<第201回国会 本会議 2020年6月12日>


◇令和二年度一般会計補正予算(第2号)、令和二年度特別会計補正予算(特第2号)、令和二年度政府関係機関補正予算(機第2号)に対する反対討論

○令和二年度一般会計補正予算(第2号)
 令和二年度特別会計補正予算(特第2号)
 令和二年度政府関係機関補正予算(機第2号)

○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 会派を代表し、第二次補正予算案に反対の討論を行います。
 討論に先立ち、新型コロナウイルス感染症によってお亡くなりになられた方々への心からの哀悼を表しますとともに、入院、治療されている皆様にお見舞い申し上げます。
 そして、医療や介護の現場で懸命に命を救うために奮闘されている医療関係の皆様に心から敬意を表します。
 補正予算には、国民の世論と野党の論戦に押されて、雇用調整助成金の上限引上げや家賃支援給付金、学生支援給付金の創設などが盛り込まれており、不十分さや問題点はあるものの、賛成できるものです。
 私たちが補正予算に反対する理由は、予算の三分の一を占める十兆円もの予備費が計上されているという一点からです。
 日本国憲法八十三条は、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」と定めています。国が財政活動を行う場合には、国民の代表である国会の審議と議決が必要であり、政府に白紙委任してはならないというのが憲法が定める財政民主主義の大原則です。
 政府は、野党からの指摘を受け、十兆円のうち五兆円について大まかな内訳を示しましたが、予備費であることに変わりはありません。残る五兆円は具体的な使途を決めずに計上し、政府に白紙委任することを求めています。これでは憲法が定める財政民主主義の大原則に反し、国会の監視機能の否定につながります。このような前例をつくることは、将来に重大な禍根を残すことになります。
 政府が五兆円の使途の大枠を示したこと自体、政府・与党も二次補正で足りない部分があることを認めたことになり、予算を修正して提案し、国会で議決すべきです。残る五兆円を削減し、速やかに第三次補正予算を編成し、国会に提出することこそ財政の民主主義です。
 しかも、重大なのは、この巨額の予備費が安倍政権が通常国会を延長せず臨時国会も開かないことを可能にしている点です。国会を止めるな、この声に今応えることが政治に求められている責任ではありませんか。
 新型コロナウイルス感染症に必要な対策、急ぐべき課題は山積しています。緊急事態宣言は解除されましたが、経済社会活動の再開は、感染抑止をしながら段階的に進めていかなければなりません。自粛と一体の補償を、の立場で、大打撃を受けている暮らしと営業を支えることも急務です。
 一つは、医療、検査体制を強化することです。
 我が党は、PCR検査について三つの提案をしています。一、感染が疑われ、ごく軽症を含む有症者と全ての濃厚接触者を速やかに検査する、二、医療・介護・福祉従事者と入院患者、入所者への検査を積極的に行う、三、感染の広がりを把握する抗体検査を広く行うというものです。
 安倍総理は、相変わらず検査は医師が必要と判断した方や濃厚接触者の方、医療従事者や入院患者等に対して感染が疑われる方だと答え、医療や介護・福祉従事者全てを検査するとは言いません。PCR検査体制の整備の予算は三百六十六億円だけで、余りにも少な過ぎます。
 また、コロナ対策に協力した病院ほど経営が大変になっています。コロナ対応の医療機関への一兆二千億円の財政支援が速やかに現場に届くようにすべきです。しかし、それ以外の医療機関に対しては、融資の拡大や診療報酬の一部概算前払だけです。医療機関の減収への補償を行うべきです。
 二つ目に、雇用と暮らしとなりわいの再建です。
 世論と野党の求めに応えて雇用調整助成金の上限額を引き上げました。相談件数は四十六万件を超えているのに、申請書提出は十日時点で約十四万件、支給決定は僅か八万千二百八十五件です。四月段階で約六百万人の休業者、時短休業者を加えると一千万人を超えています。それなのに、助成金が実際に支給されたのは、厚生労働省の推計でいまだ百三十三万人にとどまっています。申請手続実務の煩雑さに原因があります。
 我が党は、速やかに処理できるドイツの制度に学んで、まず給付し、審査は事後チェックに切り替えるべきだと提案しています。前例にとらわれず、雇用を守るスピード感ある決断を求めます。
 持続化給付金の支給の遅れを直ちに改善することです。五月一日、オンラインで申請したけど届かないと悲鳴が上がっています。申請を簡易にし、窓口での相談体制を強化し、一回限りにせず、新しい自粛要請と一体で持続化給付金を持続化することです。
 こうした対応が急がれているときに、持続化給付金への重大な疑惑が浮かび上がりました。一般社団法人サービスデザイン推進協議会への丸投げと広告大手の電通への再委託問題、さらにはゴー・ツー・キャンペーン事業の事務委託費問題などです。予算の使い方で国民の不信を招くことは許されません。なぜこのような仕組みにしたのか国会と国民に直ちに明らかにするべきではありませんか。
 農林漁業の対策も急がれています。国内生産は、学校給食、外食産業、旅行客の減少で国内消費が落ち込み、輸出が止まり、生産過剰になっています。特に、生産者、食材納入業者は、学校の休校に伴う給食の食材のキャンセルによる損失が発生し、政府が力を入れてきた和牛、花卉、水産物の価格が下落し、困難に直面しています。それなのに、TPPなどで関税を引き下げたため、牛肉の輸入が増えているのです。おかしくありませんか。
 安倍政権が進めた効率化、規模拡大や輸出頼み、インバウンド頼みのもろさが明らかになりました。需要喚起、販売促進は必要ですが、生産者の所得減少に対し再生産できる支援が必要です。米国では、打撃を受けた農家に約一兆七千二百四十億円を直接給付し、約三千億円規模の予算で過剰農産物を買い上げるなど、手厚い支援策を打ち出しています。外国のいいところを学ぶというなら、こういうことを学ぶべきです。
 子供たちの学び、心身のケア、安全を保障するために、感染防止と一人一人と丁寧に向き合える二十人学級など少人数学級を実現すべきです。そのためにも教員を十万人増やして教育条件の抜本的整備、感染症防止のためにも学校の教職員やスタッフを思い切って増やすべきです。
 文化、芸術、スポーツ、イベントの支援も拡充すべきです。我が党は、文化芸術復興基金の創設を提案しました。政府は五百億円規模の支援を決めましたが、自粛の損失は六千九百億円を上回っていると推計されています。安倍総理は、人の心を癒やし、勇気付ける文化や芸術の力は必要です、その灯は絶対に絶やしてはならないと言われましたが、そうであれば、そのために数千億円規模の拠出と基金の創設を求めます。
 新型コロナウイルス感染症は、グローバル化に乗って世界に広がり、命の格差、経済の格差など社会のひずみをあぶり出し、経済や社会の在り方を考える大きな転機になりました。グローバル化がもたらした問題は、持続可能な社会へ国際的な連帯の力で乗り越えていく必要があります。
 経済優先でなく、国民の命、安全を第一にする社会をつくるために力を尽くす決意を申し上げ、討論といたします。(拍手)

──────(略)──────

○議長(山東昭子君) これにて討論は終局いたしました。

○議長(山東昭子君) これより三案を一括して採決いたします。
 三案に賛成の皆さんの起立を求めます。

   〔賛成者起立〕

○議長(山東昭子君) 過半数と認めます。
 よって、三案は可決されました。(拍手)