<第198回国会 2019年4月9日 農林水産委員会>


◇ポケット農林水産統計の食料自給率図について/台風被害によって北海道の生産が減少し食料自給率の低下したとしていたが、その後も回復しないのはなぜか/輸入自由化が、食料自給率にどのような影響を与えているのか調査するよう求めた/食料自給率目標45%に向けて対策を示すよう求める

○農林水産に関する調査(食料自給率に関する件)(家畜伝染病対策に関する件)(米政策に関する件)(商業捕鯨再開に関する件)(豚コレラをはじめとする家畜伝染病対策に関する決議の件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 ポケット農林統計の自給率について、前回、三十年版のポケット農林統計に載らなかった問題を質問しました。経緯については説明をいただきました。その上に立って、再度お聞きしたいと思います。
 まず、事実関係を確認したいと思います。今日、前回と同じ資料をお配りしました。これは、二〇一七年版ポケット農林統計のカロリーベースと生産額ベースの総合食料自給率図、いわゆる自給率図です。それで、二〇一八年版のポケット農林統計にはこれ掲載されていませんよね。まず確認です。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 光吉一君) お答えいたします。
 ただいまお配りいただきましたこのような図につきましては、二十九年版には掲載されておりますが、三十年版には掲載されておりません。

○紙智子君 掲載されていないということです。
 そうしますと、二〇一八年版ポケット農林統計を使って食料自給率、カロリーベースの食料自給率というのは計算できるでしょうか。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 光吉一君) お答えいたします。
 今お答え申し上げましたとおり、平成三十年版のポケット農林水産統計には、別途その発行の直前に公表いたしました自給率の参考資料の中に該当するような図がなかったものですから、公表済みのデータを収録するという編集方針に基づきまして御指摘の図を掲載していないところでございます。
 この場合には、ポケット農林水産統計には、例えば二十九年度の国産熱量、これが掲載されていないことになりますけれども、そもそもこのポケット農林水産統計は、基本的には職員の執務参考資料とすることを目的として、関心を持っていただく方に利用していただけるようにしているところでございますけれども、その熱量が掲載されてはおりませんけれども、一般に広く閲覧をされております農林水産省のホームページなどにおきまして、今申し上げた数字も含めて、カロリーベースの食料自給率を計算するのに必要なデータを表の形で分かりやすく整理をしているところでございます。

○紙智子君 この載っていない中では、ぱっと見て計算するというのはできないですよね。すぐやろうと思ったらできないですよね、載っていないから、今の状況では。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 光吉一君) 先ほど申し上げたように、そもそも図自身が掲載されておりませんので、その自給率の数字自身もそこには載っておりませんけれども、その中で出てくるやつとホームページで公表している各種の数字の表、これを使えば簡単に計算できるところです。

○紙智子君 いろいろ見て調べればできるかもしれないけど、これ見てすぐやるというのができないんですよ。やろうとしてできないから、こうやって聞いたんですよ。
 それで、食料自給率がどうなっているのかというのは、やはり国民の皆さんが関心が強いテーマなんですね。特に安倍政権になってから、食料自給率五〇%というのは過大だというふうに言って四五%に下げました。自給率図というのは、長らく続いた三九%が上昇に転じているのかを自分でも計算できるし、その全体像を知ることができたわけですよ。だから、二〇一八年版を見たときに、なぜ自給率図が掲載されていないのかというふうに思ったわけですし、厚生労働省の統計に対する信頼が揺らいでいることも重なって、統計が軽視されているんじゃないかというふうに思うわけです。
 それで、農林水産省の説明では、食料自給率目標に対する品目ごとの達成の度合いが分からないという課題があったから、この生産努力目標の達成状況を図にしたんだということを説明受けました。それは別に否定しないんですよ。この図も、でもポケット農林統計には載っていないと。
 つまり、自給率図は載せない、重要だと言ってきたこの生産努力目標の達成状況も載せないと。そうなると、攻めの農政で農林水産物の輸出には熱心なんだけれども、食料自給率は軽視しているんじゃないかというふうに思われるんじゃないですか。これ、大臣いかがですか。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 光吉一君) 先ほども申し上げたとおり、ポケット農林水産統計というのはあくまで職員の執務参考資料とすることを目的としているものです。ですから、これをもって何か新しいデータを明らかにするとか公表するとかいうことを目的としているものではありません。
 その上で、委員御指摘のとおり、ポケット農林水産統計には、そもそも自給率を公表したときに、御指摘のような図、これを公表していなかったものですからポケット農林水産統計には載っていないと、そういう流れでございます。
 それでは、なぜ自給率のところにその図を掲載していないか、参考資料の中に入れていないかというふうに申し上げると、御指摘のような生産努力目標に対する図を掲載し、委員御指摘の図に相当するようなデータにつきましては、別途もっと詳しい形で、表の形で農林水産省のホームページなりマスコミに対して公表資料でお示しをしているということで、資料として重複することからそれを掲載していないと、それだけの意味でございます。

○紙智子君 職員向けだから、そんな言われても困るみたいな言い方しないでほしいんですよね。実際に、そうは言いながら発行されているから使っていたわけで、それが後から、いや、それは実務的なものだからという話があるんだけれども。
 それで、これ結局、来年からは掲載するんですか。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 光吉一君) 自給率の図につきましては、御指摘のような形でお示しすることは分かりやすいという声もお聞きをいたしますので、三十一年版のポケット農林水産統計には掲載することとしたいと考えております。

○紙智子君 これから掲載するということなので、やっぱり食料自給率大事なんだというメッセージにも是非してほしいと思うんですよ。
 そこで、二〇一七年度の食料自給率についてお聞きします。
 三八%というのは、二〇一六年度と同じく、過去二番目に低い水準なんですよね。それで、二〇一六年度の自給率が三八%に下がった理由についてなぜかって聞いていたら、そのときは、台風被害によって北海道の生産が減少したためだというふうに言っていたんですね。ところが、その後、北海道の生産が回復しても、この食料自給率は回復していないんですよ。なぜ回復していないんでしょうか。これ、大臣、お聞きします。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) この件につきましては、我が国の農業を支える農業従事者が長期的にわたりまして減少傾向が続いておりますこと、これは平均年齢が六十六歳を超えるなど高齢化が著しく進んでおりますし、さらには昭和一桁世代のリタイアなども考えられます。今後また大幅な減少が見込まれますし、耕地面積も平成三十年は四百四十二万ヘクタールでございまして、前年に比べて二万四千ヘクタール減少をいたしているところでもございます。
 こういったことが要因になっていると承知もいたしておりまするけれども、今後も、こういったことも踏まえながら、若手の新規農業者ですとかを着実に増やしていくということ等もしっかりと対応してもいかなければならないのかなとも、こうも思っております。

○紙智子君 三八%になった理由として、生産が下がったと、北海道の台風のせいだと言っていたんだけれども、しかし、生産は回復したけれども食料自給率は低い水準のままと。
 それで、やっぱり元々食料自給率の目標を四五%にするというふうに言ったわけだけれども、それがなぜ自給率が上昇に転じないんでしょうか、大臣。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 光吉一君) 食料自給率につきましては、これまでも御質問をいただいておりますけれども、計算を開始した昭和四十年度以降、長期的に低下傾向にございましたが、平成十年頃からほぼ横ばいの形で推移してきているというふうに思います。
 これは、長期的には自給率の高い米の消費が減少をしているということ、それと、飼料や原料を海外に依存しております畜産物や油脂類の消費量が増えている中で、平成十年頃から小麦などの国内生産が堅調に推移してきたこと、これによるものと考えております。

○紙智子君 目標を五〇%から四五%に下げたときに、目標設定が過大だったからというふうに言って、実現可能性を重視したという議論がそのときあったんですよ。しかし、実現可能性を重視したと言っているんだけれども、結局、今みたいに説明されると、上昇に転じていないことの理由が米の消費が減っただとか小麦の話がされるんだけれども、やっぱり食料自給率を上げようと、そこに向けていこうと思ったときに、生産基盤が弱体化をしていると。
 さっきも耕作面積が減ったという話ありましたけれども、結局、そういうその隙間を縫って輸入が増えるんじゃないんでしょうか。野菜の輸入量が最近増えているんだけれども、業務用に使う品目、原材料が輸入にシフトされてくるんじゃないですか。農産物の自由化で輸入が増えることが危惧されているわけだけれども、TPP11も日欧EPAも二年目に入ると、牛肉、果実なども輸入が増える可能性があるわけです。
 食料自給率目標は実現可能性を重視したというのであれば、この自由化が食料自給率にどういう影響を与えているのかというのは、真剣に調査すべきではありませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) ただいまの御指摘でありますけれども、TPP11は昨年十二月三十日、日EU・EPAにおきましては今年二月一日に発効したばかりでございまして、この段階でTPP11や日EU・EPAの食料自給率への影響を評価することは難しいと考えております。
 TPPや日EU・EPAにおきましては、農林水産分野について必要な国境措置を確保するとともに、農林漁業者が安心して再生産に取り組めるように、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして万全の対策を講じることといたしているところでもございます。
 今後とも、協定発効の動向を注視しつつ、意欲ある農林漁業者の方々が安心して再生産できる環境をしっかり確保できますように、政府一体となって必要な施策を講じてまいりたいと存じます。

○紙智子君 実態としては、例えば食料自給率のところをつかさどっている小麦にしても大豆にしても、自給率一桁台なわけじゃないですか。結局、それを本当でいえば国産に置き換えなきゃならないと。輸入品じゃなくて国産に置き換えなきゃいけないのに、逆に国産のところを輸入に置き換えるということに実際上は輸入が増えてくるとなってくるわけですよ。だから、そこのところを本当に真剣に掘り下げてみないと、いつまでたっても、数字は掲げているけれども達成できないということになってしまいかねないと思うんですね。
 政府は、少子化、高齢化の進展で国内需要が伸び悩んでいると。それで、国内消費が伸び悩んでいるから輸出なんだということを言っているわけですけれども、それでも自給率がなかなか上がっていかない、むしろ下がってくる傾向にあると。食料自給率が上がらないのは国民の食生活の変化だということも説明されるわけですけれども、本当にそれだけなのかと。やっぱり輸入を国産に置き換える対策を真剣に検討すべきだというふうに思うんですね。
 来年は食料・農業基本計画の見直しの年でもあるわけです。それで、実現可能性を重視したのに食料自給率が上がらなかったということでは、これは納得得られないと思うんですね。
 大臣、食料自給率、これ四五%に近づけていく姿勢というか、対策をしっかり示してほしいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 今御指摘をいただきましたようなこの食料・農業・農村基本計画に関する議論はもちろんこれからでございまするけれども、この中でのこの食料自給率の目標をどのような水準にするかにつきましては今は言及は差し控えたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、この食料自給率の目標というのは、食料・農業・農村基本法におきましてその向上を図ることを旨として定めることとされておりますので、実現可能性も考慮しつつ、食料・農業・農村政策審議会での議論をお願いをしたいと思っております。これはしっかりと進めていかなければならないと、こう思います。

○紙智子君 今の話では、これから伸びていくのかなというふうには思えないちょっと説明でありまして、政府はこの間、TPPの議論のときもそうですけれども、輸入が増えても自給率変わりませんと説明していて、これ自体がもうすごい疑問に持たれているわけですよ。だから、本当にそこをしっかりと見て分析もして、影響がどうなるのかということをちょっとやり直すべきではないかなというふうに思います。
 安倍政権になってから、輸出輸出ということで、すごく輸出には熱心なんだけれども、食料自給率を上げる対策、生産基盤の弱体化に歯止めを掛けてむしろ強化する対策、ここのところを見えるようにしていただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

○委員長(堂故茂君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
 田名部君から発言を求められておりますので、これを許します。田名部匡代君。

○田名部匡代君 私は、自由民主党・国民の声、立憲民主党・民友会・希望の会、国民民主党・新緑風会、公明党、日本維新の会・希望の党及び日本共産党の各派共同提案による豚コレラをはじめとする家畜伝染病対策に関する決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    豚コレラをはじめとする家畜伝染病対策に関する決議(案)

  平成三十年九月、我が国において二十六年ぶりに豚コレラの患畜が確認され、その後の感染拡大により、発生農場のみならず、疫学関連農場・施設や発生農場のある地域は深刻な被害を受けている。現在、政府は、豚コレラの発生農場等における防疫措置や経営支援対策を講じているところである。しかしながら、近隣諸国では、畜産業に深刻な影響をもたらす家畜伝染病の発生が多数報告されており、特に、中国、モンゴル、ベトナム等では、病原性が強くワクチンや治療法のないアフリカ豚コレラが発生している。こうした情勢を踏まえ、我が国の畜産業の将来を見据え、早急に飼養衛生管理体制や水際対策を強化することが喫緊の課題となっている。
  よって政府は、次の事項の実現に万全を期すべきである。

 一 発生農場については一日も早く経営を再開することができるよう、また、移動制限区域内・搬出制限区域内の農場や監視対象となった農場の経営が維持できるよう、万全の支援を行うこと。
 二 今般の発生及び感染拡大の原因を究明・分析した上で、発生予防対策及び防疫対応の改善を図るとともに、飼養衛生管理体制の強化を行うこと。また、あらゆる手段を行使し、一刻も早い事態の終息に努めること。
 三 豚コレラ等の法定伝染病については、早期の通報と迅速な初動対応の必要性についての認識を関係者間で共有し、法定伝染病が疑われる患畜についての早期通報の徹底を図ること。また、家畜伝染病の検査・分析を担う国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の体制を強化すること。
 四 飼養衛生管理の徹底、交差汚染の防止、野生動物からのウイルスの侵入防止等のために必要となる施設・機器等の導入に係る資金について、金利の優遇等の的確な支援を行うこと。
 五 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会も目前に迫る中、訪日外国人旅行者や邦人海外旅行者等による輸入禁止畜産物の持込み等に対する水際対策の強化が必要であることに鑑み、輸入禁止畜産物の違法な持込みについては、罰則の周知、罰則の厳格な適用、罰金の引上げなど厳罰化の検討を早急に行うこと。また、家畜防疫官の増員や検疫探知犬の増頭を行い、旅行者の携行品、国際郵便物や国際宅配物による輸入禁止畜産物の違法な持込みに対する監視を強化するとともに、各空海港における靴底消毒及び車両消毒を徹底すること。
 六 豚コレラの発生により狩猟が禁止されている地域におけるジビエ関係者、関連産業等への影響を早急に把握し、必要な支援策を講じること。
 七 家畜伝染病について、風評被害防止等の観点から、各空海港における靴底消毒の重要性や人には感染しないことなど国民に対して正確な情報を分かりやすく迅速に伝えること。

   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

○委員長(堂故茂君) ただいまの田名部君提出の決議案の採決を行います。
 本決議案に賛成の方の挙手をお願いします。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(堂故茂君) 全会一致と認めます。よって、本決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。