、東京オリンピックでなぜ談合や汚職が起きたのか、原因の究明に向けて国会の行政監視機能を発揮させなきゃいけないというふうに思うんですね。国は、なかなか直接口を出さないと言うんだけれども、実際に招致のときから含めて国挙げてやってきたわけですし、しかもお金も出しているし、人も派遣しているわけですから、これはやっぱり国がやる必要があると。
 それで、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の第二十七条というのがあります。ここには報告及び検査の規定があります。内閣総理大臣から権限の委譲を受けた公益認定等委員会は、公益法人の事業の適正な運営を確保するために必要な限度において、公益法人に対し、運営組織や事業活動の状況に関して必要な報告を求め、職員に、公益法人の事務所に立ち入り、帳簿や書類その他の物件を検査をさせ、関係者に質問させることができるとされているわけですよ。是非これやる必要があると思うんです。
 事務方に確認しましたら、これ、東京大会の組織委員会にも検査を行ったことがあるというふうに聞いているということなんです。結果的には、そうすると、公益財団法人である組織委員会の業務執行の不備を、検査を行ったことがあるのに不備を見抜くことができなかったということですよ。
 私たち共産党としては、一貫してこれ国自身がもっと責任を持って検証を行うように求めてきたわけですけど、この間の対応というのは、解散して清算法人となってしまっていて、組織委員会が直接的にはできないみたいなことを、言ってみれば責任転嫁をそこに押し付けると。それから、今刑事手続をやっているということを理由にしてなかなか検証をやってこなかったわけなんです。でも、やっぱりこれ事件の全容解明に向けて国は責任を果たす必要があるんだというふうに思います。それをやらないで、この後札幌オリンピック招致なんということはもう論外だということを申し上げておきたいと思います。
 続いてなんですけれども、先住民族の政策についてお聞きします。
 二〇〇七年に先住民族の権利に関する国連宣言が採択をされました。その後、近年の動きについていろいろあるわけなんですけれども、ちょっと紹介をしたいと思うんですね。
 例えば、メキシコのロペス・オブラドール大統領は、二〇二二年の八月、去年ですね、スペイン軍が一五二一年にアステカを攻め滅ぼして迫害し続けたことを謝罪をしました。それから、デンマークでは、フレデリクセン首相も二〇二二年十月にグリーンランドを訪れて、一九五〇年代に先住民の子供を家族から引き離してデンマーク社会の同化を狙った社会的な実験について、これも謝罪をしています。それから、フランシスコ・ローマ教皇も、これ二〇二二年、去年ですよね、七月にカナダで演説をして、先住民の同化政策の一環としてカトリック教会が運営していた寄宿学校で子供が虐待されていたことについて深くおわびすると言って謝罪をしたんですね。
 それで、政策評価を担当する大臣として、この各国の変化をどのように認識をされているでしょうか。

○国務大臣(総務大臣 松本剛明君) 二〇〇七年に先住民族の権利に関する国際連合宣言が国連総会において採択されまして、翌二〇〇八年にアイヌ民族を先住民族とすることを求める決議が衆参両院で採択されたことを受け、政府におきまして、内閣官房のアイヌ総合政策室を中心に取組を進めてきているところでございます。
 平成三十一年四月にはアイヌ施策推進法の制定がなされております。また、同法に基づくアイヌ政策推進交付金の創設をいたしております。また、令和二年七月十二日には民族共生象徴空間であるウポポイが開業いたしておりまして、ところでございます。
 アイヌの方々が民族としての名誉と尊厳を保持し、これを次世代に継承していくことは、多様な価値観が共生し、活力ある共生社会を実現するために重要でございます。
 各国の動きについてということでございましたけれども、この先住民族の権利に関する国際連合宣言の中にも、精神にも示されているように、各国政府もしかるべく施策を進めていく必要があるものと考え、今申し上げたような施策を進めてきているところでございまして、これからもアイヌの方々の誇りが尊重される社会の実現に向けて必要な取組が行われていくべきものと考えて、取り組んでまいりたいと考えておりますということでございます。

○紙智子君 やっぱり、すごく大きく世の中というか世界が変わりつつあると思うんですね。どんなに古いときの話であっても、きちんとやっぱり謝罪することを謝罪すると。で、どういうことがあったのかという事実を明らかにしながら、そういうことがずっと今取られてきているという過程だと思うんですね。
 それで、日本でもアイヌに対するこの土地の没収などの同化政策がどんなふうに行われたかということは検証すべきではないかというふうに思うんです。
 実は、北海道の新冠牧場、これ日高にあるんですけど、新冠牧場で明治時代にアイヌが強制移住を強いられた事件がありました。それで、その事件の当事者である狩野義美さんという方が、この新冠牧場と掛け合ってその資料の存在を突き止めたんですね。もうずっとやり取りして、とうとう存在を突き止めたと。それで、私は、独立行政法人家畜改良センター新冠牧場にこのアイヌの資料が存在しているということを知って、去年の九月に牧場に伺って、その資料が存在しているかどうかということで確認をしましたら、あるということだったわけです。
 やっぱり、それは歴史の事実を示す大事な文書というふうに思うので、永久に保存するようにということを提案をいたしました。そうすると、早速、家畜改良センターで国立公文書館と連絡を取り合って、この移管の手続を進めていただいたんですね。
 それで、今日は国立公文書館の方に来ていただいております。それで、この移管された資料の数、それから閲覧に向けた作業状況、それから資料の活用方法について説明をいただきたいと思います。

○参考人(独立行政法人国立公文書館理事 山谷英之君) お答えいたします。
 国立公文書館では、令和五年三月、独立行政法人家畜改良センターより、法人文書として計百一冊の旧新冠牧場関係書類の移管を受けております。受け入れた歴史公文書等につきましては、生物被害を未然に防ぐための薫蒸処理、請求番号の付与、目録作成等を行いまして、原則一年以内に一般の利用に供するまでの作業を終了することとしております。
 同センターの文書につきましては、移管完了の通知をした上で、夏頃には国立公文書館デジタルアーカイブで当該文書の目録情報を検索できるようになる見込みでございます。

○紙智子君 ありがとうございます。
 それで、新冠牧場がどのようにできたのか、変遷の中でこのアイヌ民族がどのような扱いを受けたのかということを知る貴重な資料ではないかというふうに思うんですね。
 そこで、農林水産省と、それから内閣官房に、二方にお聞きするんですけれども、農林水産省にはこの新冠牧場ができた主な経過を説明をいただきたいと思うんです。それから、内閣官房には、新冠牧場からアイヌ民族が移住を強いられているんだけれども、どのような経過があったのか、アイヌの生活がどうであったのかということについて説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省大臣官房審議官(兼畜産局) 伏見啓二君) お答え申し上げます。
 新冠牧場は、明治五年、一八七二年に、北海道開拓使長官黒田清隆により、北海道産の馬の改良を目的として、日高管内の静内、新冠及び沙流にまたがる牧場として創設されました。
 その後、明治十七年、一八八四年に宮内省の所管に変更され、昭和二十二年、一九四七年に農林水産省の所管に変更され、現在に至っております。

○政府参考人(内閣官房アイヌ総合政策室次長 田村公一君) お答えいたします。
 新冠御料牧場の設立経緯につきましては今ほど農水省から御答弁があったとおりでございますが、牧場の経営に伴いアイヌの方々が強制移住をさせられたことにつきまして、各種資料に記載されていることは承知してございます。
 アイヌの方々の歴史に関し、政府といたしましては、我が国が近代化する過程において、法的にはひとしく国民でありながらも差別をされ貧窮を余儀なくされたアイヌの方々が多数に上ったという歴史的事実につきまして、厳粛に受け止めているところでございます。

○紙智子君 厳粛にと言うんですけど、やっぱり、もっとやっぱりきちっと掘り下げて、明らかにするところはしていかなきゃいけないというふうに思うんです。私は、明治時代の同化政策に関わる証言や資料をちゃんと集めて検証していくべきだというふうに思うんです。
 共産党の北海道委員会でアイヌシンポジウムやったときに、参加していただいたアイヌの方が、御料牧場って当時言っていました、御料牧場の開墾のために強制労働で酷使された挙げ句、牧場ができると土地を奪われて、それに逆らう者は家を焼くぞと脅しがあったということも言われているんですね。
 新冠町、町の歴史をまとめている新冠町史というのと続新冠町史ってあるんですけど、ここには、一八九五年、明治二十八年に、御料牧場が姉去、姉去というのは地名なんですけど、姉去へ強制的な移住を強いたというふうにあります。その後、一九一六年、大正五年に、姉去から今度は上貫気別、これも地名ですね、上貫気別に強制移住されると。つまり、明治から大正にかけて二回にわたってこの強制移住を強いられているわけなんですね。
 それで、町史によりますと、宮内省の幹部がこの御料牧場を巡視しに来たときに、姉去は平たんで肥沃な土地であることに目が留まって、ここを御料牧場の直営の穀物生産用地に決めたということなんです。つまり、馬を、御料牧場ですから、馬の餌を作るために居住していたアイヌを追い出したということなんですね。この姉去の二倍の土地を与えるというふうに言われたんだけれども、その行った先の土地というのはもうひどい山奥で、雑木林に覆われていて、与えられた自分の土地がどこかも全然分からないような状態だったと書いているんです。
 町の教育委員会の新冠百話というのがあるんですけれども、ここには、病気になったらそれこそ死を待つ状況であったと書かれているんですね。強制移住がアイヌの皆さんのコタン、これを崩壊をさせて人命も危機にさらしたということになるわけです。
 明治政府は、アイヌが元々住んでいた土地を収奪をして日本語の使用を強制すると、それから伝統的な風習、習慣を破壊するなど、同化政策を進めたわけなんです。今回、新冠牧場でこの資料が発見されたということでは、こうした資料をちゃんと収集をして、証言をちゃんと集めて、アイヌの同化政策がどのように進められたのかということを検証する仕組みが必要じゃないのかというふうに思うわけなんです。
 それで、昨年は、アメリカのハーランド内務長官が、米連邦軍が一八六四年の十一月に、野営していた先住民族のシャイアンとかアラパホ、これを襲撃をして虐殺した上、土地の略奪をした事実を踏まえて、この史実は米国の一部であり、それを伝えることは私たちの責務だというふうに語っているわけです。
 それで、大臣にもう一回お聞きしますけれども、アイヌが明治期にどういう略奪や迫害を受けたのか、やっぱり、事実をつかんで伝える仕組みというのはやっぱりきちっとしておく必要があると思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(総務大臣 松本剛明君) 先ほども御答弁申し上げましたが、政府におきましては、内閣官房を中心に関係府省において必要な取組が行われてきたところでありまして、これからもまた必要な取組を進めるべきところと申し上げたところでございますが、その進捗状況については、内閣官房に置かれるアイヌ政策推進会議において毎年報告が行われているというふうに承知をいたしております。
 このような枠組みの下で政府全体として必要な取組が進められていると承知をしているところでございまして、政策の評価を担当する総務省として、まずこうした政府、関係府省の取組の状況を注視をしてまいりたいと考えております。

○紙智子君 やはり行政を評価していく場所として、是非、これはそういうところに入れて、もちろん内閣アイヌ政策室とも連携しながら、是非やっていただきたいということを申し上げまして、質問といたします。