<第211回国会 農林水産委員会 2023年3月30日>

質問日:2023年3月30日 農林水産委員会

函館イカ激減ブリ急増 紙氏 加工業者の転換支援を 参院農水委

 日本共産党の紙智子議員は3月30日の参院農林水産委員会で、「イカの町」で有名な北海道函館のスルメイカ漁獲量が海洋環境の変化で激減し、ブリが急増しているとして、魚種転換する水産加工業者への支援を政府に求めました。
 神谷崇水産庁長官は「水産加工資金の長期低利の融資に加え、水産庁予算で加工原材料の転換や原材料切り替えなどに伴う新商品の広告宣伝費などの支援が可能だ」と答えました。
 紙氏は、水産庁のアンケート調査に福島第1原発事故で「販路を喪失した」等と答えた東北沿岸の水産加工業者は、岩手県で17%、宮城県で19%、福島県で24%にのぼるとして、輸出の被害額を示すよう要求。神谷長官は「輸出規制による影響を把握するのは困難だ」と答えました。
 紙氏は、中国、韓国、マカオ、台湾の一部地域ではいまも輸入規制をしていると指摘。現地漁業・水産加工業者の努力を無駄にしないためにも、同原発汚染水の海洋放出をやめるよう強く求めました。
 日本政策金融公庫の水産加工業者施設の整備に対する長期低利融資を可能にする水産加工業施設臨時特措法が同日、参院本会議で全会一致で可決・成立しました。(しんぶん赤旗 2023年4月5日)

◇乳製品のカレントアクセスについて/魚種転換への支援について/福島第1原発事故による水産業への被害について

○水産加工業施設改良資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、前回に続いて、乳製品のカレントアクセスについてお聞きをいたします。
 前回の質問のときに、カレントアクセスの量で約十四万トンを削減するように求めました。渡邉局長は、譲許表の変更には全加盟国の同意が必要だと、で、難しいという話を言われたんですけれども、私は譲許表の変更を求めたわけではないんですね。
 それで、そのことを前提として質問するんですけれども、確認ですけれども、譲許表には国家貿易は全量を輸入する義務があるというふうに書かれていないと思うんですけれども、これ間違いないですよね。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) お答えをいたします。
 WTO協定には、生乳換算の十三万七千トンの乳製品を全量する義務は規定されてございません。

○紙智子君 規定されていないということを確認をしました。
 譲許表には書かれていないということなんだけども、しかし、全量輸入義務があるということでいうと、政府の、日本政府の考え方ということになりますよね。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) WTO協定に全量輸入義務が規定されていない以上、政府といたしましては、全量を輸入する義務自体があるものではないと考えてございます。我が国が負っているのは、あくまで生乳十三万七千トン分について輸入の機会を提供する義務であり、国が一元的に輸入を行う国家貿易の下でこの義務を履行してございます。
 脱脂粉乳など、特定の品目に当初割り振った輸入枠について、国内需要が小さいといったような理由によりまして入札を続けても枠が消化されない場合において、ほかに需要の大きい別の品目があるにもかかわらず、その品目に改めて割り振り直して入札を行わなければ、生乳十三万七千トン分について輸入の機会を提供したことにはなりません。
 このため、そういった特定の需要の小さい品目について入札を、その枠を設けて入札を続けても枠が消化されない場合には、その当初の枠を他の品目に振り替えて入札を行って生乳十三万七千トン分の輸入機会を提供することになるわけでございますが、このように義務を誠実に履行してきた運用の結果といたしまして、WTO協定の締結以来、今日に至るまで、全量が落札をされ、契約されてきたものでございます。

○紙智子君 だから、機会の提供、あくまでもそこのところでやるということなので、必ずしももう全枠を守らなきゃいけないということではないという今の答弁だったんじゃないかと思うんですよね。
 それで、事前のレクチャーで、国家貿易だから全量輸入義務があるというふうに解釈している国あるんですかと聞いてみたら、カナダのバターと韓国の米ぐらいという説明を受けたんです。国家貿易だから輸入義務があるというのは、日本政府が今までずっと言い続けてきたんですけれども、それ日本の国の考え方と。アジアの国を見ても、韓国のトウガラシとかタマネギとかフィリピンの米というのは枠どおりに輸入していないし、それからインドネシアの国家貿易である米の輸入量というのはゼロなんですよね。輸入データを出していない国もあると。譲許表を変えなくても、政府の考え方を変えれば輸入量は減らせるということなんじゃないかというふうに理解をするわけです。
 前回の質問のときに野村大臣は、国家貿易には調整弁の機能があるという話をされていたと思うんです。
 三月の十八日、実は北海道で酪農危機突破のJAの集会が、大規模な集会が開かれて、私も参加しました。この後に、市町村会からも要望が相次いでいました。今も、危機を突破するために政府の役割というのは本当に大きいと、続いていると思うんですね、大きい役割があるというふうに思います。約十四万トンのカレントアクセスの全量輸入の義務というのは協定にないわけですから、この譲許表の枠を変えろとは言いません、でも、輸入量を減らしてほしいということなんですけれども、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) お答え申し上げます。
 これはもう何回も同じことを言ってきて恐縮なんでございますけれども、やはり先ほど局長が答弁しましたように、十三万七千の乳製品について輸入の機会を提供する義務があるということで、これを輸入しなければならないということにはなっておりません。したがいまして、この業務を履行したにもかかわらず全量の輸入が行われないような例外的なケースも当然あるということだと思っております。
 そこで、現況をちょっと申し上げますと、十三万七千トンのうち、まだ残りがございます。これを全て、先ほど、国家貿易じゃなくて、紙委員のおっしゃりたいのは、民間に任せればいいじゃないかと、ほかの国みたいに。そういうことになりますと、民間の皆さん方が一番その内外格差の大きいバターに集中してくると、こんなふうに思います。
 ですから、やっぱり国家貿易で必要なものを入札を掛けていくというのが国としての基本的な姿勢でありまして、あと残ったものについて、それこそ今、バターについて生乳換算で四千トンぐらい、明日に入札をすると、こんなことになっておりまして、これらは最初ありました脱脂粉乳だとかこういうのは今回はもう入札に入れなくて、バターでやろうということで今役所の方では検討をしているところでございます。

○紙智子君 脱脂粉乳が国内で余っているということで、そこは今度は入札しないんだという話がされたわけですよ。私は、それでもってほかのものでまたそこを埋めるんじゃなくて、約十四万トンの枠全体の中でやっぱり減らしていくということをすべきじゃないのかと、それができるんじゃないのかということなんです。
 でないと、実質的には、これ調整弁としての役割を酪農家に担わすということになるんじゃないかと思うんですよ。酪農家が、今約十四万トンぐらいの量をもう抑制しなきゃならないといって、その牛を淘汰しなきゃいけないという話になっているわけですから、酪農家を調整弁に使っちゃ駄目なんですよね。やっぱり離農する酪農家は調整もできないし、生乳生産から撤退しているわけですから、ですから、本当にこの調整を生産者がするんじゃなくて、政府が国家貿易を使って調整すべきだというふうに思うんです。
 約十四万トンの譲許表の枠の変更を求めてはいません。いないけれども、そこは実質的に輸入を減らしてほしいということなんですけど、ちょっともう一回どうですか、大臣。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) 国内需給が緩和しているので、需給調整の需給調整弁として十三万七千トンの実際の輸入を減らせないかというお尋ねであるというふうに理解をいたしました。
 これ、国が一元的に輸入を行う国家貿易でございます。十三万七千トンの輸入機会を提供する義務がございますので、需要のない乳製品に、需要のない特定の乳製品にその枠を割り振って、それで入札を続けるということでは十三万七千トン分の輸入機会を提供したことにございませんので、十三万七千トン分のその全量について、これは乳製品全体、指定乳製品全体の枠でございますので、そういった枠について輸入の機会を提供する義務を履行する必要があるものでございます。

○紙智子君 もう全体減らせばいいんじゃないかと。やっぱり日本に対していろいろ不平を言ってくるところというのは日本に輸出したい国だと思うんですよ。それは限られていると思うんですよ。その国との間の交渉をやればいい話じゃないかと思うんですよね。
 やっぱり酪農、畜産の灯を消さないということが一番大事であって、そのために万全の対策を強く求めたいということを改めて申し上げたいと思います。
 次に、水産加工資金の法案についてなんですけれども、この法案自体は私は必要なものだというふうに思っていますので賛成なんですが、ずっと議論ありましたように、海洋環境の変化によって地域経済に物すごく大きな影響出てきています。
 イカの町で銘打って観光にも役立てている北海道の函館ですね、ここはスルメイカの漁獲量が十年前と比べると約十分の一になっている。ブリは六倍以上になっている。しかし、小ブリ、ブリは小ブリなので、脂の乗りが悪くて買いたたかれるという話も聞いています。それから、東北沿岸で、岩手でシイラが今十倍になっているとか、それから福島のトラフグが十五倍になっているとか、それから宮城のタチウオが五百倍増えているとか、こういうことも言われているわけです。捕れる魚が変わってくれば、これ、水産加工業者もそれに対応していくと。これがしばらく続くのであれば、そこに対応していかざるを得ないということだと思うんですけれども。
 それから、新商品の新たな販売先というのもまた必要になってくるということでありまして、この魚種転換への支援策、それから販路開発のための支援策ということについて、政府のどういう対応なのかということをちょっと簡潔に説明いただきたいと思います。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) お答えいたします。
 魚種転換に関しましては、水産加工資金におきまして、原材料の転換に伴う施設整備などに対し、長期低利の融資を行っているところでございます。さらに、予算措置といたしまして、加工原材料の転換や調達先の多様化の取組の支援、漁業者団体などが水産物を買取り、保管、販売する際の支援、水産物の加工、流通機能などを強化するための共同利用施設等の整備の支援などの支援策を講じております。
 また、販路開拓の取組につきましては、原材料切替えなどに伴う新商品に関する広告宣伝費などの支援、漁獲量が豊富な魚種に原材料を転換する際に、市場調査、商談などの旅費、プロモーション資材など作成費の支援、さらに、消費者の内食需要などに対応した簡便性に優れた商品や提供方法などの開発、実証に伴う広告宣伝費や市場調査費などに対する支援などを行っているところでございます。

○紙智子君 やっぱり水産加工業者にとってはこの販路の確保というのは欠かせないというふうに思うんですね。
 福島原発事故の、発電所の事故によって、東北沿岸の水産加工業、大きな影響を受けました。水産庁の水産加工業における東日本大震災からの復興状況アンケートというのをいただいていますけれども、販路の不足、喪失ということの答えが、やっている業者が、岩手県では一七%、宮城県では一九%、福島県では二四%ということで、原発事故によって輸出ができなかった水産加工業者もいると思うんですけど、どれぐらいいたのか、どの程度の被害が出たのかということについて把握されているでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) お答えいたします。
 原発事故に伴います我が国水産物の輸出規制による影響を受けている水産加工業者の数を正確に把握することは困難ではありますが、現在、原発事故に伴う輸入停止措置の対象となっている十二都県における水産加工事業所の数は、例えば青森県で百二十か所、岩手県で百二十一か所、宮城県で三百二か所等々、累計いたしますと千百五十七か所であると承知しております。

○紙智子君 把握していただいたんですね。私も調べてみたんですよね。それで、東電の賠償額の支払状況を見れば分かるんじゃないかと思って調べてみたんですけど、よく分かんなかったですよ。やっぱり、ちゃんと実態把握というのが正確にされている状況じゃないと思うんですね。
 原発事故の直後にこの輸入規制を行っていた国が五十四か所、地域あったわけですけど、現在ずっと今それが輸入するようになってきていて、現在は中国と韓国とマカオ、台湾の一地域になってきていると思うんです。
 そういうふうに回復をされてきているということなんだけども、政府は、春から夏頃にかけて汚染水、まあ政府はALPS処理水って言うんですけれども、これを海洋放出するって言っているんですけど、水産加工業者にどの程度の影響があったのか、現在どこまで回復したのかっていうこともなかなか把握されてない中で、またこれ海洋放出をするのだろうかと思うんですけど、これ大臣、どうなんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) 原発事故に伴います我が国の水産物への輸入規制につきましては、政府一体となった科学的根拠に基づく働きかけの結果、先ほどお話がありましたが、これまで五十四のうち四十三の国・地域が規制を撤廃しております。私どもも事あるごとにこのことを今まだ規制している国に対しましては要望を重ねているところでありますし、また、G7農業大臣会議も四月二十二日からありますので、これらについてもその場でもお願いをしようということなどを考えているところでございます。
 それから、ALPS処理水の処分につきましては、安全性に万全を期した上で実施する旨、各国に対して説明している、してきているところでありまして、輸入規制が導入されないよう、引き続きこれは関係省庁と連携して、科学的根拠に基づき、透明性を持って丁寧に説明してまいりたいと思います。

○紙智子君 ちょっと時間になってしまいましたけど、元のもくあみっていう言葉がありますけど、せっかく努力して何とか元に戻してきたのがその前の状態に戻ってしまうということをいうわけですけど、そうならないためにも、やっぱり漁業者の皆さんは今も反対していますから、是非、この放流するということをやめてほしいってことを最後に申し上げまして、質問を終わります。