<第211回国会 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会 2023年4月28日>

◇参考人質疑 ODA大綱の非軍事原則が果たす役割について/ODAとOSAについて/SDGsにおける飢餓ゼロと日本の食料支援について/ODA大綱におけるFOIPについて

○政府開発援助等及び沖縄・北方問題対策樹立に関する調査(我が国の開発協力をめぐる諸課題と開発協力大綱の在り方に関する件)

参考人
開発協力大綱の改定に関する有識者懇談会座長
京都大学大学院法学研究科教授  中西  寛君
東京大学東洋文化研究所教授   佐藤  仁君
特定非営利活動法人国際協力NGOセンター理事
THINK Lobby所長   若林 秀樹君
国際連合世界食糧計画日本事務所代表 焼家 直絵君

○参考人(開発協力大綱の改定に関する有識者懇談会座長・京都大学大学院法学研究科教授 中西寛君)  まず、現在の国際政治の現状についてどう見るかということでありますが、言うまでもなく、昨年二月に始まりましたロシアのウクライナ侵攻によって国際状況は大きく変わりまして、日本外交もそれに伴って大きな変化を経ているということは改めて申すまでもないかと思いますが、もう少し長期的に国際政治構造の変化というのを見ますと、大体、過去四十年ほどの変化の中で位置付けることができると私は考えております。
 一九八〇年頃から二〇〇〇年頃、本格的に今我々が見ておりますようなグローバリゼーションが始まり、深化、拡大をしていったというふうに思いますが、そのときにはアメリカを中心とした西側主導のグローバリゼーションというふうに言うことができたと思います。その中で、アメリカは非常に強力な、政治、軍事、経済、文化、技術、あらゆる面で世界を圧倒する覇権国というふうにみなされていたわけであります。
 しかし、二十一世紀に入りますと、そうした状況は次第に変わってきて、現在に至っているというふうに言えるかと思います。とりわけ、二〇〇一年に御記憶の九・一一事件がありまして、アメリカがテロとの戦いでアフガニスタン、イラクで戦争を行うという辺りから西側の主導性は徐々に後退をし始めまして、二〇〇八年に、いわゆるリーマン・ショックで、アメリカ発の世界経済危機の危険が大きくなる。そういう時代に、西側は自らの力でグローバリゼーションを維持することが次第に困難になりまして、いわゆる新興国、中国、ロシアを含めた新興国の力に頼るということからG20の首脳会議も発足させたという流れであったかと思います。
 しかし、二〇一〇年代に入りますと、そうした新興国の中の一部は西側と価値観を共有しないというふうに認識が強まりまして、次第に大国間競争が強くなってくる。とりわけ、二〇一六年、イギリスがEUを離脱を決定するとか、あるいはアメリカでトランプ政権が、トランプ大統領が当選をして、西側主導の秩序そのものに批判的な姿勢を取るといったようなことが起きましたし、また、アメリカ、イギリス、その他の国々で激しい政治的亀裂が外交にも影響を及ぼすようになってきました。
 他方で、地球規模課題と呼ばれるような、気候変動あるいは感染症対策といったような問題が深刻化をしていったわけであります。今回のウクライナ侵攻の前に世界の大きな関心を集めていました米中の対立ですとか、二〇二〇年の初頭から始まりましたコロナパンデミックはそうした現象の端的な例でありまして、昨年始まりましたウクライナ侵攻は、大きな変化の契機ではありますけれども、こうした一連の流れに位置付けて考えるべきだというふうに考えます。
 実際、昨年二月から今年二月、ロシアのウクライナ侵攻一年を期して国連総会で何度かロシア非難決議がなされたわけですけれども、大体百四十か国ぐらいの国は賛成するけれども、反対はロシアを含めた五から六、棄権、欠席は五十というような数字は変わっておりません。そして、西側を中心にロシアに対しては厳しい経済制裁を掛けているわけですが、そうした制裁に参加しているのは世界の中で四十か国程度という状況も変わっておりません。また、昨年四月に国連の人権理事会でロシアの資格停止決議がなされたわけですが、ここでは、賛成は九十三、反対が二十四、棄権が五十八というような状況でありました。まあ最後の数字辺りが、恐らく現在のロシアに対する世界的な反応という平均値を表しているのではないかと思います。
 すなわち、国際政治は、そのロシアの侵攻が法の支配に反する違法なものであるという点では大多数の国が認めているけれども、だからといって、この問題に全て集中してロシアを非難し、ロシアに対して圧力を掛けるというようにはなっていない。とりわけ制裁については、いわゆる制裁逃れといいますか、抜け穴があります、存在するわけです。
 それは、対ロシアに圧力を掛けるという点からするとマイナスであるということなんですが、昨年の世界経済の状況を見ていましても、中国やインドにロシアからの石油、天然ガス、エネルギーが流れていたということが世界経済に与えたショックをソフトランディングさせたという面も否定できないのでありまして、そういう意味で、法の支配の正当性と同時にグローバルな交流が現在の世界にとっては必要であって、西側の自由民主主義国と権威主義、専制体制の国の分断というのは必ずしも世界全体の利益にはなっていないということが確認されたかと思います。
 そういう中で、昨年十一月にG20のバリ首脳宣言がなされたわけですが、これは、議長国インドネシアと今年議長国になりましたインドを中心にしてロシアも参加する中で取りまとめた内容ということで、取りまとめられたこと自身が一定の成果であったというふうに言えるかと思います。
 その内容については、五十二の段落の中で、ウクライナ戦争に関する言及、これはロシアに対する一定の非難を含んだものですけれども、それは二段落のみでありまして、それ以外は食料、エネルギー、気候変動、生物多様性、SDGs、金融、デジタル化、WTOといったような諸問題について触れられているということであります。
 これは、G20の、とりわけいわゆるグローバルサウスを代表すると考える国々からすると、こうした問題の方が率直に言ってウクライナの戦争よりもより喫緊の深刻な課題であるということでありまして、インフレ、それから気候変動による干ばつによる食料難、そして生活苦難ということが政治にも大きな圧力を掛けていたわけですので、そうした問題をアドレスするという点では、G20は取りあえず一致したということを示しているというふうに言えるかと思います。
 そういう観点からしますと、日本を取り巻く国際情勢についても、二重性といいますか、多層的に考える必要があるというふうに考えます。
 政治、安保面では、日本は、言うまでもなくアメリカの同盟国であり西側の一員でありますから、対ロシアに対する圧力を掛ける、そういう立場にあるということは正当で、アメリカやヨーロッパ諸国と関係を強化する、そうしたことも当然であろうかと思います。
 とりわけ日本は、御案内のように、大国間競争の第一正面として米中対立、北朝鮮の軍事的脅威、そしてロシアの脅威といったようなものに直面しておりますから、日本外交が、昨年十二月に政府が閣議決定した国家安全保障戦略その他の文書を中心として、防衛力、抑止力を強化していくということは必要であろうかと思います。
 しかし、抑止力を強化するのは目的ではなく手段でありまして、その最も重要なことは、抑止と対話によって東アジアの安定を維持し、大国間の戦争を招かないということであります。
 そのためにも考えるべきことは第二の側面でありまして、地球規模の経済社会において日本がどういう役割を果たすかということでありまして、この点では、二〇一〇年代からインド太平洋という枠組みを日本が主唱してきたということは世界的にも高く評価されていることであろうと思います。今日の国際情勢は、このインド太平洋という地域、あるいは地球の中の重点としての重要性が高まっているということでありまして、世界的な競争と協力の焦点にインド太平洋がなってきているということであります。
 その点で、日本外交の役割と任務は、先ほど言いましたように、大国間の競争の戦争化を回避するとともに、自由で開かれたインド太平洋を維持するということでありまして、具体的には、来月広島で開催予定のG7のサミットのような枠組みと、それからグローバルサウス、G20のようなグローバルサウスの諸国の間の架橋をするということをどういうふうに実現していくかということであろうと思います。
 その点で、日本の開発協力政策は非常に重要な役割を持っていると思います。日本の開発協力の特徴として、専門機関、JICAのような組織を持っているということが一つ挙げられると思います。とりわけ、アングロサクソン、アメリカやイギリスはODAについては民間の組織に委ねるという方針を取っているわけですが、日本やドイツは一定の組織を持っていると。そうした組織を持つことによって対象国の関係組織と密接かつ長期的な関係を築くということが一つあります。
 さらに、日本の場合は、インフラ開発もやっているわけですが、社会福祉や教育、医療など非常に多様な側面の開発をやっております。
 二ページの上の方の表に、こちら、政府の政府開発援助白書から引用しているものですけれども、見ていただければ分かりますように、日本の援助、二国間援助は、社会インフラ、経済インフラ、その他の部分についてかなり幅広くバランスよく行われているということで、とりわけ経済インフラについては、西側の中では突出しているという特徴があります。そうした援助は、時には日本の中では、日本の顔が見えていないのではないかというふうに言われることがありますが、少なくともミクロな現場レベルでは、受入れ国からはかなり感謝や評価をされているというふうに思います。
 もちろん、たくさんやっていますので、個々のものについて問題があるものもないとは言えませんが、そうしたミクロのレベルでは一定の意義があると思いますが、問題は、全体として、日本がどういう開発協力をどういう理念の下で行っているのかということが日本人にも外国にも必ずしも明確でないということと、とりわけ日本の中では、ミクロなレベルでどういうことをやっているのかというのが必ずしも認知されていないということだと思います。そういう意味で、私は、今回の大綱改定に向けて、今申し上げたような点を特にアドレスする必要があるというふうに考えておりました。
 冷戦が終わった後、日本は初めてODA大綱というものを出しまして、日本のODA供与の理念というのを示そうとしました。そのとき、日本は世界最大のODA供与国だったわけであります。しかし、その地位は二十一世紀になると失われまして、その中で日本の開発協力をどういうふうにするかということで見直したのが前回、二〇一五年の開発協力大綱でありまして、援助形態やパートナーの多様化といったような状況に対応するものだったというふうに考えております。
 今回の大綱改定も基本的には前回大綱の大きな流れの上に沿っていると思いますが、有識者会議としては、とりわけ日本が打ち出すべき理念としては、人間の安全保障という言葉を改めて重視すべきではないかと。そして、それは日本の国益と国際的な公益、地球規模の課題というものが長期的に一致するという観点をより重視するべきではないか。そして、インド太平洋という地域を中核とする自由で開かれた秩序を推進する、いわゆるFOIPというような考え方を新たにこの大綱にも反映させるべきであると。
 それから、開発援助というのは、かつて二十世紀のある時期までは豊かな国が貧しい国を助けるという垂直的な援助というイメージがありましたけれども、むしろ、今日ではグローバル課題に取り組む水平的な協力関係としての側面が強くなっている。そして、日本として長期的に二〇三〇年までのSDGsを超えた長期ビジョンを考える必要があるし、その中で、十年程度で国際目標であるGNI比〇・七%を実現すべきであるというようなことを含みました。
 今回、新大綱案が出されまして、私の観点から申しますと、おおむね有識者会議の内容を反映していただいていると思いますが、幾つか問題があるというふうに思っております。
 一つは、やや総花的で長文になってしまっているということで、私は、個々の政策についてはより下位の文書によってまとめるべきで、全てを入れるべきではないと思っているんですけれども、なかなかいろいろな都合で長文になってしまっているということで、一読してはっきりしたイメージを持ちにくいということ。
 それから、新たに日本が始める安全保障協力とのすみ分け、とりわけ平和国家として日本が持ってきたイメージと新しい安全保障協力、これは、これ自身は私は一定の必要性はあると思っておりますが、その中でのバランスということが必要だろうと思います。
 最後に、援助規模について、残念ながら大綱では有識者会議の〇・七%を明示的に何年までに達成するという目標は入れられなかったんですけれども、いろいろな財政事情が当然あることは承知しておりますが、ほぼ日本と同規模の経済規模になっているドイツやイギリスやフランスでは、〇・七%や〇・五%は達成しております。日本は〇・三四%です。それらの国との関係、それから、とりわけ中国を始めとする新興ドナー国との交渉力においても、やはり日本が一定の量を出す必要はあるというふうに考えておりますので、この点、具体的な予算において配慮をお願いしたいと思います。
 済みません、私からは以上でございます。

○委員長(三原じゅん子君) ありがとうございました。
 次に、佐藤参考人にお願いいたします。佐藤参考人。

○参考人(東京大学東洋文化研究所教授 佐藤仁君) 東京大学東洋文化研究所の佐藤と申します。
 今日は貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。また、国民の、一般国民の視点からすると、必ずしも人気があるというか、注目されないようなこのトピックについて、日頃、議員の先生方が議論してくださっていることに対して感謝申し上げたいと思います。
 私の今日の発言は、ODA大綱の書きぶりとか中身そのものというよりも、長期的に見た日本の開発協力の足腰について、私なりにある種の切迫感を持っていますので、そのことについて少しお話をしたいと思っております。
 三つ論点がございまして、お手元の資料を御覧ください。
 まず一点目なんですけれども、これまでやってきたことの総括と資源化、これが余りできていないんじゃないかということですね。開発協力というのはどうしても前のめりになるというか、こういうドキュメントを作ると、こうします、ああしますという話がたくさん出てくるんですが、これまでしたことはどうなったのかという総括が非常にないがしろにされることが多いです。この大綱でいえば、前作った大綱で一体何ができたのか、何ができなかったのかというような振り返りというのがきちんとなされるべきだと思います。
 私は、このことをすごく考えさせられたのが、たまたま二〇二一年に「開発協力のつくられ方」という本を出しましたけれども、その資料集めに東南アジア各国を回って、八〇年代から九〇年代にかけて物すごく批判された案件を見て回りました。
 八〇年代から九〇年代というのは、私ちょうど学生の頃で、その頃出てくる開発協力、ODAの本というのは、ODAがいかにひどいかという本が多かったんですね。いかに公害をまき散らしているかとか、地域住民を追い出して、非常にトップダウンな、かえって害をもたらすものであるかという、いわゆるODA批判が吹き荒れていた時代です。それから二十年、三十年たって、そうやって批判された案件はどうなったのかということを見に行くということで、十六案件見に行きました。
 例えば、訴訟にもなったコトパンジャン・ダムとか、あるいは血塗られたODAと言われたフィリピンのバタンガス港とか、あるいは地獄の木を植えるなといって怒られていた東北タイのユーカリ植林とかですね、そういったところを一個一個回ってみて分かったことは、八割以上は今も生きて案件として機能していて、かつ現地の人にかなり感謝されているということだったんですね。
 もちろん、全てが全て問題案件が魔法のように優良化したわけではありません。その途中にはいろんな話があって、今日は時間がないので申し上げられませんけれども、しかし、これから分かるのは、開発協力というのはやっぱり時間がたたないと本当の効果が分からないということなんですね。十年とか二十年ぐらいで見ないと本当のことが分からない。それを踏まえて考える。
 しかし、日本がやってきたことというのは、問題案件ですら長い期間の中で人々の信頼を勝ち得ているということであって、これをちゃんとアセットとして、資源としてこれからの開発協力に使うべきじゃないかというふうに思うんです。ただ、これが使えていないということなんですね。
 私が、その問題案件が優良化したことはすごく驚きましたけれども、もっと驚いたのは、当時援助を批判していた人も、あるいは当時援助を思い切り批判されていたJICAも、この二、三十年後の問題案件のその推移を誰もフォローしていないということなんです。これはやっぱりフォローしなくてはいけないもので、ここの中に実は日本の足腰に関わる宝がたくさん眠っているというふうに私は思っております。
 過去の案件を信頼醸成のためのアセットにしていただきたいというふうに思っています。また、それだけのアセットが日本の案件のその多様性とそれから量的蓄積の中に眠っているわけで、これを生かさない手はないと思いますし、信頼という観点では、やはり日本が先進ドナーの中で唯一武器輸出をしてこなかった国であるということもとても信頼の底辺にあると思っていますので、このことも付け加えたいと思います。
 二番目の論点に参ります。
 これは、援助に関するドキュメントは、その究極の目的をしばしば自助努力とか自立とかというふうに言っています。これ考えてみますと、援助というのは、当たり前なんですけど、他者あっての援助なんですね。しかし、このことがしばしば忘れられて、自立、自立という、それが呪文のように繰り返されると。しかし、自立というのは、よく考えてみますと、何か全部自分で何でもできるようになるということよりは、必要なときに頼れる先があるというのが本来の自立ではないかと私は思っています。
 そのように考えますと、開発協力というのは、自分で何でもできるようにする手助けをするというよりは、より良い依存関係をつくっていく、必要なときにお互い助け合う世界の仲間をつくっていく触媒だというふうに考えるべきなんじゃないかというふうに思っています。
 実は、日本自身がこれまでの発展の経験の中でいろんな国に助けてもらいながらここまで来たという国であります。明治時代のお雇い外国人とか近代化の歴史はもう先生方よく御承知だと思いますし、戦後のアメリカの対日援助、あるいはもっと直近でいえば、あの東日本大震災のときの世界からの日本に対する援助、こういった日本は援助をされる経験をたっぷり持っている国であるわけですから、そういったことを生かして、より良い依存関係ってどうやってつくっていけるのか。つまり、持ちつ持たれつの関係をつくるためにODAをどう生かせるのかという観点でこれからの政策をつくっていくべきではないかなと思います。
 援助の受入れだけではございません。円借款事業、これは援助を出す側ですけれども、円借款事業にしても、これ細かく見ていきますと、円借款の事業の実施については、半分ぐらいが外国の企業が請け負っているんですね。つまり、日本が幾ら国益だ国益だと叫んでみたところで、それを受注して現場で工事をしているのは外国の企業である場合が非常に多いわけです。そうすると、これは持ちつ持たれつの中で日本の援助事業も行われているという認識をやはりしっかり持つべきなんじゃないかなと思います。
 というわけで、その自助努力を強調するよりも、やはり良い依存関係をつくっていくという発想転換が私は必要だと思いますし、今回の大綱では、例えば個人の保護とか能力強化という文言が出てきますけれども、やはり一人で生きている人はどこにもいないわけであって、みんな何らかの集団の中で組織の中で生きているわけですから、そういった依存関係の中でこういった個人の保護とか能力強化というのを考えていくという視点が必要なんじゃないかなというふうに思っております。
 三点目に移ります。
 これが最も私が職業柄も含めて危機感を持っていて、一番今日のお話の中で大事だと思っている点なんですが、人材育成のことでございます。
 自らアジェンダを設定できる人材がこの業界にもっといなくてはいけないと思います。ODA大綱にどれだけ立派なことが書かれても、それを担う人がいなければ絵に描いた餅なんですね。担う人はどこにいて、どこから集まってくるのか、これが一番重要なことだと思います。
 私自身も自分の学生を何人かJICAに送り込んでいるというか、JICAに入った学生もいますし、受けて落ちた学生もたくさんおりますけれども、実際、JICAは実施機関としていまだにすごく人気のある、学生に人気のある就職先になっています。ただ、残念なことに、三十五歳から四十歳ぐらいにかけて、多くの職員が途中で辞めているという現実がございます。これは、私詳しくは分かりませんけど、周りに聞いている範囲です、もうかなりの数の人が途中で辞めている。これはいろんな理由が恐らくあるでしょうし、別にJICAに限らず、どこの企業だって最近は途中で辞める人多いじゃないかと、あると思います。
 ただ、やっぱり国際協力の分野というのは、言わば特殊なというか、途上国のために、そして日本のためにもですけれども、やる仕事というのは、特別の情熱を持って、そして高い能力を持って入った人なわけですね。それが途中で辞めてしまうというのはいかにも残念なことではないかと思います。
 その人たちを別に全員が全員を辞めさせないようにするというのは無理だと思いますけれども、やはりその現場の職員の待遇問題というのは是非我々考えるべきじゃないかなと思います。これは給料のことだけではなくて、例えば若い職員がプロジェクトを任せてもらえるとか、やりがいを感じられるとか、いろんな角度からこの現場の職員の待遇というのを考えていかないと、結局この大綱にどれだけ立派なことを書いても、足腰がもう細っていくわけですね。だから、開発協力の担い手をどうやって優秀な人たちを集め、その人たちを支えるかという、その発想が必要だと思います。
 私、三十年ほど前にハーバード大学に留学したときに、入学式で、ある教授がこういうことを言っていました。君たち、ハーバードはなぜ成功しているか知っているかと。それは、ハーバードが学生たちをうまくいくように教育しているからではないと、元々成功しているやつを連れてきているから成功しているんだという、そういう話をしていました。これ、もちろん鼻につく言い方だと思います。ただ、一定の真理を僕はついていると思っていて、やはりこの開発協力の世界を盛り上げていってうまくいかせるためには、そこに良い人を集めてくる、良い人を集めてくるにはどうしたらいいかということをやっぱり考えるということが必要だと思います。
 そこで、私自身の活動に引き付けて申し上げますと、やはり私が今危惧しているのは、日本国内に様々ある、いわゆる国際協力とか国際開発系の大学院に進学をしたいという日本人が減っているということですね。名古屋とか神戸に国際協力を専門にする大学院ございますが、まあ六割から七割ぐらいが留学生が占めています。別に留学生が国際協力のカリキュラムに入って問題あるわけではありません。結構だと思いますけれども、しかし、日本のODAの主力を担っていく日本人が、自分も開発のことを勉強したいというふうにやっぱり集まってくるような場であってほしいと僕は思っていますので、これをどうしたらいいかというのは非常に考えています。
 私が一つ思っているのは、やはり大学院レベルではもう遅くて、日本の学部教育の中でこの開発協力の話題をもっと学生たちに振りまく、振りまくというのかな、そういう話をしてあげる先生をもっと増やさなくてはいけないと思っています。もちろん、先生の講義だけがきっかけではありませんけれども、そういった先生が増えるということによってこの分野に関心を持つ一般の人たちが増えていって、その中にはODA大綱の担い手として現場で活躍する人も増えていくという、そういう好循環が期待できるのではないかと思っています。なので、私自身も今までちょっと大学院のことばっかりやっていて学部の教育サボってきたんですけれども、この秋から東大の一、二年生を対象に開発協力の授業を自分自身やりたいというふうに思っているところです。
 最後に書きました国際開発協力の科研、科学研究費の細目を入れると書きました。これ、一見、研究者の利害に引き付けた非常に小さい提案であるように思われるかもしれませんけれども、現在、大学という場所も非常に予算が逼迫していて、みんな外部資金を取ってこい、外部資金を取ってこいと言われます。
 開発協力をやっている先生が外部資金を取ろうとした場合に、細目というのがございまして、これは、あなたは政治学ですか、あなたは経済学ですか、あなたは社会学ですかと言われてしまうんですね。私は国際開発協力をやりたいといったときに細目がないわけです。この細目を作っていただければ、開発協力を専門に、誇りを持ってそれを専門にし、そこから予算をもらい、そういう教員が励まされ、かつ励まされた結果を学生に伝えることもできるということであって、こういった大綱の実施に将来不可欠になってくる若手の育成ということも視野に入れて人材育成を図っていく必要があると思います。
 この人材育成の問題、本当に逼迫しているというか、私は非常に危機感を持っていて、そういった危機感がこの現在の今の大綱の案を読んでいると全く感じられないので、もちろん人材のことだけではありませんけれども、是非この人材の問題は踏み込んで取り上げていただきたいというふうに思っております。
 以上、私、三点申し上げました。一点目は、これからやろうとすることよりも、これまでやってきたことの総括をし、そこから未来を構想するというそういう発想が必要である。二番目は、自助努力とか自立とかということをかたくなに強調することよりも、その良い依存関係を援助を触媒にしてつくっていく、そういう発想転換が必要ではないか。三番目に、自らアジェンダを設定できるような人材の育成。
 これ、ここ、済みません、ちょっとまだ一分ぐらいございますので補足いたしますけれども、最近SDGsがはやっています。これも私から見ると、かなり外から降ってきたようなところがありまして、自分で課題を設定するという能力をむしろそいでしまうような面があります。私は別にSDGsを一生懸命やる人に反対ではございませんけれども、世界の複雑な問題に取り組んで自分なりにアジェンダを設定できる人材というのはこれはこれでつくっていかなくちゃいけない。外からやってきたゴールを、じゃ、私はゴール幾つをやっています、私はゴール幾つをやっていますというのは非常に受け身で、自分でアジェンダを作っていくというそういう力につながってこないところがございますので、是非、その現場にたくさん行って、自分でアジェンダを作れる、そういうような人材をつくっていきたいと私自身も思っていますし、そういう環境をつくるための制度設計ということに先生方のお力をお借りしたいというふうに思っております。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。

○委員長(三原じゅん子君) ありがとうございました。
 次に、若林参考人にお願いいたします。若林参考人。

○参考人(特定非営利活動法人国際協力NGOセンター理事
THINK Lobby所長 若林秀樹君) 御紹介いただきました若林と申します。
 今の佐藤仁先生の最後の発言にエコーする形で申し上げたいんですけれど、やはり、特にNGO業界も若い人が入ってこない。それは魅力ある職場であるかどうかという問題もありますが、一方、やっぱり処遇が悪いんですよね。昔は三十歳問題というのがあって、三十になると大体辞めていったというところが、今入ってこないんです。それだけやっぱり処遇、特に賃金の格差が大きいということは非常に将来課題になる可能性はあって、せっかく大学院まで出た人が、夢も希望も破れてほかの業界に行ってしまう、企業に行ってしまうのが今の現実ですので、そういう意味では、政府開発援助についても、政府ができない協力をやっていくというのが市民社会組織の役割だと思いますので、そういう意味で非常に危機感を感じているので、最初、冒頭申し上げておきたいなというふうに思っております。
 私自身は、二種類の資料で、横長のパワーポイントの資料を刷ったもので私の名前が書いてあるやつと、もう一つ、日本のODAに関するデータというのを御説明をさせていただきたいと思います。
 一枚目めくっていただきますと、自己紹介がそこに出ているんですが、まあちょっと変わった経歴でですね、元々、一九九三年にワシントンで、日本大使館で、ODA担当官、一等書記官として三年間勤務をいたしました。元々民間企業出身でありますけれど、労働組合、そして国会議員として、参議院議員としてこの場に立って質問をした側が二〇〇六年です。そういう意味では、二〇一七年に参考人として一回出ていますが、それ以来の登壇ということになるかなと思いますし、その後、シンクタンクで少し国際協力を研究し、そして今、このJANICという国際協力をやっているネットワークNGOで事務局長を五年ほどして、今、シンクタンクを立ち上げてこの問題にも取り組んでくるところです。
 そういう意味で、三十年ほどを振り返って、非常にいい機会だったなというふうには思うんですけれど、この間のやっぱり変化、あるいは、どういうふうに開発協力が変化しているのかということを踏まえて、ちょっと感想も含めてお話をしたいなというふうに思います。
 まさに九〇年代は日本はトップドナーでした、断トツのですね。それが今は第三位でありますけれど、まず、この日本のODAに関するデータというのを見ていただきたいなと思っています。この縦長の表です。是非、皆さん方の御理解を確認しながら進めていきますので、是非見ていただければなというふうに思っております。
 これは、四月の十六日にデータ出た、ほやほやの速報値であります。日本は、アメリカ、ドイツに次ぐ日本は第三位でありまして、百七十四億ドルですね、単位としては。一位のアメリカが五百五十二億ドル、ドイツが三百五十億ドルです。トップドナーだった最後は二〇〇〇年なんですね、日本が。それを一〇〇とすると、アメリカは五・五倍に増えています。ドイツは七倍です。日本は一・三倍です。
 どこかで見たグラフのように、この三十年間の変遷を見ると、本当に日本のODAの実績は伸びていないです。これが実態なんですが、さらに、課題は、日本のODAは円借款が極めて多いんです。
 日本の円借款は、DAC全体の六三%が日本の円借款で占めているんです。二国間贈与、無償資金協力とかそういうものと円借款含めると、五割を超えているのは日本だけなんです。本来は無償資金協力が国際協力をやるべきだという論争もあったんですが、結局、この実績で上乗せしているのは日本の円借款であると、そこも一つ大きな課題であるということもお知りおきいただければと思いますし、今民間資金があふれ出ているんですよね。むしろ、民間資金の方がODAのそれよりは多いんです。
 そういう意味で、この円借款を増やすのもいいんですけれど、もっと大事なのは、一般会計予算におけるODA予算が減っているんです。これもう二分の一ですから、二十五年前の。結果的に防衛予算が増えてODA予算が下がっているということが、この中身の中でなかなか見えにくいんですけれど、そういう実態になっているということをまず御理解をいただきたいなと思っています。
 二ページ目が、ODAの対GN比、比です。〇・七%目標というのは聞かれたと思うんですけれど、速報値で日本は〇・三九%であります。
 ここ増えているんですが、ウクライナの問題もありますし、円借款が増えていて、結果的には〇・三九で高いんですけれど、まだまだ〇・七%には程遠いというのが今の現状になりますので。G7ではドイツのみが〇・八三%で、〇・七%を超えている。これをどうやって国際目標に近づけていけるかというのも是非お考えいただいて、皆さん方のリーダーシップでこの〇・七%目標を達していただければなというふうに思っております。
 それから、更にページをめくっていただきますと、これもこれでショッキングな数字なんですけれど、NGOを通じた政府開発援助の数字が、日本、どこにあるか分かりますか。右から二番目の一・三%ですよ。単純平均で二〇%ぐらいなんですけれど、ODAをNGOを通じてやるというのが結構、国際的にはスタンダードになっているんですが、日本は極めて低いんですよね。これについては後でちょっともう一回触れたいなと思っています。
 それから、その下の政府全体のODA予算が、一九九七年が一兆一千六百八十七億あったものが、今年は五千七百九億で、半減です。これが結果的に二国間援助、無償資金協力の減少につながっていて、表面的には上がっている感じもしますが、実は中身は大きく変わって、無償資金協力がめちゃくちゃ減っているというのが現実だということを御理解をいただきたいなというふうに思っております。
 この横長の資料に戻りたいんですけれど、一枚めくっていただきますと、何のための開発協力大綱なのかということを二枚にまとめているところであります。
 私から見ますと、非常にまとまったいい文書であるんですが、役所の論理が詰まった、調整して整合性が取れたいい文書であるんですが、これを見た人たちが本当に夢を持ってこの業界に入ってくるでしょうか。経済安全保障、国益だ云々という、そうではなくて、何のために開発協力があるかということがこの大綱からにじみ出て、それを読んだ若者が、若い人がこの業界に入ってこないといけないんですよ。そういう意味では、非常に役所の文書としてはいいんでしょうが、私はやっぱり開発協力大綱は何のためなのかということについては少し、一回どうなのかということを考えてもいいんじゃないかなというふうに思っております。
 外務省によれば、開発協力というのは、政府だけではなく民間部門や地方自治体も含めたオールジャパンの協力なんですね。もうこれはそのとおりなんですけれど、一方、大綱を見てみますと、びっくりするんですが、中盤ですね、開発協力はいまだに開発途上地域の開発を主たる目的とする政府及び政府関係機関による国際協力活動という定義があるということは、すごいこれ矛盾しているんですよね。これ、国際協力はもう政府だけのものではないし、資金的には民間部門の方が多いわけですよ。こういう捉え方自体が全体のこの文書の整合性を欠けていることになって、後ほど、いろんなところと連携しなきゃいけないということで、企業とか民間部門とか出てくるんですけれど、定義そのものがこういうことになっているというのがこのスタート段階であるんじゃないかなというふうに思いますので。
 やはりこの三十年間、東西冷戦が終わり、九〇年ですかね、で、九二年に最初の大綱が出ているんですが、そのときは東西格差があったんです、南北格差があったんです。そういう格差の中、日本はトップドナーで頑張って開発援助をずうっとやってきたんですが、もうグローバルサウスと呼ばれる途上国の所得がどんどん上がってきています。最貧国が数が減っています。ほぼアフリカの一部の国で、日本も停滞していますが、その格差は減っているんですよね。
 ですから、全体的なこの文書は、やはり援助、援助国、援助してあげる立場の国の文書であるという感覚がここから抜け出ていない。一方、被援助国、あなたは援助される国ですよというのがこれ全面的に出ているというのは私の感覚で、これ読むと、三十年間を振り返ってそう思うわけで、もはやそういう意味では時代遅れの文書ではないかなというのが私のちょっと全体的な印象であります。
 とはいえ、日本は開発協力に関するやっぱり資金力もありますし、技術、ノウハウも含めてあるんですよ。だから、そういう意味では、一緒につくり上げていく、共創、共生、そういう分野で現地主導の、現地が中心の開発に一緒になって協力していくというのは本来はこのトレンドに合わせて出てこなきゃいけないんですけれど、そういう方には残念ながらなっていないんですね。相変わらずやっぱり国益中心、経済安全、あっ、経済安全保障はないんですけれど、安全保障が重要だとか国の戦略の一環だとか云々、そういう何か自分たちの主張だけを、これが出ているのがこの文書じゃないかなというふうに思っています。
 四ページ目を開けていただきますと、さらに二番目なんですけれど、開発途上地域の人々の暮らしの向上が大綱の全体を流れる哲学であるんですが、現地の人の顔も見えない、あくまで日本の貢献なんだと。現地主導の開発とかそういうことがなくて、日本の安全保障上の危機、我が国の国益の実現に貢献、開発協力の戦略的な活用が前面に出ているという意味では、人々の暮らしの向上、人間の安全保障を第一義的な目的とするべきなんですけれど、残念ながらこれは、この立て方はそうじゃなくて、本来やっぱり国益というのは中長期的に日本の国益の増進が達成されるんであって、短期的な外交目的とか国益の達成のための手段として開発協力を扱うというのはやはり慎むべきではないかと。日本の顔としてのこの国際協力をやる以上、それが今、全面的に国益のためにやっているんだというのがもうあからさまに出ているというこの文書が途上国の人にどう映るでしょうか。是非そんなところもお考えいただければなというふうに思っております。
 そしてまた、何のために改定するのかという五番目であります。
 ですから、人間の安全保障、人々の暮らしの向上であれば、この改定に基づく日本の援助が途上国の開発途上地域の人々にどう貢献しているのか、被援助国の政府の声がどうなのかという、何が現状の大綱では問題なのかというギャップ分析がないんですよ。本来はそこからスタートするべきですよね、この問題、何かあるのかなと。あれば当然改定ということになるんですが、完全に、国際情勢の安全保障上の危機が来ている、国益をもっと出さなきゃいけないということを前提にこの文書がなっているという意味においては、立て方自体に、私は何のための改定なのかということを非常に感じるわけでありますので。
 中西先生は座長で苦労されたと思うんですけど、僅か四回、数時間で大綱のその報告書をまとめられて提出し、それが今の大綱になっているんですが、本当に御苦労されたんじゃないかなというふうには思いますけれど、そういう総合的な国際協力の長年の歴史の上にこの改定がどういう意味があるのかということのギャップ分析がないまでに慌ててまとめて、四回やって出した、それが今回のこの大綱につながっているということでありますので、そういう意味では、開発の大綱ありきというところがあるかなというふうに思っております。
 この私が用意した資料を全部説明するのは時間がないので、後ほどの質疑の中でお答えしたいなというふうに思っております。
 全体の印象なんですが、これ、今回の大綱のまとめ方は、当初の案よりすごいマイルドになっています。客観的な分析も非常にいろんな意見を取り入れているんですね。これ、市民社会の声も非常に取り入れられています。
 そういう意味では評価できるところはあるんですが、元々の文書の起点が、国家安全保障戦略の防衛三文書の中に出ているんです。そこにODAが、国際協力を戦略的に活用し、ODAとは別に、同志国の安全保障上の能力、抑止力向上のための新たな協力の枠組みを設ける、これが後の、今話題になっているOSA、政府安全保障能力強化支援につながっているという、起点がもうそこで閣議決定されているわけですから、なかなかやっぱり変えようがないんですよね。
 ですから、これまで意見交換会ずっとやっていますけれど、これでいいという参加者の声ないんですが、全く変わらないし、恐らく変わる可能性は少ないんじゃないかなというところにおいて、そういう位置付けの文書になっていることを御理解をいただければなというふうに思いますが、そうはいっても皆さん方が声を上げていただければ変わり得る要素はありますので、後で、後ほど後悔しないように、しっかりこの文書を見て変えていただくということは必要じゃないかなと思っております。
 市民社会の連携もすごい後退しています。
 市民社会と連携してほしいというのは、もちろん我々の気持ちはありますけれど、何のために開発協力があるのか。それは、人々の、市民の生活向上、人間の安全保障なんですね。そういう意味ではその人たちのやっぱり連携とか声とかそういうものを大事にしなきゃいけないんですが、残念ながら非常に書き方が薄いし、僅かであるというところは、そこ見えるんじゃないかなと思っています。
 後ほど、八ページ目を開けていただきたいんです。これショッキングなんですけれど、NGOを通じた日本のODAは極めて低いんです。一・三%です。これ、単純平均して一九・四%、二〇%あるんですが、日本は僅か一・三%なんですね。
 何でこうなっているか。世界では、NGOが関わることによって効果的な意味のある開発協力になっているということが前提ですので、みんな安定しているわけです。そういう意味では、草の根レベルで政府では届けにくいきめ細かなニーズを拾って、専門性を生かし、現地コミュニティー、人づくりに貢献できるのがNGOを通じたやっぱり支援でありますので、是非この辺も今後増やしていただきたいなというふうに思っております。
 それ以外にも、人間の安全保障等ありますけれど、非軍事原則についてちょっとやっぱり触れなきゃいけないので。
 十ページ目ですね。一昨日のニュースでありましたように、ミャンマーに供与した船舶が兵器や船員の輸送に使われていたというのが分かって、外務省は抗議をしたと、先方にですね。こういうのは元々分かっていたことなんですよ。そういう一回渡したものがどう使われるかということをモニターするのは特に難しい。それも、やっぱり開発協力の中でのその非軍事原則の原則のぎりぎりのところで。それがあった上で、さらにOSAという新しいやり方も線を引くのは無理なんですね。受け手にとっては、ODAだろうとOSAだろうと、もらったものはどう使おうと関係ないというのが通常のやはり開発協力でありますので。
 そういう意味で、そういうものが、戦後つくり上げてきた我が国の中立性や国際協調主義が後退し、平和主義理念に基づいてきたODAの財産を失いかねないというところにありますので、是非、最後のまとめも行かないでもう終われということでありますので、後ほどの質疑の中でまたポイントについてお答えしたいと思います。
 ありがとうございました。

○委員長(三原じゅん子君) ありがとうございました。
 次に、焼家参考人にお願いいたします。焼家参考人。

○参考人(国際連合世界食糧計画日本事務所代表 焼家直絵君) WFP日本事務所代表の焼家です。
 この度は、本委員会にお招きいただき、誠にありがとうございます。
 本日は、世界の飢餓の現状やWFPの活動についても簡単に御紹介することで、国際機関から見た国際開発協力の現状と課題についてお話しし、開発協力大綱の在り方についての議論に貢献できますと幸いです。
 まず、お手元の水色の表紙の資料の二ページ目を御覧ください。
 現在、世界はかつてない規模の食料危機に直面しています。今年、世界では三億四千五百万人以上が深刻な飢餓に直面し、緊急の人道支援を必要としています。
 なぜ飢餓がかつてないほど増えているのか。それは、紛争や気候危機、新型コロナウイルス感染症の影響や価格の高騰、経済の悪化など様々な要因が重なり引き起こされています。紛争は依然として飢餓の最大の要因で、世界の飢餓に苦しむ人々の約六割は戦争や暴力の影響を受けた地域に住んでいます。ウクライナでの戦争の勃発で、食料、燃料、肥料価格が世界中で高騰しました。加えて、気候危機は世界的な飢餓の急増の要因の一つで、世界人口の四〇%以上が異常気象に対し非常に脆弱な地域に居住していると推定されています。
 次に、三ページ目を御覧ください。
 このような状況の中、WFPは、昨年、百二十を超える国と地域で過去最多となる一億五千八百万人以上を支援しました。飢餓の深刻化に伴い、必要な支援金額も増加しています。
 WFPは、人道支援と両輪で、地域のレジリエンス強化のために、小規模農家の支援、地産地消の学校給食支援、栄養支援のほか、災害や危機に強いインフラづくりなどを通じて、持続可能な食料システムの構築に貢献しています。
 国連機関を通じた支援の強みですが、WFPを始めとした国連機関には現場での強固なプレゼンス、支援対象国政府への影響力があります。首都以外の地域にも活動拠点があり、治安上の理由などから日本による二国間協力ではアクセス困難な地域においても、最も脆弱な立場にいる人々に支援を届けることができます。また、平時より支援対象国政府との良好な関係構築に努めており、いざというときは国連の影響力を発揮して迅速な支援を行うことができます。
 次に、四ページ目をお願いします。
 さて、冒頭に申し上げましたとおり、飢餓状況は、近年、複数の要因が複雑に重なり悪化しており、複合的危機の時代と言えるでしょう。世界の食料安全保障を推進し、また、持続可能な開発を実現するために、緊急の人道支援と同時に中長期的な平和の構築、そして地域のレジリエンスを強化する支援が必要とされています。
 近年、世界各地で多発している自然災害も、気候変動の影響によって同じ場所で繰り返される傾向が強まっています。一方で、現行の国際開発協力のスキームではこういった複合的な危機に十分には対応し切れていない現状があると考えます。
 例えば、二国間支援とマルチセクターでのそれぞれの分業が目立ち、国際開発協力アクター全体で大局的な目標を目指した連携が少ないのが実情です。また、人道支援機関と開発支援機関での役割のすみ分けが固定しがちであり、人道支援の予算は人道支援機関に、また気候変動などの開発支援の予算は開発支援機関にといった形での支援が顕著です。しかし、現実には一つの機関で人道も開発も、支援、開発支援もカバーしているケースも見られ、両方の分野に効果的に拠出がなされなければ包括的なSDGs達成が促進されないと考えます。
 次に、五ページ目をお願いします。
 では、どうしたらいいのかということですけれども、人道と開発と平和の連携を軸に分野横断的な国際協力の形がより一層必要とされています。特に国際開発協力機関の間では連携強化が求められます。若者や雇用支援、農業、水、ジェンダー、教育、またインフラ構築などといった分野は互いに密接に影響し合っており、様々なアクターが集まり、包括的に活動していく必要があります。
 現在は、機関ごとに主にターゲットとするSDGsや活動するセクターが分けられている状況ですが、その既存のセクターに活動範囲を制限するのではなく、互いに得意分野を生かし合いながら、包括的な支援の形をつくっていくことが求められます。
 さて、日本の支援についてなんですけれども、災害への対応など緊急時に迅速な拠出をいただいており、現場からも高い評価が上がってきています。更に国際協力分野で日本のプレゼンスを上げるためにも、他国の支援の形と比較した上で幾つか提言させていただきます。
 まず一点目として、複数年にわたる事業支援です。単年ごとの緊急支援だけではなく、中長期的なレジリエンスの強化などの支援の実施のためには複数年にわたる安定した資金の下で事業運営をしていくことが必要不可欠です。
 また、紛争による難民の発生や気候変動など、国ごとでの支援ではカバーし切れない課題が多く、国境をまたぐ地域的な支援がより効果的なケースが多くなっています。ですので、地域的なアプローチで支援を行うことが容易になるよう期待しています。その際には、AU、例えばアフリカ連合などの地域規模機構や連合との連携促進も効果的だと考えます。
 最後に、テーマ別の事業募集と選定による拠出の形が新たに組まれていくことを期待します。例えば、気候変動対策、学校給食とか、一つのテーマの下で事業を募集し、選ばれた事業に日本が拠出をするという形です。このことにより、機関ごとの人道や開発といった垣根を取り払い、真に大局的な目標達成を目指した支援を実現することができます。また、国際機関やNGO、民間企業やアカデミアなどのパートナーシップを促進し、そのテーマに対して日本ならではのイニシアチブを打ち出しながら支援していくことができるのではないでしょうか。
 次に、六ページ目をお願いします。
 このように、複合的危機に対して分野横断的な解決策が求められている昨今、今回の日本の開発協力大綱改定において、ODAの更なる活用を図る上で、特に、オファー型支援の推進、官民連携の強化と民間資金の動員、ノンイヤマーク拠出や現金給付支援などの検討、GNI比〇・七%目標達成に向けたODA予算の増加に注目しています。
 まず、オファー型支援について、要請主義の原則に加えて、日本から積極的に提案を行うオファー型の支援も盛り込まれたことで、日本の得意分野で日本の外交目的に沿った支援を効果的に打ち出していくことができ、ODAの大きな転換点になるのではないのかと期待しております。日本政府が支援メニューを提案するに当たっては、WFPを始めとする国連機関も時機に応じた情報共有や政策協議をさせていただくことで、現代的な諸問題への対処に向けて共に協働していけるものと確信しております。
 このような連携を進める上でも、国際機関における邦人職員、とりわけ幹部職員を増強することが重要となります。ただ、まだまだ国際機関における幹部職員は少ないので、政府による働きかけが必要と考えます。
 次に、官民連携や民間資金について、気候変動を始めとした現代的な課題に対処していくには、従来の伝統的な開発協力にとどまらず、様々な手法を活用していくことが求められます。とりわけ民間企業が有する専門的知見や最新の技術を活用することで、デジタルトランスフォーメーションやグリーントランスフォーメーション、すなわち脱炭素社会の実現に向けた取組を通じた経済社会システムの変革を推進していくことができます。
 このような幅広い開発課題の解決には、民間資金の活用がより一層重要性を増しており、民間企業が開発協力における大きなアクターとして認識されることを期待しています。
 続いて、ノンイヤマーク拠出や現金給付などについて、国際開発協力機関では、近年、使途を限定しないノンイヤマーク拠出や緊急支援における現金給付が国際的な潮流となりつつあります。ヨーロッパの主要ドナー国の中には、ノンイヤマーク拠出が大半だというところもあります。アカウンタビリティーを確保しなければならないのはもちろんでありますものの、日本においても迅速で柔軟な拠出の在り方が議論され、積極的に取り組まれていくことを期待しています。
 そのような拠出方法の議論に加えて、ODAとしての拠出額そのものについても開発協力大綱改定に際して議論が進むことを期待しています。ODAの対国民所得、GNI比は二〇二一年実績で〇・三四%にとどまり、GNI比〇・七%とする国際目標には程遠いのが現実です。
 外交のツールとしてODAを活用していくことで、国際社会における日本のプレゼンスを維持強化でき、リーダーシップを取ることができます。開発協力大綱改定の機に、ODA予算増加につながるような具体的な目標設定がなされるか注目しております。
 また、開発協力大綱改定において、食料安全保障が経済安全保障の枠組みで重要視されていることを歓迎します。食料安全保障は全てのSDGs達成につながるものであり、グローバルな食料安全保障を推進することは日本の経済安全保障にもつながります。WFPとしても、引き続き、人道支援とレジリエンス強化の両輪で世界の食料安全保障に貢献してまいります。
 現代の複合化する危機に対応できるよう開発協力大綱を時代に沿ったものに改定することで、日本の外交政策や地球規模課題に対する日本の政策を明確化し、日本が確固たるコミットメントを世界に対して積極的に示していくことを期待します。
 国際機関の立場からも、ODAの戦略性の一層の強化に着目し、日本らしい地球規模課題への取組を通じた国際的な指導力の強化が重要だと考えます。より一層、人道、開発、平和の連携を促進する国際開発協力の形、また、気候変動など複雑な課題に対する分野横断的な解決を模索していくスキームの立ち上げを期待いたします。
 御清聴ありがとうございました。

○委員長(三原じゅん子君) ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 四人の参考人の皆さん、本当に貴重な、そして参考になる御意見をいただいていますこと、ありがとうございます。
 私は、ちょっと順番を変えて質問したいと思うんですけれども。
 焼家参考人におかれましては、去年、ロシアのウクライナへの攻撃が始まって、そのときに私たちも街頭で募金訴えてすごい勢いで集まって、それをいろんな団体の皆さんに届けて歩いたときに、WFPの方にうちの山下議員が行ったときにちょうど焼家さんが対応してくださったということで、そのときにどういう活動をされているのかと聞いたら、やっぱり本当にちょっと想像以上というか、実際には、この避難されて外国に出た方のところにいろんな物資を届けたり食料支援しているのかなというふうに思っていたら、そうじゃなくて、まさにもう最前線に出て、本当にそういう意味では命懸けで物を届けておられると。場合によってはロシア軍とも交渉して攻撃するなよということで、そういう交渉もしながら出かけていっているんだという話を戻ってきて聞かされて、私自身も本当に驚きましたし、本当に大変な努力をされているということを大変感銘を受けました。
 それで、その上に立ってなんですけれども、最初、焼家参考人と若林参考人にお聞きしたいんですけれども、世界各地でそういう支援活動をされてきている中で、やっぱりODA大綱の原則となってきたこの非軍事ですね、この非軍事ということが貫かれていることで果たされてきた役割というのは大きいんじゃないかと思うんですけど、それについて、是非それぞれお答えいただきたいと思います。

○参考人(国際連合世界食糧計画日本事務所代表 焼家直絵君) ありがとうございます。
 まず、昨年はウクライナ支援、本当にありがとうございました。また、今年も、トルコ、シリア御支援をいただきましたことにも重ねて感謝申し上げます。
 非軍事ということなんですけれども、まさにそれは非常に重要でして、私どもの経験ですと、紛争地にやはりいるので、間違われると撃たれたりとかやっぱりすることが本当にあるといいますか、非軍事でやってはいるんですけれども、戦闘地域では、やはり停戦交渉の合間に支援を届けたりするときには、両方、武装勢力と軍部と政府勢力と両方と交渉したりしながらやるところで、やはり間違われると自分たちの危険にさらされるので、そこは非常に重要だとは思います。
 一方で、災害支援のときに例えば日本でも自衛隊の皆様が大活躍していたりすることもありますけれども、災害支援のときに御協力、ロジスティックスの面で御協力関係を築いたりとか、そういうことはあります。
 ですから、必要に応じて、軍事化とかいうのではないんですけれども、必要に応じてそういう必要な緊急の場で御協力関係というのを、パートナーシップというのを構築する場合もあり、それが支援の効率化だけではなく、実際に支援を可能にするということもあるので、そこは、必要なときは非軍事というのの理念に基づいた上で必要な支援活動をしていければとは思っております。

○参考人(特定非営利活動法人国際協力NGOセンター理事
THINK Lobby所長 若林秀樹君) 非常に難しい、悩ましい問題ではあるんですよ、実際には。やはり日本が果たしてきた戦後の役割を考えれば、非軍事原則を徹底するというのは、私は今でもそう思っています。
 例えば、昨年、民主主義に関する国際会議二回出たんですけれど、世界からもうその分野でやっている人たちが出てきたんですね。民主主義というのはいかに壊れやすいか、もろいか。結局、目の前の人の命を守るためにはやっぱり軍事力が必要なんですよ。これはどう見ても否定し難い、今のこういう状況の中でですね。
 そういう意味で、みんな民主主義は重要だと言いながらも、その横では軍事が必要だということをみんな声高に市民社会の組織も言うわけですよ。だから、これはミックスだと思うので、だからこそ民主主義なり人権の重要性は日頃の中でやっぱり説得し、その活動をしていくということは逆に重要だ、でも、あわせて、軍事の役割はあるんだということを一方でどう捉えるかが今我々にとって求められているんじゃないかなというふうに思います。
 そういう意味では、やっぱりODAというのは本来の人間開発、人権保障というところがベースになっているのであれば、それをやっぱり徹底的にやるというのは一つの法則としては私はあっていいのではないかなというふうに思います。そのことが日本の中立性を守っているのは間違いないです。
 ただ、一方では、例えばピースキーピングのオペレーションにおいても、日本ができることはやっぱりロジスティックの部分なんです。これ、すごいたけているんですよ。評価できるんです。ロジスティックスがあって初めて軍事の先頭に行く部分が成り立つんですね。そこをやっぱりどう捉えるか。それでも我々は軍事で後ろの方でやっているんだからいいんだということをどういうふうに捉えるかというのもこれは非常に悩ましい問題だとは思いますので、そういう意味では、国民的な議論、国際協力とやっぱり軍事の関わりについて議論が進んでいないんですよ、ここは。市民社会もそうなんです。
 だから、ここをどう捉えるかというのは政治的な判断も含めて極めて重要な部分に来ていますので、そういう意味では、慎重な判断という意味では、単視眼的な政策でOSAに一回踏み切るということはどうなのかというのを私は現時点で思っていますので、もう少ししっかりした議論を徹底してやっていただきたいなというふうに思っています。
 ちゃんとした答えになっていないのは分かっているんですけど、その悩ましい心の中で今最大限のお答えをしているところであります。

○紙智子君 それで、続けてなんですけれども、焼家参考人と若林参考人にお聞きしたいんですけど、今回、ODAの大綱案と同日に、今お話ありましたけど、OSA、政府安全保障能力強化支援の枠組みが公表をされました。それで、この枠組みは同志国とする軍に対して軍備の供与ができるというものになると。
 四月二十五日、衆議院でも安全保障委員会で参考人の質疑がやられたときに、OSAというのが分断ということを結果として招いてしまう可能性がある、そこに大きな問題があるというふうな意見というか、そういう分断を危惧する意見が出されました。
 ODAでこの非軍事の原則というふうに保ちながら、これからも継続なんだと言いながら、その一方でOSAによる軍備支援を行うということができるということが、これODAに、何というか、影響を及ぼすというか、形骸化していくということにならないのかというふうに思うんですけど、この点はいかがでしょうか。お二人からまたお聞きしたいと思います。

○委員長(三原じゅん子君) どちら。若林参考人。

○参考人(特定非営利活動法人国際協力NGOセンター理事
THINK Lobby所長 若林秀樹君) そうですね、そこも非常に悩ましいところでありますけれど、結果的には、今分断が起きている状況の中で、さらに今この段階でOSAに踏み切って軍事支援にやっていくんだということを出すことが日本の国益にとっていいのかどうかという判断ではないかなというふうに思っています。
 ただでさえ、非軍事原則と言いながらも、船舶をやったらそれはもう向こうに使われるということがあり得るわけですよね。さらに、軍事支援であれば、もうそこは表裏一体と言えない、全体的な我々の日本の政府の支援としてそういうことに加担をするということになりますので、そこがやはり分断を招くということと同時に、我が国のODAのこれまで積み重ねてきた財産が壊れかねないというのは、私はやっぱりそのとおりだと思いますので、それを我々がどう考えるかというところなんですね。
 市民社会も、これまでは平和運動の中で、基地問題もあれば、軍備増強反対とかいろんなことをやってきましたので、やっぱり一定の役割は果たしているんですけど、今まさに時代の転換期だと思いますので、新しいタイプのシビリアンコントロールはどうあるべきかというところもしっかりやっぱり議論しながら、我々は、これまで積み重ねてきた平和というものに対する財産を短期的な視点で壊しかねないので、そこだけはやっぱり慎重に議論してほしいなというふうに思っています。
 取りあえず以上です。

○参考人(国際連合世界食糧計画日本事務所代表 焼家直絵君) ODAという観点でいいますと、特に国際機関は人道主義、中立性、独立性というのを特に重視して活動しています。この大綱でもやはり人権問題を重視したり、そういったことが書いて、掲げられていますけれども、やはりそういった人道、中立、独立性の原則というのをODAでしっかり守りながら活動していくというのが大事ですし、そういった中で、日本の見える化だとか、日本の支援を実際にいただいて活動する立場としてはそういったところをしっかりと打ち出しながら、日本のその支援が実際に人々にどのようにそういった人権保護だとかそういった観点から還元されているかという、そういう人道原則に基づきながらしっかりODAを進めていくということが重要だと考えています。

○紙智子君 ありがとうございます。
 引き続いて、焼家参考人にお聞きしたいんですけれども、SDGsの目標は二〇三〇年までに飢餓人口ゼロということを掲げていますよね。それで、食料が手に入らずに困っている国や人々がいる一方で、日本の今というのは、例えば物が余っていると、脱脂粉乳が余っているとかですね、そういう過剰になっているということがあるわけで、それで、去年、そうなんですけど、脱脂粉乳を、そういう食料を支援できないかという議論もありました。それに対して政府の答弁は、ニーズがないとできないのだと、それから衛生面や輸送や宗教的理由などで課題があるんだという答弁があったんですね。
 そこで伺いたいんですけれども、大綱案は、外交のツールとして積極的に提案していくオファー型の支援をやるということが明記されたんですけれども、外交ツールというとどうしてもこの日本の外交戦略に沿ったオファーというイメージが強くなるわけなんですけど、この飢餓ゼロを目指すという、FAOの考え方である食料にアクセスできない人を何とかなくしていくというために、政府として積極的に支援、食料支援の諸課題の解決を提案をして、国々の皆さんとですね、NGOの団体の皆さんと協力しながら、そういう日本から食料支援という道筋ができるんじゃないのかなと思うんですけれども、この辺のところはどうでしょうか。

○参考人(国際連合世界食糧計画日本事務所代表 焼家直絵君) そうですね、やはり飢餓ゼロの達成が大分、私たちはその目標達成に向けてまだ何とかならないかという思いでやってはいるんですけれども、現実的に困難な状況が続いていることは確かであります。ですから、そんな中、いろんな民間の資金、サポートも取り入れながらやっていく必要があるという状況ではあります。
 そんな中、その支援ということを考えると、その国の状況、ニーズ、効率性というのを考えながらどういった形でいろんな支援、御寄附を活用していけるかというのはいろいろ今後もっと議論を進めていくところではありますし、国連組織の実際のそのキャパシティーだとか内部の規定などでいろいろな支援の仕方が可能であったり不可能であったりはするんですけれども、そういったところで一番限られたリソースで一番多くの人を支援できるということを目標にしながら、そこはしっかりとまた効率化に努めながら考えてやっていきたいところでは、考えていってしっかりやっていこうとは思っています。

○紙智子君 ありがとうございました。
 それじゃ、ちょっと時間も来ましたから、最後に中西参考人にお聞きしたいと思うんですけれども、ロシアによるウクライナ侵攻が世界に与える影響というのは様々あるんですけれども、燃料とか肥料とか、それから物価の高騰で更なる困難状況を招いている国々があると思うんです。
 国連報告書の世界の食料安全保障と栄養の現状二二年版では、二一年の飢餓人口が八億二千八百万人ということで、二〇年よりも四千六百万人、それから一九年よりは一億五千万人増加しているというふうに報告されています。国連によると、人道支援機関では、二二年は二億人以上を支援するために四百八十七億ドルを必要としているけれども、この目標額の三分の一しか調達できていないということで、昨年九月に報道されました。
 それで、やっぱりこのままでは格差と貧困は拡大し続けることになると、一刻も早く止めなきゃいけないということで、国連のグテーレス事務総長なんかも、私たちは平和の分断を解消しなきゃいけないんだと、国際社会の団結の欠如というのは助けにならないわけで、やっぱり……

○委員長(三原じゅん子君) 申合せの時間が来ておりますので、おまとめください。

○紙智子君 あっ、時間ですね。
 その点で、大綱の中に地域限定するようなFOIPというのが入っていて、このことがちょっと気になるというか引っかかっているんですけれども、これについて一言、最後お聞きしたいと思います。

○委員長(三原じゅん子君) 時間ですので、簡潔にお願いいたします。

○参考人(開発協力大綱の改定に関する有識者懇談会座長・京都大学大学院法学研究科教授 中西寛君) はい。
 おっしゃるように、FOIP、自由で開かれたインド太平洋という言葉はありますが、個人的には、私は、これ地域というよりも、今、インド太平洋が世界の中で重要な、いろいろな意味で重要な地域になっていて、そこを中心に世界の課題を考えないといけないということで、決してグローバルなものを排除して特定の地域や国だけのことを考えるという概念ではないというふうに思っております。

○紙智子君 じゃ、終わります。