<第198回国会 農林水産委員会 2019年4月16日>


◇豚コレラ発生防止強化対策を打ち出したが終息に至らず、新たな状態に入ったと認識すべきだと質した/飼養衛生管理基準の徹底という方針が、限界にきているのではないかと指摘/養豚家団体などから出されているワクチンの緊急接種などの要請に対し、迅速な検討をする求めた

○農林水産に関する調査

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 四月十日に十九例目の豚コレラが確認をされました。今日は、豚コレラについてお聞きします。
 昨年の二〇一八年九月九日に岐阜市内の養豚農場において豚コレラが確認されて以来、半年が過ぎました。農林水産省は、今年の一月二十九日にこの岐阜県内で七例目の豚コレラが確認されたことを受けて、二月五日に発生防止強化対策ということで三つ打ち出しました。まず、これについて説明してください。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) 二月五日に打ち出しました豚コレラの対策について御説明をさせていただきます。
 大きく三点から成りまして、一点目といたしましては、岐阜県内の全養豚農場を対象に、養豚指導の経験獣医師等も参画し、国が速やかに現地指導を実施すること、二点目は、現地指導の陣頭指揮や岐阜県、愛知県に対する指導と連絡のため現地に対策本部を設置し、農林水産省の職員が本部員として常駐すること、さらに三点目といたしまして、野生イノシシの防護柵の早期完成、野生イノシシの捕獲活動費の全額一括支援、中国からの直行便のある全空港についての中国語通訳の配置等を行ったところでございます。
 その後、三月二十九日にも追加対策を打ち出しておりまして、現在それらについて実施をしているところでございます。

○紙智子君 三つの発生防止強化対策を打ち出してから二か月たっているわけです。しかし、この豚コレラの発生、封じ込めることができていません。四月九日に岐阜県の恵那市、そして四月十日に愛知県の瀬戸市で発生しました。強化対策を打ち出したのが七例目を受けた二月五日だったわけですけれども、強化対策を打ち出したのに、二か月間で十一も発生しているわけですよね。むしろ発生が増えていると。
 それで、二月五日のこの発生防止強化対策というのは本当に有効な対策というふうに言えるんだろうかというふうに思っているわけですけど、これ、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 発生地域における農場につきましては、飼養衛生管理基準の遵守が最も重要であると私は認識をいたしております。このために、二月五日に打ち出しました対策に即しまして、岐阜県内の全ての養豚場に対して国が主導して現地指導を行うとともに、その後の現地調査で指導事項の一部について改善されていない農場があったことから、再度、全農場を対象に国主導による現地指導を今現在も進めているところでもございます。
 加えて、野生イノシシ対策につきましては、二月五日の対策に基づきまして、防護柵の設置、捕獲活動の強化等を支援する対策も講じてきたところでもございます。こうした中で、野生イノシシを介した豚コレラウイルスの拡散防止対策を強化するために、我が国で初めての取組であります野生イノシシに対する経口ワクチンの散布を二月に決定をいたしまして、三月から開始をしているところでございます。
 岐阜県、愛知県の養豚農家の皆様は、豚コレラを侵入させないために大変な緊張感の中で御苦労をなさっていることと思います。農水省といたしましても、養豚農家の皆様ができるだけ早く安心して経営に集中していただけますように、積極的に関係自治体と連携をいたしておりますし、更に前面に立ってこの豚コレラの蔓延防止に全力を挙げてまいりたいと思います。

○紙智子君 取ってきている対策は本当に有効なんだろうか、何で止まらないんだろうということを思うわけですけど、農林水産省は、飼養衛生管理基準を遵守する、徹底するというふうに言われて今までもいるわけです。確かに、四月二日にアフリカ豚コレラの感染力のあるウイルスが発見されたということから、飼養衛生管理基準を遵守し、防疫対応を緩めてはいけないと、これはそうだと思うんです。しかし、そのアフリカ豚コレラとは違うんだけれども、この岐阜、愛知県で発生している豚コレラを封じ込めることが実際にはできていないということですよね。
 私は、ちょっと国の対応を振り返って見てみても、昨年九月に初動の対応が遅かったんじゃないかというふうにこの前も指摘しましたけれども、そして今年二月五日に農林水産省が現地対策本部を立ち上げて強化策を打ち出したということで、それで、国の対策で何とか、何とかここで終息してほしいというふうにずっと実は思っていました。しかし、現実は終息していない、二か月の間に発生が十一にもなっていると。
 強化対策を打ち出したのに終息していないということは、これ、新たな状態に入ったというふうに認識すべきではないんだろうかというふうに思うんですけど、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 対策を打ち出しました二月五日以降、関連農場を含めて五府県で十二件の豚コレラが発生しているという状況につきましては、紙委員と重大な危機意識を共有していると存じております。
 各県や関係省庁とも連携して対応に当たっているところでございまするけれども、国外の現状について御説明いたしますと、昨年八月、アジアで初めて中国においてアフリカ豚コレラが確認されて以降、アジアにおける発生が拡大している状況にもございます。先般、中国から我が国に持ち込まれました豚肉製品から生きたウイルスが分離をされて、実際に感染力を持ったアフリカ豚コレラウイルスが我が国の水際まで到達をしていたことも明らかになっておりまして、本病の脅威は収まっていないところでもございます。
 国際的な人や物の往来が増加していることから、国際空港ですとか港における水際での検疫を強化をいたしますとともに、アフリカ豚コレラには有効なワクチンが存在しないことから、本病が国内の農場で発生しないためにも、飼養衛生管理基準を徹底することが最も今重要であると考えておりまして、更に国が主導してこの遵守状況というものを確認をしていく必要があるのではないかと考えております。

○紙智子君 今大臣は認識共有しているという話、したんですけど、でも、実際にはその飼養衛生管理基準の遵守を徹底することが大事という範囲でとどまっているんですけど、これまでもずっとそれ言っているんですよ、繰り返し言っているんですよ。ところが、なかなかそれが止まっていないという現状なわけですから、だから、本当に生産者の皆さんにしてみたら、精神的にももう不安でたまらない状況が続いているわけですよね。ウイルスの侵入を防ぐために必死に今努力をしている、それでも防げないと。となってくると、飼養管理基準の遵守を徹底するという方針そのものも限界に来ているんじゃないかというふうに思うんですけれども、これ、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 私は、今も再三申し上げてまいりましたけれども、今までも、この飼養衛生管理基準に関しましては、国が主導をしてこれが徹底して遵守されるようにという指導もしてまいりました。しかしながら、今、県と連携をしながらフォローアップをして、その指導後、この飼養衛生管理基準の遵守がなされたかどうかということについても、指摘をしたことに対してそれがきちっとなされたかどうかということにつきましても、国、県とも連携をしながら徹底して今調査をしているところでもございますので、またしっかりとこの飼養衛生管理基準が浸透していきますように、更なる強化策というものも打ち出していかなければという、そういうことで今実際に進めているところでもございます。

○紙智子君 今、飼養衛生管理基準がどうやられているのかということを調べているという話、あったんですよね。それで、この間、疫学調査チームを送って、それで調べているという話があったんだけど、これはウイルスの侵入経路を解明するということですよね、目的は。
 それで、前回のときの質問も、何で守られていないのかということをどう調べているのかという話も繰り返ししてきているんですけれども、まだ分からないわけですか、何でそうなっているのかというのが。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) お答え申し上げます。
 現在、それぞれの農場につきまして、飼養衛生管理のポイントを指摘をいたしましてフォローアップをしているところでございます。ポイントは幾つかございますけれども、野生動物の侵入が、不十分であるとか、あるいは車両、機材の消毒、あるいは長靴等の更衣ができているかという幾つかの点に着目しておりますけれども、非常にリスクが高いと思われます野生イノシシの陽性の確認地点から、まあ岐阜県ですと十キロ以内というところでございますが、これらについてもまだ飼養衛生管理がフォローアップしても不十分だという農場もあるところでございます。
 このように、それぞれフォローアップしながら改善を徹底していくということが基本でございますけれども、一番重要なことではないかと考えております。

○紙智子君 結局、その牧場というか、その現場がちゃんとやれていないというところに何か責任が行ってしまっている感じなんだけど、違うんじゃないかと思うんですよね。豚コレラが終息せずに広がっていて新たな状態になったということを認識しなきゃいけないんじゃないかと。それで、二月の強化対策では不十分だということをやっぱり認識をして、今後の対策というか、考えなきゃいけないんだと思うんです。
 日本養豚協会、日本養豚開業獣医師協会、ここは農林水産省に対して、地域に限定した豚への緊急ワクチン接種を公式に申し入れたという報道があります。ウイークリー・ピッグエクスプレスという業界紙ですけれども、そこで報道されているんですけれども、ワクチン接種のリスクを踏まえて申入れをしていると。若干紹介しますけれども、愛知県の密集地、田原市に伝播したウイルスは地域内での感染ルートが不明瞭な面的な感染拡大の状況に達している。緊急ワクチンの発動に対しては、これまでずっと慎重な姿勢を続けてきた日本養豚協会ですとか日本養豚開業獣医師会が地域限定の緊急ワクチンやむなしという判断に至っているという。それは、感染地域の生産者に対する単なる同情からではなくて、ここで対応が遅れると、地域内の爆発的な感染や、岐阜、愛知県以外への感染の拡大のリスクが一気に高まるということを懸念しているからだというふうに書いているんですね。
 こういう団体の要請を真剣に受け止めて、迅速に検討すべきではないかと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) ただいま御指摘をいただきました、日本養豚協会、さらには日本養豚開業獣医師協会が地域及び期間限定で豚コレラワクチンを飼養豚に接種してほしいという要望をされていることは承知をいたしておりますが、豚コレラに関する特定家畜伝染病指針におきましては、埋却を含む防疫措置の進捗状況、感染の広がり、周辺農場や数、山や河川といった地理的状況を考慮して、発生農場における迅速な屠殺及び周辺農場の移動制限のみによっては感染拡大の防止が困難と考えられる場合には、蔓延防止のための緊急ワクチンの接種を決定するとしているところでございます。
 これまでの発生事例につきましては、疫学調査チームの報告等によりますれば、飼養衛生管理基準の遵守がなされていたとは言えない部分もあると指摘をされているところでございます。そのため、各県とも連携をしながら、飼養衛生管理基準の遵守及び早期発見と迅速な屠殺によりまして同病の発生予防及び蔓延防止を図っていくことが重要であると考えておりまして、今のところ、このワクチンを接種を直ちに行う状況にあるとは考えてはおりません。

○紙智子君 いや、ちょっとその認識、要望が出されている以上、やっぱり科学者、専門家、そういうことをしっかり検討するべきだというふうに思うんですよ。もしこれ飛び火してほかの県にでも行ったら、それこそもう大臣の首が懸かってしまうというか、そのぐらいの問題ですよ。是非それ検討すべきだと思いますけれども、もう一度お願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) この要望は、今も申し上げましたように、私どもも承知をいたしております。様々な観点から今申し上げましたように検討はいたしておりまして、ワクチンを接種はしないと、今はそういう状況にあるということだけは申し上げましたけれども、これが接種をしないということではございませんので、また、疫学調査チーム等々、専門家の話等々も聞きながら、これは最終的に判断をしていくことだろうと、こう思っております。

○紙智子君 大臣自身が、二月六日の記者会見のときに、飼養衛生管理の徹底によっても豚コレラの蔓延防止ができない場合の最終手段だという話をされています。
 豚コレラは、岐阜、愛知だけの問題じゃないと思うんですよね。各地の養豚農家、業界は、もう早く安心して経営を続けたいというふうに思っているわけです。こういう団体の要請を受け止めて、迅速な検討をしていただけるように求めて、質問を終わります。