<第197回国会 2018年12月11日 農林水産委員会>


◇新たな保証基準価格は生産者が再生産を確保できるようにすべきだと主張/条件不利地も含めて、集送乳調整金は全国の集送乳のコストの実態を踏まえ旧指定生産者団体が果たしている機能に見合うようにすべきだと求めた/生産者補給金が再生産可能な水準になるのが一番重要だと指摘/自給飼料型の酪農経営に対する支援の拡充を求めた

○農林水産に関する調査(畜産物等の価格安定等に関する件)(畜産物価格等に関する決議の件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は座ったままでの質問ということで、御配慮をいただきましたことに感謝を申し上げます。
 それと、昨日、吉川農水大臣に対して、日本共産党国会議員団として酪農、畜産の対策について十項目申入れをさせていただき、その際に時間を取って対応していただいたことに感謝を申し上げたいと思います。
 その上でなんですけれども、今日の委員会での議論を踏まえて、これ政策審議会で価格が決まっていくわけなんですけれども、今年のこの畜産価格について言えば、TPP11の発効ですね、そして日欧EPAと。それから、肉用子牛生産者補給金の新たな保証基準価格、加工原料乳生産者補給金の暫定措置が廃止されているわけですけれども、そのことと加えて、台風被害やあるいは豪雨災害や地震、とりわけ北海道はブラックアウトという全域停電ということの被害もあったわけでありまして、様々なそういった環境の変化ですとか困難な状況の中での価格決定ということになりますので、畜産関係者や国民の願いに本当に応えていくということが非常に重要だというように思います。
 それで、まずこの肉用子牛生産者補給金制度についてなんですけれども、現行制度では、九一年の牛肉輸入自由化前七年間の販売価格などに基づいて保証基準価格を算定しています。
 それで、TPPの国内対策の一環として、米国を除く十一か国による新協定が発効するのが十二月三十日と、この新制度に移行するということなんですけれども、今までとどう違うのかということを端的にお答えいただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) お答え申し上げます。
 関連政策大綱におきまして、TPP又は日EU・EPAの協定発効に合わせて保証基準価格を現在の経営の実情に即したものに見直すというふうに書いてございますけど、具体的に申し上げますと、十二月三十日のTPP11の発効の日に合わせまして新たな保証基準価格を設定するわけでございますが、その際に、現在、肉用子牛の生産者補給金制度、いわゆる十分の十の一階事業と言われている部分と肉用牛繁殖経営支援事業、補填率四分の三の二階事業と言われている部分を統合いたしまして肉用子牛生産者補給金制度に一本化する、すなわち補填率を全て十分の十にするというための保証基準価格を決めまして、それが期中改定という形で十二月三十日から適用されると、そういうことをやろうとしているところでございます。

○紙智子君 三日に開かれた政策審議会の畜産部会で、どの規模層の生産費を取り上げるかが重要という意見ですとか、繁殖経営は構造的に中小規模が多いなど、小規模経営の生産費を考慮した保証基準価格の設定を求める声が相次いだというふうに聞いています。
 新たな保証基準価格は生産者が再生産を確保できるようにすべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) お答え申し上げます。
 保証基準価格につきましては、肉用子牛生産安定等特別措置法に基づく制度でございますけれども、肉用子牛の生産条件や需給事情等を考慮し、肉用子牛の再生産を確保することを旨として定めるというふうになってございますので、当然、再生産を確保するということが一つの目的でございます。
 その見直しに当たっては、農林水産省内に専門家で設置されました検討会でいろいろ議論をいたしまして、先ほど先生から御指摘もあった、現行の輸入自由化前の七年間の農家販売価格に代えて過去七年間の生産費を基礎とすることが適当である、また、小規模な肉用子牛経営の実情を踏まえつつ、酪肉近で示している近代化を促進する方向に沿ったものとすることが適当である等の取りまとめが行われ、三日の審議会にも報告をいたしました。
 今後、審議会畜産部会の意見も踏まえながら、子牛の再生産を確保する観点から、新たな保証基準価格を適切に設定してまいりたいと存じます。

○紙智子君 新たな保証基準価格の算定に当たって、生産の合理化促進への配慮を求めているわけですけれども、酪肉近で示している方向で行うというふうに言っているわけです。
 それで、規模拡大が要件になっているわけですけれども、この現状の十五頭前後を酪肉近でいう三十頭まで増やせばどうなるのかなというふうに思うんですね。それで、労働時間がそれによって負担がどうなるかとか、設備投資も増えていくと。つまり、労働強化になるんではないのかと思うわけです。
 規模拡大しないと再生産が保障されない仕組みになれば、これ生産者のむしろ生産意欲というのは逆にそがれるということになるんじゃないかと思いますけれども、これは大臣、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) 先にもう一回御説明いたします。
 法律上でも、酪肉近、合理化の方向にしていくということにはなっておりまして、それを酪肉近の目標である、今目標三十頭でございますけど、そこにするかどうかというのは、まさに審議会等の意見を聞いてこれからいろいろな御議論をいただき、適切に決めていくということでございます。
 それで、今回、審議会もそうですし検討会もそうでございますけど、その法律上の合理化を進めていくということに併せまして小規模な経営にも配慮をしつつということを、検討会、また審議会でもそういう御意見が出ているということでございますので、そういうことを踏まえてこれから適切に決定してまいるということでございます。

○紙智子君 三十頭まで増やす方向出ているんだけれども、機械的にそれでやるということではないということでよろしいんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) おっしゃるとおりでございます。

○紙智子君 JA全中も、この保証基準価格について、生産コストなどを踏まえて、やっぱり安心して経営発展に取り組める水準にするように要望されていると思うんですね。特に、中小規模の生産者が再生産できるというところが鍵なんだというふうに思うんですね。先ほど藤木議員からもそういう意味では小規模なんかも重視するという話もされていたと思うので、是非そのことを踏まえていただきたいと思います。
 次に、加工原料乳生産者補給金の単価と集送乳調整金についてもお聞きしたいと思います。
 条件不利地も含めて、収入経費に当たる集送乳調整金は、輸送料が高騰しているということで、全国の集送乳のコストの実態を踏まえて旧指定生産者団体が果たしている機能に見合うようにするべきじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) お答え申し上げます。
 集送乳調整金でございますけど、畜産経営安定法におきまして、指定事業者が集送乳に通常要する経費の額から効率的に集送乳が行われる場合の経費額を控除して得た額を基礎として定めるというふうにされてございます。
 単価の算定に当たりましては、当該規定に基づきまして、指定事業者があまねく集送乳を行えるように、輸送経費や燃油価格等、集送乳に要するコストの直近の動向も踏まえて、食料・農業・農村政策審議会の意見を聞いて適切に決定してまいりたいと存じます。

○紙智子君 輸送も含めてしっかり算定していくということだと思います。
 それで、やっぱり加工原料乳の生産者補給金の暫定措置法が今年四月から廃止をされたわけです。北海道では、生乳の九割以上がホクレンを通じて乳業メーカーに販売されています。それから、生乳の八割がバターやチーズなどの加工品向けで来ているわけですけれども、補給金が酪農経営に重要な役割を果たしてきたというふうに思うんですね。
 酪農家の所得を増やすと言って廃止したわけで、その後どうなっているのかということはちゃんとつかむ必要があるんだと思うんですよ。所得を増やすというふうに言っているわけですから、この補給金が生産者にとって再生産可能な水準になるというのが一番重要だと思うんですけれども、その辺はどうでしょう。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) 四月にいろいろと御指導いただきまして法律が施行されまして、今年度から補給金と集送乳調整金という二つになりました。
 また、補給金につきましても集送乳調整金につきましても、その法律の規定に基づいて、それこそ審議会の意見を聞いて適切に決定してまいりたいというふうに考えてございます。

○紙智子君 畜酪クラスター事業などについてなんですけれども、規模拡大を前提とするけれども、農家からも使い勝手が悪いと。規模拡大だけでなく、小規模な家族経営を維持するための対策を打ってほしいという要望が出されてきました。規模拡大を前提とするということではなくて、実情を踏まえた支援とすべきではないかというふうに、これ、前から言っていますけれども、思います。
 北海道別海町の三十代の御夫婦で、春に畜産クラスター事業を活用して、牛舎や設備を新設して規模拡大をしたと。きっかけは老朽化で、要するにおじいちゃんの時代から五十年近く使った牛舎が限界を迎えたと。深刻な人手不足で、夫婦二人で管理できるようにフリーストール牛舎を建てたと、そして搾乳ロボットを導入したと。投資額は相当これ膨大になったわけです。軌道に乗るまで不安は尽きないという中で、離農するか、それとも負債を抱えて投資するかということでの選択を迫られて、非常に悩むという農家が多いわけで、それに加えて今回ブラックアウトということで、それを引き金になって離農を決断するという人も出ているわけです。
 家族経営でやっていけるように支援することが大事だというふうに思うんですけれども、これについては、ちょっと大臣、答えていただきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 畜産クラスター事業におきましては、この施設整備に関しましては、地域の平均飼養規模以上の経営体であれば、規模拡大せずとも、搾乳牛一頭当たりの年間の生乳出荷量を増加するなどの生産効率が向上する場合はこの支援対象となっております。機械導入に関しましても、飼養規模の大小にかかわらずに、規模の拡大を伴わなくとも、収益性の向上ですとか生産コストの削減につながる場合には支援対象となっているところでもございます。
 中小規模であっても、このように意欲を持って取り組む家族経営に対しましては畜産クラスター事業の支援対象となることについて、これからもしっかりと周知をしてまいりたいと存じます。

○紙智子君 地元のJA道東あさひにも行ったんですけれども、生乳生産を支えているのは中小規模の酪農家だと。生産意欲を高めて酪農を続けられるように、乳価の安定や恒常的で柔軟な支援対策が必要だというふうにおっしゃっておりました。是非、その方向で強めていただきたいと。
 それからもう一つ、餌の状態についてもお聞きします。
 北海道では今年の六月、七月、低温、長雨の影響で牧草の育ちが本当に悪かったということで、その牧草が餌となるのがこれからなんですよね、今までのところはあったんだけれども。質量共に非常に不安で、牧草の生育不良で乳量が下がるということも懸念されているわけなんですけれども、これ自給飼料型の酪農経営に対する支援を更に拡充すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) お答え申し上げます。
 先生御指摘いただきましたとおり、北海道では六月から七月にかけての長雨、またこれに伴う日照不足、さらに台風二十一号の襲来、これらによりまして自給飼料の生産全般について影響が生じております。具体的には、一番草の刈り遅れと二番草の生育不良、また飼料用トウモロコシの生育不良や倒伏、こういう被害が出ておりまして、収穫量の減少や品質の低下は避けられないんではないかというふうに考えてございます。
 このため、酪農家の皆様からも生乳生産量の減少に対する懸念の声も聞かれておりますので、災害対策の中で、粗飼料確保緊急対策事業によりまして、サイレージの品質確保のための発酵促進資材ですとか、残念ながら不足する粗飼料の部分については購入に要する経費、これを助成しているところでございます。
 なお、今般の被害によりまして、新たに収穫される三十一年産の牧草が給与可能となるのは三十一年の秋になります、それまでの間の粗飼料不足というのも懸念されるところでありまして、ここについては、今年刈った牧草の飼料の分析結果ですとか、今回の支援対策への申請の状況だとか、そういうのを踏まえてまた検討していきたいと、そういうふうに考えてございます。

○紙智子君 是非心配のないように対策してほしいと思います。
 それから、私も日欧EPAについて次にお聞きしたいと思います。
 日本と欧州連合の経済連携協定、日欧EPAが可決をされました。私たちは外交防衛委員会との連合審査を求めていましたが、与党からは明確な回答がない状況の中で外交防衛委員会が可決をされたということで、大変残念に思っております。
 酪農にとってこれからが大変な時代に入るというふうに思うんですね。今年は夏の冷夏、地震もありましたけれども、冬にかけてはTPP11が年内発効だと、来年になると日欧EPAが発効すると、これダブルパンチになると思うんですね。生産基盤の弱体化が言われている中で、やっぱり将来不安、懸念を払拭することが大事だと思うんです。
 そこで、先日、参議院の外交防衛委員会で、我が党の井上哲士議員が影響試算についてお聞きしました。欧州委員会が公表した資料によると、協定発効後、加工食品の対日輸出は五一%で約一千三百億円拡大するんだと、特に強みのある乳製品は二一五%、約九百四十八億円増大すると。ところが、日本政府は最大で二百三億円生産減少があるというふうに言っていますから、これ差があるわけですね。四倍以上の開きがあるわけです。
 それで、政府の答弁は、欧州委員会の試算というのはGTAPモデルだけれども、日本は品目ごとの積み上げ方針だと、国内対策の効果も入れて試算しているから、前提、根拠が違うという説明をされていると。この説明はTPP11のときと同じなんですよね。つまり、影響試算がカナダやニュージーランドと懸け離れているんじゃないかというふうに私も指摘しましたけれども、安倍総理は前提や試算の根拠が明らかでないためにコメントしないというふうに言ったわけですよ。
 農林水産大臣にお聞きするんですけれども、将来不安を解消するためには、こんなことを繰り返し言っていても全然解消しないと思うんですね。欧州と同様の影響試算をやっぱり出すべきじゃありませんか。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 光吉一君) 欧州委員会の経済効果分析につきましては、先生から今お話ございましたけれども、本年の六月に報告書が公表されまして、GDPの押し上げ効果などを盛り込まれていると承知しております。その中では、関税の削減等によります経済全体への影響、あるいは貿易額などについて分析が行われていますが、一方、それぞれの品目の用途あるいは種類ごとの合意内容によります影響の違いといったものが明らかでなかったり、あるいは我が国が現に行っております国内対策の効果というものも考慮されていないという点など、農林水産省の試算とは異なる考えのものと承知をしております。
 もとより、こういった試算につきましては、前提条件や分析方法によりまして様々な、当然でございますけれども、結果が出るところでございまして、貿易を行う国や地域がそれぞれの考え方や分析手法に基づき行うものであるというふうに認識しております。
 農業者の皆様が不安を持たれず取り組んでいただくということがもちろん重要でございます。国内対策をしっかり講じていくとともに、農業者の方々に御理解を深めていただけるよう、今後とも、我が国の試算の考え方や内容も含めて、丁寧な説明に心掛けてまいりたいと思います。

○紙智子君 だから、そんなことを繰り返していたら、全然不安はなくならないということですよ。そらせているでしょう、結局、回答を。そういう、やり方が違う、試算が違うから違っていても問題にしないという話なんだけれども、やっぱり日欧EPAは承認決定を急いだために審議が生煮えなんですよね。今からでも遅くはないので、是非、この前提、根拠が違うというふうに言ってそらさないで、酪農家に分かる情報を出していただきたいというふうに思います。
 これ、今後始まる事実上の日米のFTA交渉でも言えることで、日本政府はFTAの定義はないというふうに言いながら、安倍総理は日本が結んできたFTAとは違うと勝手な解釈をしています。一方、アメリカはFTAだと、アメリカは言っているわけですよね。だって、ずっとアメリカはFTAを日本に求めてきているわけですから、そういうふうに思うわけですよ。昨年十月の日米経済対話の際に、アメリカがFTAを求めたい、求めていたと、そしてそれは外務省も認めていたわけですよ。そうすると、日本がFTAじゃないと幾ら言ってもアメリカはFTAが実現したと思っていると。
 そういうごまかしで、これ交渉をスタートさせていいんですか。大臣、どうですか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 日米共同声明におきまして、この農林水産品につきましては、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限との日本の立場が明記されております。日米首脳間でこの点について文書で確認したということは非常に重たいものと私は認識をいたしております。
 農林水産品につきまして、このTPPが最大限であるとの我が国の立場はもう明確でありまして、農林水産省としては、共同声明を大前提に、将来にわたって我が国の農林水産業の再生産が確保されるように最大限の努力をしていく考えでございます。

○紙智子君 曖昧にしたまま交渉はやっぱりやるのは本当に良くないと思うし、本当に一番大きな影響を受ける畜産、酪農というふうに思います。
 TPPにしても日欧EPAにしても、通商交渉は政府の一存で決めると、そして国会には審議は余りなくて採決だけ決めると、こんなやり方はもう是非やめていただきたいということを強く求めて、質問を終わります。

──────(略)─────────────

○委員長(堂故茂君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめます。
 田名部君から発言を求められておりますので、これを許します。田名部匡代君。

○田名部匡代君 私は、自由民主党・国民の声、公明党、立憲民主党・民友会、国民民主党・新緑風会、日本共産党、日本維新の会及び希望の会(自由・社民)の各派共同提案による畜産物価格等に関する決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    畜産物価格等に関する決議(案)

  我が国畜産・酪農経営は、飼養戸数が減少する一方、一戸当たり飼養頭羽数は増加を続けているものの、担い手の高齢化、後継者不足は深刻さを増しており、特に経営継続の危機にさらされている中小・家族経営を強力に支援する必要があるとともに、より多くの若手が就農を目指す魅力ある労働環境づくりが課題となっている。また、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)、経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定(日EU経済連携協定)の発効が目前に迫る中、将来への懸念と不安を抱く生産者も多い。
  よって政府は、こうした情勢を踏まえ、平成三十一年度の畜産物価格及び関連対策の決定に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。

 一 地域農業・地域社会を支える家族経営や法人経営といった多様な畜産・酪農の生産基盤の維持・拡大を図るため、組織的な生産体制の整備、畜産物の付加価値の向上、良質かつ低廉な飼料等の供給等の取組を通じて、魅力ある持続可能な経営が実現できるよう、十分な所得を確保し得る実効性のある施策を実施すること。
 二 日米物品貿易協定に関しては、適宜適切に国民に情報を開示すること。
 また、CPTPP、日EU経済連携協定による我が国農林水産業への定量的影響評価については、他の参加国における試算例や各県の試算例も参考として、より精緻なものとなるよう、見直しに努めること。
 三 各般の経営安定・安定供給のための備えを通じて、関税削減等に対する生産者の懸念と不安を払拭し、確実な経営安定を図るとともに、国産チーズ等の競争力強化等の体質強化対策を着実に実施することを通じて、収益力・生産基盤を強化し、我が国の高品質な畜産物の新市場開拓を推し進め、畜産・酪農の競争力の強化を図ること。その際、実施した対策の効果を検証し、適宜必要な見直しを行うこと。また、これらの施策等により、食料自給率の向上を図ること。
 四 加工原料乳生産者補給金・集送乳調整金の単価及び総交付対象数量については、中小・家族経営が中心の酪農家の意欲が喚起されるよう、再生産の確保を図ることを旨として適切に決定すること。
 また、改正畜安法の下、酪農経営の安定と需給状況に応じた乳製品の安定供給の確保が図られるよう、需給変動等に備え、万全な需給安定対策の在り方についての酪農業界全体での検討を、国は十分に支援すること。
 五 肉用子牛生産者補給金制度における保証基準価格の算定方式については、中小・家族経営を中心とする現在の経営の実情に即したものとし、繁殖農家の経営努力が報われ、営農意欲が喚起されるよう、再生産の確保を図ることを旨として適切に見直すこと。
 六 酪農家や肉用牛農家の労働負担軽減・省力化に資するロボット・AI・IoT等の先端技術の導入等を強力に支援するとともに、酪農ヘルパーの人材確保・育成、利用拡大に対して支援を行うこと。
 七 畜産・酪農の収益力・生産基盤・競争力を強化するため、畜産農家を始めとする関係者が連携する畜産クラスター等について、中小・家族経営にも配慮しつつ、地域の実情に合わせた地域が一体となって行う、外部支援組織の活用、優良な乳用後継牛の確保、和牛主体の肉用子牛の生産拡大、畜産環境対策等の多様な展開を強力に支援すること。加えて、肉用牛・乳用牛・豚の改良等を推進する取組や、肉用牛の繁殖肥育一貫経営や地域内一貫生産を推進する取組を支援すること。さらに、生産基盤の脆弱化が特に懸念される中小・家族酪農経営については、需要に応じた生乳生産が確保されるよう地域性を踏まえた生産基盤の強化措置等を講ずること。
 八 国産飼料の一層の増産と着実な利用の拡大を図り、飼料自給率を向上させるため、草地改良や飼料作物の優良品種利用の取組、ICT等の活用による飼料生産組織等の作業の効率化、放牧、国産濃厚飼料、未利用資源を利用する取組、有機畜産物生産の普及の取組を支援すること。さらに、良好な飼料生産基盤を実現させるため、大型機械体系に対応した草地整備、泥炭地帯における草地の排水不良の改善等を推進するとともに、酪農経営における環境負荷軽減の取組を支援すること。
 また、配合飼料価格安定制度については、畜産・酪農経営の安定に資するよう、同制度に係る補填財源の確保及び長期借入金の計画的な返済を促すことにより、制度の安定的な運営を図ること。
 九 国産畜産物の輸出に当たっては、オールジャパンでの戦略的で一貫性のあるプロモーションの企画・実行等による海外需要の創出等に取り組むとともに、輸出拡大に対応できるように国産畜産物の供給力の強化を進めること。また、日本版畜産GAPについては、その取組や認証拡大を加速度的に進展させるため、普及・推進体制の強化の取組等を支援すること。特に、原発事故に伴って導入された諸外国における日本産農林水産物・食品の輸入規制等の緩和・撤廃を図るため、政府間交渉に必要な情報・科学データの収集・分析等を十分に行い、輸出先国への働きかけ・交渉を強力に推進すること。
 十 原発事故に伴う放射性物質に汚染された稲わら、牧草及び牛ふん堆肥等の処理を強力に推進するとともに、永年生牧草地の除染対策、原発事故に係る風評被害対策に徹底して取り組むこと。
 十一 畜産振興、畜産物の安定供給と輸出促進を図るため、高病原性鳥インフルエンザや口蹄疫、豚コレラ等の家畜の伝染性疾病等の発生予防・まん延防止対策を徹底し、農場の飼養衛生管理指導、診断体制の強化、野生動物の監視等の取組を支援すること。また、地域の家畜衛生を支える産業動物獣医師の育成・確保を図るとともに、家畜の伝染性疾病等に係る風評被害防止等の観点から、国民に対して正確な情報を迅速に伝えること。
 十二 多発する自然災害による畜産・酪農の被害への対応に万全を期すこと。特に、北海道胆振東部地震による停電の影響により被害を受けた乳牛に対する乳房炎の治療・予防管理や非常用電源の確保等について強力に支援すること。また、乳業メーカーに対して、自家発電施設の導入など、停電等の非常時への対応を強化するよう指導すること。

   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞよろしくお願いいたします。

○委員長(堂故茂君) ただいまの田名部君提出の決議案の採決を行います。
 本決議案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(堂故茂君) 全会一致と認めます。よって、本決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。