<第198回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 2019年3月19日>


◇宮腰大臣に対し、北方領土問題ではロシアに毅然とした対応をとるよう求めた/沖縄関係予算 一括交付金を削減し続け、沖縄振興特定事業推進費を新たに創設した趣旨を問う/沖縄振興特定事業推進費は、国の言うことを聞く自治体への優遇になるのではないかと指摘/辺野古新基地建設反対という沖縄県民投票の民意を受け止めるよう求めた

○平成三十一年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成三十一年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成三十一年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について(内閣府所管(内閣本府(沖縄関係経費)、北方対策本部、沖縄総合事務局)及び沖縄振興開発金融公庫)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 宮腰沖縄北方対策担当者、大臣にお聞きをいたします。
 昨年、北方領土問題の解決の促進のための特別措置法、いわゆる北特法の改正を行いました。最近、懸念を持たざるを得ない内容が報じられています。
 二月二十四日の日ロ領土問題に関するラブロフ外相の発言ですけれども、駐日ロシア大使館ウエブサイトにこれ掲載されているメディアに対するインタビューの答弁です。六月、プーチン大統領の訪日時に平和条約の枠組みとなる合意の署名を目指すとしているけれども、実現可能と考えるのかという質問に対して、一切の合意はなく、またあり得ない、枠組み合意案など一切見たことない、日本側が何を意味しているのか私には理解できないというふうに述べているんですね。
 それから、三月十六日の日経新聞ですけれども、プーチン大統領は、日ロ平和条約について、テンポが失われたと述べて、北方領土を日本に引き渡した場合、日米安保条約に基づき、米軍が展開する可能性があることが交渉の障害になっているとの見方を示した。
 これらの報道を大臣は御存じでしょうか、そしてどう思われるでしょうか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)宮腰光寛君) 御指摘の報道につきましては承知をいたしております。メディアを通じたロシア側の発言の一つ一つについてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
 いずれにせよ、政府としては、北方領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針の下、外交交渉に粘り強く取り組んでいく考えでありまして、私も北方担当大臣として、引き続き外交交渉をしっかりと後押しをしていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 昨年の七月、北特法の改正の際に、新たに目的に、共同経済活動の進展を北方領土の解決に向けた諸施策を進める背景事情として明記するという文章を、文言を入れたわけです。
 私は、これ、共同経済活動はまだ日ロ間で合意に至っておらず、署名も終わっていないと、まだ確定していないものを国内法に書き込むべきではないんじゃないかと、これは共同経済活動は法案から切り離すべきだということを主張したんですね。そして、質問の中では、主権を侵さない共同経済活動はできるのかというふうに聞きましたら、法案提出者の渡辺孝一衆議院議員、委員長は、平和条約問題に関する日ロ双方の法的立場を害さない形で行われることを必ず確保するというふうに言って、沖北委員会の決議を引用されたわけです。
 それで、平和条約のテンポが遅れれば、これ北特法の目的がもうすぐにできるような状況にはならないんじゃないんでしょうか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)宮腰光寛君) 昨年の七月、まさにこの部屋で参議院において審議がなされ、質問もあって、この北特法の改正案が附帯決議とともに採決をされたと、全会一致で成立が図られたというふうに思っております。私も、この後ろの席に座ってその瞬間を見届けさせていただきました。
 この第一条に、平成二十八年十二月十六日に我が国とロシア連邦との間で協議の開始が合意された我が国及びロシア連邦により北方地域において共同で行われる経済活動、括弧書きで共同経済活動の進展も踏まえつつということで、第一条の目的条項にその経緯を明記をした上で、第二条に、この定義として、特定共同経済活動は、共同経済活動のうち主として北方領土隣接地域の経済の活性化に資するものとして主務大臣が定める共同経済活動をいうということで定義をしていただきました。
 今回、この交渉において、平和条約問題の解決に向けて日ロが共にこの北方四島の未来像を描き、その中から双方に受入れ可能な解決策を見出していくという未来志向の発想、新しいアプローチの下で、共同経済活動に係るプロジェクトの早期実施に向けて協議が進められているというふうに考えております。具体的な問題については、五つのプロジェクトがお互いに協議をされているわけでありますが、その中で済んでいる部分もあると伺っております。
 本年一月の日ロ首脳会談におきまして、早期実現のために共同作業を着実かつ迅速に進展させるよう事務方に指示することで一致するとともに、二月の外相会談におきましては、共同経済活動の早期実現に向けた具体的な進め方について議論が行われたものというふうに考えております。
 私といたしましては、この共同経済活動の取組が四島交流事業や国内世論の盛り上がりと相まって外交交渉を力強く後押しし、北方領土問題の解決につながっていくものというふうに考えております。

○紙智子君 進んでいるところもあるという話もあるんですけれども、一方では、ロシア側は択捉や国後で、この土地の無償貸与ですとか、それから軍の施設を拡張しているということも指摘されております。北方問題の担当大臣としては、やっぱりこの北方領土は安易に妥協するべきではないわけで、毅然とした態度を貫いていただきたいということをまずお願い申し上げておきたいと思う。
 ちょっと時間がないので、これはここでまた次回というふうにしたいと思います。
 次に、一九年度の沖縄関係予算案についてお聞きします。
 昨年と同額の三千十億円なんですけれども、一括交付金というのは、一八年度当初予算比で九十五億円減ということで一千九十三億円。これ、五年連続の減額になっているんですね。制度が創設された一二年以降の最低額ということです。玉城デニー知事は、沖縄県と市町村が増額を強く求めた一括交付金が一八年度を下回って大幅に減額となったことは残念だというふうに言われています。ソフト交付金を活用して行っている待機児童対策ですとか保育士の確保の対策に現場は大変苦労していて、県としては一九年度末の待機児童ゼロを掲げて努力をしているんですけれども、依然として解消に至っていないと。
 現場では必要とされているのに、なぜこれ一括交付金を減額し続けるのかということについて、一言いかがでしょうか。ちょっと時間を、短く。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)宮腰光寛君) 沖縄予算は、一括交付金だけではなくて、全体として三千十億円確保させていただいているということをまず申し上げておきたいと思います。
 先ほども御答弁で申し上げましたけれども、平成三十年度及び三十一年度は、沖縄県が作成したこれまでの事業計画における実績を踏まえて、継続事業費の見通し及び新規事業費の水準を勘案をし所要額を計上した結果、減額となっているものでありますが、全体として三千十億円という総額については維持ができているものというふうに考えております。

○紙智子君 現場では、これ、何で一括交付金を減らしたのかということについては、国の施策に従わない県政に対する締め付けじゃないのかという受け止めもあるわけですよ。
 それで、直接今は関係するわけじゃないという話だったと思うんですけれども、現場ではなかなかそういうふうに受け止められていないんじゃないかというふうに思います。一括交付金を九十五億円減らした一方で、新規に沖縄振興特定事業推進費、これは三十億円を盛り込んでいるわけですよね。これ、沖縄振興特定事業推進費をつくった趣旨、どこがこの交付の対象となるのかということを簡潔に説明してください。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)宮腰光寛君) 県と比較して相対的に財政規模が小さい市町村においては、多様な地域課題、政策課題への迅速、柔軟な対応がソフト交付金、一括交付金によっては困難なケースもあり得るものというふうに考えておりまして、推進費は、このようなケースに備え、事業を機動的に実施するための財源としてソフト一括交付金を補完し、主に臨機応変な財源捻出が困難な市町村に配分をされるということにしております。

○紙智子君 このお金というのは、一括交付金は県は通すけれども、今度の新しいこの事業推進費というのは県を通さないということになるわけです。
 それで、琉球新報では書かれているんですけれども、急ごしらえの新制度だというふうに報じました。夏の概算要求段階では盛り込まれていなかったと、国から事前に県に対しても何の説明もなかったと、具体化したのは十月以降で、実はこれ知事選が終わった後なんですけど、その結果を見ながらだったんじゃないかと。
 私が内閣府にどうしてそういうふうに急に決まったんだというふうに聞いても、よく分からないと、透明性もないと、何にどう使えばいいのかということも具体的には特に決まっていないと。
 新たに国から直接市町村に交付する仕組みができれば、これは政府の関与が必要以上に強まって、国の言うことを聞く自治体だけを優遇するようなことにならないのかというふうに思うんですけれども、どうですか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)宮腰光寛君) 先ほど申し上げましたとおり、推進費は、県と比較して相対的に財政規模が小さい市町村における多様な地域課題、政策課題に迅速、柔軟に対応する必要がある事業を機動的に実施するための財源として、県を経由しない市町村への直接補助としたものであります。例えば沖縄離島活性化推進事業費補助金あるいは沖縄北部連携促進特別事業費補助金についても、国から市町村に対する直接補助という仕組みになっております。
 現在、この推進費につきましては、市町村からの御意見を踏まえ、採択要件等の詳細を詰めているところであります。基本的には、市町村の要望も極めて強いということでありますので、具体的にこれから採択要件を詰めていくということでありますが、市町村の期待にもしっかりと応えていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 市町村からの要望が強いといいんですけれども、それだったらちゃんと県とも話し合って、双方いろいろ議論し合うというふうにするべきなんだと思うんですよ。
 それで、政府は名護市に対して、以前、稲嶺市長時代には受け取っていなかった米軍再編交付金を、去年二月に辺野古の基地容認の市長に替わったわけですけれども、その途端に一七年分に遡って出しているんですね。これ、沖縄県ではなくて、市町村に交付をすると、直接交付すると。
 それで、沖縄振興特定、今回の事業推進費も米軍再編交付金と同じような性格なんじゃないかと、どこが違うのかと思うんですけど、どうですか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)宮腰光寛君) 防衛省の再編交付金は、駐留軍等の再編の円滑かつ確実な実施に資するために必要と認められる場合に、防衛施設の周辺市町村を対象として交付されるものというふうになっております。一方、沖縄振興特定事業推進費は、ソフト一括交付金を補完し、沖縄の自立的発展に資すると認められる場合に交付されるものでありまして、沖縄の全市町村がその対象となり得る、そういう仕組みであります。
 このように、沖縄振興特定事業推進費と再編交付金は、その性質や対象を異にしていると考えております。

○紙智子君 私は、この米軍再編交付金というのは、極めて、全体が対象ということではなくて、やはりこの推進の立場にしたところに対して出されるものの性格だというように思うんです。
 だから、米軍再編交付金、この言ってみれば内閣府版というようなものが今回のこの沖縄振興特定推進費なんじゃないかというふうに思う、現地も受け止めているということでもあるんですね。
 昨年の六月の参考人質疑のときに沖縄国際大学の前泊教授が、この米軍再編交付金では給食費が無償にできたりあるいは保育料が無償にできたりするのに、どうして一括交付金はそういう使い方できないのかという疑問も呈されていて、この再編交付金というのが防衛予算で再編計画を受け入れた自治体のみに対象としていると、進捗状況に応じて交付金を増やすということになっていて、一九年度でいえば六十八億円を計上したと。
 そういうふうな意図的な方向性を持ったようなやり方というのはいかがなものかというようなことを呈しておられるわけなんですけれども、私は、やっぱりこういう事態、こういう予算の組み方というそのものが非常に不透明であって、そういうやり方が良くないと、そういうやり方をやめるべきだというふうに思うんですね。
 最後になりますけれども、やっぱり、昨年、一八年の九月三十日に行われたこの知事選挙で、辺野古の基地反対の言ってみれば玉城デニー氏が当選をされたと、過去最高の、最多の得票で圧勝したわけですけれども、ところが政府はその民意を無視して、もう埋立ての区域への土砂の投入をしていると。
 二月の県民投票もやられて、そこで明確に辺野古の基地反対ということも出しているのにもかかわらず、普天間基地の五年以内の運用停止の期限も今年の二月だったにもかかわらずそれを守っていないということもあります。国民の多くは、今回の県民投票の結果も踏まえて……

○委員長(石橋通宏君) 紙さん、時間が来ておりますので、おまとめください。

○紙智子君 やっぱりちゃんと尊重すべきなんだということも言っているわけで、やっぱり沖北の担当大臣としてはそういう民意をしっかり受け止めるべきだし、今回のような予算の組み方は再考するべきではないかということを申し上げて、最後、一言あればお聞かせいただきたい。

○委員長(石橋通宏君) 宮腰大臣、簡潔にお願いいたします。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)宮腰光寛君) はい。
 今回の県民投票の結果については、真摯に受け止める必要があるものと考えております。私としては、沖縄振興を担当する立場で、基地の跡地利用の推進を始め各種沖縄振興策に引き続き全力で取り組んでまいりたいというふうに考えております。

○委員長(石橋通宏君) 以上をもちまして、平成三十一年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、内閣府所管のうち内閣本府(沖縄関係経費)、北方対策本部、沖縄総合事務局及び沖縄振興開発金融公庫についての委嘱審査は終了いたしました。