<第211回国会 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会 2023年3月16日>

質問日:2023年3月16日 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会

漁業支援 協定妥結まで 紙議員 日ロ交渉の努力とともに

参院ODA沖縄北方問題特別委


 日本共産党の紙智子議員は3月16日の参院ODA沖縄北方問題特別委員会で、ロシアによるウクライナ侵略で日ロ漁業交渉に影響が出るなか、操業が困難になっている漁業者への支援を求めました。
 日ロ間の漁業協定のうち、日本漁船に北方四島周辺水域での「安全操業」を認める協定については、ロシアが1月に政府間交渉に応じない方針を一方的に発表し、スケソウダラ漁が操業できなくなっています。紙氏の指摘に、水産庁の藤田仁司資源管理部長は「操業できないため、漁場転換等の経費を支援している」と答えました。
 紙氏は、タコの水揚げ量は2022年度は今年1月までで例年の9割減の約9トンしかなく、「苦しむのはいつも漁業者だ。廃業せざるを得ない人もいる」との漁業者の切実な声を紹介。外交努力とともに対策を講じるようを求めました。
 藤田部長は「操業できなかった場合、適切な支援を検討する」と答弁。岡田直樹沖縄北方担当相は「水産業を含め隣接地域の振興を図りたい」と答えました。(しんぶん赤旗 2023年4月2日)

◇日ロ漁業交渉について/沖縄県で発生した有機フッ素化合物(PFAS)汚染について

○令和五年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、令和五年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、令和五年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について(政府開発援助関係経費、内閣府所管(内閣本府(沖縄関係経費)、北方対策本部、沖縄総合事務局)及び沖縄振興開発金融公庫)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今年も北方領土返還要求大会が、東京でも開かれましたし、根室でも開かれました。東京には私も参加していましたが、元島民の皆さんや二世、三世の皆さんの思い、もう一日も早くこの北方領土返還への、早い解決をということで決意が語られました。今日は、その中でも漁業交渉に関わって、まずお聞きをします。
 日ロの漁業協定のうち、一月に、ロシア側が一方的に交渉に応じないとした安全操業、ここではスケソウダラが漁期内に妥結が見通せなかったということで国からの支援がされましたけれども、まず水産庁にお聞きします。この支援策の内容はどのようなものだったでしょうか。

○政府参考人(水産庁資源管理部長 藤田仁司君) 今委員御指摘のように、現在、スケトウダラ刺し網漁業については本年の操業ができなかったというところでございますので、日ロ漁業協定関係漁業者対策事業による支援を実施しているところでございます。
 支援の具体的な内容といたしましては、協定水域での操業ができないため、漁場ですとか漁獲対象魚種の転換を余儀なくされた漁業者に対し、漁場転換等の取組に必要な経費の支援を行うものであります。

○紙智子君 昨年の十月から今年一月のタコ漁について言うと、これロシア船の競合とか天候の影響もあって、前浜で実施はされたんだけれども漁獲は僅か九トンということで、本当に少ないものだったんですね。現在も妥結が見通せていない状況ということでは、秋の漁への不安も拭えないわけです。苦しむのはいつも漁業者だと、廃業せざるを得ない人もいると、こういう根室の漁師の皆さんの声が寄せられているわけなんですけど、岡田大臣にお聞きしますが、何らかの対策が必要だと思われませんか。

○委員長(三原じゅん子君) どなたがお答えになられますか。

○政府参考人(水産庁資源管理部長 藤田仁司君) タコの空釣り漁業、これに関しましては十月以降の操業期間が主漁期でございます。引き続き、このタコ空釣りにつきましては操業機会の確保が重要であるというふうに考えてございます。
 その上で、漁業交渉の影響によりまして十月以降も関係漁業者の操業ができなかった場合には、その影響を分析した上で、漁業経営が維持できるよう適切な支援を検討してまいります。

○紙智子君 大臣にせっかく聞いたのに。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)岡田直樹君) 北方領土隣接地域は返還運動の拠点でありまして、水産業を始めとする地場産業の振興など、この地域の振興と住民生活の安定を図ることは大切な課題と考えております。
 この委員御指摘のタコ漁を始め、水産業に関する対応は農林水産省において所掌しており、同省において状況に応じて必要な対応を検討していくものと承知しておりますが、内閣府としても、水産業を含めた隣接地域の振興が図られるように、農林水産省を始めとする関係省庁と連携してまいりたいと存じます。

○紙智子君 サケ、マスなどの交渉もまだあるわけで、早期解決のための外交努力というのは、もちろんこれが一番大事なんですけれども、万が一にも妥結の見通しがない場合は十分な補償を是非求めたいということを申し上げたいと思います。
 次に、PFASについてお聞きします。
 一月に、本委員会の派遣で沖縄県に行きました。そのときに、宜野湾のちゅら水会、それから有機フッ素化合物(PFAS)汚染から市民の生命を守る連絡会の皆さんから水質や土壌汚染の調査や住民の血中濃度の調査などについて伺いました。それで、発がん性が疑われるPFAS化合物は残留性が高いと。生体内に蓄積されやすいこと、分解されないために自然環境中に長期間残留することが指摘されているわけです。現在、このPFASは要監視項目になっていて、暫定目標値は五十ナノグラム・パー・リットルということです。
 環境省が公表している資料によると、各都道府県で実施した二〇二一年度の調査結果では、沖縄県を除いて全国で八十一か所にわたり暫定目標値を上回っていると。全国的には、水質や土壌調査や飲用水、それから血中濃度など、基準値の確定が必要な状況になっているということです。
 そこで、環境省にお聞きするんですけれども、沖縄県で二〇一六年から二〇二二年まで調査を実施しています。二一年の夏季では三十二か所、二二年は二十七か所と、測定地点の半分以上が暫定目標値を上回っています。

配布資料 沖縄県 有機フッ素化合物環境中残留実態調査結果

 お配りした資料を御覧いただきたいと思うんです。これ、普天間基地周辺や嘉手納飛行場の周辺の測定値を示すものなんですけれども、黄色で塗り潰しているところは暫定目標値五十ナノグラム・パー・リットルを上回っているところです。赤線で囲んでいるところは、これ、嘉手納町ではとりわけ暫定目標値を大きく上回って高い値だと。この中にありますヌールガーというのは、令和三年と四年の差で四・七四倍にもなっている。それから、屋良ヒージャーガー、これは二千百とありますけど、目標比の四十二倍にもなっているんですね。
 こういう高い数値を示していることに対しての御認識を伺いたいと思います。

○政府参考人(環境省大臣官房審議官 針田哲君) お答えいたします。
 沖縄県が行った調査結果によれば、嘉手納飛行場及び普天間飛行場周辺の湧水などから国の暫定目標値を超えるPFOS及びPFOAの数値が検出されており、沖縄県議会においても、沖縄県議会において、沖縄県は両飛行場がPFOS等の汚染源である蓋然性が高いと考えているというふうに説明をしているというふうに聞いております。
 沖縄県としては、暫定目標値を超過した地点については、環境省と厚生労働省が策定した手引に基づいて飲用しないよう県民に周知しているというふうに承知しております。
 PFOS等に関し、環境省といたしましても、引き続き、環境中のモニタリング結果を注視するとともに、今年一月に設置した専門家会議での議論の結果を基に、国民の安全、安心のための取組を進めていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 県の企業局は、この発生源というのは嘉手納基地の可能性が高いということで、要するに基地による蓋然性が高いというようにしているわけですよ。汚染が拡大する可能性も否定できないと。住民からは嘉手納基地の調査要請というのは、外務省も御承知のとおりだと思うんです。当然の要求だと思うんですね。
 そこで、大臣、嘉手納基地内の調査が、これなぜできないのでしょうか。

○国務大臣(外務大臣 林芳正君) このPFOS等をめぐる問題につきましては、嘉手納町を始めとして地元住民の皆様が大きな不安を抱えておられると承知をしておりまして、関係省庁とも連携しながら政府全体として真剣に取り組んでおるところでございます。
 環境補足協定におきまして、環境に影響を及ぼす事故が現に発生した場合に、米側からの通報を受けて立入り申請を行うこととなっておりまして、嘉手納飛行場周辺における高濃度のPFOS等の検出については、過去にPFOS等が使用されたり漏出したりした可能性を示すものであっても、環境補足協定に規定された環境に影響を及ぼす事故が現に発生した場合には該当しないところでございます。
 一方で、米側から通報がない場合であっても、日本側として、米軍施設・区域に源を発する環境汚染が発生し地域社会の福祉に影響を与えていると信ずる合理的理由のある場合には、別途、既存の日米合同委員会合意に従って米側に調査要請や立入り許可申請等を行うことが可能でございます。
 沖縄県から嘉手納飛行場の立入りに関する申請が出ておるということは承知をしておりまして、これまでも、米側に対し、様々な機会を捉えて当該申請が出ている旨を伝達をしておるところでございます。
 また、本年一月に行われた日米2プラス2におきましても、私から環境に係る協力強化を要請しまして、日米間で環境に係る協力を強化することを確認したところでございまして、外務省としても、米軍施設・区域内外の環境対策が実効的なものとなるように、環境省を始めとする関係省庁と連携して引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

○紙智子君 通報がなくても合理的理由があればできるというわけですよ。しかも、今年の2プラス2でも確認しているという。だったら、なぜできない状態になっているんですかね。
 二〇一六年に嘉手納基地に隣接する北谷の浄水場でPFASによる汚染が確認されてから、もう七年たっているんですよ。対策のための、この吸着効果があるということで、粒状活性炭、これによる除去、改良事業が二〇一九年から五か年計画でやってきているんですけど、沖縄県としては十六億円の総工費を計上しているわけです。そのうち三分の二が防衛省の補助金で賄っているというんだけれども、この飲用水が汚染されていることを知って、基地に起因すると疑われているわけですから、調査できないということ自体がおかしいと思いませんか、大臣。

○国務大臣(外務大臣 林芳正君) 先ほど申し上げましたように、この補足協定に基づく、現に発生した場合、それから、この既存の日米合同委員会合意に従ってこの申請を行う場合、両方あるわけでございます。まさにそうしたことに従って沖縄県から申請が出ているということは承知をしておりますので、米側に対して、様々な機会を捉えてこの当該申請が出ている旨伝達をしておるところでございます。

○紙智子君 なぜできないのかということの回答がないんですよね、今その交渉していると言うんだけど。
 やっぱり、市民団体だけじゃなくて県の企業局からも立入調査が、申請するんだけれども拒否されてきていると。それで、血中濃度で高い値が出た方々は、このPFASが利用されてからずうっと暴露され続けているということなんですね。ですから、調査ができないまんま住民の命が危険にさらされ続けているということなんですよ。玉城デニー県知事はこの三月にワシントンに飛んで、政府や連合議会の関係者にもそのことを伝えて、何とかしてほしいんだということを報道されているわけですよね。
 七三年に日米の合意があるわけだけれども、これ結局アメリカが認めなければ立入調査ができないんじゃないかと、申請ができないと。環境補足協定、この中でも通報がなければ調査できないことになっていて、まあなくてもできるというんだけれども、実際上は原因究明のためにさえもできないということでは、やっぱりこういう問題点をちゃんと改定しなきゃならないんじゃないかと。
 環境補足協定や七三年の合意も改定すればできるんじゃないかと思うんですけど、改定するつもりはありますか。

○国務大臣(外務大臣 林芳正君) 先ほど申し上げたとおり、米側との間で環境補足協定、日米合同委員会合意など環境に関する日米間の枠組みが存在しておるところでございます。
 政府として、地元の方々のこの御懸念、御関心に応えられるようにこうした枠組みが運用されていくことが重要であると考えておりまして、本年一月の日米2プラス2において、環境に係る協力強化、これを要請して、日米間で環境に係る協力を強化するということを確認をしたところでございます。
 外務省としても、米国及び関係省庁と引き続き連携してまいりたいと考えております。

○紙智子君 今年2プラス2で確認したというんですけど、じゃ、すぐそれは変わって現れるんですか。直ちに、今年、その2プラス2で確認した以上、今年ちゃんとされますというふうに答えられますか。

○国務大臣(外務大臣 林芳正君) まさに、我々として、この地元の方々の御懸念に応えられるようにこうした枠組みがしっかり運用されていくということが重要だと考えておりますので、2プラス2、また累々の機会を捉えて米国や関係省庁と連携してまいりたいと思っております。

○紙智子君 時間が来てしまったので、ちょっと岡田大臣にも聞こうと思ったんですけれども、残念ながらできませんが、やっぱり原因究明もできない、その大本の地位協定、そして七三年の合意、こういうものについてやっぱり米側の具体的な義務を課す内容をちゃんと盛り込むように改定すべきだということを強く申し上げまして、質問を終わります。