<第211回国会 農林水産委員会 2023年3月17日>

質問日:2023年3月17日 農林水産委員会

国内酪農 急迫の危機 紙氏 輸入乳製品削減を要求 参院農水委

 北海道の酪農家が14万トンもの生乳削減を求められる一方で、約14万トンの輸入乳製品(カレントアクセス)が続いています。日本共産党の紙智子議員は17日の参院農林水産委員会で、カレントアクセスの削減、中止を求めました。
 農林水産省はカレントアクセスについて、国家貿易で全量輸入する義務があるとしています。紙氏は、国家貿易であっても韓国のトウガラシ、ニンニクなどは輸入ゼロで、輸入実績のデータを示していない国もあると指摘。同省の水野政義輸出・国際局長は全量輸入していない国があることを認めました。
 紙氏は、関税貿易一般協定(ガット)ウルグアイラウンド農業交渉で、農水省が国内の需給と価格の安定に役立つと主張してカレントアクセスが認められたと指摘。2017年の畜産経営安定法案の審議で当時の山本有二農水相が「乳製品が無秩序に輸入されると、生乳全体の国内需要に影響を及ぼすので国家貿易の対象としている」と答弁したこともあげました。酪農が歴史的な危機に直面している時、カレントアクセスの輸入量はいったん減らすか、中止するよう要求しました。
 野村哲郎農水相は「国家貿易は需給の調整弁である」と述べる一方で、約14万トンの輸入枠の変更は困難だと答えました。(しんぶん赤旗 2023年3月22日)

水田活用交付金見直しやめよ 紙氏 地域の農業に影響 参院農水委
 日本共産党の紙智子議員は17日、参院農林水産委員会で、水田活用交付金の見直しで、離農や農地の減少などが起きているとして強引な見直しはやめるよう求めました。
 水田活用交付金の見直しにより、牧草地への助成単価が10アール当たり3万5000円から1万円に削減されました。北海道は産地交付金で5000円上乗せされましたが、農業への影響は避けられません。
 紙氏は▽ある生産者は補助金が500万円から150万円に減った▽肉牛の法人経営者はエサとなる牧草が減ったため牛250頭を100頭にして生産を縮小、借りた農地を地主に返還したら農地ではなくなった―などの事例をあげ、米の転作要請に応じて牧草を作り肉牛生産を重視した地域の営農計画に大きな影響を与え、突然の牧草の単価引き下げが営農を困難にし地域に混乱を与えたと指摘しました。野村哲郎農水相は「牧草単価についてはいろんなご意見があったことは理解している」との答弁にとどまりました。
 紙氏は、現場の状況に丁寧に対応するとともに、土地利用型農業のあり方を議論するよう求めました。(しんぶん赤旗 2023年3月24日)

◇乳製品のカレントアクセスについて/輸入乳製品と国産との置き換えについて/水田活用交付金の見直しと現場への影響について

○令和五年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、令和五年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、令和五年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 乳製品のカレントアクセスについてお聞きします。ちょっと前回も聞いたんですけど、なかなか分かりづらかったもので、もう一度やります。
 先日の所信質疑で、米の政府統一見解には、米は該当数量の輸入を行うべきものとありますけれども、カレントアクセスも米の政府統一見解で読み込むのかと聞きました。お答えは、米の政府統一見解は、乳製品のカレントアクセスの運用を左右するものではないと言われたんですけど、一方で、該当数量の輸入を行うべきものと考える、米の統一見解に書かれているステートメントは乳製品にも共通するものだというふうに答えられたんですよね。カレントアクセスの運用というのはこの米の統一見解に左右されないというふうに言いながら、共通するからこの輸入義務があるんだと、非常に分かりづらい答弁だったんです。
 それで、その共通というふうに言われた共通する点というのは何でしょうか。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) 委員御指摘のとおり、先日のやり取りにおきまして私から答弁させていただきましたのは、ミニマムアクセス米についての政府統一見解は乳製品のカレントアクセスについて整理されたものではないので、ですから、この政府統一見解が乳製品のカレントアクセスの運用を直接左右するものではないということを申し上げました。
 ただ、乳製品のカレントアクセスと米のミニマムアクセスについて共通する点といたしまして、この米の、米についての政府統一見解の中に書かれている記述、すなわち、国が輸入を行う立場にあることから、通常の場合には当該数量の輸入を行うべきものであると考えるという記述については、ミニマムアクセス、あっ、じゃない、ごめんなさい、乳製品のカレントアクセスにも当てはまりまして、その意味で、乳製品のカレントアクセスとミニマムアクセス、米のミニマムアクセスは共通する点があると、そういうことを申し上げたものでございます。

○紙智子君 すごく分かりづらい話なんだけど、要するに、国が輸入するという点では一緒だと、だから、国家貿易であるということですよね、共通ということは。
 それで、確認するんですけど、乳製品のカレントアクセスの扱いについて示した公式見解、公式文書というのはあるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) 公式文書といいますか、乳製品のカレントアクセスについては、ミニマムアクセス米の法的性格に関する政府統一見解が出された、平成六年に出されたわけですが、同じようなその政府の統一見解が整理されて示されたというようなことはございません。

○紙智子君 ないということなんですよね。それで、カレントアクセスは全量輸入義務があるとする考え方を示したものではないということなんですよね。国家貿易だからという理由で、これ政府の言ってみれば米の統一見解に縛られているだけではないのかなというふうに思うわけです。
 そこで、国家貿易ってじゃ何だろうかということなんですが、ガット・ウルグアイ・ラウンドで農業交渉に携わった塩飽二郎さんがおっしゃっているんですけど、ガット十七条には国家貿易の定義があると、国家貿易が小麦や乳製品の需給及び価格の安定に果たしている役割があると。この国家貿易の重要性を主張して、カレントアクセスが認められたということを語っておられるわけです。需給や価格を安定させるために国家貿易があるということだと思うんですね。
 カレントアクセス量というのは、譲許表に書かれて、それで確認されているんですけども、でも、塩飽さんは、その譲許内容については常に限度いっぱい用いることを求める規定はどこにもないというふうに語られているんです。
 そこで、やっぱり前回の質問でなかなか答弁なかったのでもう一度聞くんですけど、韓国の国家貿易の扱いについて確認をしたいんですね。
 韓国のトウガラシは、約束数量が七千百八十五トンなんですけど、国家貿易はゼロになっていて、民間は、民間貿易は六千百十四トンあったと。
 だから、民間だけで見ても約束数量に届いていないということで見ると、これ国家貿易の扱いというのが韓国と日本と違うということなんですか。

○政府参考人(農林水産省輸出・国際局長 水野政義君) お答えいたします。
 韓国の国家貿易については、そのWTO協定上の譲許、WTO事務局への通報を把握しておりますが、韓国の国家貿易の実情や国家貿易の認識について農林水産省として把握しておりません。
 その上で申し上げれば、御指摘の韓国のトウガラシやニンニクについては、国家貿易と民間貿易の両方で輸入が行われており、その合計数量で約束数量分の輸入機会の提供が求められると理解しております。例えば、仮に民間貿易で約束数量分の輸入機会が提供されているとするならば、国家貿易による輸入がゼロであったとしても、協定上の約束が満たされているとも考えられます。
 このため、約束数量分を全て一元的に国家貿易で行う我が国の品目とは事情が異なるものと考えております。

○紙智子君 つまり、韓国と日本とちょっとそういう意味では、韓国の考え方というところがあるということだと思うんですけど、韓国では、国家貿易だからといって約束数量を全部やらなきゃいけないかといったら、そういうふうにはなってないということだと思うんです。
 畜産経営安定法、これ二〇一七年のときの法案の審議のときに、私、輸入との関係で質問したときに、当時の山本農水大臣が、畜産物の需給の安定を通じて畜産経営の安定を図ることを明記したので、乳製品が無秩序に輸入されると、いろいろその中抜きなんですけれども、生乳全体の国内需要に影響を及ぼすので、国家貿易の対象とするなどして無秩序な輸入は防止させていただくという考えなんだということを答弁されているんですよね。
 だから、日本では年間この生乳換算で約一千二百万トンの牛乳と乳製品が消費をされています。消費で千二百万トンですね。その三分の一を占める四百六十九万トンが輸入ということになっています。で、カレントアクセスというのは、この輸入の四百六十九万トンのうちの十三万トンにすぎないということなんですね。
 国内では生乳は過剰になって、酪農は歴史的な危機に直面しているというわけです。ですから、国内で生乳が過剰になってそういう危機ということであれば、国家貿易だから全量を入れるということではなくて、国家貿易だからこの需給調整の役割発揮すべきなんじゃないのかなと。カレントアクセスの輸入量は一旦減らすとか、今の事態に、順次止めたらどうなのかなというふうに思うんですけど、これ、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) 我が国でのバターや脱脂粉乳は、生乳需給の調整弁として用いることで牛乳・乳製品の安定供給に寄与しているというふうに思っております。
 国家貿易につきましては、生乳需給が逼迫している局面では不足が見込まれるバター等を輸入することで国内需要を満たすと。それから、生乳需給が緩和している現在のような状況では、輸入する乳製品、バター、脱脂粉乳、ホエー等の品目別の数量や輸入の時期を管理することで国内需給への影響を低減しているという形で需給調整の調整弁として用いるというふうに御理解いただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) 今、紙委員からカレントアクセスの数量を減らしたらいいではないかというお問いかけございましたので、それにお答えをいたします。
 このカレントアクセスの数量は、WTO、あっ、ウルグアイ・ラウンド交渉の結果、WTO協定の合意のときに合意されて、そのWTO協定、そしてそれに附属する我が国の譲許表に数量、税率などが明確に規定をされているものでございまして、この変更には、また加盟国と交渉して、全加盟国と交渉してその合意を得る必要がございますので、そこはなかなか難しいということでございます。

○紙智子君 だから、加盟国という話するんですけど、どこの国なんですかね。それで文句を言う国が出てくるというわけですよね。そこはやっぱり交渉なんだと思いますよ。国の交渉力が試されるんじゃないかなと思うんですよ。
 やっぱり、国家貿易の輸入量がゼロの国もあれば、WTOに通報していない、さっきのみたいに通報していない国もあるわけです。国内が大変なときに輸出国をおもんばかる必要があるのかなというふうにも思うんですね。米の政府統一見解が足かせになっているんだとしたら、これに固執せず変えればいいんじゃないかと思います。危機にある酪農の緊急支援をやっぱり優先すべきじゃないかということを求めておきたいと思います。
 それから、輸入を国産に置き換えるということも必要なんですが、輸入乳製品四百六十九万トンのうち国家貿易は十三万トンだと、まあカレントアクセスね、関税割当ての品目は三十八万トンあるということになっています。この関税割当て品目にどういうものがあるのか、主なものでいいんですけども、その活用実績を教えてください。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) お答えをいたします。
 この三十八万トンの貿易部分でございますが、これは国家貿易ではなくて、民間貿易、民間貿易によって、それで関税割当てを利用して、WTOなどで設定され、約束されました関税割当てを利用をして民間貿易で入ってきたもののその生乳換算の合計の数字でございます。
 例えば、これは具体的には、学校給食用の脱脂粉乳ですとか、そういった用途を限定した上で、これ国内需給に悪影響を与えないように用途を限定した上で、脱脂粉乳やバターといった乳製品の品目について、複数の関税割当てを国際約束上、設定がされているものでございます。
 例えば、学校等給食用の脱脂粉乳ですと、枠数量が製品重量で七千二百六十四トンという枠を設ける、について輸入機会を提供する義務がございまして、その結果といたしまして、令和三年度ですと二一%の消化率というふうになってございます。
 合計の数字で申し上げますと、令和三年度の乳製品のこういった民間貿易が関税割当てで、関税割当ての下で行われる民間貿易ですが、枠数量の合計、生乳換算で合計いたしますと、百五十一万トンの関税割当てを民間貿易に供する、輸入機会を提供する義務がございまして、その結果といたしまして、合わせると三十八万トン、これ消化率ですと二五%になりますけれども、三十八万トンの乳製品が輸入されているものでございます。

○紙智子君 三十八万トンの関税割当ての中身の紹介がありました。
 それで、学校給食の、学校給食用の脱粉の使用実績というのが、いろいろ聞き取りしましたら約五百五十トンなんですよね。北海道は地産地消の観点から地元のものを使っているので、活用実績はゼロというふうに聞いています。
 食育基本法、基本計画というのがありますけど、これで見ると、国産食材を使用する割合を令和元年度から維持、向上した都道府県の割合を九〇%以上にするということを目標に掲げて鋭意努力をしているということなんですよね。計画に沿って地場農産物や国産食材を増やすために輸入乳製品から国産への切替えを行う場合、支援、どんな支援があるのか、教えていただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) 輸入の、やはり、地産地消の観点ですとか、あるいは食育の観点から国産の乳製品を活用していただくというのは、これは本当に農水省としても大事だと考えてございます。
 このため、国産品の利用の促進に向けまして、例えばどういう乳製品があるかの紹介を行うとか、どういった活用事例があるかというような、そういう広報といいますか、そういったものをやらせていただいてございます。

○紙智子君 食育の観点からということで大事なことだということですけど、国産食材を活用する上でも、それから国内生産を応援するためにもこの国産の置き換えを是非進めていただきたいというふうに思います。
 次に、水田活用交付金の見直しについてです。
 以前にもちょっと言ったことがあるんですけども、やっぱり土地利用農業を農業の政策の中心にどう位置付けていくのかという、ここの議論がまず非常に大事だというふうに思うんですね。そこなしにいろいろやると、やっぱり混乱してくるというふうに思うんです。
 それで、水田活用交付金の見直しとして、昨年、牧草地への助成が十アール当たり三万五千円から一万円に削減されました。委員会で質問したときに、当時、金子原二郎農水大臣だったんですけども、助成金は削減するんだけども、産地交付金で上乗せできるんだという答弁をされたんです。
 それで、産地交付金でどうなっているのかなと思って北海道に聞いてみたら、北海道は五千円上乗せするんだということだったんですけど、これ北海道だけじゃなくて、実際牧草が削られたところの産地がどうなったかということは、その後、把握しているでしょうか、農水省。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) 水田活用直接支払交付金につきましては、需要に応じた生産、販売を推進するために、毎年の作付け転換の実施状況を踏まえまして見直しを毎年度行ってきているところです。
 今、紙先生御紹介ございましたが、牧草については、今年度から、播種、管理、収穫を行う場合は引き続き三万五千円なんですが、収穫のみの場合は一万円というふうにしました。
 そこで、今回のその単価の見直しを受けて現場においては、産地交付金の話でございましたね、産地交付金につきましては、今お話ございました北海道で五千円なんですが、それ以外の市町村でいきますと、例えば岩手県等の市町村の中では三千円ですとか一万二千円ですとか、宮城県、福島県の市町村でもやはり五千円、一万五千円という、そういう事例を承知しております。

○紙智子君 やっぱり、方針出した以上はちゃんと把握を、その後どうなっているかということを把握していただきたいというふうに思うんです。
 私がつかんだ地域でいうと、ある生産者が、これまで、牧草をやっている人ですけれども、五百万円出ていたものが百五十万に減ってしまったと、三百五十万減ったということなんですけどね。それで、肉牛の肥育農家の法人の経営の人は、牧草の減額によって牛の餌となる牧草を減らさざるを得なくなってしまったと。それで、二百五十頭だったんだけど、これを百頭に減らしたということを言っています。それから、借地で牧草を作っていた生産者が、地主に農地を、払い切れないということで返したんですね。そうしたら、その地主さんは農地を売ってしまったということなんですよね。
 聞いてみても、離農、それによって離農した人や、生産を縮小した人や、農地を手放した人や、突然のこの牧草の単価引下げということで混乱を生んでいると。これについて、大臣、どのように思われるでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) お答え申し上げたいと思いますが。
 水田活用のこの直接交付金に、支払交付金については、牧草単価についてはいろんな御意見があったことはよく理解をいたしております。ただ、やっぱり牧草の場合は、播種、それから管理、そして収穫を行う場合と収穫のみの場合のコスト差を踏まえまして実は見直しをしたところでございまして、各産地においては、必要に応じて産地交付金を御活用いただきまして、地域ごとの産地形成を進めていただきたいと考えております。
 他方、牧草等の粗飼料の確保を図るため、飼料生産組織の運営強化や牧畜連携推進や国産粗飼料の広域流通への支援等によりまして、国産飼料の生産、供給、利用拡大を推進しているところであります。
 私の鹿児島では稲わらが不足しておりまして、したがって、それを宮城県と堆肥の交換で稲わらを確保していると、こんな状況。それから、隣の熊本県は福岡とそういった形で交換をしているということで、お互いにやっぱり、これはウイン・ウインの関係がやっぱりでき出したなということを感じております。

○紙智子君 あのね、決めてからもう翌年にすぐやっているわけですよ。だから、検討している暇がないというか、非常に混乱が出たというのは、私紹介した地域というのは元々は米作っていたところですよ。米作っていたんだけど、以前、国の政策で転作を進めようということになって、それで地域で話し合って、この地域どうするという話になって、じゃ、この地域は肉牛に切り替えて、それでやっぱり水田の活用をして、それでそこで牧草も作って、牛だから餌も作って回していけるようにしようということで、地域全体で計画を作ってやってきたところなんですよ。
 ところが、決めてすぐ翌年からもうそれやるとなったら、なかなかこれがまとまらなかったり、さっき紹介したように、ちょっとこれはもう無理だといってやめる人が出てくるということがあるわけで、私はやっぱりこういう強引な政策の、ほかのやつはまだ五年先あるとかという話だけど、牧草は違いますから、もう翌年すぐですから、そういうことというのはやっぱり農政の不信を生んでしまうし、丁寧に対応していかないといけないと。そして、さっき言いましたように、土地利用型の農業をどうするかと、全体の中でどうするかということで、ちゃんと計画立てるようにしなかったら本当に大変だということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。