<第211回国会 農林水産委員会 2023年3月9日>

質問日:2023年3月9日 第211回国会 農林水産委員会

酪農家救う緊急支援を 紙氏、乳価引き上げも 参院農水委

 日本共産党の紙智子議員は9日、参院農林水産委員会で、深刻な経営危機に直面する酪農家が今を乗り切るための緊急支援と乳価の引き上げ、輸入乳製品(カレントアクセス)の輸入を止めるよう主張しました。
 酪農家は円安と資材高騰で赤字経営が続いています。紙氏は、酪農家の離農率が2022年4〜12月に6・5%(例年4%)に急増していると紹介。同時期の配合飼料(エサ代)が10円、輸入乾牧草は20円近く上がったのに、生産者乳価は昨年11月に10円上がっただけで、加工用乳価は上がっていないと指摘した上で、緊急的な「直接補てん」を求めました。野村哲郎農水相は「検討しつつある」と答弁するにとどめました。
 紙氏は、酪農家は赤字続きなのに、大手乳業メーカーの内部留保は、19〜22年に明治HDは1291億円、森永乳業は440億円、雪印メグミルクは232億円も増えているとして、酪農家の再生産を保障するために、乳価引き上げで国がイニシアチブを発揮するよう要求。野村農水相は「(大手乳業メーカーが)こんなに潤っているのかなとびっくりした。何らかの方法があれば考えてみたい」と答えました。
 紙氏は、酪農家に生産抑制を求めているのに、カレントアクセスは手つかずだとし、輸入停止を求めました。(しんぶん赤旗 2023年3月14日)

◇政府の支援策で、離農に歯止めがかからないことについて/生産者への直接支援の必要性について/畜安法の目的である生産者の所得の増大に沿った対策の必要性について/大手乳業メーカーの内部留保と、乳価引き上げに向けた国のイニシアチブについて/WTO農業協定のカレントアクセス規定について/カレントアクセスの約束数量と実際の輸入量の差について/カレントアクセスと政府統一見解について/政府統一見解の見直しについて

○農林水産に関する調査(令和五年度の農林水産行政の基本施策に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日、酪農の危機の問題についてお聞きします。
 野村大臣は、二月二十四日の記者会見で、業界団体の聞き取りを基に酪農家の離農の実態について報告されましたよね。全国の酪農家の九割が生乳を出荷する指定生乳生産者団体の受託戸数を中央酪農会議が調べたものです。

配布資料1 飼料価格と酪農家戸数(指定団体出荷)の推移

 それで、ちょっと今日配付した一枚目の資料を見てほしいんですけれども、二〇二二年の四月から十二月の出荷農家戸数を見ますと、全国の戸数は一万一千七百十九戸から一万一千百五十二戸に減少しています。北海道では百五十四戸減少し、都府県は四百十三戸減少しました。
 全国のこの減少率が例年四%で推移していたものが昨年は六・五%、都府県は五%だったものが八・二%に拡大したと。野村大臣は、これ酪農の離農が進んでいることがうかがわれると言われました。
 北海道の離農の理由ということで見てみると、これまでは高齢化や後継ぎ問題が大半だったんだけれども、この一年は働き盛りの世代の離農が進んでいると。借金を返せるうちに離農するという方が多いわけです。
 政府がこの間支援策を打ってきたわけですけれども、なぜこの離農に歯止めが掛かっていないのか、まずお聞きしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) 紙委員からのお話のとおりで、我々も早くこれは、離農が進み出したということがいろいろ言われたものですから、調べたら、さっきおっしゃったような数値が出てきました。
 これは指定団体を通しての調べですから九割方は把握していると思いますが、あと一〇%は系統外に出される方なものですから、その方々の動向というのはつかめませんでしたけど、ほぼ九割方はそういう傾向が見られたということであります。
 これは、非常に難しい今のは質問でありまして、なかなかこの離農が歯止めが掛かってこないというのは、私は、餌の問題は一つあります。餌をまだ、三・四半期は終わったんですが、四・四半期の価格がまだ、補填の価格も決まっておりませんし、そういうのがまだ農家に振り込まれておりません。
 ただ、私も地元の酪農協から資料を取り寄せながら見ておるんですが、十一月から十円上がりました。これは、北海道は、これ四月からだったですかね、十円上がるのは。乳価が上がったのは昨年の十一月。十一月、十二月というのは少し好転しているようでありまして、今、この表で、離農ということじゃなくて、農家の経営の好転の度合いを見たら、というのは何で見ているかというと、酪農協に生乳を出した、その販売代金が振り込まれてきた、そしてそれの中から餌代だ何代だというのが引かれて、農家の純粋に振り込まれるのが幾らかというのをずっと見ているんです。
 そうしましたら、十月までは大体半分の方がゼロなんです。ということは、何で飯を食っているのかって分からないぐらいにもう農家からは控除されることで、農家の口座に振り込まれるのはゼロだったんですが、十一月頃からそれが好転してきているということになっておりまして、さらに、加えまして、今回のその餌の補填が国から出ていくわけでありますが、そういうのが出ていったときに農家の経営の状況がどうなっていくのかというのもまた見なければいけないなと、こんなふうに思っておりますし、さらに、加えて言いますと、今現在、関東生販連は、数字が間違っていたらごめんなさい、十五円だったと思うんですが、近畿の生販連は二十円の値上げの、これは今メーカーと交渉しております。
 そして、驚くことに、各ブロックが全部、今メーカーと値上げ交渉をしておりますから、そういう意味では、これはやっぱり農家の皆さん方が国からのこの支援だけじゃなくて自ら立ち上がってこられたなと、こういうことを私は思っているところでありまして、是非それで貫徹していただきたいと、こんなふうに思います。

○紙智子君 要するに、間に合っていないということですよね。それで、足りないし間に合っていないということだと思うんですよ。
 それで、ちょっと、この酪農家の経営悪化の状況は、肥料や光熱費などの高騰もあるんですけれども、四割前後を占める飼料、ここが高騰が激しいということだと思うんですよ。
 それで、この配付した資料を見てもらうと、青い線ですけど、これ、昨年四月の配合飼料の価格が一キロ九十一円だったのが十二月に百一円と、十円上がったと。それから、緑のラインは輸入乾牧、乾燥牧草、乾燥した牧草ですけれども、五十四円だったのが七十円まで上がっていると。コロナ感染症が増えた二〇二〇年と比較すると、これ、配合飼料は一・五倍、輸入の乾燥牧草は一・八倍も高騰したわけですよね。在庫対策などの生産者拠出金も出しているわけで、それがあるのに乳価は昨年十一月から十円上がっただけで、加工乳についてはまだ上がってなくて、今年の四月から値上げするということになっているから、だから搾っても搾っても赤字という状況なわけですよね。
 日本農業新聞の北海道支所が、酪農家のいる道内の九十一のJAに二三年度の経営の見通しを聞いているんですね。これ見ると、二二年度に比べて離農のペースが増えそうだというのが二五%、やや増えそうだというのは二四%で、合わせると過半数近いJAが、これ離農のペースが加速するということを懸念しているわけです。それで、最多の理由、その理由の最多というのは、経営難が三〇%、高齢化ということは理由にしているのは一二%ですから、やっぱり経営難って答えているのが一番多いということなんです。
 二月十四日、国会内で、日本から畜産の灯を消すなということで百五十人の人たちが集まって、ネットで、オンラインでやって、五百人ぐらいだったんですけど、消費者も含めて緊急集会開かれました。北海道からは十勝や別海町からも参加した酪農家がいて、野村大臣にも直接要請に行かれました、私も同席しましたけれども。やむなく生乳を廃棄している生産者の訴えを聞かれたと思うんですね。生乳一トンの廃棄で、金額にすると十万円になるということですよ。もうこれは自主的な廃棄ですって涙流しながら、自主的なんですって言っていますよ。そういう訴えがあって、そういうやっぱり苦悩に応えていくというのが私はやっぱり政治の責任、役割だというふうに思うんです。
 資材の高騰、円安の中で、私たち共産党としては、昨年来、緊急的、一時的な直接補填が必要だと、直接生産者のところに行く支援が必要だということを言ってきたわけですけど、改めて、従来の仕組みから一歩踏み出して、今を乗り切る強力な支援策を打ち出すべきではないんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) 今、これは衆議院の農林水産委員会でも、今、紙委員がおっしゃいましたようなお話が出ましたけれども、やはり緊急的な、今を乗り越える酪農家への支援策について、どういうことがまだ改めて必要なのかと。ただお金を渡せばいいという話ではないという思いがして、仕組み的なものをやっぱり変えていかなきゃいかぬのだろうと、こんなふうに思っておりまして……(発言する者あり)はい、間に合わないですか。まずはやっぱり我々がこれは、まあ飼料というのは、これは酪農だけじゃなくて牛も、それから豚も鶏も全畜種に及ぶ話でありますから、だからまず、この飼料高騰対策をまずやろうと。
 そして、酪農の場合は、やはり毎日毎日生乳を搾りながらやっておられまして、毎日出すから毎日お金も入ってくるんだけど、それがほとんど残らないと、こんな状況でありますので、何とか皆さん方がそれで戸数が減らないように何かできないのかということでまた考えてもおりますが、おりますが、まずはこの飼料価格の高騰対策だったんだと思いますが、まだほかにも今役所の方でも検討はしつつありますけれども、まあこれだという決め手がなかなかないと。先ほど言いましたように、国の対策があるし、それからまた生乳団体の皆さん方の御努力もしていただかなきゃならない。これは、先ほど言いましたメーカーとの価格交渉しておりますから、この価格交渉で何とかそれを上げていただければうまくいくということも一つはあるだろうと、そういう合わせ技しかないのではないかなと、そんなふうに思います。

○紙智子君 酪農家の離農に歯止めが掛かっていないということで、それでこの間のその支援の中に、生乳の需給調整するために一頭十五万円と、五十億の補助金を付けて四万頭もの乳用牛を淘汰するというわけですよね。これ、三月から始まっていると。
 現場で話を聞くと、頑張っている牛を淘汰なんてできないよって言っているんですね。この制度の評価って非常に悪いです。補助金はやっぱり牛を生かして生産を応援するために使うべきじゃないのかという声が出ていて、これちょっと質問すると時間なくなっちゃうんで主張にとどめておきたいと思いますけれども、四万頭もの牛を淘汰するということになれば、今年中にも牛乳の不足の事態に陥るんじゃないかという、そういう指摘もされています。
 今必要なのはやっぱり緊急支援なんだと、生産者の経営を守る、国民への牛乳の安定供給を図るということが求められているわけです。畜安法で審議のときにも当時の山本大臣が、畜安法の改正というのは生産者の所得を増大させることが目的なんだって答えました。この目的に沿った対策が求められていると思うんですけれども、一言でお願いします、大臣の見解。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) 長くは申し上げません。
 いや、要は、いろいろ方法は考えていかなきゃいかないと思うんですが、まずはその生産基盤を毀損させないという業界の共通認識はありますので、乳牛の頭数を調整するのではなくて、乳製品への加工によって調整をしてきたのが脱脂粉乳でありますが、これの需要が回復しないで在庫が過去最高水準まで積み上がったと、こうした中で飼料価格が高騰したと、こういったようないろんな要素が絡んでおりますので。
 したがいまして、私どもとしましては、まずはその脱脂粉乳の在庫低減対策なり、あるいはまた牛乳の消費拡大への取組の支援、こういったことを行ってきましたし、これからの、生産者団体から抑制の取組の支援を要請されたことを受けて、三月から十五万円って先ほど来ありますが、そういうことの対策もやっているところでありまして、これぞという決め手がないというのが本当に申し訳ないなと思いながら、でも、だけれども、今日も私も地元から電話が来たものですから、今をみんなで乗り切ろうと、こういう、これは北海道だけじゃ話はありませんで、鹿児島の酪農家百七十戸おりますけれども、この人たちも何とかしてくれって今日電話が来ました。それはお金の、資金の話でありましたので、これはもうすぐ局長に言って資金の手当てをやってくれと……(発言する者あり)あっ、済みません、というような話もしております。

○紙智子君 ちょっと長く、全体として答えが長くなっちゃってだんだん時間が、質問時間がなくなるんですけど、乳価の問題を次しようと思っていて、昨年十一月から十円上がったと、加工乳は四月から十円だと、これでは不十分だという声がはっきり出ているんですよね。もう三十円ぐらい上げてくれないとという話もあります。
 それで、乳価が上がらないわけですけれども、北海道でいえば、出口対策で酪農家は二百億円もの拠出金を負担してきたんです。来年度も、今年も拠出が求められているわけです。それで、資材は上がるし拠出金もあると、なのに今の乳価で再生産が可能なのかということが一つあるんです。

配布資料2 大手乳業メーカーの内部留保の推移

 それから、ちょっと時間ないからもう一つ言いますけれども、資料で配付、二枚目の資料、これ大手乳業メーカーの内部留保の資料なんですけれども、これ見ていただきたいんですよね。これ、明治乳業でいうと二〇一九年の内部留保が四千五百三十七億円だったのが、二二年、五千八百二十八億円に増えています。森永乳業は千三百七十七億円から千八百十七億円、雪印メグミルクは、数字入れていませんけれども、千二百五十五億円から千四百八十七億円に増えているんですね。
 我々、内部留保そのものは、何かのときに備えて蓄えておくものですから、それは否定しないんですけれども、ただ、これだけ今生産者赤字続きでもう廃業かと言っているときにメーカーの内部留保は順調に上がっていっているわけで、こういうことを見るならば、これ、酪農家の再生産を保障するために、乳価をもっと、生産者の乳価ですね、ここを引き上げるように国がイニシアチブを発揮すべきじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) この初めて大手乳業メーカーの内部留保の状況を見させていただいて、本当に農家は困っているけど、こんなに潤っているのかなというのをびっくりしました。
 ですから、先ほど申し上げたように、今、各ブロックごとに指定団体の方でメーカーとの交渉をしております。今まで一回もなかったんです、一回もなかった、こんなことは。でも、今回は全ブロックがメーカーと交渉し出しましたので、むしろ、むしろ旗ぐらい立てていかなきゃいかぬのじゃないかって私は冗談で生産者の人たちには言うぐらいに、やはり、自分たちで決められる、価格を決められるのは酪農だけなんですよ。ほかのは全く自分たちでは価格が決められない。だから、酪農家の人たちも、国で何とかしろというのも当然これは当たり前で、当然の話なんですが、むしろ自らがやることはもう一つあるでしょうって、メーカーと交渉しなさいと、こんなことを実は言っているところです。

○紙智子君 交渉しなさいじゃなくて、国自身がもっと乗り出してほしいんですよ。直接農家の人が大臣室で訴えたように、力関係、物すごい差があるんです。生産者団体の方は、もっともっとって言うと、いや、もう分かった、だったらもうそこと取引やめるからってなってしまったら元も子もないですから、弱い立場なんですよ。
 そういうときに、やっぱり国として言うべきことをしっかり言ってもらって、乳価もっと引き上げられないのかということをメーカーに働きかけてもらいたいと。一言ちょっとそれに対して言ってください。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) まあなかなかやりますとは言い切れませんので、要は民民の取引ですから、余りそこに官が入り込むとはいかがなものかなと思いますが、まあ何らかの方法があればちょっと考えてみたいと思います。

○紙智子君 是非強くちょっと働きかけていただきたいと思います。
 次なんですけど、カレントアクセスです。
 生産者は、我々には生産抑制求めながら輸入は野放しになっていると言って怒っていますよね。それで、北海道の酪農家は生乳で十四万トン減産するのに、カレントアクセスは十三万七千トンだから、ほぼ同じぐらい、匹敵するぐらいですよ。生産者には拠出金を出せと、減産しろと言って、どうやって生き残れるんだと言っているんですね。
 で、確認ですけど、カレントアクセスはWTO農業協定に書かれているのかということなんですけれども。

○農林水産副大臣(勝俣孝明君) WTO農業協定に、カレントアクセスの定義など、これを直接的に規定した条文はありません。
 他方で、いわゆるカレントアクセスとして交渉された関税割当ての約束については、WTO加盟国ごとに規定される譲許表においてその数量、税率等が明確に規定されております。

○紙智子君 今言われたように、協定そのものにはないんですよね。

配布資料3 農業協定における市場アクセスグループ議長の記録
コメのミニマム・アクセスの機会の法的性格に関する政府統一見解


 それで、モダリティーにあるんだということで、このモダリティーということですけれども、配付した三枚目の資料、農業協定における市場アクセスグループ議長の記録というのを見てほしいんです。
 農林水産省は英文の和訳はやってないというので、私の事務所で翻訳しました。カレントアクセスは数字の十一というところに書いてあります。カレントアクセスって出ていますけれども、カレントアクセス、現行の輸入機会は一九八六年から一九八八年までの平均年間輸入量以上でなければならない、これらの機会が拡大される場合、拡大はこれらの手順、モダリティーの第六項の規定に沿ったものでなければならないというふうに訳しているんですけど、この中身の意味をちょっと簡潔に教えてほしいんですけど。

○政府参考人(農林水産省輸出・国際局長 水野政義君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、このモダリティー文書につきましては、ガット・ウルグアイ・ラウンドにおいて交渉プロセスにおける各国の約束の方法についての手順を交渉加盟国間で定めたものだと理解しておりまして、委員ただいま御指摘ありましたとおり、このパラグラフ十一については、カレントアクセスの機会は少なくとも一九八六年から八八年までの平均輸入数量として設定しなければならないという旨規定されたものだと理解しております。

○紙智子君 ちょっと先日レクチャーで聞いたら、その八六年から八八年の乳製品の輸入量は三年間で四十一万一千六百六トンだから、だから割ると一年当たり十三万七千二百二トンになるんだよっていう話だったんです。それでいいんですよね。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) 御指摘のとおりでございます。

○紙智子君 それで、政府はカレントアクセスは輸入の義務があるって言っているんですけれども、この文書を見てみると、機会を提供する手順を書いたものであって、義務という用語は出てこないんですね。なぜ義務になるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) お答えいたします。
 この乳製品の十三万七千二百二トンでございますけれども、これはその数量の輸入を行う義務はございません。輸入の義務ではございませんで、その数量に相当する乳製品について輸入の機会を提供することが義務の内容でございまして、輸入自体は義務ではございません。

○紙智子君 それはさっきもやり取りあって認めているわけなんですよね。ところが、義務というふうに言っているわけですよ。
 それで、政府統一見解も併せてそこに書いてあるんですけども、それもちょっと見てほしいんですね。タイトルにあるように、これいろいろ調べたんですけど、この一九九四年の五月二十七日の議論の議事録しかちょっと見当たらなくて、それで、タイトルにあるように、これ米に関するものです。カレントアクセスという文言は出てきません。なぜカレントアクセスというふうにそこまで米のところで読み込めるのかなって思うんですけど、これはどうですか。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) お答えをいたします。
 平成六年のミニマムアクセス米に係る法的性格に関する政府統一見解は、乳製品のカレントアクセスについて整理されたものではありません。ですから、この見解自体が乳製品のカレントアクセスの運用を直接左右するものではありません。
 乳製品につきましては、そのカレントアクセスについての国際約束の内容は、我が国として毎年度、生乳換算で十三万七千トンに相当する乳製品、これバターですとか脱脂粉乳、ホエーあるいはバターオイルといったものでございますが、十三万七千トンの生乳換算、生乳に相当する乳製品について輸入機会を提供する義務を履行することが国際約束の内容でございます。
 これまでこのような輸入の機会を提供する義務を履行してきた結果として、その結果として十三万七千トンがこれまで輸入をされてきたというものでございます。
 ですから、繰り返しになりますけれども、平成六年のミニマムアクセス米に係る法的性格に関する政府統一見解は、乳製品のカレントアクセスについて整理されたものではなく、これを、乳製品のカレントアクセスの運用を左右するというもの、直接左右するものではございませんが、ただ、乳製品と米で共通する点といたしまして、国が輸入を行う立場にあることから、通常の場合には当該数量の輸入を行うべきものであろうと、あるというようなミニマムアクセス米について政府統一見解に書かれているこのステートメントは乳製品とも共通するものであると、そういう理解でございます。

○紙智子君 だから、結局、文言上は義務なんて書いてない、機会の提供なんですけれども、政府の見解で当該数量の輸入を行うべきものというふうに、政府見解でこういうふうに書いているわけですよね。市場アクセスグループの議長の記録には義務という用語はないんですよ。
 つまり、これ、政府の考え方としてカレントアクセスを義務にしてしまったということなんじゃないんですか。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) モダリティーは、交渉過程でどういう約束をするかについて各国で共通の交渉の基礎、交渉のやり方を定める交渉上のルールでございまして、その中にカレントアクセスということで、一九八六年から八八年の三年間の輸入数量を基準として、それを下回らない、平均を下回らないというルールがあったわけで、モダリティーだったわけでございます。
 これ自体には法的拘束力はもちろんないわけでございますが、ただ、そういうルールに基づいて、交渉のルールに基づいて交渉した結果、国際法として、国際条約として最終的にWTO協定、そしてそのWTO協定に附属する各国の譲許表が、これが国際法として締結されたと。その締結された中にはカレントアクセスという定義はもちろんないわけでありますけれども、乳製品につきましては、十三万七千二百二トンという生乳換算の数字とそれについての税率と、それについて輸入機会を提供する義務がWTO協定に附属する我が国の譲許表に記されているので、輸入機会を提供する義務として我が国を国際法上拘束しているものでございます。

○紙智子君 多分、聞いていてみんなは全然分かんない。義務じゃないって言いながら、義務というふうに何度も繰り返し言うわけですよ。
 それで、ガット・ウルグアイ・ラウンドの交渉の当時の交渉官であった塩飽二郎さんが、このカレントアクセスについて、これ輸入約束数量、確かにその譲許表でやるわけですからね、それで認められてはいると。で、いるんだけれども、譲許した関税を常に限度いっぱい用いることを求める規定というのはどこにもないんだって、当時の交渉官だった塩飽さんが言っているんですよね。

配布資料4 国家貿易と民間貿易の内訳

 それで、次のちょっと資料をまた見てほしいんですけど、配付資料の、これ我が党の予算要求資料で出てきているものなんですけれども、これ、さっきもちょっとありましたけど、カナダのバターというのは、約束数量が三千二百七十四トンに対して国家貿易の輸入量は三千二百六十二トン、まあ一〇〇%近いですけど一〇〇%ではないんですよ。だけど、民間のやつを入れると、それは超えるとなっているんですけど。それから、韓国のトウガラシ、ニンニク、国家貿易はゼロ、民間貿易を含めても約束数量に届いていません。日本が義務だっていう国家貿易については枠を満たしていないわけですね。で、民間貿易含めても枠を満たしていません。
 だから、なぜ、これ約束数量に届いていないのかっていうことと、それから、その下にもちょっと移したいんですけれども、韓国の一部、中国はデータなしってなっているんですけど、これ何でなのかなということも含めて、ちょっとまとめて短く答弁ください。

○政府参考人(農林水産省輸出・国際局長 水野政義君) お答えいたします。
 御指摘の資料につきましては、各加盟国のWTO協定上の譲許表と各加盟国によるWTO事務局への通報を基に作成したものでありますので、各国の個別の事情については必ずしも把握しておりません。
 その上で、御指摘のカナダ、韓国など記載のWTO加盟国については、実際の輸入量に国家貿易だけでなく民間貿易によるものも含まれている点を考慮する必要があります。つまり、民間貿易の場合は、関税割当ての枠数量の輸入機会の提供が必ずしも全て実際の輸入に至るわけではなく、アクセス約束数量と実際の輸入量が一致しない場合が多くなると考えております。
 御指摘のアクセス約束数量と実際の輸入数量の差については、このような民間貿易の事情によるものが背景にあると考えております。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) 追加でちょっと補足させていただきますと、この三千二百七十四トンの枠に対して三千二百六十四トンですと九九・七、八%ということでしょうか、今……(発言する者あり)ええ、ということだと思いますけれども、これが具体的にどういう事情でこういうその一〇〇を切っているかというのは、詳細にはちょっと承知をしておりません。
 恐らく、契約は全量したものの、例えばシップバックが行われ、何か不良品だったためにシップバックが行われて実際に入ってきた数量がちょっと欠けたために、WTO通報は一〇〇を切ったというようなことではないかと推測しております。
 我が国の十三万七千二百二トンにつきましても、入札を行いまして、その一〇〇%分落札をされて契約をされても、やはり同様のその契約後の事情によって実際には一〇〇%必ずしも入ってこなくて、九九・数%というような数字が我が国のWTO通報上の消化率になるケースもこれまであったところでございます。

○政府参考人(農林水産省輸出・国際局長  水野政義君) ごめんなさい、答弁、先ほど漏れましたので。
 データなしについて御質問ありました。これについては、WTO事務局への通報において、輸入量のデータがない旨記載されていたことによるものです。
 なお、御指摘のデータなしとされた品目については、国家貿易と民間貿易による実際の輸入量の合計がアクセス約束数量を上回っている点にも留意すべきと考えております。

○紙智子君 だからね、いろいろあっていいということでしょう、結局。データないのもあったりするし、それから、一〇〇%入っていないの、民間入れてもいいよという話なんだから、そういうふうないろいろの中で、何で日本だけがその枠をきっちり守んなきゃいけないかということなんですよ。
 それで、結局、ガットの十七条というのは国家貿易の定義があると、国家貿易が小麦や乳製品の需給及び価格の安定に果たしている役割があるんだということで国家貿易の重要性を主張してカレントアクセスが認められたというふうに塩飽さん語っているわけで、だから調整することはできるという意味だと思うんですけれども、そこに立ったならば、やっぱり今ようやっとちょっと変えて、その、何だっけ、脱脂粉乳のところは入札しないという話もされていましたから、それは当然だと思うんですよ、もう国内はこんなに大変なことになっているわけだからね、そういうこともやりながら、枠いっぱいにやらなくてもいいんじゃないかと。
 そういうことを、国際法上はそうなのに、政府の統一見解で手を縛ってしまったんじゃないかなというふうに思うものですから、私、最後に農水大臣に聞きたいのは、やっぱりそういう統一見解は、そもそも政府の考え方を示したというわけだから、見直すとか廃棄すべきじゃないんですか。

○委員長(山下雄平君) 申合せの時間が来ていますので、簡潔にお願いしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) はい。
 今、紙委員からありましたように、平成六年のミニマムアクセス米に係る法的性格に関する政府統一見解は、乳製品のカレントアクセスについて整理されたものでありませんというのは先ほど局長が答えたとおりでありますが、この見解自体が乳製品のカレントアクセスを縛ってきたものでありませんが、米のミニマムアクセス米とは、国家貿易品目として国が輸入を行う立場にあることから、通常の場合には当該数量の輸入を行うべきものという点は共通すると考えております。

○紙智子君 いずれにしても、国内でやっぱり抑制されていて、生産者が廃業かと言っているときなんですから、そこはこういう手を縛るようなものはこの際見直すべきだということを最後に申し上げて、質問を終わりたいと思います。