<第199回国会 農林水産委員会 2019年5月9日>


◇北海道胆振東部地震の被害に対し、自治体への財政支援策の検討を求めた/義援金への課税の取り扱いについて/日米首脳会談における日米貿易交渉に関するトランプ大統領の発言について、吉川大臣の認識を問う/TPP水準を基に交渉を進めることに抗議し、政府に一任するような交渉はやめるよう強く求めた

○農林水産に関する調査

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。

 五月連休に北海道胆振東部地震の被災地でありますむかわ町、安平町、厚真町を訪ねました。
 むかわ町農協では、昨年の地震直後に大きな被害を受けて倒壊した建物も片付けたり建て替えが進んで、商店街も仮設の店舗で再開するなど、少しずつ震災前の生活を取り戻しつつあります。
 ちょうど私が行ったときはレタスの収穫の時期で、毎朝四時半から収穫したレタスをトラックに満載して出荷貯蔵施設にどんどん運び込んでいました。それは、十連休で市場が休みだと、そのために一部以外は出荷できないということで保管しなくちゃいけないと。ところが、保管すると鮮度が下がるので、それによって一箱千五百円が千二百円に価格が下がるので困るということを言われました。いや、何とかならないかなというふうに思ったんですけれども、やっぱり生鮮野菜を作っている農家の人の気持ちが伝わってきました。
 さて、この震災で破損した米麦、大豆の乾燥調製施設を国と農協の支援で応急措置で再開できたと、これには感謝していました。しかし、そう感謝はしているんだけれども、強い農業づくり交付金で、国が二分の一と、町と農協を合わせると二分の一の負担ということなんですけど、この二分の一の負担というのが、金額というのは約九億円になるということなんですね、九億です。
 これは、小さな財政力がそれほどないところにとってみてはこれは大変なことだなと。九億といったら大変だなというふうに思ったんですね。やっぱり、この後も総務省とも連携しながら、農水省としても何らかの後押しが検討できないものだろうかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君)

 この北海道胆振東部地震におきましては、御指摘の穀類乾燥調製貯蔵施設を含む多くの共同利用施設等で被害がございました。
 農林水産省におきましては、関連対策の中で、被災を機に機能を強化することも可能な被災施設整備向けの強い農業づくり交付金等を処置をいたしました。事業要望のありました施設等については、本年三月に交付決定も行ったところでございます。
 また、これらの支援策に地方自治体が上乗せ支援を行う場合は熊本地震や昨年の七月豪雨対策と同様に地方財政措置も講じておりまして、北海道及び関係市町村に対して情報共有を行っているところでもございます。
 これらの支援策を活用いたしまして、今被災施設におきましては再建に向けた取組を進めていると承知をいたしておりまして、紙先生の御指摘をいただいた穀類乾燥調製貯蔵施設につきましても、本年三月二十日に入札を終えて今年度中の完了を目指して工事を進めていると承知もいたしております。
 引き続き、被災した施設の再建、復旧が一日も早く行われますように、現場の状況もよくフォローしながら、関係省庁とも連携をしながら丁寧に対応してまいりたいと存じます。

○紙智子君 是非、総務省とも連携しながら、何とか上乗せできるようにしていただきたいと思います。
 それから、これは紹介なんですけれども、安平町の酪農家を訪ねたんですね。震災で約五百頭いる乳牛や育成牛のうち七十頭が乳房炎にかかったと言っていました。搾乳はしたんだけれども、当時は乳業工場が閉鎖していたので、五日間、大量にこの生乳を廃棄したと。五棟の、五棟というのは棟ですね、の育成牛舎が被災して、うち取り壊した二棟を新しく立て直そうと思ったわけなんですね。自己負担分で二分の一ということで、この分については融資を受けようとしたんだけれども、名義になっていたのが九十歳の父親だったということで、もう年齢が高齢なものだから銀行としては融資はできないということになったそうなんです。取壊しは自力でやったということなんですけれども、国の支援もあったんだけれども結局使えなかったんだという話をしていて、それでも何とか頑張って営農を続けていこうということで努力をしていました。
 農水省として支援策をいろいろ出しているんですけれども、やっぱり大事なことは、現場でそれがどういうふうに助けになったのかということだと思うんですね。今もやっぱり悪戦苦闘しながら頑張っている被災者に、是非引き続き励みになるメッセージを送っていただきたいというふうに思います。これはちょっと答弁は要りません。
 それで、もう一つ、厚真町にも行ったんですけど、幌内地域って、みんながテレビで上空から映した山地崩壊の様子というのは本当に衝撃的な映像だったと思うわけですけれども、この地域の幌内川の上流で、結局崩れて川がせき止められて自然にダム湖ができてしまったと。これはほっておくと下流域の安全対策にも危ないということで、そのための土砂ダムを造る工事をすることになって、一番奥まっているところの土地の稲作農家のYさんの農地を埋立ての土砂置場に提供することになったそうなんですね。
 このYさんは、地震で実は奥さんと子供さんと親を一遍にもう下敷きになって亡くしてしまって、一旦本当に絶望のふちに立たされていたわけなんですけど、今は立ち上がって、みなし仮設の住居を借りて、そこから自分の土地に通って耕作をしようとしているんです。自分の土地が四分の三が置場になっていると。その補償はされるのでその分はいいんですけれども、四分の残った一で水田を元に戻して頑張っていきたいということで、ただ、やっぱり自分は農業者だから、だから、行く行くは元のとおりに直して、それをやっぱり生きがいにして頑張っていきたいんだという話がされていました。
 それで、土砂を置いているところというのは、今年も来年も使えないんですね。工事が終わるまで使えないわけなんですけれども、その間、本人がやっぱり希望をしたら、その代替でもって相談に乗って確保できるようにしていただきたいというふうに思うんですけれども、農水大臣、一言ちょっと温かい声をお願いしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 今御指摘をいただきましたこの厚真町では、北海道胆振東部地震による土砂崩れにより河川がせき止められて発生した淡水湖が埋め立てるため、現在、国土交通省の災害復旧事業を実施しているところと承知をいたしております。
 大量の土砂が必要となることから、農業者の同意を得て、事業主体である道から借地料と営農補償料が支払われる前提で近隣の農地が土砂仮置場として利用されていると聞いているところでございますけれども、同地域において現在のところ代替農地を利用したい等の相談を受けていないと聞いておりますけれども、仮にそのような相談が農業者から農業委員会や農地バンク等に対してあった場合には、丁寧に対応するように指導してまいりたいと思いますし、でき得る限りの支援もしてまいりたいと存じます。

○紙智子君 どうかよろしくお願いします。
 加えてお聞きするんですけど、今日は国税庁の方にも来ていただいたんですけど、一般論として出されているんですが、地震で機械が壊れたり家屋が壊れたりして打撃を受けたと、それで、各地で団体などから義援金とか支援金が集まって、それを再生の助けに使ってほしいということで百万円ぐらいのお金が農家に渡されたと、その場合、これが課税対象になるんだろうかという不安の声が出ているんですね。
 これ、被害を受けて収入の道もなかなか大変だといったときに、支援された金額を再建のために使うということがあっても収入とまではならないんじゃないかと思うと、課税対象にはならないんじゃないかと思うんだけれども、その辺のちょっと考え方について、基本の考え方をちょっと示していただきたいと思います。

○政府参考人(国税庁課税部長 重藤哲郎君) お答え申し上げます。
 まず、災害で被害を受けました個人が受領する災害義援金あるいは支援金等の課税関係につきましては、災害義援金等の内容によって取扱いが変わってまいりますため、一概に申し上げることはなかなか困難でございます。
 ただ、その上で、一般論として申し上げますと、被災者生活再建支援法など支援金等を支給する法令にまず非課税とする旨の規定が置かれている場合、これがございます。
 それから、そうした法令の規定がない場合でありましても、所得税法上、心身又は資産に加えられた損害について支払を受ける相当の見舞金については一定の場合を除いて非課税とするという規定がございます。この一定の場合というのは、事業所得等の必要経費に算入される金額を補填するもの、あるいは休業期間中の収益補償など、その事業所得等の収入金額に代わるものといった場合でございます。
 御質問の北海道胆振東部地震によって被災された個人が受領する災害義援金等につきましては、被災者生活再建支援金でありますとか、あるいは心身又は資産に加えられた損害について支援を受ける相当の見舞金、これに該当する場合が多いと考えられますので、一般的には非課税となるケースが多いと考えております。
 それから、今、非課税とされない場合についても若干申し上げましたが、それらに関しましても、例えば必要経費を補填するためのもの、そういうお金につきましてはその収入に見合う金額が実際には必要経費として計上されるということになりますし、また、収入金額に代わる性質を有するようなものにつきましても、事業遂行上、追加的な費用が生じた場合には、その追加的費用も必要経費として収入金額から差し引くということになりますので、実質的には課税が生じないケースが多いのではないかと考えられるというふうに承知してございます。

○紙智子君 どうもありがとうございました。
 続きまして、日米貿易交渉についてお聞きします。
 通告は内閣官房にしていたんですけれども、ちょっとその前に大臣にお聞きしたいと思うので聞いてください。
 四月十五、十六と、茂木大臣がアメリカを訪米して、ライトハイザー通商代表と交渉したのに続いて、四月二十六日に安倍首相とトランプ大統領との日米首脳会談、さらに五月六日に日米電話首脳会談でも貿易についても話をされています。
 トランプ大統領は、日本が米国の農産物に掛けている多大な関税を除きたい、農業関税の撤廃を要求するというふうに言ったんですね。これは、共同声明に沿ってTPP水準が最大限だと、米側もその立場を認めているというふうに、安倍総理の説明と照らしても食い違っているんじゃないかと思うんですけれども、これ、大臣、どのように思いますか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 私は、今までも再三再四申し上げておりますように、この日米貿易協定、物品貿易協定交渉につきましては、昨年九月の日米共同声明におきまして、農林水産品については過去の経済連携協定で約束した内容が最大限との日本の立場が日米首脳間で文書で確認をされております。これ以上重たいものはないと認識をいたしておりまして、この経済連携ごとに個別の品目の合意内容につきましては異なるものもございまするけれども、農林水産品につきましては全体として最も水準が高いものはTPPであると理解をいたしておりますので、このような形でこれからも私は主張をしてまいりたいと存じます。

○紙智子君 文書で確認されていると言っているにもかかわらず、トランプ大統領がこういう発言しているわけで、もう全然これ問題だなと思いますし、極め付けに、五月の訪問時に署名できるかもしれないという話もさっき紹介ありましたけど、四月の三十日は、パーデュー農務長官は、トランプ大統領が五月下旬に日本に行くときまでに合意することを望んでいるというふうに言われているわけです。ところが、茂木大臣は、日本の、日米首脳会談で合意の期限の話は出なかったんだと、トランプ大統領の発言は、これは言ってみれば期待感なんだというふうに一生懸命火消しをやろうとしているわけですよね。
 昨年の九月に日米の首脳会談があって、日米交渉が今年に入ったらすぐ始まるという話だったんだけどなかなか始まらなくて、三月にもならなくて、四月になって初めて行われて、四月の交渉が始まったと思ったらいきなり五月合意という話が出ていると。じゃ、そこで水面下で何かやっていたんだろうかということで日本中がびっくりしたわけですよね。
 こんな状況にやっぱり応じるわけにいかないんだと思うんですけれども、アメリカが五月の合意を求めてきてもこれ応じないと断言できるでしょうか。

○大臣政務官(内閣府大臣政務官 長尾敬君) アメリカ側の発言、この一つ一つの発言について逐一コメントは差し控えさせていただきたいと思っております。
 また、貿易交渉というのはパッケージ合意でございますので、全体が決まってから、先ほど大臣の答弁にもありましたように、合意になるもので、ある分野だけ例えば先行して合意するというやり方は取らない、これが交渉の基本中の基本であると考えながら今後対応してまいりたいと思っております。
 あと、また、先ほどちょっとほかに何か議論があったんじゃないかという御指摘なんですが、日米物品貿易協定の交渉は、昨年の九月、御承知のとおり、共同声明で書かれた内容に沿って進めることとしておりまして、今回の四月の十五、十六においても、茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で改めて確認をしていると。また、物品貿易に加えてデジタル貿易の交渉を行うことで合意をしておりますが、これ以外については何一つ合意しているものはございません。

○紙智子君 今の話、茂木大臣が記者団に問われていて、パッケージで合意するんだと、アメリカの求める農業分野の先行合意はしないんだということを否定されたわけですけれども、パッケージで合意するという言葉は日米共同声明には書いてないんですよね。だから、パッケージで合意するというアメリカとの約束というのはあるわけですか。

○大臣政務官(内閣府大臣政務官 長尾敬君) 繰り返しの答弁になりますが、あくまでもパッケージで合意するということが交渉の基本中の基本であるので、その考えの下に対応してまいりたいと思っております。

○紙智子君 基本中の基本だけど、別に書いてないわけですよね。
 もし、その合意するという取決めがあるんだったら、それを示す資料を提出いただきたいと思います。
 委員長、お願いします。

○委員長(堂故茂君) 後刻理事会で協議いたします。
○紙智子君 私、三月の予算委員会で、日米貿易交渉が仮にTPP水準でまとまった場合どうなるかということで質問したわけなんですけど、アメリカは、牛肉関税の削減率とテンポ、下げ幅で既にオーストラリアとかTPP加盟国よりも不利になるわけですね。つまり、関税率が初年度でいうと一・七%、二〇三三年段階でいうと三・六%後れを取って不利になると。
 総理は、過去の経済連携協定で約束したものが最大限であるという合意をしたんだと、それが前提だというふうに言っているわけですけれども、この問題は、今回の閣僚会議や首脳会談でどうするかということは議題になったんでしょうか。

○大臣政務官(内閣府大臣政務官 長尾敬君) 御指摘の点ですが、今回の首脳会談等においては議論となっておりません。
 以上です。

○紙智子君 議論になっていないという答弁であるんですけれども、安倍総理は茂木大臣が交渉すると国会で答弁したわけなので、しっかりとそこのところを検証するようにしてほしいと思うんですね。ちょっと国民には分からないわけですよ。
 それで、TPP水準が大前提だという言い方も、これも、本当に何というんだろう、よく分からないなと思うんです。
 吉川大臣が、今週末に新潟で行われるG20の農業大臣会合でパーデュー農務長官と会談するやに聞いています。仮に本当にこれ会う機会があるのであれば、このTPP水準とは、関税削減率とテンポでもTPP水準以上はびた一文譲れませんよというふうにおっしゃるんでしょうか。言うべきだと思うんですけど、どうでしょう。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) G20のこの農業大臣会合の際、パーデュー農務長官との会談を行いたいと考えておりますが、まだ現在日程については調整中でございます。
 仮に会談がセットされますれば、先ほど来申し上げておりますように、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限とのこの日本の立場が日米首脳間で文書で確認をされておりますので、これ以上重たいものはないという認識に立ちまして毅然とした対応をしたいと考えております。

○紙智子君 びた一文譲れないというふうに直接言うべきだと思うんですけど、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) まだ会談もセットされておりませんので、紙先生のお気持ちはよく理解をさせていただきますが、具体的なことにつきましてはこの場では今はまだ差し控えさせていただきたいと存じます。(発言する者あり)

○紙智子君 そうなんですよね、農水大臣なんですから、閣僚の中でただ一人発言できる、その一番大事なところにいるわけですから、是非はっきり言ってほしいというふうに思うんですよ。
 私たちは、TPPそのものが元々やっぱり国民との公約にも国会決議にも反しているものだというふうに、容認できない立場で来たわけですよ。TPP水準が前提だというのであれば、やっぱり一たび、そういうふうに抗議もしたということですから、やっぱり譲れないということをはっきり言うべきだと思いますし、首脳会談、茂木大臣とライトハイザー通商代表の会談に実際何が話し合われているのかというのを全然国民は分からないわけですよ、分からないけれども、一方からは、アメリカが、いや、五月に決着なんだと、関税撤廃という話がどんどん出てくると。そういう中で、国民に対しては政府として情報も出さないで、こういう進め方で果たして納得できるのかというふうに思うんですね。
 交渉は政府に白紙委任しろと、こういうことでは到底納得できるものではないし、やっぱりTPP水準だって日本農業にとっては打撃があるわけですよ。TPP水準を国民は納得していないのに、それなのにあたかも日本政府としてはその水準を国民が受け入れているかのような形で交渉を進めるということにはもう断固として抗議をしたいと思うし、政府に一任をするような交渉はやめるべきだということを強く求めて、質問を終わります。