<第208回国会 農林水産委員会 2022年4月7日>


◇米国による米国産桃の輸入解禁要請について/輸出促進法改正案について/日本茶の振興と日本茶を楽しむ文化の普及について

○農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 ちょっと今日はてきぱきと行きたいと思います。
 法案の質疑に入る前に、米国産桃の輸入の解禁問題についてお聞きします。
 米国政府からこの米国産の桃の輸入を解禁するように要請があったというのを山梨の日日新聞の四月一日付けの一面で報道しています。米国政府からはいつ要請があったんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) お答えします。
 米国産桃につきましては、本年二月四日付けで米国から輸入解禁の要請がございました。

○紙智子君 米国政府からの桃の輸入解禁要請が通商弘報に四月一日に公表されています。なぜ、これ公表するまでに二か月近く掛かっているんですけれども、なぜなんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) お答えいたします。
 御指摘のとおり、四月一日付けで通商弘報に公表しております。これは、公表に先立ちまして、三月三十日、三月三十一日に桃の主産地の県の担当者や関係団体を対象にオンラインで説明会を開催してきたことが原因になっております。

○紙智子君 何か分析とか、情報を聞いて分析、精査したからじゃないんですか。それから説明したんじゃないんですか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) お答え申し上げます。
 その説明会のための材料を集める時間が必要だったということでございます。

○紙智子君 それで、その情報を集めて分析して何が分かりましたか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) これは、私どもの植物検疫協議はこれからやっていくわけでございますけれども、例えば、米国産の桃の主産地がどこにあるのかとか、生産量がどこにあるのかといったような情報を収集して、産地に情報として提供してきたところでございます。

○紙智子君 農水省として、その山梨県だとか福島県とか桃の産地の関係者には、いつ、どういう説明をされていますか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) 先ほど申し上げましたとおり、米国産桃の輸入解禁に関しましては、三月三十日、三月三十一日にウエブで開催をしてきておるところでございます。主産地でありますところの山梨県さん、長野県さん、福島県さんなど、それぞれJA等もウエブ会議に参加していただきまして、輸入を、アメリカ側が輸出を希望している品種あるいは収穫時期などについて情報を提供させていただいてきたところでございます。

○紙智子君 ウエブでやって、どういう、収穫時がいつかということを話をされたということなんですけど、資料配付とかは、じゃ、ウエブだからやっていないんですか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) 大変申し訳ありません。今、語尾がちょっと聞き取れなかったんでございますけれども。

○紙智子君 資料とかは配って説明したんですか。ウエブだから無理だったかな。

○委員長(長谷川岳君) 資料を聞いております。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) 別途、ウエブ会議でございますけれども、資料についても電子的に配付をさせていただいているところでございます。

○紙智子君 それで、米国政府はなぜ今このタイミングで桃の輸入解禁の要請をしてきたんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) 検疫当局といたしましては、なぜ今のタイミングで要請してきたかにつきましては承知しておりません。

○紙智子君 承知していないということなんだけれども、桃の生産が盛んな地域とか生産者、その人たちは、米国からいつどういう桃が日本に入ってくるんだろうかと、これは非常に心配をしていまして、収穫時期が重なったりするとこれ値崩れするんじゃないかとか、不安の声は尽きないわけなんですね。
 それで、米国産の桃に寄生する病害虫のコドリンガというのは、これ、植物防疫上の輸入禁止病害虫というふうになっているんですけど、どんな被害をもたらすんでしょうか、説明してください。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) コドリンガにつきまして御質問をいただきました。
 これは、幼虫が桃、リンゴ、梨などの果実、あるいはクルミを食害することになります。具体的には、コドリンガ自体はガなんですけれども、その幼虫が果実に穴を空け、商品価値をなくしてしまうといった害が発生するものでございます。

○紙智子君 だから、結構、桃だけじゃなくていろんなものにも広がっていくということなんですけど、このコドリンガが日本に入ってきたら桃の産地に大きな被害が想定されるわけです。
 これからその検疫の協議に入るということなんだけれども、米国から桃の輸入をもし認めることになる場合、その条件というのは何でしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) これから検疫協議を行ってまいります。その場合のまず一般原則で申し上げますと、御存じかもしれませんが、WTOのSPS協定あるいは国際植物防疫条約における国際基準に基づきまして、まず、米国との間で検疫の対象とすべき病害虫は何か、これはコドリンガ以外にも存在いたします。それから次に、この対象病害虫となった場合に、その侵入を防ぐためにどのような検疫措置が必要かということにつきまして、科学的根拠に基づき協議を行っていくことになります。したがいまして、現時点では、具体的な検疫措置をどうするかについては決定をしておりません。
 今後、農水省としては、コドリンガを始めとする病害虫、これの我が国への侵入を防止するため、様々なデータを要求、分析しながら、科学的知見に基づきしっかりと協議してまいります。

○紙智子君 これから中身は協議というんだけれども、完全にこれ、もしそういうもの、いる場合は、防除できる、防除したものでないといけないということになると思うんですけど、そういうことってできるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) まず、コドリンガ自体は非常に被害を高じるということが一つ、それから輸入時の検査で発見することが難しいので、植物防疫制度上はまずコドリンガが発生する国からの桃の果実の輸入をまず禁止しております。その例外となる場合には、先ほど申し上げましたように、検疫措置について、科学的データに基づききっちりと消毒あるいは滅却することができるといったことを確認させていただきます。

○紙智子君 青森の黒星病の話も出ていますけれども、日本には元々なかったけれども、必ずそういう病害虫って入ってくるわけですよ。
 それで、そのコドリンガについても、死滅する方法というのはこれはどういうことがあるんですか、入ってくる前に。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) 先ほど申し上げましたとおり、まず検疫の対象とする病害虫を決めます。それが決まった後、通常でございますと、輸出する米国側からこういった措置で対処してまいりたいというものがございまして、それに必要なデータを私たちは提出していただきましてチェックをするといったプロセスになります。
 現時点でまだ提案がございませんので、今後協議をしていくということで御了解いただきたいと思います。

○紙智子君 死滅するために、例えば薫蒸するとか消毒をするとか農薬をやるとか、そういったことというのはあるんでしょうかね。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) 一般論で申し上げますと、虫でございますので、一つは、熱を掛けて殺す、もう一つは、凍らせて殺す、三つ目は、薬で殺す、こういったようなことが考えられると思います。

○紙智子君 熱でとかというのもあるんだけれども、要するに、その薬をということになると、実際に、今までもそうですけど、ポストハーベストであったり農薬を掛けたりということで、入ってきた場合に今度は健康の問題ということにもつながりますので、そこはやっぱり、米国政府から、そのつもりはないと言うかもしれませんけど、言われるままに輸入解禁要請を受け入れて粛々と進める必要はないと思うんです。
 山梨県の知事も記者会見で、アメリカから言われたら何でもマーケットを開きますではやってられないと、国も当事者意識を持って考えるべきだというふうに大変怒りに満ちた発言をされていて、これは、スモモのときはほとんど何も知らされないままいきなり入ってきたということがあったものですから、非常に怒っているわけです。
 米国からの要請には、そういう意味では、毅然とした態度で臨むように求めておきたいと思います。
 では、輸出促進法の改正案についてお聞きします。
 安倍政権以来、政府は農林水産物や食品の輸出に軸足を置いて農政を進めてきました。それで、円安の影響もあると思いますけれども、農林水産物・食品の輸出額が二〇二一年に初めて一兆円を超えたと。
 政府は輸出拡大を進めてきたわけですけれども、これをやりながら、農家というのはこれで利益が上がったんでしょうか。所得が増えたんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 国内の食市場が縮小する一方で、世界の食市場は今後大幅に拡大することが見込まれる中、輸出に取り組むことは我が国の農林漁業の市場規模拡大を図るものであり、農林漁業者の所得向上に資するものであると考えています。
 実際に所得向上につながった事例としては、宮城県で、輸出用に低価格で安定した品質の米を供給するために、多収性品種の導入等によりまして低コスト生産を推進し、それにより輸出量が拡大している事例もあります。また、茨城県では、サツマイモを長期保存することによりまして年間を通じて輸出する体制を確立し、コロナ禍の家庭食需要の高まりと相まって、輸出額及び輸出量が共に前年比十五倍になった事例などがあります。
 また、輸出拡大に取り組んだことの効果として、地域農業の維持拡大、国内で取引されない規格外の品等の販売による売上げの確保、地域の活性化、雇用の創出などにもつながっているという声も聞かれております。
 このように輸出の拡大は農林漁業者の所得の向上等をもたらすものですが、農林水産物・食品の生産額に占める輸出の割合は現状で二%程度であり、農林水産業全体の所得に目に見える効果はまだ大きくありませんが、今後、輸出を更に拡大することによりまして、より多くの農林漁業者の所得向上につながるように努めてまいります。

○紙智子君 個別の事例を聞いたわけでなくて、全体としてどうなのかということをすぱっと答えてほしかったんですね。
 それで、農林水産物の輸出で生産者の所得が向上すればいいんですけれども、メリットばかりとは限らないわけですよね。国内の農業の現状は、輸入自由化路線によって農家戸数の減少に歯止めが掛からず、生産基盤が弱体化している中で、食料自給率三七%を記録するなど課題が山積しているわけです。
 輸出頼みではなくて、やっぱり食料自給率の向上や、安定的に国内供給するための生産体制の強化が一番求められていると思うんですけれども、大臣、一言いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 将来にわたって食料を安定的に供給するためには、国内農業の生産基盤強化を図り、食料自給率を向上させていくことが重要です。
 一方で、我が国では、農林漁業者の減少、高齢化が進行していることにより、農林水産業の経営資源や生産技術が継承されず、生産基盤の脆弱化につながること、中山間地域を中心に農山漁村の人口が減少し、地域コミュニティーの維持が困難になることなどが懸念されております。
 このため、担い手の育成確保のため、新規就農対策として、就農に向けた研修資金や経営開始資金の交付等のほか、今年度から新たに経営発展のための機械、施設等の導入支援を行うこととしており、また、中山間地域等の条件不利地域に対しましては、中山間地域等直接支払交付金等を講ずることによって地域の農業生産の維持を図ることとしています。
 さらに、農地バンクを活用した農地の集積、集約化、スマート農業の導入による技術継承や生産性向上にも取り組むこととしているところです。
 これらの政策、施策によりまして、国内の需要にも輸出にも対応できる国内農業の生産基盤の強化を図り、食料自給率の向上を実現してまいりたいと考えております。

○紙智子君 今やっぱり食料自給率の重要性が問われていると思うんですよね。長引くコロナ危機に加えて、今度のロシアのウクライナの侵略に伴って、食料の多くを輸入に依存している日本というのは海外の影響を受けやすいわけですよね。自国の食料は自国で賄うということを基本にするように求めたいと思います。
 ちょっと一問飛ばします。
 輸出事業への参画を希望する生産者、中小企業が抱える一番の課題というのは、やっぱり海外での情報収集ですとか、売り先の開拓、確保だと思うんです。輸出に取り組もうとする生産者や中小企業は、法改正によってこの農林水産物・食品の輸出促進団体の支援を受けられるということでしょうか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 認定農林水産物・食品輸出促進団体は、日本の強みを発揮できる品目の輸出を伸ばすため、主要な輸出品目ごとに業界一体となってオールジャパンで輸出拡大に取り組む団体です。このため、生産から販売に至るまでの幅広い一連の関係者が構成員として加入する等により、緊密な連携体制を構築しまして活動を行うことといたしております。
 オールジャパンで輸出拡大に取り組むためには、広く門戸を開き、希望する関係者に幅広く加入いただくことが適切です。加入要件や会費は各団体において定めるものでありますが、生産者や製造者が認定輸出促進団体へ加入を希望するにもかかわらず加入できないといった事態が発生しないように本認定制度を運用してまいる所存であります。

○紙智子君 加入しないと受けられないわけじゃないですよね。幅広く認めるんですよね。

○政府参考人(農林水産省輸出・国際局長 渡邉洋一君) お答えをいたします。
 認定輸出促進団体でございますけれども、必ずしも加入をしないからといって、そのオールジャパンでの例えばブランディングですとか販売のプロモーションですとか、そういったものの便益が受けられないというわけではございません。

○紙智子君 確認しました。
 認定団体からのサポートが受けられるということになると、これは課題は解消される方向に向かっていくんだというふうに思います。
 日本のお茶の問題ですけど、この輸出がこの十年間で輸出量二倍を超えていると。二〇二一年には輸出量、輸出金額とともに過去最高となっています。
 静岡県にあります日本茶の輸出組合の副理事長さんからお話をお聞きしました。抹茶やお茶の粉末というのは、今アメリカを中心にコーヒーチェーン店などで取引されているそうです。日本茶は、今や嗜好品ということではなくて機能性食品に位置付けられていて、大量生産、大量消費の時代になってきているというふうに言うんですね。
 そこで、輸出ではなくて、国内の消費量はどのように推移しているのか、お聞きします。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) 国内の消費量ですけれども、直近十年間の傾向を見ますと、ペットボトル等の緑茶飲料は三割以上増加しておりますけれども、急須で入れるようなリーフ茶の需要は約二割減少しております。
 緑茶の国内の消費量全体といたしましては、平成二十三年八万五千百六トン、平成三年七万五千百十五トンと、約一割減少しております。あっ、済みません、令和三年でございまして、令和三年七万五千百十五トン、約一割減少しておりますが、実は、令和二年、お茶の生産量は、新型コロナウイルスの蔓延がございまして、一五%生産量減りました。令和三年は生産量が一二%持ち直していると、その傾向もちょっと若干入っているかと思います。

○紙智子君 減少してきていると。日本茶の輸出が伸びる一方で、国内での消費が減っているわけです。
 昔から国内の消費者に向けてお茶の生産に取り組んできた生産者の離農が相次いでいます。農林業センサスを見ても、日本茶の販売農家戸数は二〇〇〇年のときは五万三千幾らか、何戸かあったんですけど、二〇二〇年までのこの二十年間でいうと、五万以上あったやつが二万数千ということですよね、あっ、一万ですね。だから、非常に減少してきていると。国内での日本茶の消費の減少とともに生産者の離農も進んで、中山間地の茶畑が耕作放棄地になったりもしていると。お話を伺った副理事長さんは、国内での消費拡大とともに、日本茶に触れる機会の創出や日本茶を楽しむ文化を国としても支援してほしいというふうに要望されています。
 そこで、最後に、金子大臣、この国内での日本茶の振興や日本茶を楽しむ文化を普及するための支援策を求めたいと思います。いかがでしょうか。

○委員長(長谷川岳君) 時間が来ております。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 茶の輸出量が十年間で約四倍と増加している一方で、国内においては急須で入れるリーフ茶の需要の減少等により需要が長期的に減少傾向にあることから、これを反転攻勢すべく、若者世代を中心に新たな需要を掘り起こしていくことが重要と考えています。
 このため、農林水産省においては、茶業界と一体となって日本茶と暮らそうプロジェクトを実施しており、若者を含む様々な消費者に向け、SNSを通じたお茶の入れ方の紹介や新茶イベントの情報発信などを通じてお茶の文化と魅力を再認識してもらい、消費拡大につなげる取組を強化しています。加えて、産地が主体となって実施する新たなお茶の飲み方などに対応した新商品の開発に係る市場調査や、需要が拡大している粉末茶等の加工機械の導入、観光業者との連携による体験ツアーの開発といった消費拡大の取組に対しても支援を行っているところであります。
 今後とも、お茶の需要拡大とともに、新たな需要に対応した生産を行う茶産地の育成にしっかりと取り組んでまいります。

○紙智子君 終わります。

              (略)

○委員長(長谷川岳君) この際、委員長から申し上げます。
 本日、小沼巧君の質疑中、条文の誤りについて答弁及び大臣からの謝罪がありました。
 委員会の運営は、筆頭理事間の信頼関係、政府と各会派との信頼関係の上で成り立っていることを踏まえ、今後このようなことがないよう、また、不都合な誤りが判明した際には速やかに委員会に報告するなど誠実な対応を取るよう、農林水産省に厳しく申し上げます。
 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(長谷川岳君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、田名部君から発言を求められておりますので、これを許します。田名部匡代君。

○田名部匡代君 私は、ただいま可決されました農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲民主・社民、公明党、国民民主党・新緑風会及び日本維新の会の各派並びに各派に属しない議員須藤元気さんの共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  我が国の食市場は、人口減少や高齢化を背景に今後縮小する一方で、世界の食市場の拡大が見込まれている。最近においては、新型コロナウイルス感染症、気候変動等による世界の食料供給への影響が懸念されており、食料安全保障の確保が求められる情勢となっている。こうした中で、農林水産物・食品の輸出の拡大は、我が国農林水産業の生産基盤を維持・強化し、持続的な食料システムを構築するとともに、農山漁村の活性化を図るためにも重要である。これまでの産地、関係団体及び国一丸となった取組により、令和三年の輸出額は、一兆円に達したところであり、一層、積極的な取組が必要である。
  また、輸出先国政府による食品安全、動植物検疫上の規制が輸出拡大の障害となる事例があることに加え、一部の国・地域が東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う輸入規制措置を依然として実施しているなど乗り越えるべき課題も残されている。
  よって政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。

 一 農林水産物・食品の輸出の促進に取り組むに当たり、農林漁業者を始めとする関係事業者及び農村地域関連の所得向上が図られることが重要であり、これまでの輸出促進に係る諸施策の効果を検証し、効果的かつ効率的な施策を講ずること。その際、効果を正確に把握するための手法を速やかに検討すること。
 二 農林水産物・食品の輸出をオールジャパンで推進していくため、農林水産物・食品輸出促進団体の運営基盤の強化に向けた支援を行うとともに、団体の適正な業務運営を確保すること。
 三 HACCPの導入等の施設整備や海外現地法人の設立といった輸出拡大に取り組む事業者や新たに輸出に取り組む事業者に対し、輸出事業計画の認定を通じて、補助、融資、税制面できめ細かな支援措置を実施すること。
 四 高鮮度で付加価値の高い輸出物流の構築や輸出に係るコストの低減のため、輸出産地との密接な連携が可能となる地域の空港や港湾の活用を促進すること。
 五 農林水産物・食品の輸出に必要な輸出証明書の申請及び発行その他の手続並びに相談についてのワンストップサービスの充実を更に進め、輸出に取り組む事業者の負担軽減に取り組むこと。
 六 輸出支援プラットフォームについては、在外公館や日本貿易振興機構海外事務所等の構成者間の連携を強化するとともに、現地事情に精通した人材をローカルスタッフとして活用し、農林水産物・食品の輸出に取り組む関係事業者と、その輸出産品及び輸出先国・地域に適した地域商社・海外バイヤー等との効果的なマッチングの実現に努めること。
 七 原発事故に伴う輸入規制措置については、政府間交渉に必要な情報及び科学データの収集、分析等を十分に行い、諸外国・地域に正確な情報を提供し、あらゆる機会を捉えて輸入規制措置の撤廃を強く要請すること。また、動植物検疫に関し、輸出解禁に向けた協議を推進すること。
 八 日本産農林水産物・食品のブランド力を維持・向上し、競争力を強化するため、GAP認証等、世界の食市場において通用する認証の取得を更に支援するとともに、JAS等の我が国発の規格の国際標準化に向けた取組を推進すること。また、地理的表示の相互保護を行う国・地域の拡大に向けた取組を推進すること。
   また、ブランド力の源泉である植物優良品種について、その海外流出防止を図るため、種苗法に基づく登録品種の海外持出制限等の制度を厳格に運用し、海外での品種登録等の取組を支援すること。
 九 酒類を含む国産有機食品の海外での販路の拡大に向けて、有機食品の生産者及び製造者の認証取得の負担を軽減するため、同等性の承認を得る国・地域の拡大に向けた交渉を推進すること。
 十 現下の国際情勢を受けた原材料価格の高騰など、原材料の調達に不安定さが増している現況に鑑み、加工食品の原材料の国産利用を推進するとともに、国産原材料を使用した加工食品の消費拡大を図ること。

   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(長谷川岳君) ただいま田名部君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(長谷川岳君) 全会一致と認めます。よって、田名部君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。