<第200回国会 本会議 2019年11月20日>


◇桜を見る会について/日米貿易協定案 参議院では、作為的ごまかしをすることなく資料や影響試算を提出した上での徹底審議を強く求めた/農業を犠牲にして、自動車の関税撤廃は先送り。トランプ米大統領の言いなりに、日本側が一方的に譲歩したのではないかと指摘/金融、保険、為替を始め米国はあらゆる分野で日本への譲歩を迫る要求を突き付けており、安倍総理が応じないとしたFTA交渉そのものではないかと批判/日本の経済主権をアメリカに売り渡す日米FTA交渉は、やめるように強く求めた

○日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定の締結について承認を求めるの件及びデジタル貿易に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件(趣旨説明)

○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 会派を代表し、日米貿易協定について、安倍総理に質問いたします。
 本協定の前に、本院予算委員会における田村智子議員の質疑を契機に浮上した桜を見る会をめぐる疑惑について、安倍総理にお聞きします。
 皆さんとともに政権を奪還してから七回目の桜を見る会となりました、これは今年の桜を見る会での安倍総理の挨拶です。
 本日の衆議院内閣委員会における我が党の宮本徹議員の質問に対し、菅官房長官が推薦枠として、自民党関係で六千人、総理枠で一千人、副総理、官房長官などで一千人という驚くべき数字を答弁しました。
 公的行事であり税金を使って行われる桜を見る会は、安倍総理にとって、自民党の選挙勝利への功労者である後援会や支援者の皆さんをもてなすための行事と化していたのではありませんか。
 総理は、八日の予算委員会で、招待者の取りまとめ等については関与していないと答弁されました。しかし、その僅か五日後の十三日には菅官房長官が、続く十五日には総理自身が、総理推薦による招待の仕組みがあることを認めました。総理、あなたは予算委員会で虚偽答弁を行ったのですか。
 既に、山口県下関市の安倍晋三事務所が、桜を見る会の案内文書を出し、参加者を募っていたことは明らかです。では、どのように総理推薦の招待者を取りまとめたのですか。申込書はコピー可能で、功績、功労など関係なく、申込みさえすれば誰でも招待できたのではありませんか。一体どれだけの人を招待したのか、過去七年間について、それぞれ人数を明らかにしてください。
 自らの選挙区の有権者を多数招待し、無料でアルコール類や食事を提供し、お土産を配る、これは公職選挙法が禁ずる買収、供応、有権者への寄附行為に当たるのではありませんか。
 桜を見る会前夜祭についてお聞きします。
 前夜祭について、会費五千円が安過ぎるのではとの指摘に、総理は、出席者の大多数がホテル宿泊者という事情を踏まえ、ホテル側が設定したと説明されました。つまりは、通常五千円ではあり得ない宴会であったという認識なのでしょうか。
 また、会費は参加者がホテルに支払った、安倍事務所は集金しただけだという趣旨の説明を繰り返ししていますが、安倍晋三事務所の文書では、あべ晋三後援会主催、会費制と記されています。この前夜祭は、山口県に届け出ている安倍晋三後援会主催で間違いありませんね。宿泊者以外の参加者もいたのではありませんか。明確にお答えください。
 通常、このような宴会、パーティーを行う場合には、ホテルに見積りを出してもらい、どのような食事や飲物をどの程度準備するかを決めることが必要ですが、このような打合せは安倍晋三後援会が行ったのでしょうか。
 また、当該ホテルの案内パンフには、宴会・催事規約として、ホテルが提示した見積総額を原則三十日前までに支払うことになっていますが、桜を見る会前夜祭では事前の支払はなかったのでしょうか。
 桜を見る会をめぐる疑惑は、本院予算委員会での質疑に端を発し、その後、疑惑は更に深まっています。したがって、総理は、十一月八日の予算委員会での答弁との整合性を含め、予算委員会で説明責任を果たす責務があります。総理自身が予算委員会出席の意思ありと言明すべきです。明確な答弁を求めます。
 日米貿易協定について質問します。
 今回の日米通商交渉は、特異な経過をたどりました。安倍総理、あなたは今年四月、トランプ大統領に、日本は非常に巨額の関税を農産品に課している、その関税を撤廃したいと脅かされ、参議院選挙が終わると、トランプ大統領の再選をお膳立てするかのように農畜産物を差し出しました。トランプ大統領は、カウボーイハットをかぶった農業団体を前に、アメリカの農民の巨大な勝利だと勝利宣言をしました。こんな交渉がかつてあったでしょうか。国内向けには参議院選挙が終わるまで交渉内容を覆い隠し、選挙が終わればトランプ大統領の選挙協力のために日本農業を差し出したということではありませんか。その日米通商交渉の全容を国民の前に明らかにすべきです。答弁を求めます。
 衆議院では、野党が求めた審議の前提となる基礎的な資料の提出を拒んだまま採決を行いました。またもや説明責任が果たされていません。
 外務省作成の協定の説明書において、意図的に重要な文言を削除し配付しました。国会軽視、国民無視そのものではありませんか。
 参議院では、作為的ごまかしをすることなく資料や影響試算を提出した上で、徹底審議することを強く求めます。
 今回の日米貿易交渉は、安倍総理が言うようなウイン・ウインの合意などと言えるものではありません。
 農産物の市場開放規模は、アメリカ側の説明では七十二億ドル、日本円で七千六百億円にもなります。しかも、トウモロコシを日米貿易協定とは別枠で買うといいます。一方で、TPP交渉でアメリカが一旦約束した自動車、自動車部品の関税の撤廃はほごにされました。農業を犠牲にして、自動車の関税撤廃は先送り。トランプ米大統領の言いなりに、日本側が一方的に譲歩したのではありませんか。
 あなたは、今回の合意はTPPを超えないなどと言っていますが、とんでもありません。食料主権も経済主権も犠牲にするTPPを凌駕する内容です。
 第一に、協定文の附属書には、米国は将来の交渉において農産品に関する特恵的な待遇を追求するとあります。TPPは、効力を生ずる日の後、七年を経過する日以降に協議するとなっています。つまり、TPPでは七年たたないと相手国は見直しを提起できないのです。TPP11も協議すると規定しているだけです。本協定案のように、一方の国だけに特恵的な待遇の追求を明記した協定はありますか、お答えください。
 第二に、米国の求めに応じて、米国向けセーフガードを設けています。牛肉について、日本がセーフガードを発動したら発効基準を一層高いものに調整するため協議を開始すると、米国を特別扱いしています。セーフガードは、輸入が急増した際に関税を一時的に引き上げ、輸入の急増を抑える制度ですが、米国との関係ではセーフガードは事実上無力化されるのではありませんか。
 しかも、日米貿易協定は最終合意ではありません。
 日米共同声明で、他の貿易上の制約、サービス貿易や投資に係る障壁、その他の課題について交渉を開始するとしたことは重大です。トランプ大統領は、かなり近い将来、日本との更なる包括的な協定をまとめることになると述べました。在日米商工会議所の会長は、今回は第一段階にすぎないと述べています。金融、保険、為替を始め米国はあらゆる分野で日本への譲歩を迫る要求を突き付けています。安倍総理が応じないと答えたFTA交渉そのものではありませんか。日本の経済主権をアメリカに売り渡す日米FTA交渉は、やめるように強く求めるものです。
 我が党は、農林漁業の再生と経済主権、食料主権を脅かす安倍政権の経済政策を転換するために力を尽くす決意を述べて、質問といたします。(拍手)

   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 紙智子議員にお答えをいたします。
 桜を見る会の目的についてお尋ねがありました。
 桜を見る会は、昭和二十七年以来、内閣総理大臣が、各省庁からの意見等を踏まえ、各界において様々な功績、功労のあった方々などを幅広く招待し、日頃の御労苦を慰労するとともに、親しく懇談する内閣の公的行事として開催しているものです。
 なお、御指摘の私の挨拶については、政権交代後七回目の桜を見る会を迎えたとの事実関係を述べたものです。
 桜を見る会の招待者に関する私の関与等についてお尋ねがありました。
 桜を見る会については、内閣官房及び内閣府が取りまとめを行っているところ、長年の慣行として官邸や与党にも推薦依頼を行っており、これを受け、私の事務所もこれまで推薦を行ってきたところであります。
 そうした中で、私は内閣官房や内閣府が行う招待者の最終的な取りまとめ等には一切関与しておらず、先日の答弁が虚偽だったとの御指摘は当たりません。
 その上で、既に記録が残っていないことから推薦者数は明らかではありませんが、私の事務所においては、後援会の関係者を含め、地域で活躍されているなど桜を見る会への参加にふさわしいと思われる方を始め幅広く参加希望者を募り、推薦を行っていたところです。
 なお、桜を見る会の実際の招待者については、提出された推薦者につき、最終的に内閣官房及び内閣府において取りまとめを行っているところであり、当該プロセスに私は一切関与していないことから、公職選挙法に抵触するのではないかとの御指摘は当たりません。
 桜を見る会の前日に開催された夕食会についてお尋ねがありました。
 まず、夕食会の主催者は御指摘の安倍晋三後援会であり、同夕食会の各種段取りについては、私の事務所の職員が会場であるホテル側と相談を行っております。事務所に確認を行った結果、その過程において、ホテル側から見積書等の発行はなかったとのことであります。
 また、参加者一人当たり五千円という価格については、八百人規模を前提に、その大多数が当該ホテルの宿泊者であるという事情等を踏まえホテル側が設定した価格であり、価格分以上のサービスが提供されたというわけでは決してなく、ホテル側において当該価格設定どおりのサービスが提供されたものと承知しております。
 なお、ホテル側への事前の支払は行っておらず、ホテル側との合意に基づき、夕食会場入口の受付において安倍事務所の職員が一人五千円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受付終了後に集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で参加者からホテル側への支払がなされたものと承知しております。
 桜を見る会等に関する私の説明責任についてお尋ねがありました。
 予算委員会を始め国会の運営については、国会において決定されるものと認識しております。私としては、国会より出席を求められれば、誠実に対応してまいりたいと考えております。
 日米貿易協定の結果についてお尋ねがありました。
 今回の交渉結果についての米国側の評価について日本政府として述べる立場にはなく、また、トランプ大統領の一つ一つの発言について論評することは差し控えます。
 我が国について申し上げれば、今回の協定により、幅広い工業品について、米国の関税削減、撤廃が実現します。また、日本の自動車、自動車部品に対して、米国通商拡大法二三二条に基づく追加関税は課されないことを直接トランプ大統領から確認しました。
 農林水産物については、過去の経済連携協定で約束したものが最大限であるとした昨年九月の共同声明に沿った結論が得られました。とりわけ我が国にとって大切な米について、関税削減の対象から完全に除外いたしました。さらには、米国への牛肉輸出に係る低関税枠が大きく拡大するなど、新しいチャンスも生まれています。
 そして、こうした交渉結果については、我が国の自動車工業会から、自動車分野における日米間の自由で公正な貿易環境が維持強化されるものであるとの評価が既に発表されており、また、JA全中からも、中家会長の談話として、合意内容は昨年九月の日米共同声明の内容を踏まえた結論と受け止め、特に、米については米国への関税割当て枠の設置が見送られることとなり、生産現場は安心できるものと考えているとの評価が発表されたものと承知しています。我が国にとってまさに国益にかなう結果が得られたと考えています。
 日米貿易協定に関する説明責任についてお尋ねがありました。
 TPP、日EU・EPAの国会審議の際と同様に、日米貿易協定の審議に際しても、政府としては、協定や交換公文のテキスト全文に加えて、同協定の作成の経緯や内容のほか、関連する交換公文の要点を記載した説明書を配付すると同時に、これらに対する様々な御指摘には、国会審議などを通じて説明努力を重ねてきたものと承知しております。
 いずれにせよ、政府としては、参議院での審議においても引き続き丁寧な説明に努めてまいります。
 日米貿易協定の評価についてお尋ねがありました。
 日本の農林水産品については、全て過去の経済連携協定の範囲内であり、これまでの貿易交渉でも常に焦点となってきた米は、調製品も含めて完全除外、また、林産品、水産品、さらにはTPPワイド関税割当て対象の三十三品目など、全く譲許していません。また、トウモロコシ購入については、米国と約束や合意をしたとの事実はありません。
 自動車、自動車部品については、今回の協定では、単なる交渉の継続ではなく、更なる交渉による関税撤廃を明記いたしました。その上で、先ほどの繰り返しになりますが、こうした交渉結果については、我が国の自動車工業会から、自動車分野における日米間の自由で公正な貿易環境が維持強化されるものであるとの評価が既に発表されており、繰り返しになりますが、JAからも、中家会長の談話として、合意内容は昨年九月の日米共同声明の内容を踏まえた結論と受け止め、特に、米については米国への関税割当て枠の設置が見送られることとなり、生産現場は安心できるものと考えているとの評価が発表されたものと承知をしております。一方的な譲歩であるとの御指摘は当たりません。我が国にとってまさに国益にかなう結果が得られたものと考えています。
 日米貿易協定の附属書における農産品に関する記述についてお尋ねがありました。
 我が国がこれまでに署名、締結した経済連携協定の中には御指摘のような記述はないものと承知しています。他方で、関係国が合意した上で再協議に関する規定を置くことは何ら新しいものではなく、TPPなどの協定において一般的に行われているところです。
 その上で申し上げれば、今回の記述は特恵的な待遇を追求するという意図が米国の側にあるということを単に記載したにすぎず、一般的な再協議規定とも異なるものです。
 牛肉のセーフガードについてお尋ねがありました。
 今回の協定においては、昨年度の、セーフガードの発動基準数量を昨年度の米国からの牛肉輸入実績より一万トン以上低く設定したところであり、我が国としてセーフガードとしての効果が十分に発揮できる内容のものとなっていると考えております。
 その上で、セーフガードが一度発動された場合には米国と協議を開始することとなっておりますが、その場合も、国内の畜産業者の視点に立って、その効果が引き続き確保されるよう協議をすることは当然であり、我が国として国益に反するような合意を行うつもりはありません。
 日米間の今後の交渉についてお尋ねがありました。
 本協定に係る米国側の評価について、日本政府として述べる立場にはなく、トランプ大統領や米側の民間団体一つ一つの発言について論評することは控えます。
 その上で、今回の共同声明においては、サービス貿易や投資等が例示されておりますが、今後どの分野を交渉するのかについては、その対象をまず協議することとしております。そのため、今後の交渉内容について、協定を結ぶか否かも含め、現時点において予断を持って申し上げることは差し控えます。
 いずれにせよ、我が国として、我が国の国益に反するような合意を行う考えはありません。(拍手)